属格とは?
編集日本語で言う、「の」を使って二つの語の関係を示す方法のことです。それだけです。例えば「ウルクの王」は属格構文です。「サルゴンの父」もそうです。専門用語を使って脅かしたいわけではありません――言語学者は好きな言葉を別の好きな言葉で記述したがるものなのです。
シュメール語における属格
編集シュメール語では属格構文は実によく使われており、いくつかの形態があります。最も単純な形は二つの語を並べて「.ak」という助詞をくっつける形です。
二つの例をみてみましょう。
lugal Urim.akという語句はどうでしょうか。まずは私達の知っている単語を探してみましょう。lugalは王、そしてUrimはウルと呼ばれる都市のことです。2つの名詞が並び、そして私達の新しい友だち.ak助詞が続きます。この形を「属格構文」と呼びます。そういうわけで、この語句は
- lugal Urim.ak = ウルの王
と読めるわけです。簡単でしょう? .akのことを覚えていさえすれば、1マイル先からでも属格構文を見つけ出せますよ!
別の例です。
dumu nin Lagas.ak.akはどうでしょうか。いつもの通りにわかる単語を探してみましょう。dumuはもちろん子供のことですよね。ninは女性か女王と訳せます。Lagasはラガシュという都市のことです。最後にちょっとおもしろいものがありますね。.akが二つあります! どういったわけでしょうか。つまりこういうことです。日本語でいう「会社の理事会の議長の隣人の息子」のような言い方をシュメール語でしたいときには、属格の入れ子を作っていくのです。ですからこの例では
- dumu nin Lagas.ak.ak = dumu [nin [Lagas.ak].ak] = [[ラガシュの女王]の子] = ラガシュの女王の子
と読めるのです。新しいことは何もなくて、ただ2つの属格構文が重なっているだけです。読者ももうこの概念についてすっかり手なづけられたことでしょうから、例題に挑んでみましょう。
例題
編集次のフレーズを解き明かしてみてください。わからなくなったらマウスを文字の上において訳を読んでもいいですよ。
- dumu nin.ani.ak
最後の'k'の消失
編集紙の上ではすべてうまくいったように見えます。でも粘土板ではどうでしょうか? 実はシュメール語の特徴として、語句の最後の格助詞の音が消えるというものがあるのです。難しく聞こえるかもしれませんが、よくあることなのです。英語で説明しますと、アメリカでは'-ing'の最後の'g'はしばしば発音しません。 'going'はゴーイン、'digging'はディギンみたいな感じです。どうです? ただ助詞の最後の音をなくすだけです。
シュメール語の属格の場合は、.akという助詞ですから、最後の音は /k/ です。lugal Urim.akのような語句が実際に書かれる場合にはlu-gal Urim-maと書かれ、格助詞の最後の /k/ は省かれるのが普通でした。
とはいえ、多くの場合は属格の語句の後ろに別の格助詞がつき、/k/の音が実際に発音されることになります。例えば、もしこのフレーズを能格(他動詞の主語のような場合を指します)にする場合は最後に助詞「.e」をつけるのですが、そうなるとlugal Urim.ak.eは実際にlu-gal Urim-ma-keと書かれ、/k/を発音するのです。
このような手がかりがなかったとしても、文脈からたどれば曖昧さは消えることがすぐにわかります。
前へ (レッスン2 - 所有接辞) : 上へ(メインページ - シュメール語文法) : 次へ (レッスン4 - コピュラ)