作用・反作用の法則

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作用反作用の法則の例。
おもりがバネを引っ張リ下げると同時に、バネはおもりを引っ張り上げる。

バネが物体を吊り下げている場合に関して、物体が重力によってバネを引っ張った場合に、なぜ、重力を受けている物体は運動方程式にしたがって落下していかないのだろうか。それは、吊り下がっている物体が、バネを引っ張っている力と同じ大きさの力で、バネから引き上げる力を受けているからである。

このように、物体が他の物体に力を及ぼすときは、必ず相手の物体からも同じ大きさの力を受けている。これを作用・反作用の法則(さよう、はんさよう の ほうそく)(英語: action-reaction law)という。

静電気の力も, 磁力も, 重力も, どんな力であっても、作用・反作用の法則が成り立っている。

いろいろな力

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磁力

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磁力は、磁石と別の磁石や一部の金属が引き合ったり反発したりする力のことである。

磁力でも、作用・反作用の法則が成り立っている。磁石が鉄を引きつけるとき、鉄もまた磁石を引きつけているのである。

重力

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重力は, 質量をもつ物体どうしが引き合う力である。

地球上のすべての物体は、地球による重力(じゅうりょく)によって、地球の中心方向へと引っ張られている。たとえば、ボールを落とすと落下するのも、重力がボールに働いているからである。

(つき)の重力の大きさは、地球の重力の約6分の1である。

(ほし)の重力の大きさは、その星の質量に比例する。月の重力が地球よりも小さい理由は、月の質量が地球よりも小さいからである。

重力は、接触(せっしょく)していなくても、はたらく。

すべての物体は、周囲に重力を発生させている。なので、重力のことを「万有引力(ばんゆう いんりょく)」ともいう。じつは地球も、私たちから重力によって引っ張られている。

野球ボールやサッカーボールも周囲に重力を発生させている。しかしわたしたちは、野球ボールやサッカーボールなどに引っ張られるとは感じない。それは、野球ボールやサッカーボールの質量が小さすぎて、重力が小さすぎるからである。

月は、地球からの重力を受けている(もしそれが無ければ, 月は地球のまわりを回り続けることはない)。同様に、地球も、月からの万有引力を受けている。

重力の法則は、生き物かどうかとか、星かどうかとかでは、まったく影響されない。物体なら、すべての物に、万有引力は同じ法則で、作用・反作用の関係で働く。


重力の発見の歴史
 
アイザック=ニュートン

重力の法則を発見した人物は、イギリス人のニュートンである。木から落ちるリンゴを見て、彼は重力の法則を思いついた、といわれている。たんに、物体(ぶったい)が下方向へと落下するだけなら、ニュートンでなくても、もっと以前に思いついていただろう。ニュートンが偉大なのは、地球もまた、リンゴによって引っ張られてるはずだ、という事に気がついた事である。そして、宇宙にある月などの星もまた、地球による重力によって引っ張られているはずだ、という事に気がついた事である。そして、地球もまた、月の重力によって、引っ張られてるはずだ、・・・というように。

では、なぜ、月は地球をめがけて落下しないのだろう。ニュートンはこう考えた。ボールを力強く投げると、遠くへ落下する。もっと力強く投げると、もっと遠くへ落下する。ところで、地球は丸いので、地球の半径や直径には限りがある。もし、とても力強くボールを投げて、地球よりも遠くへ落下したら、どうなるだろう、・・・と。結果的には、地球のまわりを、飛び続けるはずだ、と考えた。

なお、じつは、このしくみは、現代の人工衛星(じんこう えいせい)が地球のまわりを飛びつづけて地球のまわりを回り続ける原理でもある。


  • 静止している物体にはたらく重力

地面の上で静止しているボールにも、重力がはたらいている。なのに、ボールが地中へと落下していかないのは、地面がボールを押し返している(垂直抗力)からである。

力の性質

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止まっている物体を動かしたいときには、その物体を手で押したり、道具を使って押したりする。ここで、そのように止まっている物体を動かす性質を持つものを(ちから)(英語: force、フォース)と呼ぶ。力は、手を使ったり道具を使ったりして物体に対して与えることが出来る。また、磁石などを用いることで、物体に触れることなく力を与えることも出来る。

