漢文『春暁』。返り点。

春暁(しゅんぎょう)      孟浩然(もう こうねん)

> 春眠不覚暁   春眠(しゅんみん) 暁(あかつき)を覚えず(おぼえず)、

処処聞啼鳥   処処啼鳥(しょしょていちょう)を聞く、

夜来風雨声   夜来風雨(やらいふうう)の声(こえ)、

花落知多少</big   花(はな)落つること(おつること)知る(しる)多少(たしょう)。

解説

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漢文(かんぶん)とは、昔の中国の文章。漢文の原文は、漢字のみ。しかし、漢字だけでは、われわれ日本人が読みづらいので、古くから日本では、送り仮名をつけて読んでいた。「春眠(しゅんみん)暁(あかつき)を覚えず(おぼえず)、」といった読み方は日本での読み方であり、べつに中国人が、こう読んでいるわけではない。また、日本語での語順と、漢文の語順はちがっている。文法が、中国語と日本語ではちがうので、語順がちがってくるのである。

形式

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  • 要点

四句からなる詩を絶句(ぜっく)という。いっぽう、八句からなる詩を律詩(りっし)という。


上記の、孟浩然の「春暁」は、絶句である。(数えれば4行なので、絶句であると分かる。)


基本的に、縦書きにしたときに4行なら、絶句である。縦書きにしたときに8行なら、律詩である。


絶句のうち、一句の字数が五字のものを五言絶句(ごごんぜっく)といい、一句の字数が七字のものを七言絶句(しちごんぜっく)という。

『春暁』の形式は一句の字数は五字で四句からなるので、五言絶句である。


  • 解説

「絶句」と「律詩」のどちらが4行かを覚えるのが難しいので、「起承転結」(きしょう てんけつ)という言葉を知ると良いでしょう。

起承転結は、漢詩の主な形式のひとつです。

起句、承句、転句、結句、の4句からなります。

上記の「春暁」の場合。

起句 = 春眠不覚暁
承句 = 処処聞啼鳥
転句 = 夜来風雨声
結句 = 花落知多少

です。

3句の「転句」で、ガラっと作中の内容が変わったり、情景が変わったりします。

たとえば、起句では「春眠」といって、あたたあかな春のうたたねでしょうから、おそらく朝や昼間、承句でも、鳥が鳴いているので、まあ朝や昼間でしょう。

なのに転句で、「夜来」となっていきなり夜中になるし、しかも「風雨」とか言って、なんだか、あたたかそうではない。


絶句にも律詩にも起承転結は使いますが、特に絶句は、起承転結の形式を使うものが多い。