電磁石

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結論から言おう。じつは、電流のまわりには、磁石のような「磁力」が、発生しているのである。ただし、電流が小さいと、磁力が小さいので、磁力が、はっきりしないことがある。


 
ぐるぐると、まくと、どうなる? :※ 画像の物は、導線では、ありません。なので、「まき方」だけを、参考にしてください。

電気の作る磁力を強くするには、鉄の棒(ぼう)に、導線をクルクルと何重にも、まきつけます。巻きつけられる金属の棒は、鉄のような磁気をおびる金属でないと、ダメです。ガラスは金属ではありませんし、アルミニウムは磁気を帯びていません。

このように、磁化をすることのできる金属のぼうに、導線をまきつけたものを、コイルと言います。

このコイルは、電気を流すと、磁石のように磁力を発生するので、電磁石(でんじしゃく)といいます。
電磁石の性質

電磁石が磁力を発生するのは、電気を流しているあいだだけです。回路のスイッチを切ったり、電池をはずしたりして、電気を止めると、電磁石は、磁力をもたなくなります。

電磁石にも、N極と、S極があります。電磁石でも、同じ極どうしは、反発し合います。電磁石でも、違う極どうしは、引きつけ合います。


電磁石を強くする

電磁石のコイルは、鉄の棒が無くても、電気を流せば、コイルは電磁石になります。ですが、鉄の棒が入ってないと、磁力は弱くなります。なので、ふつうの電磁石は、鉄の棒を入れていることが多いです。

電磁石のコイルにいれる鉄の棒のことを、(しん)といいます。芯を入れると、電磁石が強くなります。

コイルの、導線をまく回数をふやしたら、どうなるでしょうか。 50回だけ導線をまいた電磁石と、100回だけ導線をまいた電磁石では、どちらが、磁力が強いでしょうか。

じつは,導線をまいた回数が多くなるほど、電磁石の磁力は、強くなります。 電磁石のコイルは、導線の巻き数が多くなるほど、電磁石の磁力も、つよくなります。


また、電流が大きくなるほど、電磁石の磁力も大きくなります。たとえば、ふたつの乾電池を直列つなぎにして、1個の電磁石につなげると、1個の乾電池しか使っていない時よりも、電磁石の磁力は強くなります。


電磁石の磁力の向き

電磁石の、磁力の向きは、じつは、電流の方向にたいして、決まっています。


磁力線

磁場の向きが分かるように図示しよう。磁石の作る磁場の方向は、砂鉄の粉末を磁石に、ちりばめて、ふりかけることで観察できる。

これを図示すると、下図のようになる。

 
磁力線の図示

このような、磁力の向きを含めた、磁力の図を 磁力線 といいます。磁力線の向きの決め方は、磁石のN極から磁力線が出て、S極に磁力線が吸収されると、決められています。棒磁石では、磁力の発生源(はっせいげん)となる場所が、棒磁石の(はし)に集中しています。そこで、棒磁石のはじっこの、先端(せんたん)のあたりを磁極といいます。

磁力線の向きを、どうやって確認するかというと、方位磁針を用いればいいのです。その場所での、方位磁針のN極の向きが、その場所での磁力線の向きになります。

電磁石の磁力線の書き方を説明する前に、まず棒磁石の磁力線の書き方を説明しましょう。 永久磁石が作る磁力線を図に描く場合は、N極から磁力線が出て、S極で磁力線が吸収されるように書きます。磁力線は、磁力の向きを図示したものなので、磁極以外の場所では、磁力線が分岐することはありません。N極以外の場所では磁力線の本数が増えません。S極以外の場所で磁力線が消えません。

また、磁力線が交わったりしてはいけないし、枝分かれもしてはいけません。もし、交わらして磁力線を書くと、その場所での方位磁針の向きが2通りあることになり、おかしな図になってしまいます。

  • 電流の作る磁界
 

電流は、その周囲に磁界を作る。これは方位磁針を電気回路の近くに置くことで確認できる。

右ねじの法則

まず、電流の向きの決め方を、復習します。プラス極から電流は流れでて、電流は回路を通って、さいごはマイナス極にもどるのでした。

導線のまっすぐな部分の電流がつくる磁力の向きは、じつは、電流の向きに右ねじを進めるときに、右ねじを回す向きと同じです。この電流の向きと磁力の向きとの関係を 右ねじの法則 といいます。

コイルのような曲がった部分を持つ回路での、磁界の向きも、コイルの各部分の電流が右ねじの法則に従っています。

コイルでの、磁力の向きは、方位磁針で確認できます。

 
コイルでの、磁力の向きの図。
電流が、右向きの場合の図です。赤い曲線が磁力の向き。コイルの線にそって、手で右ねじを回す動きをして確認すると、たしかに、磁力の向きは、赤い線の向きになります。
電磁誘導と誘導電流
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コイルを置き、その回りで磁石を動かす実験を行なってみる。ただし、コイルの両端には電圧計を接続し、コイルに流れる電流の電圧を測定するものとする。この実験では、コイルの回りで磁石を動かしたときに、コイルの導線に電流が流れるという結果が得られるはずである。流れる電流の大きさは、磁石を動かす速度に比例し、また、磁石の作りだす磁界の強さに比例する。例えコイルの中を磁石からの磁界が横切っていても、磁石が静止しているときには、コイルの中を電流が流れることはない。電流が生じるのは磁石を動かしたときだけである。


  • 注意

磁石を動かして生じた電流の向きは、その電流によってコイルの回りに生じる磁界が磁石によって生じた磁界を打ち消すように電流が流れる。

導線のある場所の磁力が弱まると、その磁界の変化を妨げる方向に電流が流れる。たとえば、仮にコイルに永久磁石を近づけた時に右回りに電流が流れたとしよう。すると、このコイルから永久磁石を遠ざけると、今度は反対向きである左回りに電流が流れることになるのである。このような現象を 電磁誘導(でんじゆうどう)と呼び、磁石の動きによって生じた電流を 誘導電流 と呼ぶ。

電磁誘導で電流が流れるのは、磁力が変化している間のみである。永久磁石をコイルから遠いところからコイルに近づけたら、その磁石を動かしている間は電流が流れる。しかし、近づけおわった状態で磁石を固定していても誘導電流は流れない。

誘導電流の向きは、誘導電流の作る磁界が、磁石の場所の変化による磁界の変化を妨げる向きである。たとえば磁石を近づけた場合は、誘導電流の磁界の向きは、その磁石の磁力に反発する向きであり、実際に磁石は反発力を受け、回路から磁石の移動を妨害される力を受ける。 同様に、磁石を遠ざけている間の誘導電流の向きは、磁力を強める向きであり、実際に磁石は吸引力を受け、回路から磁石の移動を妨害される力を受ける。

このように、磁界が変化している間のみ、誘導電流が流れる。また、その誘導電流の向きは磁界の変化を妨げる向きである。 これを レンツの法則 という。

現在の火力発電や水力発電の発電所でも同じ原理を用いて発電を行なっている。火力発電では磁界の中で蒸気を用いてタービンをまわし、それによって誘導電流を発生させるのである。