力には物体を動かす時、対象が粘土などの柔らかいものなら、物体を変形させることができる物体を変形させる働きや止まっている物体を動かしたり、動いている物体の行き先を逸らしたりできる物体の動きを変える働き、そして重力に逆らいながらものを抱えるなどができる物体を持ち上げたり、支えたりする働きがある。

  • 注意

実際には、あらゆる物体が原子や分子の集合によって出来ていることを考えると、物体を変形させることは、原子や分子の並びを変化させることであり、物体を動かす働きの一つとして考えられることに注意。分子については後に扱う。

同じ方向に2つの力をかけたときには、物体に働く力はそれら2つの力の和と同じだけの力がかかった時と同じふるまいを示す。また、反対方向に2つの力をかけたときには、物体にはたらく力はそれら2つの力の差と同じだけの力がかかった時と同じふるまいを示す。このように、物体にかかった力は、たがいに強めあったり弱めあったりすることがわかる。

ここでは力のつりあいの条件について考える。力のつりあいとは、物体に複数の力が働いているときに、それらの力が互いに別々の方向を持つことで、お互いを完全に打ち消し合っている場合のことを指す。変形しない物体に対して様々な方向から複数の力をはたらかせる実験を行なうとする。この実験で、物体に対して反対向きの方向に、同じ大きさの力をかけているときには、物体は動かない。このような情況を、物体に働く力がつりあっているという。

また、まったく反対向きで同じ大きさの力がかかったときには、物体が動かないことがわかる。これは、物体に力のつりあいがおこっている状態と、物体にまったく力がはたらいていない状態は、同じ状態であることを示している。

力の大きさは単位はニュートン Nを使う。1 Nは地球上で質量が100 gの物体に働く重力に(ほとんど) 等しい。地球上で100 gの物体にはたらく重力は、正確には 0.98 N である。だが中学では、質量100 gの物体にはたらく地球の表面付近での重力は 1 N であるとする。

月の重力の大きさは、地球の重力の6分の1である。すなわち、質量600 gの物体は、地球上では 6 Nの重力がはたらき、月では 1 Nの重力がはたらく。


ニュートンの定義
(高校レベルだが、ニュートンの定義を正確に言うと、1キログラム質量をもつ物体に1メートル毎秒毎秒 (m/s2) の加速度を生じさせる力が1ニュートンと定義される。また、単位質量あたりに働く重力の大きさを重力加速度というが、地球の表面付近での重力加速度は9.80665 m/s2と、10 m/s2 に近似できるため、100 gの物体に働く地球の表面付近での重力は1 Nとして扱える。

なお、重さと質量は区別する必要がある。地球と月とで重力の大きさはちがう。また宇宙の中でどの星からも遠く離れている場所では、ほぼ無重力になる。このように重力の大きさは場所によって変わるので、もし重さと質量を同じ単位で扱うと混乱してしまう。


質量(しつりょう)とは、物体の動かしにくさの度合い(=慣性)を表す量である。質量の単位には、グラム g やキログラム kg がある。1 kgは1000 gである。

キログラム原器
 
キログラム原器(アメリカのキログラム原器の画像)

1889年に質量1 kgの基準として、国際キログラム原器(げんき)という分銅(ふんどう)が、さだめられた。白金90 %、イリジウム10 %のまざった合金で、円柱形の物体として、キログラム原器がつくられた。なお、日本の国内にあるキログラム原器は、国際キログラム原器の複製(ふくせい)である。

しかし、2007年、この原器の質量が、年数がたった事により、ほんのわずかばかり、小さくなっているという事が、わかった。そこで、より正確な基準をきめようと、研究されてきた。

その結果、2019年に、キログラムの定義が変更された。物理量の測定における基準を国際的に管理している国際度量衡委員会(こくさい どりょうこう いいんんかい)は、定義を新しくしてプランク定数(という物理定数がある。高校で習う。)を基準にすることにより、キログラムの測定で従来の基準(白金の分銅)よりも高精度に定義できると前々から(2011年ごろから)主張しており、国際度量衡委員会はキログラム原器の定義をプランク定数にもとづく基準へ変更すべきだと主張していた。日本は、国際度量衡委員会のその考えに従って、キログラム原器の定義をプランク定数にもとづく定義に変更した。


