ペルシア語

目次 | ペルシア語/文字と発音| 書き方練習1 |



ペルシア語での名称である「فارسی‌」(ファールシー)、日本語での名称である「ペルシア語」、英語での名称である「Persian」は、いずれも現代のイランの一地方であるファールス地方(古名:パールサ)に由来する。

ペルシア語/アルファベット

ペルシア語には歴史的に「پارسی‌」(パールシー)という呼称もあったが、中世に/p/音のないアラビア語の影響により「فارسی‌」(ファールシー)となり、現在は日常的に専ら「ファールシー」が用いられる。

ペルシア語もアラビア語と同様に、右から左に向かって横書きにする。ペルシア語のアルファベットは、32文字からなる。このうち28文字はアラビア語文字である。残りの四つの文字、پ(pe)、چ(che)、ژ(zhe)、گ(gāf)はペルシア語に固有のものである。ペルシア文字では更に、特徴的な字形を持つ 「ك」(kāf / k /)と「ي」(ye / y /)も、シンプルに「ک」と「ی」になっている。

英語などには大文字と小文字があるが、ペルシア語ではこの区別はない。しかし単独で書く場合、語頭に書く場合、語中に書く場合、語尾に書く場合で文字の形が異なる。

例えば、ب(be)と言う文字は、

  • 単独で書けば、ب(be)
  • 語頭に書けば、بَد(悪い:bad)
  • 語中に書けば、خَبَر(情報、ニュース:khabar)
  • 語尾に書けば、شَب(夜:shab)

また、文字によっては後の文字と接続して書かれないものがある。 例えばو(vāv)は、خوب(良い:khūb)のように خ(khe)とو(vāv)は接続するが、و(vāv)と ب(be)は離して書く。 次の7文字は次に来る文字と接続しない:ا(alef)、د(dāl)、ذ(zāl)、ر(re)、ز(ze)、ژ(zhe)、و(vāv)。 ペルシア語の単語は二つ以上の文字からなる。وُ、 وَ(va, o:共に)と言う単語だけが例外である。 آ(ā)、alef の上の ~ は maddeh مدّه と呼び原則として語頭のみに来る。語頭のこの maddeh مدّه は省略できない。

°(sokūn) は子音のみに付く符号で、いかなる母音も持たないことを表す。語尾の子音文字には短母音は原則付かず、sokūn の府号をつけなくてもよい。例:اَسْت(~です:ast)。

短母音 編集

ـَ ファトヘ(fathe)。子音に短母音のaが付く。これは「ア」段の音で表記する。 دَست(手:dast)

ـِ キャスレ(kasre)。子音に短母音のeが付く。これは「エ」段の音で表記する。 شِش(6:shesh)

ـُ ザンメ(zamme)。子音に短母音のoが付く。これは「オ」段の音で表記する。دُرُست (正しい:dorost)

一般にこれらの符号は付けられていない。ただしもともと外国語や間違えやすい単語や正しい発音が簡単でない場合は符号を書くことが望ましい。

長母音 編集

ا : ペルシャ語では長母音のāを表す。子音の後に ا を付ければよい。口を大きく開けて発音する「アー」。نان(ナーン、パン :nān)
و : ペルシャ語では長母音のūを表す。子音の後に و を付ければよい。日本語の「ウー」とほぼ同じ。او(彼、彼女:ū)
ی : ペルシャ語では長母音のīを表す。子音の後に ی を付ければよい。日本語の「イー」とほぼ同じ。بازی(遊び:bāzī)

