プログラミング/Ruby で学ぶオブジェクト指向プログラミング
オブジェクト指向プログラミングは、現代のソフトウェア開発において基盤となる重要な概念です。 このカリキュラムは、Rubyを使用した初学者から中級者までのプログラマーを対象に、クラスやモジュール、継承などの基本的なOOP原則から、高度なトピックス如何に至るまでを包括しています。 実践的な演習やプロジェクトを通じて、理論を実際のコーディングに結びつけ、学習者が柔軟かつ効果的にオブジェクト指向プログラミングのスキルを磨くことを目指します。
プログラミングの基礎とRubyの紹介
編集プログラミングとは何か?
編集プログラミングとは、コンピュータに指示を与えて、あるタスクを自動的に実行させるための手段です。プログラムを書くことで、コンピュータが単純な作業を行ってくれるため、人間がやるべきではない繰り返し作業を効率化することができます。
Rubyとは何か?
編集Rubyは、日本人の松本行弘氏によって開発されたプログラミング言語です。シンプルな構文や豊富な機能、そして美しいコードを書きやすい特性から、世界中で広く利用されています。
Rubyの基本的なデータ型
編集Rubyの基本的なデータ型には以下が含まれます:
- Integer(整数): 整数を表現します。例えば、
42
や-10
などが整数です。 - Float(浮動小数点数): 小数を表現します。例えば、
3.14
や-0.5
などが浮動小数点数です。 - String(文字列): 文字の連続を表現します。シングルクォート
' '
またはダブルクォート" "
で囲まれた文字列です。例えば、"Hello, World!"
が文字列です。 - Symbol(シンボル): 一意の識別子を表現します。先頭にコロン
:
を付けて表現します。例えば、:foo
や:bar
がシンボルです。 - Boolean(真偽値): 真偽値を表現します。
true
とfalse
の2つの値があります。 - Array(配列): 複数の要素を順序付けて格納します。中括弧
[]
で囲まれ、カンマで要素が区切られます。例えば、[1, 2, 3]
が配列です。Rubyでは、配列のほかスタックやキューの性質も併せ持っています。 - Hash(ハッシュ): キーと値のペアを格納します。中括弧
{}
で囲まれ、キーと値はキー => 値
の形式で表現されます。例えば、{ :name => "John", :age => 30 }
がハッシュです。
これらの基本的なデータ型を組み合わせて、複雑なデータ構造を構築することができます。 また、Rubyは動的型付け言語であり、変数の型を明示的に宣言する必要がないため、柔軟で使いやすい言語です。
プログラムの実行方法
編集Rubyのプログラムを実行するには、ターミナル上で「ruby ファイル名.rb」というコマンドを実行します。ここで、「ファイル名.rb」には、実行したいプログラムのファイル名を指定します。
- オブジェクト指向言語
Rubyは、純粋なオブジェクト指向言語であり、すべての値がオブジェクトであることが特徴です。また、クラスやオブジェクトの定義が容易であり、メソッド呼び出しのシンタックスも簡潔で読みやすいため、オブジェクト指向の設計や開発に向いています。
- 動的型付け言語
Rubyは、変数の型を明示的に宣言する必要がない動的型付け言語です。そのため、柔軟性があり、実行時に変数の型を決定するため、柔軟なプログラミングが可能です。
- リフレクション
Rubyは、リフレクション機能を備えています。つまり、プログラムの実行中に、オブジェクトやクラスの情報を取得できることです。そのため、実行時にプログラムの振る舞いを変更することができ、柔軟性のあるプログラミングが可能になります。
- メタプログラミング
Rubyは、メタプログラミングをサポートしています。つまり、プログラムが自己修正、自己再生することができます。例えば、クラスの定義やメソッドの再定義などが可能で、柔軟なプログラミングが可能です。
- 豊富なライブラリ
Rubyには、豊富な標準ライブラリが含まれています。また、RubyGemsと呼ばれるパッケージ管理システムがあり、多数のライブラリやフレームワークを容易にインストールできるため、効率的な開発が可能です。
- シンプルで読みやすい構文
オブジェクト指向プログラミングとは何か?