参考 単位系の国際標準化

近年(きんねん)、力の単位をニュートン単位に統一した理由は、昔は国や業界ごとに単位が別々であり、不便であったので、その不便を解消しようと国際的な取り決めがなされたからである。その国際的な取り決めによって、力の単位にはニュートンを、質量の単位にはキログラムを標準的に用いることが決まったのである。 この国際的に取り決めた単位系を国際単位系と言い、フランス語 Système International d'unités の頭文字をとってSIともいう。

また、国際単位系では、長さの単位にはメートルを、時間の単位には秒を用いる。

ただし、国際単位系では、これら以外の単位、たとえばグラムや分、時、センチメートル、キロメートルなどを使うことが禁じられているわけではない。

中学・高校では、物理量の単位系には、国際単位系が用いられる。なお、計量法では、原則として、取引又は証明には国際単位系を用いると定められている。 中学範囲でSI単位以外を用いるとすれば、グラム重とニュートンとの換算や、中学3年理科『地球と宇宙』宇宙の広がりで登場する距離の単位「光年」など限られる。

読者は「長さがメートル法とか、質量がグラム単位なんて、当然じゃないのか?」と思うかもしれないが、日本では明治頃の古くから、メートルやグラムに親しみがあるが、実は外国では、国によってはメートル法やグラム単位はかならずしも当然ではない。長さにインチ単位や、重さにポンド単位を日常的に用いている国も存在するのである。

単位の書き方

量は数値と単位の積である。

例えば、  と表記する。単位記号に角括弧や丸括弧をつけて  などとはしない。

式は数値ごと、単位ごとに計算する。

例:

 

 

 
上皿天秤
 
上皿天秤に分銅を追加する図

5桁以上の場合は見やすいように3桁ごとに空白(半角スペース)を置くことができる。

例:真空中の光速度は 299 792 458 m/s である。

カンマを使用して 299,792,458 m/s とすることはSIでは認められていない。

小数点以下も同様に3桁ごとに空白を置くことができる。

例:電子素量は 1.602 176 634 × 10−19 C である。

4桁の場合は 1826 kg のように桁区切りの空白を置かないことが多い。空白を置いて、 1 826 kg と表記することも可能である。

小数点にはピリオド . を用いる。あるいは、カンマ , を用いてもよい。日本やイギリスでは小数点にピリオドを、ドイツやフランスなどではカンマを用いることが多い。 桁区切りにカンマを用いることができない理由は、小数点であるか桁区切りであるかの見分けがつきにくいからである。

1 m 62 cm などの表記は認められない。 162 cm あるいは 1.62 m とする。

量の記号は斜体( )を使う。単位記号は立体( )で表記する。また、数値と単位の間には半角スペースを置く。

例: 

あるいは、量記号を単位で割って、

 

と表記することも可能である。グラフや表では、この表記が用いられる。

単位記号は、ニュートン N やパスカル Pa など人名に由来するものは一文字目を大文字にする。人名に由来しないものは小文字で書く。 ただし、リットル L は人名に由来しないが、小文字の l は数字の 1 と紛らわしいため、大文字の L を単位記号に用いることができる。SIでは、l, L のどちらをつかてもいいことになっている。現在では大文字の L を使うことが多い。なお、筆記体の ℓ は使うことができない。

質量を測定するときは、上皿天びん(うわざらてんびん)などの天びん(てんびん)を用いることが多い。

上皿天びんの操作方法

物体の質量を測定する場合は、片側に被測定物をのせ、反対側に分銅を載せる。分銅を質量の基準とする。 両方の皿の釣り合いを見て、質量を判断する仕組みである。 なので、皿に物を乗せる前に、両方の皿が釣り合っているかどうかを確認する必要が有る。もし、釣り合っていなかったら天びん本体に調整用のねじ等が付いているので、それで両方の皿が吊り合うように調整してから、皿に物を乗せる。 粉末などを測定する場合は、粉末が溢れたりしないように薬包紙(やくほうし)などを用いる。この場合は薬包紙を分銅を載せる側の皿にも置いた上で上記の調整を施したり、もしくは薬包紙の質量をあらかじめ測定しておく。

