ウェブユニバーサルデザイン/読み上げ
このページ (ウェブユニバーサルデザイン/読み上げ) では、聴覚に障碍をお持ちの方などに有用な読み上げへの対応を電子書籍を中心にこれまでの歴史なども
誰がために
編集単に「読み上げ」と聞くと、視覚障碍者だけに向けたものに思われがちですが、他にも肢体や知覚などに障碍を持ちマウスの操作や紙の書籍のページをめくることが難しい人へ向けた電子書籍など、他の読み書きに不自由な人にも有用[1]ですし、障碍のない人も文章の聴き流しができるため、近年急速に広まりつつあります。
現在までの歴史
編集ここでは、特に電子書籍を例にして説明します。
1970年代、日本が全体的に裕福になりつつあったなかで、障碍者への配慮の重要性が広く知られるようになりました。さらに、1980年代から1990年代にかけて、インターネットやデジタル技術が進歩するなかで、障碍により本を読めない人への対応であった、従来の対面読書やカセットテープ録音といった手間がかかる方法に代わる手段が模索されるようになります。2010年に改正著作権法が施行され、著作権者に許可を得ずにテキストデータや録音図書などを提供できるようになり[2]、同じ
これらの海外発祥のサービスは、それまで日本にあった「電子書籍は実際に印刷した本の補助的役割」という考え方ではありませんでした。それまで電子書籍は紙の書籍と同じ販売額で売られ、紙の書籍が住んでいる地域などの理由で買えない人向けでしたが、海外発祥のサービスは、紙やインクなどに充てていた分、輸送費に充てていた分の料金が不要である分、これらをカットすることでより安価に販売しました[4][5]。さらに、日本に乱立したサービスはまだ新しく、システム上の問題があっただけでなく、各々が独自の規格を採用し、障碍者への対応も遅れていました。
海外との違い
編集海外では、データ化された書籍の機械を
日本語は文字が多く、墨字本 (「墨字」は点字の対義語で、点字以外の文字で書かれた文献という意味[6]) のスキャンにはページごとの裁断が必要になる上、それでもなお一部の文字が誤ってスキャンされていることもあり、その確認も必要です。
電子書籍では、ページごとの裁断は必要ありませんし、テキスト形式で利用できる場合は誤字の確認も不要です。
実際に実行する
編集実際にウェブページを作成する上で必要な事項を説明します。
言語
編集当然ながら、きちんと体裁を整えて書くことが重要です。この際に、ページを生成している言語を最大限活用して書く必要があります。見出しを太字などでつくるのではなく、言語に搭載された見出しの作り方で書きましょう。例として、ウェブページに良く用いられているHTMLでは、<h1>
で見出しが生成できることを挙げておきます。詳細はそれぞれの言語の教科書を確認してください。
閑話休題。なぜこれら言語の活用が重要かというと、例えば「見出しだけ読む」を実行する際に、太字で作った見出しは見出しと認識されないからです。「見出しだけ読む」を使って読みたい章を探し、その部分のみを読む方もいらっしゃるので、確認が重要です。
文章にルビを振ることができる言語もあります。HTMLでは<ruby>
でルビが振れます。これらは読み上げソフトでルビが読まれます。このページでも活用しています。
文言
編集
読み上げソフトや機能 (以下、「読み上げソフト」と表記) はまだ改善すべき点が多く、あまり知られていない読み方は避ける必要があります。
さらに、これらの読み上げソフトはメディアの内容は読み上げられませんので、「右の画像に書かれているように」といった表現は避けるべきでしょう。この場合、「右の画像のグラフのAは…」といった内容が分かる表現にすべきでしょう。加えて、読み上げとは関係ないことではありますが、スマートフォンなどに対応したウェブサイトではメディアの位置がパソコンでの閲覧の際と異なる場合も多いです。実際に確認し、「右もしくは上の…」といった表現が望ましいです。
画像の説明を画像につける場合、画像が読まれない (読めない) のに説明だけ読まれてしまうことがあります。例を挙げると、ある人物の説明でその人物の肖像画などを表示させ、人物名を説明に書いておいても、いきなり人物名が読まれ、聴者に混乱をもたらすケースがあります。これを防ぐためには、以下の方法が考えられます。
- 画像の説明を読まない
- 読まれる場合に限って「~の画像」などと付け加える
しかし、上記の方法はいずれも読み上げソフトに読ませる部分を指定するということが必要ですが、そのようなことは2020年現在これを実現する技術がなく、実行は困難です。
さて、上記の#言語ではルビ機能について触れました。しかし、この機能には、注意すべき点があります。日本語では、「宇宙」と書いて、「そら」と読ませる場合など、別の単語の読みをさせることがあります。この場合、「宇宙」を用いた「そら」と「空」を用いた「そら」がルビ機能では同じものになってしまう場合があります。これらは小説や詩などによく使われる表現ですが、作者の意図が伝わらなくなってしまいます。今の技術では、それらの解決 (読み上げの際に本文にない内容を読む) もまた不可能でしょうが、そのような表現を用いる際には十分に注意する必要があります。
註釈
編集参考文献類
編集- 松原, 聡 『電子書籍アクセシビリティの研究』 東洋大学出版会、2017年。ISBN 978-4-908590-01-6。