文字の書き方 編集

文字の名称 単独形 語尾形 語中形

前後の文字に続く

語頭形 短母音 長母音
alef ا ا ـا ا اَ اِ اُ آ او ای
be ب ـب ـبـ بـ بَ بِ بُ با بو بی
pe پ ـپ ـپـ پـ پَ پِ پُ پا پو پی
te ت ـت ـتـ تـ تَ تِ تُ تا تو تی
se ث ـث ـثـ ثـ ثَ ثِ ثُ ثا ثو ثی
jīm ج ـج ـجـ جـ جَ جِ جُ جا جو جی
che چ ـچ ـچـ چـ چَ چِ چُ چا چو چی
he ح ـح ـحـ حـ حَ حِ حُ حا حو حی
khe خ ـخ ـخـ خ خَ خِ خُ خا خو خی
dāl د ـد ـد د دَ دِ دُ دا دو دی
zāl ذ ـذ ـذ ذ دَ دِ دُ دا دو دی
re ر ـر ـر ر رَ رِ رُ را رو ری
ze ز ـز ـز ز زَ زِ زُ زا زو زی
zhe ژ ـژ ـژ ژ ژَ ژِ ژُ ژا ژو ژی
sīn س ـس ـسـ س سَ سِ سُ سا سو سی
shīn ش ـش ـشـ ش شَ شِ شُ شا شو شی
sād ص ـص ـصـ صـ صَ صِ صُ صا صو صی
zād ض ـض ـضـ ضـ ضَ ضِ ضُ ضا ضو ضی
ط ـط ـطـ ط طَ طِ طُ طا طو طی
ظ ـظ ـظـ ظـ ظَ ظِ ظُ ظا ظو ظی
ein ع ـع ـعـ عـ عَ عِ عُ عا عو عی
ghein غ ـغ ـغـ غـ غَ غِ غُ غا غو غی
fe ف ـف ـفـ فـ فَ فِ فُ فا فو فی
qāf ق ـق ـقـ قـ قَ قِ قُ قا قو قی
kāf ک ـک ـکـ کـ کَ کِ کُ کا کو کی
gāf گ ـگ ـگـ گ گَ گِ گُ گا گو گی
lām ل ـل ـلـ لـ لَ لِ لُ لا لو لی
mīm م ـم ـمـ مـ مَ مِ مُ ما مو می
nūn ن ـن ـنـ نـ نَ نِ نُ نا نو نی
vāv و ـو ـو و وَ وِ وُ وا وو وی
he ه ـه ـهـ هـ هَ هِ هُ ها هو هی
ye ی ـی ـیـ یـ یَ یِ یُ یا یو یی

هَمزِه (hamze)ハムゼ 元来アラビア語で、前者では声門閉鎖を表す。ペルシア語では語頭で用いられない。書き方:前と後の文字の発音よって書き方は異なる。هَمزِه(hamze)、ع(ain)とالف(alef)は同じ a, e, o の発音になる。

文字の名称
語尾形 語中形前

前後の文字に続く

語頭形 単独形
ء (همزه) ـئ ـأ‎ ـؤ

質問:soʿāl:سؤال

役人、派遣された人:maʿmūr:مأمور

ـئـ‎

責任者:masʿūl: مَسئول

ئـ‎

長、社帳:rʿīs:رئیس

ء أ

هَمزِه(hamze)の形をした符号は語尾の発音されない ه に付けてezāfe(エザーフェ)を表す。この場合は(ye)と発音される。 خانِهٔ مَن(khāne-ye man:私の 家)

ペルシア語のラテン文字表記法 編集

۱ - sokun

°

短母音(fathe)

َ

短母音(kasre)

ِ

短母音(zamme)

ُ

長母音

ا

長母音

و

長母音

ی

۱ ا

ع

-

ʿ

a

ʿa

e

ʿe

o

ʿo

ā

ʿā

ū

ʿū

ī

ʿī

۲ ب b ba be bo
۳ پ p pa pe po
۴ ت ط t ta te to
۵ ث س ص s sa se so
۶ ج j ja je jo
۷ چ ch cha che cho chā chū chī
۸ ح ه h ha he ho
۹ خ kh kha khe kho khā khū khī
۱۰ د d da de do
۱۱ ذ ز ض ظ z za ze zo
۱۲ ر r ra re ro
۱۳ ژ zh zha zhe zho zhā zhū zhī
۱۴ ش sh sha she sho shā shū shī
۱۵ غ ق q/gh qa/gha qe/ghe qo/gho qā/ghā qū/ghū qī/ghī
۱۶ ف f fa fe fo
۱۷ ک k ka ke ko
۱۸ گ g ga ge go
۱۹ ل l la le lo
۲۰ م m ma me mo
۲۱ ن n na ne no
۲۲ و v