分銅は、あまり直接には、手で触らないようにする。 手の皮脂などが分銅につくと、その皮脂などの質量が追加した分だけ、重さが変わってしまうからである。 軽い分銅を皿に載せたりおろしたりする場合なら、専用のピンセットが天びんに付属していることがあるので、その付属のピンセットなどを用いる。

上皿天びん以外の天びんでは、ピンセットでは運べないような重い分銅を用いる場合も有る。このような場合、ピンセットでの持ち運びが危険な場合なので、他の方法で分銅を運ぶ。たとえば理科実験用の手袋(一般の手袋や軍手は、不可。)などをして、手袋をした手で分銅をつかんで持ち運ぶ場合も有る。


重さを測定する場合は、ばねばかり や 台はかり などを用いることが多い。

フックの法則

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ばねの自然長と伸び
 
ばねの自然長と伸び
 
フックの法則。
力は伸びに比例する。

ばねの伸びは、ばねに働く力の大きさに比例する。このことをフックの法則という。このことを利用すると、ばねの伸びからばねに働いた力の大きさを知ることができる。これを応用した器具がばねばかりである。

ばねの、なんの力も加えてない場合の長さのことを、ばねの「自然長」のように言う。

「ばねの伸び」とは、ばねに力を加えて伸ばしたときの長さから、自然長の長さを引いた、差のことである。

※ なお、説明を簡単にするため、ばねの軸の方向に向かって伸ばした場合しか考えない事にする。

なので、自然長の瞬間の場合は、「ばねの伸び」は 0 (ゼロ)ミリメートル である。

また、ばねが横向きに取り付けられている場合、なにも下端に引っ張らずに押しもせずに放置した場合も、ばねは自然長なので、「ばねの伸び」はゼロになる。

※ なお、ばねが縦向きに取り付けられている場合、ばねそのものの重さで少し伸びるが、しかし高校受験・大学受験では、ばねそのものの重さ(自重)は無視するのが普通であり、自重による伸びも無視をするのが普通。


弾性(だんせい)
 
フックの法則

ばねなどから荷重を取り除くと元に戻るように、物体の中には、力を加えて変形しても、力を取り除くと元に戻る性質を持つものが有る。このような性質を弾性(だんせい)という。ばねばかりのばねや、ゴムひもなどが、弾性の有る物体である。

また、ばねなどの弾性のある物体が、弾性によってものを引っ張ったり押したりする力のことを弾性力(だんせいりょく)という。


図のように、ばねの戻ろうとする力(弾性力) F (エフ)は、ばねの伸び x (エックス)に比例する。式で書くと、

F = kx

である。kは「ばね定数」と呼ばれる数であり、ばねごとによって値が決まる。


おもりを垂らしているだけのバネから、おもりを外したら弾性によって元の長さに戻るわけだが、この場合も「ばねの伸び」はゼロに戻るわけである(ただし、バネの自重による伸びは無視をした)。


 
弾性(だんせい)と塑性(そせい)の説明図。弾性(だんせい)は加えられた力が小さい場合には、元にもどる性質。塑性(そせい)は、加えられた力が大きすぎると、元通りには もどらない性質。
(参考: 塑性(そせい) )

いっぽう、力を加えて変形すると、力を取り除いても元に戻らない性質の物体も有る。たとえば、工作用の粘土などがそうである。このような、力を取り除いても元に戻らない性質を「塑性」(そせい)という。

※ 塑性の計算は、大学・工業高校レベルに複雑で専門的なので、中学生は塑性の計算は気にしなくていい。用語だけ知っていれば十分。
※ 受験研究社の参考書では、脚注で「塑性」を紹介している。旺文社の理科の参考書では「塑性」の語を紹介しないが、技術家庭科のほうで紹介しているかもしれないと思うので当wikiでは紹介。

発展: 弾性限界(だんせい げんかい)
弾性のある物質でも、くわえる力が大きくなりすぎると、力を除いても元に戻らない。それ以上の力を加えられたら、もう戻れない限界の荷重のことを弾性限界(だんせい げんかい)という(受験研究社)。  

