中学校理科 第2分野/天気とその変化

まとめ 編集

気温の測り方
地上から約1.5mの高さの、直射日光のあたらない風通しの良い場所で、はかる。
凝結(ぎょうけつ,英:condensation)
空気が冷えて、空気中の水蒸気が水になること。
露点(ろてん, 英:dew point)
空気中の水分が凝結し始める温度。
空気中の水蒸気量によって、露点は変化する。
飽和水蒸気量(ほうわ すいじょうき りょう,英:Saturated water vapor)
 
空気中での飽和水蒸気量のグラフ。
1m3の空気中に含むことの出来る、水蒸気の最大量。気温によって、飽和水蒸気量は異なる。空気の温度が高いほど、飽和水蒸気量は大きくなる。
ある空気中で、その空気に最大限の水蒸気が溶けている場合、飽和(ほうわ)しているという。飽和状態にある空気の水蒸気量を飽和水蒸気量という。
空気中での飽和水蒸気量
気温(℃) 飽和水蒸気量(g/m3)
40 51.1
35 39.6
30 30.3
25 23.0
20 17.2
15 12.8
10 9.39
5 6.79
0 4.85
-5 3.24
-10 2.14
-20 0.882
湿度(しつど、英: humidity)
空気中の水蒸気量と飽和水蒸気量の割合を相対湿度という。
湿度(%) = {{空気中に含まれている水蒸気量(g/m3)}/{その気温での飽和水蒸気量(g/m3)} }× 100 (%)
単に湿度といった場合相対湿度のことを指す。
湿度には、空気中に含まれている水蒸気量(g/m3)をあらわした絶対湿度(ぜったい しつど、absolute humidity)と、その気温での飽和水蒸気量と比べた割合を示した相対湿度(そうたい しつど、relative humidity))とがある。
乾湿計(かんしつけい)の、乾球温度計(かんきゅう)と湿球温度計(しっきゅう)との温度差で、湿度をはかる。このとき、湿度表(しつどひょう)を利用する。

天気とその変化 編集

雲の正体は、水である。太陽の熱や光のエネルギーによって、海や川・湖などから蒸発した水蒸気が、やがて上空で冷えて、水蒸気を含んだ空気が露点で凝結して水ができて、雲になる。

雲も霧(きり)も、成分は同じ水であり、空気中に水滴が浮かんでいるのである。

雲と霧との違いは、標高(「ひょうこう」・・・高さのこと)である。


そして、雲の一部は雨を降らし、その雨水が川や海や湖に流れ込む。

このように、地球上で水は循環している。

蒸発を起こすための熱は、もとは、太陽の光による熱である。つまり、太陽のエネルギーが、水の循環のエネルギー源である。


なお、標高が高くなるほど、気温も低くなるのが普通である。

天気の変化 編集

露点と湿度 編集

湿度


 
乾しつ計

湿度の測定は 乾湿計(かんしつけい) で、はかります。 普通の温度計である 乾球温度計(かんきゅうおんどけい) と、液だめの部分を水で濡らしているガーゼでつつんでいる 湿球温度計(しっきゅうおんどけい) が、乾湿計の中身です。

乾球温度計と湿球温度計との温度差から、湿度表(しつどひょう)を用いて、湿度が求められます。

温度というと、どちらの温度計の温度なのか分からないので、乾湿計の温度計の目盛りの数値は、それぞれ示度(しど)といいます。 乾球温度計の示度(しど)、あるいは、湿球温度計の 示度(しど) というふうに呼びます。

湿度表(一部分)
乾球温度計の
示度(℃)
乾球温度計と湿球温度計の示度の差(℃)
 0.0   0.5   1.0   1.5   2.0   2.5   3.0 
20  100   95   91   86   81   77   73 
19  100   95   90   85   81   76   72 
18  100   95   90   86   80   76   71 
17  100   95   90   85   80   75    70 
16  100   95   89   84   79   74   69 
15  100   94   89   84   78   73   68 
14  100   94   89   83   78   72   67 
13  100   94   88   82   77   71   66 
12  100   94   88   82   76   70   65 
11  100   94   87   81   75   69   63 
10  100   93   87   81   75   69   63 
9  100   93   86   80   73   67   60 
8  100   93   86   79   72   65   59 
7  100   93   85   78   71   64   57 