編集オブジェクト指向プログラミングとは、プログラムを「オブジェクト」と呼ばれる部品に分割し、それらのオブジェクト同士のやりとりを通じてプログラムを作成する手法です。オブジェクトとは、データとそれに関連する操作をカプセル化したものです。オブジェクト指向プログラミングは、プログラムの再利用性やメンテナンス性、拡張性を高めるために使用されます。
クラスとインスタンス
編集クラスとは、オブジェクトを定義するための設計図のようなものです。クラスには、オブジェクトが持つべきデータや操作を定義することができます。一方、インスタンスとは、クラスを元に作成された具体的なオブジェクトのことです。
メソッドとは何か?
編集メソッドとは、オブジェクトが持つ操作のことです。クラスに定義したメソッドは、そのクラスのインスタンスが持つ操作として利用することができます。
継承とは何か?
編集継承とは、既存のクラスを元にして、新しいクラスを作成する手法です。継承元のクラスは、継承先のクラスに定義されているデータや操作を引き継ぐことができます。これにより、既存のクラスを基盤として、より複雑なクラスを作成することができます。
Rubyのオブジェクト指向プログラミング
編集Rubyのクラス定義とインスタンス作成
編集Rubyでは、クラスを定義するために「class」というキーワードを使用します。また、インスタンスを作成するためには、「new」というメソッドを使用します。以下は、クラスの定義とインスタンスの作成の例です。
class Person def initialize(name, age) @name = name @age = age end def introduce puts "私の名前は#{@name}です。#{@age}歳です。" end end person1 = Person.new("山田太郎", 20) person2 = Person.new("鈴木花子", 25) person1.introduce # => 私の名前は山田太郎です。20歳です。 person2.introduce # => 私の名前は鈴木花子です。25歳です。
メソッドの定義と呼び出し
編集Rubyでは、メソッドを定義するために「def」というキーワードを使用します。また、メソッドを呼び出すためには、オブジェクトのインスタンスに対して「.」を使用して呼び出すことができます。
class Person def initialize(name, age) @name = name @age = age end def introduce puts "私の名前は#{@name}です。#{@age}歳です。" end def add_age(years) @age += years end end person = Person.new("山田太郎", 20) person.introduce # => 私の名前は山田太郎です。20歳です。 person.add_age(5) person.introduce # => 私の名前は山田太郎です。25歳です。
継承
編集Rubyでも継承を使用することができます。継承元のクラスに定義されているデータや操作を引き継いだ上で、新しいデータや操作を追加することができます。
class Animal def initialize(name) @name = name end def speak puts "#{@name}が鳴きました。" end end class Dog < Animal def speak puts "#{@name}がワンワン鳴きました。" end end animal = Animal.new("猫") animal.speak # => 猫が鳴きました。 dog = Dog.new("犬") dog.speak # => 犬がワンワン鳴きました。
アクセサー
編集Rubyでは、インスタンス変数を外部からアクセスするためのアクセサを簡単に定義できます。アクセサを使用すると、外部からインスタンス変数にアクセスするためのgetterメソッド(取得用のメソッド)やsetterメソッド(設定用のメソッド)を自動的に定義できます。
アクセサを定義する方法は、以下の通りです。
class Person attr_accessor :name, :age def initialize(name, age) @name = name @age = age end end person = Person.new("山田太郎", 20) puts person.name # => 山田太郎 puts person.age # => 20 person.age = 25 puts person.age # => 25
このように、attr_accessorメソッドを使用して、:nameと:ageのアクセサを定義しています。これにより、インスタンス変数にアクセスできます。
attr_accessorメソッドは、:nameと:ageのアクセサを定義するだけで、以下の2つのメソッドを自動的に定義します。
- nameメソッド:インスタンス変数@nameの値を取得するgetterメソッド
- name=メソッド:インスタンス変数@nameの値を設定するsetterメソッド
同様に、:ageのアクセサに対しても自動的にgetterメソッドとsetterメソッドが定義されます。
また、attr_readerメソッドを使用すると、getterメソッドだけを定義することもできます。逆に、attr_writerメソッドを使用すると、setterメソッドだけを定義することもできます。
class Person attr_reader :name attr_writer :age end
このように、:nameのgetterメソッドと:ageのsetterメソッドを定義しています。これにより、以下のようにインスタンス変数にアクセスできます。
person = Person.new person.name = "Alice" # getterメソッドは定義されていないため、エラーになる person.age = 30 # setterメソッド puts person.name # getterメソッドを呼び出して出力する puts person.age # インスタンス変数を直接参照して出力する
モジュール
編集Rubyでは、モジュールを使用して、共通の機能をまとめることができます。モジュールは、クラスのように操作を定義することができますが、インスタンスを作成することはできません。
module Greeting def hello puts "Hello, Ruby!" end def goodbye puts "Goodbye, Ruby!" end end class Person include Greeting def initialize(name) @name = name end def introduce hello puts "私は#{@name}です。" goodbye end end person = Person.new("山田太郎") person.introduce
- 実行結果
Hello, Ruby! 私は山田太郎です。 Goodbye, Ruby!