フックの法則は、弾性限界内での力の場合のみ、成り立つ(受験研究社)。

言い換えると、ばねの弾性力が、ばねの伸びに比例するという現象は、弾性限界の範囲内の力しか加わってない場合の話である。


摩擦力

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摩擦力の図。
たとえば図中の左向きの矢印の方向に押したとすると、右向きに摩擦力が働く。摩擦力の大きさは、物体と床との重さに比例する。下向きの矢印が物体に掛かる重力で、上向きの矢印が床からの反作用。

物体を押して動かすとき、重さが同じでも、物体の置かれている床がデコボコしていたりザラザラしていたり、あるいは物体がデコボコしていたりザラザラしていると、動かすのに、余計な力が必要になる。このような動かそうとする力に対する抵抗を、摩擦(まさつ)といい、摩擦による抵抗力のことを摩擦力(まさつりょく)という。

 
引く力の大きさによらず、動摩擦の大きさは一定である。


説明を簡単にするため、直方体上の物質を動かす場合を考える。

静止摩擦力

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静止している物体は、一定以上の大きさを加えないと、動き始めない。その理由は、弱い力を加えても、摩擦力によって、消されてしまうからである。

摩擦力で消せる範囲を超えた一定以上の強さの力を加えてようやく、物体は動き始める。

この、物体を静止させるための摩擦力のことを、静止摩擦力という。静止している物体にかかっている静止摩擦力の大きさは、加えた力と同じである。(でないと、物体が移動してしまい、「静止」しているという条件に反する。静止してない場合h、そもそも「静止」摩擦力ではなく、後述する「動」摩擦力になる。)

また、静止摩擦力の大きさの限界のことを最大摩擦力という。

最大摩擦力をこえる力を加えて、ようやく、物体は動き始める。


摩擦力の向きは、面と平行である。だから、たとえば、地面から物体を持ち上げる場合は、摩擦力が働かない。


最大摩擦力の大きさは、垂直抗力に比例する(受験研究社)。

  • 発展: 式

式では、最大摩擦力を F とすれば、

F= μ0N である。ここでNは垂直抗力である。 μ0 (ミュー ゼロ)は静止摩擦係数である。

※ 「重さ」に比例するという理論にしてしまうと、斜面の上に物体のある場合が難しくなってしまうので、「垂直抗力に比例する」という理論のほうが合理的である。


最大摩擦力の大きさは、物体の材質と、面の状態(しめっている、ぬれている、など)によって決まる(旺文社)。

このため、言い換えれば、静止摩擦係数 μ0 が、物体の材質と、面の状態(しめっている、ぬれている、など)によって決まる、と考えても良い。

なお、摩擦力の大きさは、接地している面の大きさによらない(旺文社)。

これは、コロやボールなどが転がりやすい事実に反していて奇妙だが、しかし、少なくとも、直方体の物体なら、面積の少ない面を下にしておいても、摩擦力は他の面を下にした場合と変わらないのも、また事実である。

摩擦に関しては、観測しやすい現象であるが、しかし理論的には、まだ不明な点も多く、なので中高生は、これ以上は、接地面積の件については深入りする必要は無い。

もし、摩擦がなければ、少しでも力を加えれば物体が動いてしまうが、実際には、どんな物体にも摩擦があるので、そのようなことは起きない。

ボールや、コロ(丸太のような円柱状のもの)などが転がりやすい仕組みは、接触面を減らすことによって、摩擦をきょくたんに減らしているからである。

人間が、ぬれた床や道路などを歩くときに滑りやすいのは、床や道路の表面のザラザラした隙間に水が入り、ザラザラした隙間が埋まってしまうので、摩擦が減るからである。

摩擦について、一種の「抵抗力」というと損失と同一視されやすいが、しかし、ぬれた床の例のように、摩擦は必ずしも無ければ良いというものではない。もし摩擦がなければ、われわれ人間は歩くたびに滑って転んでケガをしてしまう。

動摩擦

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いっぽう、物体がすでに運動している最中の時に働く摩擦力が、動摩擦力である。

動摩擦力の大きさは、静止摩擦力よりも小さい。

つまり、不等式で書けば

最大摩擦力 > 動摩擦力

である。(「最大摩擦力」は静止摩擦力の最大値であるので)