ow 二重母音 ou 二重母音

va ve vo
۲۳ ی y

ey 二重母音 ei 二重母音

ya ye yo

ペルシア語のアルファベットには同音の文字がいくつかある。

  1. ز(ze)とذ(zāl)とض(zād)とظ(zā)は同じ z の音。
  2. س(sīn)とث(se)とص(sād)は同じ s の音。
  3. ت(te)とط(tā)は同じ t の音。
  4. غ(ghein)とق(qāf)は同じ gh の音。
  5. ع(ein)とا(alef)とهَمزِه(hamze)は同じ a, e, o の音。
  6. ه(he)とح(he)は同じ h の音。

同じ音であればどの文字で書き表してもよいとは決してならない。各単語にはそれぞれ歴史的に固定した綴りがある。

二重母音 編集

ペルシア語の二重母音は و ou - ow と ی ei - ey の二種類である。 言語学的に正確な表記は ow, ey だがこのテキストでは黒柳の辞書に従って ou, ei を用いる。

و(vāv)の特別な発音 編集

  1. 二重母音としては ou:نوروز(nourūz:イランの正月、3月21日、春分の日)、چِطور(chetour:いかがですか)、دولَت(doulat:政府)
  2. 前の文字がザンメ(zamme)の発音だと、و(vāv)は発音されない場合もある。تُو(to:君)、دُو(do:2)、پاسپُورت(pāsport:パスポート)、اُتُوبوس(otobūs:バス)、خُودکار(khodkār:ボールペン)、خُوردَن(khordan:食べる)、خُوشمَزِه(khoshmaze:おいしい)
  3. خوا の綴りの場合は و は発音されない。خواهَر(khahar:姉妹)、خوابیدَن(khābīdan:寝る)、خواهِش(khāhesh:頼み、願い)、خواندَن(khāndan:読む)、خواستَن(khāstan:欲しい、頼む、(仮説法現在形と共に)したい)

ی(ye)の特別の発音 編集

  1. 二重母音として(ei):میدان (meidān:広場)、لیلا(leilā:女性の名前)、خیلی(kheilī:とても)、نَخیر(nakheir:いいえ)、کِی(kei:いつ)、صُبح بِخیر (sobh bekheir:おはよう)
  2. もともとはアラビア語の単語で ā の発音をする。使用例は極めて限られている:عیسی(ʿīsā:イエス)、موسی(mūsā:モーセ)、حتّی(hattā:~でさえ)

ه(he)が語尾にくる場合の発音 編集

  1. 黙音の ه(he):語尾の前の母音が e 音の場合は ه(he)は発音しない。خانِه(khāne:家)、سِه (se:3)、چِه(che:どんな)。例外:دِه(deh:村)、مِه(meh:霧)
  2. 語尾の前の母音が e 音以外の場合は ه(he)は発音する。دَه(dah:10)、کوه(kuh:山)、راه(rāh:道、方法、道のり)、نُه(noh:9)。例外:نَه (na:いいえ)

tashdīd 編集

ّش

تَشدید(tashdīd)は子音が二つ重なっていることを示すために用いられる。たとえば ّخَط (khatt:文字)、اَوّل(avval:最初)、مُعَلّم(moʿallem:先生)、حَمّام(hammām:お風呂)

tanvīn 編集

ً(tanvīn)تَنوین もともとはアラビヤ語対格を示す符号であるが、ペルシア語では副詞としてのみ用いられ、(-an)と発音される。 例えば بَعداً (baʿdan:後で)、مَثَلاً(masalan:例えば)

符号 編集

名前 発音 符号
ファトヘ(fathe) Short "a" ـَ
キャスレ(kasre) Short "e" ـِ
ザンメ(zamme) Short "o" ـُ
tanvīn -an اً
tashdīd 子音が二つ重なっている ّ
hamze-ye ezāfe (ye)
符号は語尾の発音されない ه につけて ezāfe(エザーフェ)を表す
هٔ

質問 編集

アラビア語に存在しない4つの単語はどれですか?

پ-ث-ک-ژ
پ-ژ-چ-گ
ث-ک-ر-چ
ج-گ-ز-ث