オートマトン/第一類/数学的準備/集合

集合に関した基礎的な事項を簡単にまとめておく.

集合(set)とは,要素(element)の集まりである.対象となる要素はなんであってもいいし,特に集合を要素とする集合も通常は許容される. ある集合 があるとき,どんな要素が に属するかは明瞭に記述されなければならない. 例えば「0 と 1 からなる文字列」の集まりは集合である. 一つの集合には,同じ要素が重複して含まれることはない. 有限個の要素よりなる集合を有限集合(finite set),無限個の要素より成る集合を無限集合(infinite set)という.

集合の記法 編集

要素 0, 1 の二つからなる集合は   と表す.   個の要素    ならば  )からなる集合は,  と表す. 要素の順序は任意であり,   は同じ集合である.

集合を表す記法として次のような方法もある.   は実数の集合   に属し,かつ   は, “  は実数の集合の集合   に属し,かつ  ” という性質を満足するような   をすべて集めた集合であり, 要素を列挙する記法で表せば,  である.

一般に,  に関する性質を   としたとき,性質   を満足するような   をすべて集めた集合を

 

と表す.さらに性質   と性質   をともに満足するような   をすべて集めた集合を

  かつ  
 

と表す.

特に要素を一つも持たない集合は空集合(empty set) という.空集合は記号   で表す.

要素と集合 編集

集合   が要素として   を持つとき,   に属する,あるいは    を含むといい,

 
 

と表す.   の要素ではないときは,

 
 

と表す.前提としてのすでに明らかな集合   があって,今は性質   に論述の力点があるときに

  かつ  

 

のように表示されることもある.例えば実数の集合を   としたとき,先にあげた集合  

 

とも表すことができる.

部分集合 編集

集合   において,集合   の要素は必ず集合   であるとき,    の部分集合(subset) であるという.またこのとき,   に含まれる, あるいは,   を含むといい,

 
 

と表す.例えば  . 定義より   自身は   の部分集合である.

 

また,空集合   はすべての集合の部分集合である,と定義する.

集合   において   かつ   であるとき,集合    は等しいといい,

 

と表す.


集合に対する演算 編集

和集合 編集

集合   に対し,そのいずれかに属する要素をすべて集めた集合   または   を,     の和集合 (union) という.これを

 

と表す.一般に集合   に対して   あるいは   あるいは    の和集合といい,

 
 

と表す.

積集合 編集

集合    とに共通して含まれる要素を集めた集合   かつ     の積集合 (intersection, product) という.これを

 

と表す.一般に集合   に対して   かつ   かつ    の積集合といい,

 
 

と表す.

差集合・補集合 編集

集合   の要素の中から,集合   にも属する共通要素をすべて除いて得られる集合   かつ   を,  から   を引いた差集合 (difference) という.これを

 

と表す.考察の前提または対象となる全要素が先に提示されていて,これを集合  (omega; これを全体集合あるいは普遍集合(universal set)という)とし,   の部分集合   が与えられたときの    の差集合

 

  の(  に関する)補集合 (complement) という.これを   または   と表す. 定義より   が成り立つ.

次の公式はド・モルガン則と呼ばれている.

 
 

集合族・べき集合 編集

集合を要素とする集合を,特に集合族 (family),あるいは集合のクラス (class) という.

集合   のすべての部分集合全体を考えたとき,これは集合の集合すなわち集合族である.すなわち   は集合族をなす. この集合を   のべき集合 (power set) といい,  あるいは   と記す.

例:   のとき,

  である.