フランス語の文中では、名詞が独りでいることはあまりなく、大抵「何か」と一緒に用いられます。冠詞はそうした「何か」の中でも一般的なものです。
冠詞には『不定冠詞』、『定冠詞』、『部分冠詞』の三種類があり、その名の通り冠のように名詞の前に付きます。それぞれ名詞の性・数に応じて変化します。

不定冠詞

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不定冠詞(ふていかんし)は英語の「a(an)」にあたる冠詞で、初めて話題に上ったもの、相手がまだ知らないものについて話す時に用いられます。
名詞が男性・単数形の場合には un 、女性・複数形の場合は des というように、名詞に合わせて形を変化させます。

単数 複数
男性 un des
女性 une des


定冠詞

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定冠詞(ていかんし)は英語の「the」に相当する冠詞です。これは、既に話題に上ったものや、相手が了解している特定のものについて話す時に用います。
不定冠詞と同じく、名詞に合わせて形を変化させますが、母音で始まる名詞の単数形に付く時には、エリジオンが起こって l' となります。
例:la orange → l'orange オレンジ, la étoile → l'étoile 星

単数 複数 母音の前(単数)
男性 le les l'
女性 la les l'


定冠詞と不定冠詞の違い

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例えば、友人に対して「今朝、が歩いていたよ」と話しかけるとします。友人が、それがどの犬であるかを知っている場合には、定冠詞を用いて「le chien」とします。特別に知っている犬ではなく、世界中にたくさんいる犬の中のどれか一匹である場合や、自分は知っているけれど友人は知らない犬である場合は、不定冠詞を使って「un chien」とします。

部分冠詞

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部分冠詞(ぶぶんかんし)は、英語にはない冠詞で、水やワインなどの数えられないものに付きます。数えることができないため、複数形はありません。母音で始まる名詞の前では、定冠詞と同様にエリジオンが起こります。

母音の前
男性 du de l'
女性 de la de l'

※部分冠詞は de + 定冠詞であると捉えることができます。du は de + le が縮約された形です。

「数えられない」名詞

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部分冠詞を取る名詞は、はっきりと定められている訳ではありません。例えば「パン」は、三種類のどの冠詞をも取り得ます。クリームパンがひとつ、ふたつ・・・と数えれば、不定冠詞や定冠詞を取ることになりますが、ちぎったり、切り分けたりしてしまえば、どこからどこまでが「ひとつ」なのかを数えることは不可能です。
小粒の果実や木の実、米なども同様です。お店で、イチゴを一粒だけ買う人はいないでしょうから、大抵イチゴは部分冠詞を取ります(de la fraise いくらかの苺)。しかし、思い入れのある特定のイチゴについて定冠詞を使う人がいないとも限りません(la fraise その苺)。

前置詞と定冠詞の縮約

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前置詞 à, de は、定冠詞と並ぶと、次のように縮約されます。ただし、女性形は縮約されません。

à + le → au
à + les → aux
de + le → du
de + les → des

例:café à le lait → café au lait カフェオレ
   histoire de le Japon → histoire du Japon 日本の歴史

いろいろな規則

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人名

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人の名前には、原則として冠詞を付けません。ただし、最初のアルファベットは大文字で書きます。

  • Marie (マリー)
  • Paul (ポール)
  • Hanako (花子)
  • Takeshi (タケシ)


唯一物

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世界に一つしか存在しないものには、定冠詞をつけます。世界に一つしか無く、特定されるためです。 ただし、形容詞がついた場合は不定冠詞になることもあります(形容詞がつくとある一時的な状態のものになり、世界に一つではなくなるから)。

  • la lune (月)
  • le soleil (太陽)
  • un soleil brillant(輝いている太陽)
  • le Japon (日本)
  • la France (フランス)