たとえば乾球温度計の示す温度が17℃であって、湿球温度計の示す温度が14.5℃の場合、乾球と湿球の温度差が2.5℃となり、湿度は表から75%になる。

湿度は、晴れの日では、通常、温度が高いほど、湿度は低くなる。したがって昼ごろに湿度が最も低くなる。

晴れの日の場合、温度の変化と、湿度の変化とは、逆の変化をするのが普通である (気温は昼ごろに最も高くなるのが普通。)。

雨やくもりの場合、湿度の変化は小さい。

気圧 編集

空気にも、実はおもさがある。地球の地表を取りまく空気を大気という。大気にも重さがあるので、重さにより、大気中のものにも力がかかる。(水中のものには、水から、押しつぶすような力が、かかってるのと、同じような現象。) 大気がおよぼす、押しつぶす方向の空気の力を 大気圧 という。気体がおよぼす、押しつぶす方向の力を 気圧 という。気象や天気で「気圧」といった場合、大気圧のことを言う場合が多い。

なお、上空では、地上よりも、その高さより上の空気の量が少ないので、上空に行くほど、気圧は低くなる。


大気圧の単位は、ふつう、hPa(ヘクト パスカル)という単位で表す。または「気圧」という単位で表す。 「気圧」という言葉には、「大気圧」という意味の場合と、圧力の単位の一つの場合の、2つの意味がある。

 
アネロイド型自記気圧計

大気圧の測定器には、アネロイド気圧計などが用いられる。


1気圧 = 1013 hPa である。
1hPa=100Pa である。
高気圧(こうきあつ)
ある地域で、まわりの地域と比べて気圧が高いことを、高気圧という。高気圧では下降気流が出来る。気圧の中心地ほど、気圧が高くなる。
低気圧(ていきあつ)
ある地域で、まわりの地域と比べて気圧が低いことを、低気圧という。低気圧では上昇気流が出来る。気圧の中心地ほど、気圧が低くなる。


高気圧や低気圧の気圧とは、地表付近での気圧のことである。

高気圧・低気圧の高低の基準は、まわりの気圧であり、1気圧=1013hPaが基準では無い。このため、1000hPaの高気圧も、ありうる。


高気圧の場所の地表からは、風が吹き出す。低気圧の場所の地表には、風が吹き込む。 したがって、高気圧から低気圧に向かって、地表に、風は吹く。

上空では、風の向きは逆方向である。こうして、空気は循環している。


実際の地表での風の向きは、高気圧から低気圧に向かって真っ直ぐでは無く、地球の自転のため、じゃっかん、斜めになる。北半球では風は右にそれる。南半球では左にそれる。


 
転向力。左回りに回転する円盤の中心から等速度運動をする玉(上図)は、円盤上からは進行方向に対し右向きの力で曲げられたように見える(下図)。

吹き出すときの風向きは、上空からの天気図で見た場合、右回り(時計回り)で吹き出す。この「右」や「時計回り」とは、北を上としてみた場合の視点である。まっすぐ吹き出すのではなく、このように渦をまいて吹き出す理由は、地球が自転していることが理由であり、詳しくは中学理科で習うが転向力(てんこうりょく)という力により、圧力の傾きに対して右側に風がそれる。

中学校では、「北半球では、高気圧は右回り。」という結果だけを知っていれば良いだろう。 なお、高気圧が「右回り」であるのは、北半球の場合であり、南半球ではちがった結果になるので注意。


温度が高い場所では、大気が膨張し、上昇気流が発生するため、地表は低気圧になりやすい。逆に、温度が低いと、高気圧になりやすい。

したがって、地表での風の向きは、温度の低い場所から、温度の高い場所に向かって、風が吹くことが多い。 上空では、逆向きである。温度の高い場所から低い場所へ向かって、上空では風が吹きやすい。


