木材 編集

 
年輪が27本あるイチイの幹の断面。外側の色が薄い「辺材」、内側の色が濃い「心材」。
 
柾目(まさめ)と板目(いため)。Aが柾目、Bが板目となる。

木材は、木から板を切り出すときの切り出しかたによって、 まさ目材(まさめざい) と 板目材(いためざい) に分かれる。    


 
BはAの10倍の強さ。(Bの方向にしたほうが強くなる。)

木材は、方向によって強さが異なる。幹の方向に年輪がまっすぐスジになり、その方向が 繊維方向(せんいほうこう) である。 木材は繊維方向に沿って割れやすい。 繊維方向に対しての方向で、強さが異なる。

合板では、1枚ずつ、繊維方向が直交するように、交互に薄い板を重ねて、弱い方向を作らない工夫がなされている。合板は奇数枚の板を接着剤で張り合わせた板材である。

収縮
木から切り出したばかりの木材は水分を含んでいる。
木材は、乾燥によって収縮する。この際、収縮率が場所によって異なるので、曲がる。
板目材は、まさ目材よりも収縮変形しやすい。
乾燥した木材は、幹での外側である 木表(きおもて) の側に、そりかえる。
いっぽう、 幹の内側に近いほうは、木裏(きうら) という。
針葉樹と広葉樹
一般に、針葉樹(しんようじゅ、conifer)は軽くて、やわらかい。広葉樹(こうようじゅ、broad-leaved tree)は、かたい。広葉樹と針葉樹は密度が異なり、広葉樹は密度が高い。


  • 木材の種類
 
アガチスの樹木。なお、アガチスは針葉樹でもある。(板材の画像が見つからないので、この画像で代用します。)
針葉樹
スギ :やわらかいので加工しやすい。
ヒノキ :腐りにくい。スギよりも、かたい。
アガチス :東南アジアなどが原産。(日本では輸入材。)やわらかいので加工しやすい。
広葉樹
カツラ :
ケヤキ :かたい。
 
合板
合板(ごうはん)
合板(ごうはん、plywood)では、1枚ずつ、繊維方向が直交するように、交互に薄い板である単板を重ねて、弱い方向を作らない工夫がなされている。合板は奇数枚の板を接着剤で張り合わせた板材である。


集成材(しゅうせいざい)
集成材(しゅうせいざい、Laminated wood)とは、木材の節や割れなどを取り除いた複数の木材を、繊維方向を合わせて再構成し接着した板材である。節がないため扱いやすく、無垢材と比較して安価に大きな板材ができる。木目を見ると、複数の木材片が組合わせられていることがわかる。
パーティクルボード
 
パーティクルボード
木材の小片(チップと呼ばれる)を接着剤で高温圧着して成形した木材をパーティクルボード(Particle board)という。
ファイバーボード
木材の繊維を接着剤で固めて成型した木材をファイバーボード(Fiber Board)という。小片を接着したパーティクルボードと比較して密度が高く均質で、通常の木材が持つ異方性(繊維方向による性質の違い)がほとんどない。中程度の密度のファイバーボードはMDF(Mid Density Fiber Board)と呼ばれる。

金属 編集

 
展性と延性の説明図

展性(てんせい、malleability)とは、圧縮力などによって素材を板状に加工しようとする際に、素材が破断せずに薄い板に広げることができる性質である。 塑性(そせい)の一種でもある。

延性(えんせい、ductility)とは、引っ張る力などの外力によって素材を細く引き伸ばせる性質である。塑性の一種でもある。 延性の例は、ゴムである。金属でいうと、軟鋼、アルミ合金、銅合金が延性に富んだ材料である。 延性に富む材料が必ずしも展性に富むとは限らない。



 
弾性と塑性の説明図。弾性(だんせい)は加えられた力が小さい場合には、元にもどる性質。塑性(そせい)は、加えられた力が大きすぎると、元通りには もどらない性質。
  • 塑性変形(そせい へんけい)

金属材料はある程度の荷重までなら、変形しても荷重を取り除けば元に戻る。このような性質を 弾性(だんせい,elastic) という。しかし、限度以上の荷重を加えると、力を取り除いても元には戻らない。このような性質を 塑性(そせい、plastic) という。

