本文編集

 

書き下し文編集

国破れて 山河在り (くにやぶれて さんがあり)

城春にして 草木深し (しろはるにして そうもくふかし)

時に感じては 花にも涙を濺ぎ (ときにかんじては はなにもなみだをそそぎ)

別れを恨んでは 鳥にも心を驚かす (わかれをうらんでは とりにもこころをおどろかす)

烽火 三月に連なり (ほうか さんげつにつらなり)

家書 万金に抵る (かしょ ばんきんにあたる)

白頭掻けば 更に短く (はくとうかけば さらにみじかく)

渾て簪に 勝えざらんと欲す (すべてしんに たえざらんとほっす)

口語訳編集

国の都の長安は戦争で破壊されてしまったが、山や河は昔のままである。

町にも春が来て、草木は深く生い茂っている。

このような戦乱の時世を思えば、花を見ても涙が落ちる。

家族との別れを悲しんでは、鳥の鳴き声を聞いても心が痛む。

戦乱ののろし火は、もう何ヶ月も続いていて、家族からの手紙は万金にも値(「あたい」)する(ほど貴重である)。

(悲しみのあまり頭を掻いて)白髪頭を掻けば、(髪が抜けるので)髪は更に薄くなって、簪(かんざし)も挿せなく(させなく)なりそうだ。


  • 語注など
春望 ・・・ 春の眺め(ながめ)。
城 ・・・ 城壁で囲まれた都市。この作品では長安のこと。
簪(しん) ・・・ かんむりをとめるピンのこと。

形式編集

四句からなる詩を絶句(ぜっく)といい、八句からなる詩を律詩(りっし)という。

『春望』の形式は律詩。(八句からなるので。)

律詩のうち、一句の字数が五字のものを五言律詩(ごごんりっし)といい、一句の字数が七字のものを七言律詩(しちごんりっし)という。

『春望』の形式は五言律詩。