高気圧の中心近くでは、上空から地表へと風が流れる 下降気流 が発生する。また、下降気流のため、雲ができにくく、天気は晴れることが多い。


低気圧の場所では、風が吹き込む。 風向きは、上空からの天気図で見た場合、左回りの反時計回りで、吹きこむ。この「左」とか「反時計回り」とは、北を上としてみた場合の視点である。 低気圧の中心近くでは、地表から上空へと風が流れる上昇気流のため、雲ができやすく、天気は悪いことが多い。


等圧線を描くときは、 1000hPa を基準にして 4hPa ごとに線を書く。また、 20hPa ごとに太線にする。

気象観測 編集

風の観測

気象観測で、風のようすを表す時は、風がふいてくる向きと、風の強さとで表す。


16方位
北西 北北西 北北東 北東
西北西 東北東
西  
西南西 東南東
南西 南南西 南南東 南東
  • 風向(ふうこう)

風のふいてくる向きを 風向 と言う。 風の方向は、 16方位(じゅうろく ほうい) で、あらわす。

風向は、吹き流しで調べられる。吹き流しの上流の方角が、風向である。支柱に近い口の広い側が上流で、支柱から遠い狭い側が下流である。


  • 風速(ふうそく)

風の強さは、風による、空気の動く速さで表し、これを 風速(ふうそく) という。風速の単位はメートル毎秒(メートルまいびょう)である。


  • 風力(ふうりょく)
 風力階級
   陸上での様子   風速(m/s) 
0  煙は、まっすぐに上がる。   0.3未満 
1  煙がなびくが、風向計には感じない。   0.3~1.6未満 
2  顔に風を感じる。   1.6~3.4未満 
3  木の葉や細い小枝が絶えず動く。
 旗が、なびく。 
 3.4~5.5未満 
4  砂ぼこりが立ち、紙片が舞いあがる。   5.5~8.0未満 
5  木が、ゆれ始める。池の水面に波頭が立つ。   8.0~10.8未満 
6  大枝が動く。電線が鳴る。傘は、さしにくい。   10.8~13.9未満 
7  樹木全体がゆれる。風にむかって歩きにくい。   13.9~17.2未満 
8  小枝が折れる。風にむかっては歩けない。   17.2~20.8未満 
9  人家に、わずかな損害が起こる。
 (かわら が はずれる、煙突が倒れるなど) 
 20.8~24.5未満 
10  人家に大損害が起こる。  24.5~28.5未満 
11  広い範囲の破壊。   28.5~32.7未満 
12  被害が甚大。   32.7以上 

風のつよさを表す際に、風速ではなく、風が物におよぼす力を段階的にあらわした 風力(ふうりょく) で表す場合もある。 風力の階級は、もっとも弱い階級0から、もっとも強い12までの、13階級で表される。この風力の階級を 風力階級(ふうりょくかいきゅう) という。

 
アメリカ合衆国の気象衛星、GOES-8。

地球上の雲は、気象衛星(きしょうえいせい)という、人工衛星(じんこうえいせい)によって撮影されている。

 
GOES-9からの衛星画像。ハリケーン・フェリックス (1995年)

日本では気象衛星は、「ひまわり」という気象衛星が(2023年の時点)運用されている。

日本での天気予報は、気象衛星からの情報も参考にするが、それだけではなく、日本各地の地上からの観測所からの情報も元にして、決められている。

日本には、地域気象観測システム(通称アメダス ; AMeDAS -- Automated Meteorological Data Acquisition System)という気象観測システムがあり、観測装置が日本国内各地の約1300ヶ所の気象観測所にある。

 
2005年日本国際博覧会の会場に設置されていた万博アメダス(気象庁が設置するものとは異なる)