式では、最大摩擦力を F´ (エフダッシュ)とすれば、

F´= μ´ N

である。ここでNは垂直抗力である。 μ´ は動摩擦係数である。

μ と μ´ の関係を不等式で表してみよう。

最大摩擦力 > 動摩擦力

を出発点として、そして

最大摩擦力 F= μ0N
動摩擦力 F´= μ´ N

をそれぞれ不等式に代入してみると、

μ0N > μ´ N

ここで、垂直抗力 N はプラスの場合しか摩擦は働かないので、つまり N はプラスなので、両辺をNで割り算しても不等号の向きはそのままである。両辺を N で割ろう。

μ0 > μ´

こうして、摩擦係数の関係式が求まった。

動摩擦係数は、静止摩擦係数よりも小さい。これは、実験結果にも一致している(いちいち実験例は紹介しないが、普通に実験でも昔から確認されている)。

張力

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張力の説明図

糸が物体を引っ張る力を張力(ちょうりょく)と言います。

たとえば、おもりを糸でつるした場合、そのおもりが落下しないように、重力を打ち消す向きに、張力が発生しています。つまり、この場合、重力が下向き、張力は上向きです。

おもりに働く重力と、張力とが、同じ大きさで、向きが反対で、つりあっているので、なので物体は静止しているのです。

※ もしかしたら「重力」について中学でまだ説明していないかもしれませんが、その場合は、あきらめてください。小学校の理科くらいでの「重力」の理解と同じ意味で、当面は、かまいません。

張力が発生している場合、糸はまっすぐになっています。

糸が物体を引く力は、1本の糸の中では、どこでも等しい。

右図のように、おもりが静止している場合は、式で、

重力 = 張力

です。


なお、地球各部での重力の向きを、「鉛直(えんちょく)方向」という。

右図のように、おもりをつるした糸の方向が、重力の向きであり、鉛直方向である。

重力の方向は、鉛直下向きである。

新学習指導要領による変更

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・新中学校学習指導要領により追加される範囲削除される範囲(令和3年度から全面的に実施


圧力

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※新学習指導要領では以下の分野は2年の地学分野で習う。

 
圧力の説明図。スポンジの上にある おもり 。
同じ重さの おもり でも、スポンジと接する部分の面積によって、めりこむ深さが違う。狭い面積で接するほど、その面積に重さの力が集中し、スポンジに深く、めりこむ。

圧力(あつりょく)とは、単位面積あたりの面に垂直にはたらく力のことである。

つまり、

圧力 = 面を垂直に押す力 / 面積

である。

力が働く面積が小さいときには, 上の式の右辺の分母が小さくなるので, 圧力は強くなる。たとえば、えんぴつの両端を、図のように手で、つまんだとする。とがった先端(せんたん)をおさえてる指のほうでは痛く感じる。その理由は、とがったほうでは、力のかかる部分の面積が小さいため、圧力が高くなるからである。

 
エンピツの両端の圧力

圧力の単位には、Pa(パスカル)がつかわれる。Paとはどういう単位か, もう少し詳しく述べる。 まず、力の単位をN(ニュートン)で考えよう。いっぽう、面積の単位を、  (平方メートル)で考えよう。このとき、 圧力の単位は、力の単位/面積の単位なので, N/m2(ニュートン毎平方メートル)となる。この単位がPa(パスカル)である。「Pa」の 頭文字 P は大文字で書く。

 
ブレーズ=パスカル
圧力の単位「パスカル」は、フランスの科学者パスカルにちなんで名付けられた。パスカルは数学者、哲学者(てつがくしゃ)でもある。



ここで、空気が与える大気圧と、空気に重さがあることとの関係について述べる。

マグデブルクの半球
 
マクデブルクの半球実験

17世紀のドイツのマグデブルク市で行われた、物理学者ゲーリケによる古典的な実験として、大気圧の大きさを見せびらかすために、2つに割ることが出来る 鉄球を用意し、鉄球の中を真空(しんくう)にして、その2つの鉄球を分割しようとしたときに、非常に大きな力でないと鉄球を引き離せないことを実験した例が有る。 鉄球を引き離すには、一人の人間では到底は不可能で、馬を何頭も用意して、馬たちに引っ張らせて、やっと鉄球が引き離せる結果になった。