データ構造
編集Rubyは、多くの便利なデータ構造をサポートしています。以下にいくつかの代表的なデータ構造の実装例を示します。
配列 (Array)
編集RubyのArray(配列)は、複数の要素を順序付けて格納するデータ構造です。配列内の要素はインデックスによってアクセスされ、0から始まる整数のインデックスが割り当てられます。Rubyの配列は可変長であり、異なるデータ型の要素を含むことができます。配列は中括弧 []
を使って作成され、要素はカンマで区切られます。例えば、[1, "apple", :symbol, [2, 3], true]
のようになります。配列はイテレーションや操作、検索など多くの操作に便利であり、Rubyのプログラミングで広く使用されます。
Rubyの配列 (Array) は、スタックやキューの機能を持っていますが、ここでは基本的なリテラルとインデックスを使った要素参照と操作例をテストケースで示します。
- array.rb
# frozen_string_literal: true require 'minitest/spec' require 'minitest/autorun' describe Array do let(:ary) { [] } let(:numbers) { [1, 2, 3, 4, 5] } let(:fruits) { %w[apple banana orange] } describe 'empty array creation' do it 'creates an empty array' do expect(ary).must_equal [] end it '#empty?' do expect(ary.empty?).must_equal true end end describe 'Array Manipulation' do let(:ary) { [2, 3, 5, 7] } it '#[]' do expect(ary[2]).must_equal 5 expect(ary[-1]).must_equal 7 end it '#[]=' do ary[2] = 11 expect(ary).must_equal [2, 3, 11, 7] ary[-3] = 13 expect(ary).must_equal [2, 13, 11, 7] end end describe 'element deletion' do it '#delete' do fruits.delete('banana') expect(fruits).must_equal %w[apple orange] end end end
スタック (Stack)
編集スタック構造(Stack)は、データを一時的に保存するための抽象データ型の一つであり、後入れ先出し(Last-In, First-Out; LIFO)の動作を持ちます。これは、最後に追加された要素が最初に取り出されるという意味です。スタックは、物理的なスタックや山のようなイメージで説明されることがあります。
スタックは、以下のような基本的な操作を持ちます:
- push: スタックの一番上(トップ)に要素を追加する操作。
- pop: スタックの一番上(トップ)から要素を取り出す操作。
- peek: スタックの一番上(トップ)にある要素を取得するが、スタックから削除はしない操作。
- empty?: スタックが空かどうかを確認する操作。
スタックは、再帰的なアルゴリズムの実装や、バックトラッキング、逆ポーランド記法などの表現方法に使われることがあります。
Rubyの配列はスタックの機能も持っていて、peek を last の別名にする程度でスタックを実装できます。
- stack.rb
class Stack < Array alias peek last end # テストケース require 'minitest/autorun' describe Stack do let(:stack) { Stack.new } describe '#push' do it 'adds an item to the stack' do stack.push(1) expect(stack.peek).must_equal 1 end end describe '#pop' do it 'removes and returns the last item from the stack' do stack.push(1) expect(stack.pop).must_equal 1 expect(stack.empty?).must_equal true end end describe '#peek' do it 'returns the last item from the stack without removing it' do stack.push(1) expect(stack.peek).must_equal 1 expect(stack.empty?).must_equal false end end describe '#empty?' do it 'returns true if the stack is empty' do expect(stack.empty?).must_equal true end it 'returns false if the stack is not empty' do stack.push(1) expect(stack.empty?).must_equal false end end describe '#size' do it 'returns the number of items in the stack' do expect(stack.size).must_equal 0 stack.push(1) expect(stack.size).must_equal 1 stack.push(2) expect(stack.size).must_equal 2 end end describe 'Stack-specific behavior' do it 'pops items in Last-In-First-Out order' do stack.push(1) stack.push(7) stack.push(3) stack.push(2) stack.push(0) expect(stack.pop).must_equal 0 expect(stack.pop).must_equal 2 expect(stack.pop).must_equal 3 expect(stack.pop).must_equal 7 expect(stack.pop).must_equal 1 expect(stack.pop).must_be_nil end end end