  • 加工硬化

加工により変形をした金属材料は、より硬くなる。この現象を 加工硬化(かこう こうか、work hardning) という。 この現象を利用した加工法として、たとえば鍛造(たんぞう、意味は カナヅチなどで叩くこと。)や、ショットピーニングによる硬化がある。 加工硬化の結果、硬さは増すが靭性(じんせい、toughness)は低下する。

  • 合金

合金(ごうきん、alloy、アロイ)とは、1種類の金属に別の元素を、望ましい性質を得る目的で意図的に添加し、材料同士の融合が分子ほどの大きさで考えた場合に、ほぼ材料均一に混和して出来たものである。 合金のイメージとしては青銅や炭素鋼などを考えれば良い。

いっぽう、逆に、合金で無い物体の例を挙げる。

  • 鉄鉱石などのような自然物は、たとえ金属が含まれていても、通常は、合金とは呼ばない。
  • 単に鉄板に溶接で、銅などの異金属を溶接したものは、合金とは呼ばない。
  • 鉄粉や銅粉やアルミニウム粉などを混合したものは、合金とは呼ばない。
  • 高純度の金属を得ようとしたが精製が不完全な結果として、異物が混合してる金属材料も、通常は合金とは呼ばない。
  • 炭素鋼

純度が、ほぼ約100%の純鉄Feに、添加物として炭素Cを混ぜこませて溶かしてから冷却して固めた金属材料を炭素鋼(たんそこう、carbon steel)という。 炭素鋼の製法の大まかな原理は、製鉄を行うときに木炭などと反応させて炭素を混合させる方法である。  工業的には炭素濃度が0.02%以上2.1%以下の程度のものを炭素鋼という。炭素濃度が、ある濃度までなら、鋼中の炭素濃度が高くなるほど鋼は硬くなり、電気抵抗も上昇する。

工業的には (こう、steel、スティール) とは炭素C濃度が 0.02% < C < 2.1% の鉄のことである。

  • 焼入れ

俗に、鋼を真っ赤に熱して、これを水や油の中に入れて急速に冷却する処置を 焼入れ(やきいれ、quenching ) という。「焼入れ」と文字だけで言うと、なんだか熱するだけみたいだが、実際には、赤熱するぐらいまで熱した後に、「冷却」もするのである。

さて、焼入れによって炭素鋼は硬さを増す。しかし純鉄は焼入れをしても、硬くならない。 このように、炭素原子のような添加した原子が、金属の焼入れによる硬化には必須なのである。


つまり、鋼は炭素の含有率により、焼入れなどの熱処理の結果が変わる。 なので、鋼の分類には、炭素濃度による分類がよく用いられる。

鋼の中の炭素および他の合金成分の量が少ないと、鋼は やわらかくなり、比較的に軟らかい鋼を 軟鋼(なんこう) という。 炭素量および他の合金成分が多いと、鋼は かたくなるので、このような、かたい鋼を 硬鋼(こうこう) という。

  • マルテンサイト(※ 範囲外)

なぜ、炭素を ふくんでないと、焼入れで かたくならないのだろうか。 焼入れで硬くなる理由は、じつは、金属結晶内での、炭素の過飽和(かほうわ)なのである。鉄は高温に赤く熱せられた状態と、常温の状態とでは結晶構造が、ちがうのである。結晶構造によって炭素の溶け方はちがうのである。赤熱した状態の炭素鋼から、急激に冷却すると、炭素が結晶にふくまれたまま、結晶が冷却さえて、過飽和の結晶構造へと変わる。 この急冷によって炭素が過飽和した炭素鋼のことを マルテンサイト鋼(マルテンサイトこう、martensite) という。 したがって、炭素がないと、過飽和の起きようがないので、焼入れしても硬くならない。また急冷でなく、ゆるやかな徐冷(じょれい)だと、結晶構造の変化がゆっくりなので、炭素の移動がおいつくので、過飽和が起きず、この徐冷のばあいも、かたくならない。

  • 焼入れしただけの鋼は、硬い(「硬い」=「くぼみが、つきにくい。」と思って良い。)が、延性がなく脆い。(「脆い」=「割れやすい」と思って良い。)

このように、硬さと、「丈夫さ」は、異なる(ことなる)概念である。硬さの定義には数種類がある。 定義によっては「硬さ」とは傷の付きにくさ(「モース硬度」という。)だったりする。 あるいは別の定義で、「硬さ」とは、他の材料を押し込んだ時の窪み(くぼみ)の付きにくさ(「ロックウェル硬さ」など。)だったりする。 どの定義の「硬さ」にせよ、「硬い」からといっても、丈夫とは限らない。