このような巨大な大気の力を、大気中にいる我々が普段の生活では、なぜ、感じないのだろうか。なぜ、われわれの体は大気の巨大な力に押しつぶされないのだろうか。それは、我々の体の中は真空ではないので、中からも空気の圧力がかかっているため、外側の力と打ち消し合い、押しつぶされないのである。(力には方向があった。逆向きの力は打ち消し合って、差引の力が物体に掛かるのであった。圧力もまた同様に、方向があって、逆向きの力は打ち消しあう。)


 
山頂と海面の気圧
大気圧
 
トリチェリの実験

大気圧を測定するには、真空を利用すれば良さそうである。イタリアの物理学者のトリチェリは、ガラス管に液柱を満たして逆さまにする実験で、簡単に真空を作り、この液中の重さが大気圧と釣り合うことから、大気圧を測定した。

大気圧の大きさは、地表ではおよそ100,000 Paである。高山では大気圧は山のふもとよりも低いため、ふもとから密閉された袋を持って行くと袋がふくらむ。なお100 Paをヘクトパスカル[hPa]という。大気圧の100,000 Paをヘクトパスカル単位で表せば、1000 hPaである。

※ 注意

トリチェリが実験で用いた液体は水銀(すいぎん)である。この水銀は猛毒なので、中学生は、この実験は行わない方が良い。トリチェリが実験で水銀を用いた理由は、水銀は比重が大きいので、実験のガラス管の長さを節約できるからである。

なお、トリチェリの実験で、逆さまにしたガラス管の上部に出来た真空をトリチェリの真空(トリチェリのしんくう)という。

  • 写真

このことから、大気圧は高度が低いところではより大きいことがわかる。これは、空気に質量(しつりょう)があるからである。高度が低い地点での空気は上方により多くの空気があるため、それらを支えるためにより多くの圧力を与えることになり、大気圧も大きくなるのである。空気に重さがあることは、後に気体を用いた実験を行なうことでわかる。

水圧と浮力

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水圧の説明図。水深が深くなるほど、比例して水圧が強くなる。水圧の方向は、物体の面に垂直方向に働く。

水中の物体がまわりの水から受ける圧力を水圧(すいあつ)という。水圧は,同じ深さなら同じ大きさであり,深さが深いほど大きくなる。また,水圧は,あらゆる物体の面に垂直にはたらく。

水圧が深さが深いほど大きくなるのは、水圧が上にある水の重さによって生じているからである。

水中などの液体中にある物体や水面にある物体が、水から受ける、浮き上がる上向き方向の力のことを浮力(ふりょく)という。この浮力の原因は、物体の下の面が受ける水圧のほうが、物体の上の面が受ける水圧よりも大きいことによって生じる。

浮力の大きさ = 空気中で測定した値 - 水中で測定した値

(実は空気中でも空気の重さによる浮力が物体に働くので, 上の式は厳密には正しくはない)

圧力

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力の矢印での、作用点と、向きと、力の大きさを説明する図。

一般に「力が強い」、「強い力が働く」、「学力」「気力」など力という言葉はいろいろな意味で用いられる。しかし、科学的な考え方をする時には、力は常に1つの意味で用いられる。

圧力

ある面積あたりに働く力を圧力(あつりょく、pressure、プレッシャ)という。 さて、ある面に働く圧力が一定だとすると、働く面積に比例してその面に働く力の合計は大きくなる。

大気圧

地表を取り巻く空気の層を大気(たいき、atmosphere、アトモスフィア)という。大気にも質量があるので、この質量により重さの力がかかり、大気中の物体に重さがかかるので、大気中の物質は大気から力を受ける。この大気から受ける力は、圧力で表示できる。大気がおよぼす圧力を大気圧(たいきあつ、atmospheric pressure)という。

 
浮力の例の説明図。水面に浮いていて静止している物体では、重力(gravity)と浮力(buoyancy)とが、つりあっている。
 
水圧の説明図。水深が深くなるほど、比例して水圧が強くなる。水圧の方向は、物体の面に垂直方向に働く。
浮力

液体の中にあるものに対しては、浮力(ふりょく、buoyancy)が働くことが知られているが、これは物体の上面に働く圧力と、下面に働く圧力との差によって与えられる。

追加 削除
2力のつり合い 水圧・浮力