キュー (Queue)
編集Rubyは Queue(キュー)を標準ライブラリに持っていますが、これはThread safeな高度な実装ですが、シングルスレッドで使うと空のキューからdeqするとデッドロック検知に抵触するなど、スレッド間通信に特化しています。
また、Rubyの配列はキューの機能も持っていて、peek を first の別名にするなどでキューを実装できます。
- queue.rb
class MyQueue < Array alias enqueue push alias dequeue shift alias size length alias peek first end require 'minitest/spec' require 'minitest/autorun' describe MyQueue do let(:queue) { MyQueue.new } describe 'empty queue creation' do it 'creates an empty queue' do expect(queue).must_equal [] end it '#empty?' do expect(queue.empty?).must_equal true end end describe 'queue operation' do it '#dequeue' do expect(queue.dequeue).must_be_nil end it '#enqueue and #dequeue' do queue.enqueue(1) queue.enqueue(2).enqueue(3) expect(queue.dequeue).must_equal 1 expect(queue.dequeue).must_equal 2 expect(queue.dequeue).must_equal 3 expect(queue.dequeue).must_be_nil end it '#size' do expect(queue.size).must_equal 0 queue.enqueue(1) queue.enqueue(2) expect(queue.size).must_equal 2 end it '#peek' do queue.enqueue(1) queue.enqueue(2) expect(queue.peek).must_equal 1 expect(queue.size).must_equal 2 end end end
連結リスト (Linked List)
編集Rubyには、標準ライブラリに連結リスト (Linked List)の実装は含まれていませんが、配列(Array)は提供されています。配列はインデックスによるランダムアクセスや動的なサイズ変更が可能で、多くの場合で効率的なデータ構造です。
一方で、リンクリストはメモリ内の連続した領域を使用せず、ポインターによって各要素が次の要素を指し示す形でデータを格納します。これにより、挿入や削除などの操作が効率的に行えますが、ランダムアクセスができないため、要素を順にたどる必要があります。
Rubyでリンクリストを実装する場合、独自のクラスを定義し、それぞれの要素が次の要素を指すポインターを持つようにすることが一般的です。ただし、Rubyにおいて配列が多くのケースで十分に効率的なデータ構造であるため、リンクリストを実装する必要がある場合は、その使用ケースが特定の条件を満たしているかどうかを検討することが重要です。
- list.rb
# frozen_string_literal: true class List < Array def to_s = "(#{join(' ')})" def inspect = "#{self.class}(#{to_a.join ', '})" end require 'minitest/spec' describe List do let(:list0) { List.new } let(:list3) do list = List.new [1, 2, 3].each{ |el| list.push el } list end describe '#initialize' do it 'initializes an empty list if no arguments are provided' do list = List.new expect(list.to_a).must_equal [] end end describe '#unshift' do it 'adds elements to the beginning of the list' do list0.unshift(1).unshift(2).unshift(3) expect(list0.to_a).must_equal [3, 2, 1] end end describe '#push' do it 'adds elements to the end of the list' do list0.push(1).push(2).push(3) expect(list0.to_a).must_equal [1, 2, 3] end end describe '#shift' do it 'removes and returns the first element from the list' do expect(list3.shift).must_equal 1 expect(list3.to_a).must_equal [2, 3] end it 'Ill. shift args.' do expect { list3.shift('unexpected') }.must_raise TypeError end it 'returns nil if the list is empty' do expect(list0.shift).must_be_nil end end describe '#pop' do it 'removes and returns the last element from the list' do expect(list3.pop).must_equal 3 expect(list3.to_a).must_equal [1, 2] end it 'Ill. pop args.' do expect { list3.shift('unexpected') }.must_raise TypeError end it 'returns