気象観測の情報には、気象衛星やアメダスのほか、気象レーダーや海洋・海上気象観測や、などの情報がある。


これらの、情報を元にして、気象庁は天気図や予報天気図を作成し、気象庁は天気予報を発表する。

霧・雲・雨 編集

  • くもり

空をおおう雲の量が、9割以上のばあいを くもり という。空をおおう雲の量の割り合いを、 雲量 と言い、0から10の11段階で表す。

雲量が1割以下の状態で、雨や雪などの降ってない状態を 快晴(かいせい) という。

 
快晴 (飛騨山脈、北アルプスの小蓮華山にて)。雲量が、ほぼ0。

雲量が2割から8割のときを、晴れ(はれ) という。

つまり、 :雲量=0~1:快晴 :雲量=2~8:晴れ :雲量=9~10:くもり


雨の量のことを雨量と言い、雨量はmm(ミリメートル)単位で表す。 雨以外にも、雪や ひょう や あられ などをまとめて、降水(こうすい)という。 雪やひょうなど、雨以外の場合の降水の量は、雪や氷を融かして水にしてから、測る。

そして、降水の量をまとめて、降水量と言い、単位は一般にmm(ミリメートル)で測る。 雨量は、雨量計などで測る。

前線と気団 編集

  • 気団(きだん)

大規模な空気のかたまりであり、広い範囲にわたって、気温や湿度が、ほぼ一様である物。

大陸の上では、広い範囲にわたって地上の特徴が似通っているので、気温や湿度の一様な大きな空気のかたまりが出来やすい。

同様に、太平洋上やオホーツク海などの大洋上でも、周囲が同じような温度の海ばかりなので、海上でも気温や湿度の一様な大きな空気のかたまりが出来やすい。

一般に、海で出来る気団は湿っており、大陸で出来る気団は乾いている。


  • 前線(ぜんせん)

温度のちがう二つの気団が、ぶつかっている場所の、境目の面や線のこと。空気のかたまりは体積をもつので、実際には、二つの気団の境い目(さかいめ)は面になるが、地図上に表すときは線になるので、「前線」と言われる。

気団の境い目としての面と線を区別するとき、境い目の面のほうを「前線面」(ぜんせんめん)と言って、線である「前線」(ぜんせん)と区別する場合もある。前線面という用語を用いれば、線としての「前線」とは、前線面と地表との交線とも言える。

中学理科では、前線面と前線とを区別する。

前線の種類 編集
 
前線の記号
1. 寒冷前線
2. 温暖前線
3. 閉塞前線
4. 停滞前線
 
寒冷前線の雲と気団のようす。左側の青い矢印が寒気、右側の赤い矢印が暖気。
強い上昇気流が発生し、そのため積雲などが発生しやすい。
 
温暖前線の雲と気団のようす。左側の赤い矢印が暖気、右側の青い矢印が寒気。前線面は ゆるやかであり、そのため層雲などが発生しやすい。


  • 寒冷前線 ・・・ 寒気の勢力が拡大して前進してくるときに出来る前線。
  • 温暖前線 ・・・ 暖気の勢力が拡大して前進してくるときに出来る前線。
  • 停滞前線 ・・・ 寒気と暖気がぶつかっており、勢力がつりあって、動かない状態。

これらの前線のどれも、寒気と暖気のぶつかっている状態である。寒気と暖気のぶつかりは天気に影響を与えるので、関心があるから、その前線の位置が調べられるのである。

一般に前線の付近では、雨が多く、天気が悪い。

どの前線でも、暖気は上昇しやすいため、寒気は暖気の下にある。寒冷前線では、寒気が暖気の下にもぐりこむ。温暖前線では、暖気が寒気の上に、はいあがる。


寒冷前線では、強い上昇気流が発生し、前線面の傾きが急であり、そのため、積雲状の雲が発生しやすい。そのため寒冷前線では、強い「にわか雨」が短時間で降ることが多い。雷や突風なども、ともなう事があり、天気は激しい。 寒冷前線の通過後は、天気は回復し晴れ、寒気のため、気温が下がる。


