制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/Laplace 変換/微分方程式の解法

§1 編集

まず,複素係数の線形定常常微分方程式

(4.11)
 

を考える.ここに   とする.これを初期条件,

 

の下に Laplace 変換すると,実係数の場合と同様にして,

 

を得る.ここに  式 (4.11) に付随する特性多項式,   で決まる高々   次の多項式である.

一般に,複素係数の多項式は,代数学の基本定理により,複素係数の範囲で 1 次の積に因数分解できるから,それを,

 

とすると,これに対応して,

 

と部分分数に展開できる.それゆえ,この原像は,

 

または

(4.12)
 

と求まる.ここに    の多項式で次数は高々  ,係数は複素数である.

複素数値関数の微分に述べたように,

 

であるから

 

となり,式 (4.12) 式 (4.11) の解であることが分かる.解の一意性の証明も全く同じであるから,繰り返さない.また非同次方程式,

 

の解法も,全く同様である.なお,式 (4.11) の解の基本系は,

 

となる.実際,これらが 1 次独立となることは,前章の証明よりも,はるかに容易に示し得る. 事実,補題 4.1 の系によれば,

 

は一次独立であるから,あとは,

 

の 1 次独立性だけを示せばよい.これは,

 

の 1 次独立性と同じであるから,明らかである.


§2 編集

微分方程式式 (4.11) の係数が実数の場合を,この章の立場から述べておく. 特性方程式   が 1 次の因数に分解できることは同様であるが,その内容は,

 

のような形をしている.ここに     の共役複素数である. このとき解の基本系は,次の 3 種類の型のものから成り立っている.

 
 
 

Ⅰ型は実関数である.しかし,Ⅱ,Ⅲ型は複素数値関数である.これらを,

 
 

ここに   を用いて実関数の基本形に直すと,Ⅱ,Ⅲの変わりに,

Ⅱ' 
Ⅲ' 

となる.Ⅰ,Ⅱ',Ⅲ'が実形式で表した解の基本形である.前章で求めたものと形は異なるが,この方が導出が簡単である.


例94 

{Ⅰ,Ⅱ',Ⅲ'}が解の基本系となること,すなわち 1 次独立であることを示せ.

解答例

 


非同次方程式の一般解は,同次方程式の一般解に特解を付加すればよいことは,前章と同様である.

ここに述べたように,一般に,理論的な話をするときには,複素数値関数で取り扱う方が見通しがよい. しかし実際に初期値問題を解くときには,前章の手法の方が優れている. ただ,一般解を求めるのは,本章の方法によるのが賢明である.