nil if the list is empty' do expect(list0.pop).must_be_nil end end describe '#each' do it 'iterates over each element in the list' do result = [] list3.each { |x| result << x } expect(result).must_equal [1, 2, 3] end it 'returns an enumerator if no block is given' do expect(list3.each).must_be_kind_of Enumerator end end describe '#to_s' do it 'returns a string representation of the list' do expect(list3.to_s).must_equal "(1 2 3)" end end describe '#inspect' do it 'returns a debug representation of the list' do expect(list3.inspect).must_equal "List(1, 2, 3)" end end describe '#empty?' do it 'empty' do expect(list0.empty?).must_equal true expect(list3.empty?).must_equal false end end end Minitest.run if $PROGRAM_NAME == __FILE__
ハッシュ (Hash)
編集RubyのHash(ハッシュ)は、キーと値のペアを格納するデータ構造です。キーと値は関連付けられ、キーは一意で重複しない必要があります。Hashはハッシュテーブルを基にしており、高速なデータの検索や取得が可能です。Hashは中括弧 {}
を使って作成し、キーと値は キー => 値
の形式で記述します。例えば、{ key1 => value1, key2 => value2 }
のようになります。さまざまなオブジェクトがキーとして利用でき、HashはRubyプログラミングで頻繁に使用されます。またキーがシンボル(Symbol)の場合は { :key1 => value1, :key2 => value2 }
を{ key1: value1, key2: value2 }
と書く省略記法があります。
- hash.rb
# frozen_string_literal: true require 'minitest/spec' require 'minitest/autorun' describe Hash do let(:assoc) { {} } let(:fruits) { {apple: 150, banana: 230, orange: 198 } } describe 'empty array creation' do it 'creates an empty array' do expect(assoc).must_equal ({}) end it '#empty?' do expect(assoc.empty?).must_equal true end end describe 'Hash Manipulation' do let(:tbl) { {a:2, b:3, c:5, d:7} } it '#[]' do expect(tbl[:c]).must_equal 5 expect(tbl[:d]).must_equal 7 expect(tbl[:x]).must_be_nil end it '#[]=' do tbl[:x] = 11 tbl[:a] = 13 expect(tbl).must_equal ({:a=>13, :b=>3, :c=>5, :d=>7, :x=>11}) end end describe 'element deletion' do it '#delete' do fruits.delete('banana') expect(fruits).must_equal ({:apple=>150, :banana=>230, :orange=>198}) fruits.delete('cherry') expect(fruits).must_equal ({:apple=>150, :banana=>230, :orange=>198}) end end end
木構造 (Tree)
編集Rubyには、標準ライブラリに木構造の実装は含まれていませんが、独自のクラスを定義して木構造を実装することができます。
通常、木構造はノードと呼ばれるオブジェクトから構成され、各ノードはデータを保持し、他のノードへの参照を持ちます。根ノードから始まり、それぞれのノードが子ノードを持つことがあります。通常、木構造は再帰的なデータ構造であり、再帰的なアルゴリズムを使用して操作されます。
- tree.rb
# frozen_string_literal: true class Tree include Enumerable Node = Struct.new(:value, :left, :right) def initialize(*_args) @root = nil end def height(node = @root) = node.nil? ? 0 : 1 + [height(node.left), height(node.right)].max def each(node = @root, &block) return to_enum(__method__, node) unless block def core(node, &block) return if node.nil? core(node.left, &block) yield node.value core(node.right, &block) end core(node, &block) self end def insert(value, node = @root) check_value(value) def core(value, node) return Node.new(value) if node.nil? case value <=> node.value when -1 then node.left = core(value, node.left) when 1 then node.right = core(value, node.right) when 0 # sum value