さて、gismu を見分けれるようになりましたね。実際に触れていきましょう。
「dunda」という gismu は「あげる・与える」という意味なのですが、selbri として「あげる人」「あげるもの」「受け取る人」という関係をも表します。今挙げた順番で、です。(ロジバンでは関係を見極めるために順番を重視します。上記の順番は「あげる」という動作に固有のものというよりは、dunda という単語の決まり事です。)
マリア、クラウディア、ユリアの三人を想定して文を作ってみましょう。

   la mari,as. dunda la .iulias. la klaudias.

は、「マリアがユリアをクラウディアにあげた」という意味になります。

注:それぞれの cmene の前にある「la」は冠詞のようなもので、「他の種類の言葉ではなくて名付けられたものですよ」と明示する役割があります。

ちょっと変えて

   la .iulias. dunda la mari,as. la klaudias.

と言えば、「ユリアがマリアをクラウディアにあげた」という意味になります。英語では前置詞などを使って、トルコ語やラテン語では語形を変化させて、日本語では助詞を使って関係性を示しますが、ロジバンの理論には配列構造(place structure)というものがあります。

配列構造。dunda の意味は「あげる」だけではないということです。dundaは

   x1はx2をx3(者)に与える/贈る/授ける


という配列構造を持ちます。「x」は何か入れるものです。ただ「dunda」と口にしたとき、それは「誰かが何かを誰かにあげる」ということを意味します。明示しない部分については、興味がない・重要でない・知っている・了解済み、ということです。日本語の表現に近いと言えますね。

ここで、dunda は3つの「場所」を持っている、と言います。埋めたければ人、もの、出来事などで埋めることができます。そういう「場所」をロジバンでは「sumti」と言います。この用語もまた、言葉の種類ではなく、役割を表しています。これらを組み合わせたもっとも単純なロジバンの文は「bridi」です。

   bridi = selbri + sumti


注:selbri は、論理学者で言う「述語」または「関係」、プログラマーで言う「関数」に読み替えて差し支えありません。sumti は、両分野における「引数」、数学の「独立変数」のようなものです。


selbri が sumti を幾つとれるかは、その言葉によりますが、最少で1個、最多で5個です(後々やるように sumti を追加するやり方はありますが)。例を見ていきましょう。

場所1つ
ninmu
x1 は女性だ (生物学的に。大人でなくても)

注:ロジバンをつい英語と同じようにとらえてしまう行為は、ロジバン話者が心配している害悪です。ロジバン話者はこれに「malglico(忌まわしき英語ぐせ)」(直訳はクソ英語)という名前をつけて、自分や初心者がこの間違いを犯すことに本当に頭を悩ましています。ロジバン以外のことをしていてもしばしば脳裏に浮かぶほどです。この例では、ninmu は成人女性しか意味しない、という思い込みが malglico です。


blabi
x1 は白い/非常に明るい色である

cmila
x1 は笑う(必ずしも誰か・何かに向けて笑うわけではありません。笑いの対象を含めたい場合は、「lujvo(複合語)」である「mi'afra(x1 は x2 に向けて笑う)」を使います。微妙に違います。)

場所2つ
cipni
x1はx2(種類)のトリ綱だ

vofli
x1はx2(原動力)で飛ぶ/飛行する

jungo
x1はx2(性質面)に関して中国系(言語/文化/民族/地理)

junri
x1(者)はx2(事)に関してまじめ/真剣/厳か/熱心/本気

場所3つ
xamgu
x1はx2にとって、x3(基準)で良い/好ましい
(これはとてもロジバンらしい言葉です。英語の good は単体では意味がないくらい曖昧です。そしてx1に人間を持ってこようとするのも malglico です。ここには普通、もの・状態・出来事が入ります。「人としていい・道徳がある」と言いたいときは「vrude」を使います。)

pritu
x1はx2の、x3(照合相手)を向いているときの右方/右側
(「それって私から見た右?君から見た右?」と問い返す必要がありません)

cliva
x1はx2からx3(経路)によって離れる/発つ/別れる/去る

kabri
x1はx2(内容)・x3(素材)のコップ/カップ/タンブラー/マグ/茶碗/杯

場所4つ
vecnu
x1(者)はx2(品/サービス)をx3(者)にx4(価格/費用)で売る; x3はx2を買う

tivni
x1はx2(番組)をx3(媒体/チャンネル)でx4(受信者/視聴者)にテレビ放送/映像通信する

bajra
x1はx2(表面)をx3(肢)・x4(調子)で走る

場所5つ
klama
x1はx2(終点)にx3(起点)からx4(経路)をx5(方法)で行く/来る

cukta
x1はx2(内容)・x3(著者)・x4(読者)・x5(媒体)の本/文献

fanva
x1はx2(文字列)をx3(言語)にx4(言語)から翻訳し、x5(文字列)を生む


これで次のような文が作れます。今までに習ったことしか使っていないので、最後の文は非常に不自然ですが。

・ la mari,as. ninmu
   マリアは女性だ。
・ la tuitis. cipni la serinus.serinus.kanarias.
   トゥイーティはSerinus serinus canariaという種類の鳥だ。
・ la .iulias. pritu la mari,as. la klaudias.
   ユリアは、クラウディアを向いているマリアの右にいる。
・ la .iulias. klama la .uacintyn. la losandjeles. la cikagos. la .amtrak.
   ユリアはワシントンへ、ロサンゼルスから、シカゴを通って、Amtrak(アメリカの都市間鉄道網)で行く。
・ la pybysys. tivni la niksyn.in.tcainas. la kycy,ebutys. la telis.
   PBS (the American Public Broadcasting Serviceという放送局)は「ニクソン・イン・チャイナ(オペラ)」を KCET (ロサンゼルスにあるPBS提携会社 )を通して、「テリー(放送機材の愛称)」に配信する。