さて、焼入れしただけの炭素鋼は、硬い(かたい)が脆い(もろい)のであった。

  • 焼戻し(やきもどし)

鋼を焼入れのまま使うことはまれであり、ふつうは 焼戻し(やきもどし、tempering) という加熱処理をくわえて、ねばり強さである 靭性(じんせい) を与える。焼戻しの温度は、焼き入れよりも低い温度を加える。 焼戻しの温度は、材料によっても異なるが、高温焼戻し(こうおんやきもどし)では、一般的に500℃から680℃である。 低温焼戻し(ていおんやきもどし)では、150℃から200℃である。

焼戻しによって、鋼の硬さは少し下がるが、かわりに脆さが減って、鋼が粘り強くなる。

  • 焼戻し脆性(やきもどしぜいせい)

300℃ちかくの中間の温度でやきもどすと、もろくなることが多く、この温度はさけなければならない。この中間温度の焼戻しでもろくなる現象を 焼戻し脆性(やきもどしぜいせい、temper embrittlement) という。

製鉄 編集

 
高炉プロセスの概略図。(画像の文字はドイツ語)
Trocken -und Vorwärmzone:乾燥および予熱
Reductionzone :還元の領域 。 Kohlungzone :浸炭の領域
Schmelzzone :融解の領域 。 
Roheisen :銑鉄
schlacke :スラグ

Erz :鉱石 。  koks :コークス 。 zuschläge :追加物

Gichtgas :高炉ガス
 
スペイン、セスタオ (Sestao) の高炉

鉄の原料は鉄鉱石(てっこうせき、iron ores)です。製鉄会社の高炉で、鉄鉱石を溶かし、鉄や鋼が作られます。

  • 高炉(こうろ)

鉄をつくるには、鉄鉱石から、製鉄所にある高炉(こうろ)で鉄を溶かします。高炉の高さは100m(メートル)以上もあります。高炉で溶かした鉄が、銑鉄(せんてつ、pig iron)です。

なお、高炉の内側には、耐火性のレンガが内貼り(うちばり)してあります。このレンガによって、高炉は、溶けた熱の高温に耐えられるようになっています。

鉄鉱石は、酸化していて、さびています。鉄鉱石を溶かす時に、さびをとるため、炭素をふくんでいる石炭をむしやきにしたコークス (ドイツ語:Koks) を加えています。コークス中の炭素と、鉄鉱石とが反応します。つまり還元(かんげん)反応です。酸化の反対の反応を、つまり酸化した物質から酸素が失われる反応を還元(かんげん、reduction)と言います。

反応熱で、高炉中は高温になり、鉄が溶けます。

銑鉄は、高炉の中で下に液状になって、たまり、炉の下のほうから取り出されます。

この炭素が鉄に多くまざると、鉄はかたくなり、もろくなる。銑鉄には炭素が多くあるので、銑鉄は、かたくてもろいです。銑鉄に、ふくまれる炭素の濃度は、だいたい4%から5%まで、です。この炭素の濃度だと、銑鉄が、やや低い温度で溶けやすくなるので、結果的に、銑鉄の濃度が、こうなります。

不純物は、酸素の他にも、ふくまれてるので、コークスの他に、石灰石(せっかいせき)を加えています。


  • 転炉(てんろ)

鋼(はがね)とは、銑鉄を転炉(てんろ)という炉に送り、転炉で酸素(さんそ)を吹き込むことで、炭素を燃焼(ねんしょう)させて減らし(へらし)、ちょうどいいぐあいにまで炭素を減らすことで、丈夫(じょうぶ)な鋼(はがね)に、なります。ねばりが ありながら、しかも かたくなるように、炭素の量を調節した鉄です。鋼にふくまれる炭素の量が、どのくらいかと言うと、0.02% から 2.1%までの炭素濃度です。


