文中においてどれがメインの用言でどれがその体言であるかを明確にしておかないと表現は多義的となる。たとえば、

lo nanmu prami do

で、意図されている 用言が prami だとする。先立つ nanmu との間には何も無いので、これら二つの語は重語すなわち一種の用言を形成してしまう。そして冠詞 lo がこの用言を一つの体言としてまとめ上げるため、結局この文には中心となる用言が存在しない。と、発話者の意図に沿わないこのような解釈が可能となっている。構文上の多義性に由来する不達や誤読が望まれないものである場合、ロジバンではこれを完全に解決することができる。上の例の場合、 nanmu を prami から隔離しておくことで重語の形成を防げるわけだが、そのように構文要素間の区切を明示する仕組がロジバンには備わっている。代表的なのが cu である:

用言隔離詞 cu CU
lo nanmu cu prami do

これは、文中で左側にある体言をすべて右側の用言から切り離す。複数の体言を左側に寄せる文体を含め、ごく普段から頻用される。体言そのものの境界を示すことででも同等の分離が得られる:

体言終止詞 ku KU
le nanmu ku prami do

ku は左方1つ分の体言の終わりを示す。この例では冠詞で開かれた体言構造を閉じながら用言 prami との境界を現している。用言が取り結ぶ体言だけでなく、制詞に制御される体言の範囲もまたこれによって明示できる。

NU 系( nu, du'u, ka, li'i, mu'e など)による事象・状態の抽象化は kei で閉じられる:

抽象句終止詞 kei KEI
lo nu lo nanmu ku prami do kei cu cfari

kei は冠詞の対象範囲を含めない。よって体言全部を後続の cfari から分離させるには別なもの(ここでは cu )が要る( kei のみだと nu lo nanmu ku prami do と cfari が一つの重語を形成してしまう)。この例では cu や ku で役目をまかなえる kei が省略できる。また、体言と用言とを区切るという目的では cu や ku を使った次の文との間にやはり違いはない:

lo nu lo nanmu ku prami do cu cfari
le nu lo nanmu ku prami do ku cfari

後者では ku が二度登場しているが、構文上の問題はない。同様に前者で ku の代わりに cu が置かれていても(つまり cu が二度登場しても)問題ない。どれを用いるかは話者の好みによる。

もっぱら cu は隔離詞(separator)、 ku/kei など特定の体言構造を閉じるものは終止詞(terminator)と呼ばれる(プログラミング言語における delimiter に相当)。他に be'o や ku'o といった終止詞もあるが、それぞれ「節」と「句」の項で解説されている。

構文上の cu の位置(用言の直左)は、制詞の位置とよく重なる:

lo nanmu pucu prami do

このことから制詞を cu の代わりに用いることができる。制詞は常に何らかの体言を参照(制御)しているため、例文は厳密には次のような構造をしている:

lo nanmu pu [-] ku cu prami do

制詞が用言の左すなわち cu の位置と重複するとき、および文末にあるときにかぎって、この ku は省略できる。別な箇所に置く場合には制詞は ku を必要とする:

pu ku lo nanmu cu prami do
lo nanmu cu prami pu ku do
lo nanmu cu prami do pu [ku]

依然として pu と ku の間には何らかの体言が潜在しており、またそれゆえに ku によるその不明の体言と後続の体言との境界を示さなければならないわけである。

体言が代項詞など単体である場合は範囲が明らかなので区切をあえて示す必要はない:

mi [ku] [cu] prami do [ku]
mi [ku] do [ku] [cu] prami

代項詞が体言の一部でしかない場合にはやはりそのような条件は永びかない:

lo mi mlatu [ku] cu prami lo do gerku [ku]
lo mi mlatu [ku] lo do gerku [ku] cu prami

cu が常に体言と用言の間に来ることから、これを英語における主語と述語との間に見立てて is や are と捉えてしまうという誤解がよくある。

lo ninmu cu melbi
The woman is beautiful.