else raise TypeError, value.inspect end node end @root = core(value, node) self end def search(key, node = @root) check_value(key) def core(key, node) return false if node.nil? case key <=> node.value when -1 then core(key, node.left) when +1 then core(key, node.right) when 0 then true else raise TypeError, "#{self.class}#core: #{key.inspect}" end end core(key, node) end def delete(key, node = @root) check_value(key) def core(key, node) return node if node.nil? case key <=> node.value when -1 node.left = core(key, node.left) return node when +1 node.right = core(key, node.right) return node when 0 # sum value else raise TypeError, value.inspect end if node.left.nil? return node.right else succParent, succ = node, node.right succParent, succ = succ, succ.left while succ.left if succParent != node succParent.left = succ.right else succParent.right = succ.right end node.value = succ.value node end end @root = core(key, node) self end def to_s = "(#{to_a.join ' '})" def inspect ="#{self.class}(#{to_a.join ', '})" protected def check_value(value) raise TypeError, "Invalid value: #{value.inspect}" unless value.respond_to?(:<) raise TypeError, "Invalid value: #{value.inspect}" if value.is_a?(Numeric) && !value.finite? end end require 'minitest/spec' require 'minitest/autorun' describe Tree do let(:tree0) { Tree.new } let(:tree3) do tree = Tree.new [1, 2, 3].each { |el| tree.insert el } tree end describe '#initialize' do it 'initializes an empty list if no arguments are provided' do expect(tree0.to_a).must_equal [] end end describe '#insert' do let(:ary) { (0...1000).to_a } it 'adds elements to tree' do tree0.insert 10 expect(tree0.to_a).must_equal [10] tree0.insert 20 expect(tree0.to_a).must_equal [10, 20] tree0.insert 30 expect(tree0.to_a).must_equal [10, 20, 30] tree0.insert 25 expect(tree0.to_a).must_equal [10, 20, 25, 30] tree0.insert 15 expect(tree0.to_a).must_equal [10, 15, 20, 25, 30] end it 'adds elements to tree by sequebce order' do ary.each { |el| tree0.insert el } expect(tree0.to_a).must_equal ary end it 'adds elements to tree by shuffle' do ary.shuffle.each { |el| tree0.insert el } expect(tree0.to_a).must_equal ary end end describe '#search' do it 'find' do expect(tree3.to_a).must_equal [1, 2, 3] expect(tree3.search(1)).must_equal true expect(tree3.search(3)).must_equal true expect(tree3.search(2)).must_equal true end it 'nofound' do expect(tree3.to_a).must_equal [1, 2, 3] expect(tree3.search(0)).must_equal false expect(tree3.search(100)).must_equal false expect(tree3.search(4)).must_equal false end end describe '#delete' do it 'find' do expect(tree3.to_a).must_equal [1, 2, 3] expect(tree3.delete(1)).must_be_kind_of Tree expect(tree3.to_a).must_equal [2, 3] expect(tree3.delete(3)).must_be_kind_of Tree expect(tree3.to_a).must_equal [2] expect(tree3.delete(2)).must_be_kind_of Tree expect(tree3.to_a).must_equal [] end it 'nofound' do expect(tree3.to_a).must_equal [1, 2, 3] expect(tree3.delete(0)).must_be_kind_of Tree expect(tree3.delete(100)).must_be_kind_of Tree expect(tree3.delete(4)).must_be_kind_of Tree expect(tree3.to_a).must_equal [1, 2, 3] end end end
オブジェクト指向プログラミングとデザインパターン