転炉のあと、さらに圧延機におくられ、板のかたちの鋼板(こうばん)や、棒のかたちの棒材(ぼうざい)などへと、加工されます。


鉄や鋼をあわせて、鉄鋼(てっこう)と、よびます。 鉄鋼を生産している産業を鉄鋼業(てっこうぎょう)と言います。

なお、ステンレス鋼(ステンレスこう、Stainless steel)とは、鋼(はがね)にニッケルやクロムを加えた合金です。


アルミニウムをつくったり、銅をつくったりなど、鉄鋼以外の金属を生産するのは、金属工業と言います。アルミや銅の生産は、鉄鋼業とは言いません。

編集

銅(どう)は、鉄と比べて酸化されにくい。天然でも純度が高く自然銅として産出する。電気伝導性および熱伝導性が大きい。

合金 編集

 
しんちゅう(黄銅)の水差し。

合金は、なにも鉄系の合金だけに限らない。鉄系の以外の合金としては、たとえば銅合金やアルミ合金などもある。

  • 黄銅(おうどう、brass、ブラス)

黄銅は銅Cuと亜鉛Znの合金であり、CuにZnを8%~50%加えた合金である。(黄銅は真鍮(しんちゅう)とも呼ばれる。 単体の銅のときよりも硬くなる。色は黄色である。 黄銅を英語で“brass”という。音楽用語の「ブラスバンド」の「ブラス」とは、黄銅のことである。


銅の合金は、黄銅の他にもある。たとえば青銅や白銅などがある。青銅について示す。

  • 青銅(せいどう、bronze、ブロンズ)

青銅(bronze)は銅Cuと すずSnの合金である。錆び(さび)が青い。 単体の銅のときよりも硬くなる。砲金(ほうきん、gun metal、ガンメタル)とも呼ばれる。

     
黄銅(金管楽器) 青銅(ブロンズ像) 白銅(100円玉)

鋳鉄 編集

鋳鉄(ちゅうてつ、cast iron)は、鉄と炭素の合金のうち、炭素 Cを濃度2.14%〜6.7%を含む合金である。あるいはその合金組成をベースにケイ素Si (1.0%〜3.0%)やマンガンMn (0.1%〜0.9%)などを少量含む鉄 Feの合金である。 なお、炭素濃度が1.0%以下の鋼を鋳造したものは、鋳鋼(ちゅうこう、steel casting)と言い、鋳鉄とは区別する。 炭素Cの添加の目的は、融点を下げることが主な目的である。

(合金の融点は、純物質の融点とは異なる。正確な説明は大学レベルになり、中学レベルを大きく超える。中学の段階では、鋳鉄の融点の結果のみを知っていれば良い。)

鋳鉄は、鋼よりも低温度で溶けるため、鉄製品の鋳造(溶融させた金属を型に流し込み製造するプロセス)に用いられる。鋼に比べて、展性や延性が少ないので、伸びがなく硬くて脆い(もろい)。

ステンレス鋼 編集

 
ステンレス鋼のソースボート(肉汁ボート)
  • クロム鋼(クロムこう)

鉄Feに、クロムCrを加えると、酸化に対する耐食性が増す。なぜなら、金属の表面に、酸素との化学反応をしづらい「不動態皮膜」(ふどうたい ひまく)が作られ、この不動態皮膜が保護膜となり、酸化の内部への進行を妨げるためである。

このような鉄とクロムの合金をステンレス鋼(ステンレスこう、stainless steel)という。なお、俗には、「ステンレス」と略されることが多いが、正しくは「ステンレス鋼」というふうに「鋼」まで言うのが正確な呼び方である。「ステンレス」の英語の“stainless”というのは、サビ(stain)が無い(less)という意味であり、性質を表した形容的表現であって、材質名では無い。


ステンレス鋼の耐蝕性については、硝酸 HNO3 や硫酸 H2SO4 といった酸化性の酸に対する耐食性は、クロム Cr 添加で向上する。しかし、塩酸 HCl などの非酸化性の酸に対しては効果が無い。 Crはステンレス鋼の主要の添加元素であり、ステンレス鋼には不可欠の成分である。

これが、いわゆる、クロム鋼(クロムこう)である。

  • ニッケルクロム鋼

ステンレス鋼に、クロムCrの他に、さらにニッケルNiを加えると、塩酸などの非酸化性の酸に対しても耐食性を得る。 ステンレス鋼にニッケルを加えることの多い理由の一つが、非酸化性の酸に対する耐蝕性を向上させる目的である。これが、いわゆる、ニッケルクロム鋼(にっけるくろむこう、Nickel Chromium Steels)である。