このように、英語の訳をロジバン文にそのまま当てはめると語数が一致することがあり、このとき is が cu の位置に合致する。しかし is の意味合は用言 melbi に内部化されているものであり、 cu とは関連しない。より的確な英語訳は The woman (separator) is-beautiful である。

語列をグループ化することででも境界を示すことができる:

グループ開始詞 ke KE
グループ終止詞 ke'e KEhE
ta melbi cmalu nixli ckule
かわいく小さな(小ささがかわいい)女の子達の、学校
ta melbi ke cmalu nixli ke'e ckule
かわいい、小さな女の子達の、学校
ta melbi cmalu ke nixli ckule [ke'e]
美しく小さな(小ささが美しい)、女子学校
ko na'e sutra cazdu klama
急がずに、歩いて行きなさい。
ko na'e ke sutra cazdu ke'e klama
早足をせずに、行きなさい。
ko na'e ke sutra cazdu klama [ke'e]
急いで歩いて行く以外のことをしなさい。
la .doraemon. e la .nobitan. onai la .djaian. klama
ドラえもんとのび太、さもなくばジャイアンが、行く。
la .doraemon. e ke la .nobitan. onai la .djaian. [ke'e] klama
ドラえもん、さもなくばのび太とジャイアンが、行く。

このように ke-ke'e は用言だけでなく体言の関係構造を設定することもできる。

範囲を明示することによってだけでなく、語を結びつけることでこれをグループ化して境界を間接的に示すことができる:

小範囲結合詞 bo BO
ta melbi cmalu bo nixli ckule
ta melbi cmalu nixli bo ckule
ko na'e sutra bo cazdu klama
ko na'e sutra bo cazdu bo klama
la .doraemon. e la .nobitan. onaibo la .djaian. klama

以上は先の ke-ke'e を代替したものである。

mi citka na'ebo lo rectu
私は肉以外のものを食べます。

この例では na'e が lo に結びついて「 lo rectu ではない何か」が指されている。 bo を欠くと na'e は用言 citka に係って「私は肉を食べること以外の何かをする」という意味になる。 na'e は NAhE 類であり、同属の no'e や to'e なども同じ原理で bo と併用できる。


二つ以上の用言が共通の体言を持つことができる。もっとも典型的なのは左端の体言である:

do xendo gi'e stace

do は、 gi'e によって論理的に接続されている xendo と stace の共通の x1 である。単一の用言からなる単純な命題部にたいしてこの xendo gi'e stace のような接続用言を中核とするものを重命題部(compound bridi)と呼ぶ。右側の体言を共有させる場合にはこの重命題部の境界を示す必要がある:

命題部境界詞 vau VAU
mi nelci gi'e citka vau ti

vau によって、 nelci gi'e citka の外側に ti があることが示されている。 mi の次の体言なので ti は必然的に x2 となり、 mi と共に nelci と citka の PS を一度に埋めている。 vau を欠くと ti はもっぱら citka の x2 として取り込まれ、 nelci の x2 は空となる。

全ての命題部に vau が一つずつ付随する。上の例でも実は nelci と citka は独自の vau を潜在的に有している。使われているのは nelci gi'e citka というより上位の命題部すなわち重命題部の vau である:

mi nelci [vau] gi'e citka [vau] vau ti

これはつまりこういうことである:

mi nelci [vau] gi'e citka [vau] vau ti
x1 x2

nelci や citka が核となっているゼロ階の単純な命題部の vau には用途が無く、省略されるしかない。

vau で区切られる重命題部の内部に体言を入れることは勿論できる:

mi dunda lo cukta [vau] gi'e lebna lo rupnu [vau] vau do

これはつまりこういうことである:

mi dunda lo cukta [vau] gi'e lebna lo rupnu [vau] vau do
x1 x2 x2 x3

lo cukta は置いても lo rupnu はとくに明示したくないという場合、後者を zo'e (漠然とした「アレ/某」の意)で代用できる。もしくは do に x3 の標識を付けたり各用言の PS を転換して目的の構造を明示する:

mi dunda lo cukta [vau] gi'e lebna [zo'e] [vau] vau fi do =
do te dunda lo cukta [vau] gi'e te lebna [zo'e] [vau] vau mi