編集オブジェクト指向プログラミングは、プログラミングの一種で、オブジェクトと呼ばれるデータ構造と、それらを操作するメソッドを中心に構成されています。オブジェクトは、それ自体が独自の状態を持ち、他のオブジェクトと相互作用することができます。このように、オブジェクト指向プログラミングは、複雑な問題を扱いやすく、保守性と拡張性に優れたコードを書くことができます。
デザインパターンは、オブジェクト指向プログラミングにおける再利用可能なソリューションのことです。デザインパターンは、共通の問題に対する解決策を提供し、コードの再利用性、保守性、拡張性を向上させます。デザインパターンは、一般的なコーディングのベストプラクティスを体系化し、標準化された方法で問題を解決するための枠組みを提供するため、オブジェクト指向プログラミングの重要な概念です。
デザインパターンは、GoF(Gang of Four)が定義した23のパターンが最も有名です。これらのパターンは、それぞれ特定の問題を解決するために使用されます。例えば、シングルトンパターンは、特定のクラスのインスタンスが必要な場合に、1つのインスタンスしか作成しないようにするために使用されます。ファクトリーパターンは、異なる種類のオブジェクトを作成するために使用されます。また、ストラテジーパターンは、アルゴリズムのファミリーを定義し、それらをカプセル化し、相互に交換可能にするために使用されます。
デザインパターンは、オブジェクト指向プログラミングの基礎であり、再利用可能なコードを書くために非常に重要です。オブジェクト指向プログラミングを学ぶ際には、デザインパターンも一緒に学ぶことをお勧めします。
ファクトリーメソッドパターン
編集ファクトリーメソッドパターンは、インスタンスの生成を専門に行うクラスを定義することで、複雑なインスタンスの生成処理を隠蔽するパターンです。
class AnimalFactory def create_animal(type, name) case type when :cat Cat.new(name) when :dog Dog.new(name) end end end class Cat def initialize(name) @name = name end def speak puts "#{@name}がニャーと鳴きました。" end end class Dog def initialize(name) @name = name end def speak puts "#{@name}がワンワン鳴きました。" end end factory = AnimalFactory.new animal1 = factory.create_animal(:cat, "たま") animal1.speak # => たまがニャーと鳴きました。 animal2 = factory.create_animal(:dog, "ポチ") animal2.speak # => ポチがワンワン鳴きました。
シングルトンパターン
編集シングルトンパターンは、インスタンスを1つだけ生成し、それを共有するパターンです。
class SingletonObject private_class_method :new @@instance = nil def self.instance @@instance ||= new end def message puts "Hello, Singleton!" end end singleton1 = SingletonObject.instance singleton1.message # => Hello, Singleton! singleton2 = SingletonObject.instance puts singleton1 == singleton2 # => true
上記のコードは説明のために実装の細部を示しましたが、Rubyにはシングルトンを実装するためのモジュール Singleton
があります。
require 'singleton' class SingletonObject include Singleton def message puts "Hello, Singleton!" end end singleton1 = SingletonObject.instance singleton1.message # => Hello, Singleton! singleton2 = SingletonObject.instance puts singleton1 == singleton2 # => true
Singleton
モジュールは、シングルトンパターンの実装を支援するためのものであり、クラスに include Singleton
を追加することでシングルトンパターンが利用できるようになります。Singleton
モジュールはクラスメソッド instance
を提供し、このメソッドを呼び出すことで唯一のインスタンスを取得できます。また、clone
や dup
メソッドがオーバーライドされており、これによりシングルトンインスタンスのクローンや複製が防がれています。
まとめ
編集この本では、Rubyを使用したオブジェクト指向プログラミングの基本的な概念と使い方について学びました。また、応用的な使い方として、ファクトリーメソッドパターンやシングルトンパターンについても紹介しました。
これらの概念や使い方は、プログラミングにおいて非常に重要なものであり、これらの理解と習得は、プログラミングスキルの向上につながります。
特に、オブジェクト指向プログラミングは、複雑な処理を扱う場合に非常に有用です。オブジェクト指向プログラミングによって、処理をオブジェクトに分割することで、大規模なプログラムの開発が容易になり、保守性や拡張性が向上します。
本書で学んだ内容を実践的に活用し、オブジェクト指向プログラミングのスキルを向上させることをお勧めします。また、本書がプログラミングの初心者でも理解できるように配慮して執筆していますので、プログラミングの初学者にも是非挑戦していただきたいと思います。