プラスチック 編集

熱可塑性と熱硬化性 編集

プラスチックの種類のうち、高温に熱すると柔らかくなり、冷やすとかたくなるプラスチックを熱可塑性プラスチック(ねつかそせいプラスチック)という。


いっぽう、別の種類のプラスチックとして、加熱しても軟化せず、加熱によってかたくなり、また、冷やしても軟化しないプラスチックを熱硬化性プラスチック(ねつこうかせいプラスチック)という。 プラスチックのことを樹脂(じゅし)あるいは合成樹脂(ごうせいじゅし)とも言う。

いろいろなプラスチック 編集

  • ポリエチレン
略称はPE 。吸水性がない。耐薬品性は良い。熱可塑性樹脂である。
  • ポリプロピレン

熱可塑性である。ポリエチレンより硬い。耐薬品性は高い。

 
ポリプロピレン製の部品
 
プロピレン
 
ポリプロピレン
  • ポリスチレン
略称はPS 。熱可塑性。緩衝材として用いられる発泡スチロールとは、ポリスチレンを発泡させたものである。
 
ポリスチレンの化学構造
  • ポリ塩化ビニル
 
ポリ塩化ビニル製パイプ
略称はPVC 。他のプラスチックと比べて、非常に硬い。燃やすと有害なガスが発生するので注意が必要である。耐薬品性が高い。

純粋なものは、光によって化学変化をしてしまい塩素が除かれてしまうので、遮光のため顔料を加えてある。

水道管などに用いられる。熱可塑性である。

 
ポリ塩化ビニル合成の化学反応式
  • ポリメタクリル酸メチル
 
厚さ60cmのアクリルガラスを使用した水槽(沖縄美ら海水族館)。※ ポリメタクリル酸メチルかどうかは未確認。

ポリメチルメタクリレート(polymethyl methacrylate)ともいう。略称は PMMA である。一般にいう「アクリル樹脂」とは、たいてい、これのことである。 透明度が高い。光学レンズに用いられる。有機ガラスと呼ばれる。プラスチック製のガラス材料として用いられる。 溶媒に溶けやすく、耐薬品性は良くない。 熱可塑性である。


(※ 中学では範囲外: )いちぶの水族館の水槽のガラスにも使われている素材も、このポリメタクリル酸メチルである、と考えられている。(※ 2017年の大学入試センター試験の『化学』追試験の第5問の問2の解答で確認。)
※ 工業高校の検定教科書『工業材料 2』(平成6年3月25日 検定版、平成16年発行) でも、ポリメチルメタクリレートのアクリル板がガラスの代わりとして、水槽によく使われているという記述を確認(その検定教科書ではポリメチルメタクルレートの節で、アクリル板がガラスの代わりに水槽で使われていると説明している)。


  • ポリエチレンテレフタラート

略称はPETである。清涼飲料の容器などに用いられるペットボトルの「ペット」(PET)とは、このポリエチレンテレフタラート(英: polyethylene terephthalate)のことである。 透明である。熱可塑性である。

 
ペットボトル容器(画像の左側)の例。右上の試験官のような形のものを金型で圧延して、ボトルの形にしている。
 
PETの合成法
 
テレフタル酸
  • ポリカーボネート

衝撃に強い。熱にも強い。透明性を持つ。耐薬品性は、あまり良くない。熱可塑性である。(英: polycarbonate)。

 
CDやDVDはポリカーボネート製である。
  • フェノール樹脂
 
フェノール樹脂 3次元網目構造

略称はPF。耐熱性に優れる。

 
フェノール樹脂の一種の、ベークライト樹脂のボタン
  • 尿素樹脂

ユリア樹脂ともいう。略称はUFである。熱硬化性。透明で、また着色性が良い。 酸およびアルカリに弱い。 用途は装飾品や電気器具、食器などに用いられる。

 
尿素樹脂から作られた製品。
 
尿素樹脂

構造の工夫 編集

向きによる曲げにくさ 編集

同じ断面の部材でも、向きによって曲げにくさが違う。

 
向きによる曲げにくさの違い

図の場合、Aを基準とすると、Bのように幅が2倍になると、曲げにくさはAの2倍になる。Cのように厚さが2倍になると、もとのAの4倍になる。 BとCは同じ断面形状だが、向きがちがうことによって、Bよりも、Cのほうが2倍まげにくい。


