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デーヴァナーガリー文字の母音と子音。

母音

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単独形 子音結合 ローマ字転写 音価 発音方法
なし a a 短母音「ア」
ā 長母音「アー」
ि i i 短母音「イ」
ī 長母音「イー」
u u 短母音「ウ」
ū 長母音「ウー」
ri ri 「リ」(ri)
riː 「リー」(rī)
li li 「リ」(li)
liː 「リー」(lī)
e 常に長い「エー」
ai ai (西部)長母音「アェー」
(東部)二重母音「アエ」
o 常に長い「オー」
ao ao 短母音「アォ」
au au (西部)短母音「アォ」
(東部)二重母音「アオ」

注意事項

  • ऑ(ao)は外来語の音を表すためにつくられた字で、本来の表には含まれない。
  • ऋ(ri)、ॠ(rī)は母音ではないが、サンスクリット語の名残で、母音扱いする。
  • ॠ(rī)はヒンディー語では用いない。
  • ऌ(li)、ॡ(lī)はマラーティー語のみ用いる。
  • 「ए」は「エィ」のように聞こえる。
  • 「ऐ」は一部単語では「アイ」と発音する。
  • 「औ」は一部単語では「アウ」と発音する。

子音

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子音は発音時の口の開き方、舌の位置などで大別され、そのグループは無声音か有声音、無気音か有気音(=強く息を吐着ながら出す音)の4つに、鼻子音を加えた5つに分かれる。さらに、外来語を表すために新しく追加された字もある。これらは既存の文字の下に点(ヌクタという)を加えたり、特定の結合文字に音価を与えたりして作られる。追加された子音は背景を色付きにする。また、半母音、歯擦音、気音も存在する。

軟口蓋音

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分類 表記 ローマ字転写 音価 発音方法 発音サンプル
無声・無気 ka k 日本語のカ行とほぼ同じ
क़ qa q 喉の奥から摩擦させたカ行
無声・有気 kha kh 息を強く吐きながらのカ行
ख़ qha qh 息を強く吐きながら喉の奥から摩擦させたカ行
有声・無気 ga g 日本語のガ行とほぼ同じ
ग़ ga ɢ 喉の奥から摩擦させたガ行
有声・有気 gha gh 息を強く吐きながらのガ行
鼻子音 ṅa ŋ 英語のngと同じ

注意事項

  • क़はकと同じ発音になることもある。
  • 「क़」「ख़」「ग़」はそれぞれ「क」「ख」「ग」と同じ発音になることもある。

硬口蓋音

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分類 表記 ローマ字転写 音価 発音方法 発音サンプル
無声・無気 ca t∫ 日本語のチャ行とほぼ同じ
無声・有気 cha t∫h 息を強く吐きながらのチャ行
有声・無気 ja 日本語のジャ行とほぼ同じ
ज़ za z 日本語のザ行と同じ
有声・有気 jha h 息を強く吐きながらのジャ行
鼻子音 ña ɲ 日本語のニャ行とほぼ同じ

注意事項

  • 「ज़」は「ज」と同じ発音になることもある

反舌音

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分類 表記 ローマ字転写 音価 発音方法 発音サンプル
無声・無気 ṭa ʈ 舌を反らせながらのタ行
無声・有気 ṭha ʈh 舌を反らせ、息を強く吐きながらのタ行
有声・無気 ḍa ɖ 舌を反らせながらのダ行
ड़ ṛa ɽ 舌を反らせ、上の歯茎の裏を弾く  
有声・有気 ḍha ɖh 舌を反らせ、息を強く吐きながらのダ行
ढ़ ṛha ɽh 息を強く吐きながら舌を反らせ、上の歯茎の裏を弾く
鼻子音 ṇa ɳ 舌を反らせながらのナ行

注意事項

  • 舌を反らせながらの発音。少しこもった音になる
  • 「ड़」はダ行とラ行の中間の音になる。「ढ़」はその有気音。

歯音

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分類 表記 ローマ字転写 音価  発音方法 発音サンプル
無声・無気 ta t 日本語のタ行とほぼ同じ
無声・有気 tha th 息を強く吐きながらのタ行
有声・無気 da d 日本語のダ行とほぼ同じ
有声・有気 dha dh 息を強く吐きながらのダ行
鼻子音 na n 日本語のナ行とほぼ同じ
न्ह nha nh 息を強く吐きながらのナ行

舌音

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分類 表記 ローマ字転写 音価 発音方法 発音サンプル
無声・無気 pa p 日本語のパ行とほぼ同じ
無声・有気 pha ph 息を強く吐きながらのパ行
फ़ fa f 英語のfと同じ
有声・無気 ba b 日本語のバ行とほぼ同じ
有声・有気 bha bh 息を強く吐きながらのバ行
鼻子音 ma m 日本語のマ行とほぼ同じ
म्ह mha mh 息を強く吐きながらのマ行

半母音

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表記 ローマ字転写 音価 発音方法 発音サンプル
ya j 日本語のヤ行とほぼ同じ
ra r 日本語のラ行とほぼ同じ
la l 英語のlとほぼ同じ
ल्ह lha lh 息を強く吐きながらのl
va/wa v/w 日本語のワ行、もしくは英語のv v:
w:

歯擦音

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表記 ローマ字転写 音価 発音方法 発音サンプル
śa 日本語のシャ行とほぼ同じ
ṣa ʂ 舌を反らせながらのシャ行
sa s 日本語のサ行とほぼ同じ

「ष」は「श」と同じ発音になることもある。

気音

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表記 ローマ字転写 音価 発音方法 発音サンプル
ha h 日本語のハ行とほぼ同じ

子音と母音の結合

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ाやिなどの母音記号にある破線の丸の部分に子音記号を入れて子音と母音を結合させる。この様子をक(ka)を用いて示す。

  • क + (なし)(a) = क(ka)
  • क + ा(ā) = का(kā)
  • क + ि(i) = कि(ki)
  • क + ी(ī) = की(kī)
  • क + ु(u) = कु(ku)
  • क + ू(ū) = कू(kū)
  • क + ृ(ri) = कृ(kri)
  • क + े(e) = के(ke)
  • क + ै(ai) = कै(kai)
  • क + ो(o) = को(ko)
  • क + ौ(au) = कौ(kau)

変則的な結合

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  • र(ra)とु(u)およびू(ū)の結合
    • र + ु = रु(ru)
    • र + ू = रू(rū)
  • श(sha)とृ(ri)の結合
    • श + ृ = श्रृ(shri)
    • ただしशृと表記してもよい。
  • ह(ha)とृ(ri)の結合
    • ह + ृ =हृ(hri)

鼻母音・鼻子音

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鼻母音

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母音はऋ(ri)とऑ(ao)を除き鼻母音化する。鼻母音とは鼻からも息を出しながら発音する母音である。

鼻母音をあらわす記号にはं(ビンドゥ)とँ(チャンドラビンドゥ)がある。ビンドゥは「ई」「ऐ」「ओ」「औ」に、チャンドラビンドゥは「अ」「आ」「इ」「उ」「ऊ」につく。このように、ビンドゥはシローレーカーの上に出っ張りがあるもの、チャンドラビンドゥはシローレーカーの上に出っ張りがないものに用いる。ただし、ビンドゥの代わりにチャンドラビンドゥを使うこともある。

表記 発音方法
अँ/अं 鼻にかかった「ア」
आँ/आं 鼻にかかった「アー」
इँ/इं 鼻にかかった「イ」
ईं 鼻にかかった「イー」
उँ/उं 鼻にかかった「ウ」
ऊँ/ऊं 鼻にかかった「ウー」
एँ/एं 鼻にかかった「エー」
ऐं 鼻にかかった「アェ」「アエ」「アイ」
ओं 鼻にかかった「オー」
औं 鼻にかかった「アォ」「アオ」「アウ」

子音字との結合は、「कँ」「किं」のようになる。つまり、ビンドゥ・チャンドラビンドゥを字の真上に、出っ張りがあればその右に加える。

鼻子音

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鼻子音「ङ」「ञ」「ण」「न」「म」は他の子音と結合するとき、自身は省略され前の字にビンドゥを加えることがある。(チャンドラビンドゥは使わない。)これを鼻子音と言い、これを表すビンドゥは特別にアヌスワーラと呼ぶ。ただし、鼻子音同士の結合にはアヌスワーラを使うことはない。

次に鼻子音が続くことを示す字は、上記の鼻母音と見掛け上同じ形になる。

表記 発音方法
अं 「アン」
आं 「アーン」
इं 「イン」
ईं 「イーン」
उं 「ウン」
ऊं 「ウーン」
एं 「エーン」
ऐं 「アェン」「アエン」「アイン」
ओं 「オーン」
औं 「アォン」「アオン」「アウン」

その他の文字・記号

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オーム

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オーム

ヒンディー語には「ॐ」(ओम,オーム)という特殊な文字がある。これはヒンドゥー教における聖音である。詳しい意味についてはw:オーム (聖音)を参照。

句読点

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ヒンディー語の文章では「।」(プルーンヴィラーム)は文章を閉じる、日本語の句点に当たる記号である。ただしピリオドを使うことも多い。「,」(アルドヴィラーム)は文章の途中の区切りを示す、日本語の読点に当たる記号である。コンマと似た記号である。また、ヒンディー語の文章でも「!」「?」を用いる。

ヴィサルカ

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「ः」(ヴィサルカ)は子音字の直後に付ける。ヒンディー語ではहと同じ発音になるか省略される。例えば、「छः」(chh,6)はछहと同じ発音になる。

チャンドラ

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「ॅ」(チャンドラ)は英語からの借用語などに含まれる/ɔː/の音を示すとき、ऑ(ॉ)の形で用いる。発音は「アォー」だが、औ(ौ)のように「オー」と発音してもよく、人によってはチャンドラ記号を無視してआ(ा)「アー」と発音することもある。チャンドラ記号の有無によって意味が大きく異なることがあるので注意。

  • कॉफ़ी शॉप(kaofī śaop,カォーフィー シャォープ)「コーヒーショップ」
  • काफ़ी शाप(kāfī śāp,カーフィー シャープ)「十分な呪い」


アヴァグラハ

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「ऽ」(アヴァグラハ)はサンスクリット語ではw:連声により語頭のअが消失したことを示す記号である。ヒンディー語では「ऽऽऽ」として沈黙を表す用法がある。

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