すじかい 編集

 
すじかいと接合
 
筋かい(すじかい)による補強。

建築構造などでは、4角形の部分には、筋交い(すじかい)により、三角形の構造を作ることで、平行四辺形に変形をしないようにしている。

もし数学で、三角形の合同条件などを習っていれば、思い出そう。三辺の長さが決まれば、三角形の形は、1通りである。 いっぽう、四角形の場合は4辺の長さが決まっただけでは、それが長方形なのか平行四辺形なのかは決まらない。筋交い(すじかい)のない4角形の構造は平行四辺形に変形してしまう。

断面形状の工夫 編集

断面形状の加工の工夫 編集

 
板金などを強くする曲げ

形鋼 編集

 
I型断面を持つ梁が有利となる曲げの模式図。
 
I型断面を持つ梁の利点を発揮できない方向の曲げの模式図。

曲げの方向に厚さが厚いほど、曲げにくくなる。形鋼では、薄くなると曲げられやすくなってしまう。どの方向からの曲げにも、耐えられるように、断面の形を工夫して、厚さの薄い方向が出ないように工夫してある。 形鋼にはH形、I形、山形などがある。


※ 「トレードオフ」という発想 編集

※ 令和3年度から、トレード・オフの概念が中学技術に加わる予定です。(開隆堂のサイトの動画に記載あり)
なお、「トレード・オフ」は英語で trade-offs である[1]

材料にかぎった事ではないが、一般に、なんの負担もなく、すべての長所を両立することはできない。


たとえば、安全のために強度を高めようとして部材を大きく太く(ふとく)すると、そのぶん、重量が増す。

自動車などの乗り物の場合、重量の増すことは、燃費などがそのぶん、悪化する可能性もある。


他の例なら、

たとえば、プラスチックは一般にやわらかい物が多いが、そのぶん、弱い。

いっぽう、金属は硬いが、そのぶん、柔軟さは無い。

この金属やプラスチックのように、長所そのものが見ようによっては短所にもなる事もある。

材料は、けっして人間の都合に合わせてはくれない。

つまり、理想の材料なんてものは無い。(しあわせの青い鳥は居ない)


言葉だけなら理想ばかりを並べて「人間の都合にあわせて硬くなったり柔らかくなったりして、軽くて丈夫で、耐久性もあって耐食性もあって寿命が長い材料だけど、加工しやすくて、値段も安く、(以下略)・・・」とか妄想の理想(?)を書くことはできても、残念ながら、まったくそういう材料は実在はしない。

(言葉だけなら「世界はオレのもの」と書けても、現実はそうならないのと同様。)


金属とプラスチックのどちらが優秀かを考えても、まったく不毛(ふもう)である。

ともかく設計では、その製品の目的に合わせて、適切な材料を選択する必要がある。


プラスチック繊維をもちいた衣服の話題はよく聞くが、いっぽう、金属線を繊維としてもちいた衣服の話題は、まず聞かない。(戦国時代の鎖かたびらではあるまいし、いまさらそんな金属の服には、ふつうは価値が無い。)

いっぽう、ハサミの刃の部分は通常、金属、それも鉄である。


金属もプラスチックも、それぞれ、適材適所(てきざい てきしょ)がある。材料はまさに、適材適所で使い分けることが必要である。


さて、社会科の話題になるが、国家予算や都道府県などの予算に限りがある以上、すべての分野に莫大な投資をすることはできない。


たとえば、仮に国が、新薬の開発への投資を増やそうと思ったら、そのぶん税金をあげるか、もしくは他の分野の予算を減らすことになる。

新薬の投資のために、たとえば高齢者医療への給付金が減らされるかもしれない。あるいは、公営の病院の補助金が減るかもしれない。(税金に限りがある以上、どこかを減らすことになる。)


このように、財政などにおいては、なにかの予算を増やそうと思ったら、他の何かの予算を減らすことになる。

こういうのを社会科の分野では「トレード・オフ」(trade off)という。(中学では習わないが、高校または大学で習うだろう。)


さて、工業の設計の話題に戻る。

工業においても、設計のさい、さまざまな制約がある。会社などから与えられる予算の制約もあれば、上述した重量と強度の問題のような物理的な条件の制約もある。材料の特性の違いもある。

こういった、さまざな制約にもとづくトレード・オフのようなものを考えることで、(妄想にとらわれないで、)設計者は現実的な設計をする必要がある。

  1. ^ 『ビジネス基礎』、実教出版、令和2年12月25日検定、令和4年1月25日発行、P62