温暖前線では、前線面はゆるやかである。発生する雲は層雲などの薄くて広い雲である。雨はふるが、弱い雨が、長時間にわたって降る。 温暖前線の通過後は、天気は回復し晴れ、暖気のため、気温が上がる。


停滞前線では、層雲が出来やすく、雨などの天気の悪い日が長く続く。日本の梅雨(つゆ)や秋雨(あきさめ)の期間は、停滞前線によるものである。


閉塞前線というのは、寒冷前線に温暖前線が追いついた状態である。地表付近にある2つの寒気は、寒冷前線に由来する寒気と、温暖前線に由来する寒気である。閉塞前線の暖気は、その2つの寒気の上に押し上げられる。 閉そく前線では、二つの寒気に挟まれた暖気が押し上げられるので、上昇気流が強く、そのため積乱雲などが発生しやすく、雨は強く、風も強くなりやすい。



※ 学生は、これらの前線の記号を覚えること。テストに出やすい。前線の仕組みを理解するだけでなく、記号も暗記する必要がある。


* 梅雨
 
東アジア地域での梅雨前線の様子。梅雨をもたらす4気団の位置及び梅雨期間中の勢力変化も示してある。このうち、日本付近では、オホーツク海気団と小笠原気団により梅雨がもたらされる。

6月ごろに、雨の日が多くなる。また、雨の降る量も多い。これを梅雨という。 この理由は、北側の冷たく湿った オホーツク海気団と、南側のあたたかく湿った太平洋側の 小笠原気団 が日本付近でぶつかりあい、そこで気団が動きにくくなるからである。

気団の境界線のことを 前線(ぜんせん) というが、梅雨をもたらす両気団の境界線上の前線を 梅雨前線 という。

衛星画像などの上空から雲の様子を見ると、東西にのびる雲で、雲に切れ目のなく、つながった雲が、日本をおおう。

6月も終わりに近づき、夏が近づくにつれて、南側の小笠原気団が優勢になり、北側のオホーツク海気団が北へ押し戻されていく。俗に言う「梅雨明け」である。その結果、夏が近づく。

日本式天気記号 編集

快晴  
晴れ  
くもり  
 
 
 
みぞれ  
あられ  
ひょう  
 
天気不明  
日本式天気記号
日本式天気記号とは、天気の状態を記号で表したものです。気象庁が定めた規格に基づいて、さまざまな天気状態に対応した記号が用意されています。
主に天気予報などで使用され、その地域の天気状態を簡潔かつわかりやすく伝えることが目的です。
日本式天気記号は、専門性が高く難解な国際式天気記号を気象庁が独自に簡略化したもので、新聞などで使われています。

風力記号 編集

 
風力記号が、この画像の下のほうに書いてあるので、参照のこと。

風力記号は0~12の13段階で表されます。風力記号の形は、右の図を参考にしてください。矢羽の向きは風向の向きを表しています。右の図の下の風力記号の場合、北北西から観測者の位置に向かって風が吹いていることになります。つまり、「観測者から北北西の方向には風が吹いている」と誤解しないように注意してください。

風力記号には、天気も天気記号で記入する必要があります。また、気温と気圧も併記することが望ましいです。風力記号の風向は16方位で表されます。

海風と陸風 編集

 
海風 (上図) と陸風 (下図)
海風
海風とは、海と陸地とで温度差が生じ、その温度差によって発生する気圧差から吹く風のことを指します。
陸風
陸風とは、海辺の陸地から海へと向かって吹く風のことを指します。夜間に海面付近での温度が高くなり、陸地は冷えるため、海上から陸地へと向かって、低圧から高圧へと風が吹く現象です。
海陸風
海陸風とは、海と陸の間で起こる風のことです。昼間の海風と夜間の陸風が逆向きであるため、1日の間に風向きが逆転します。
昼間は、陸地が太陽の熱を吸収し、陸上が温かくなり、海上が冷たくなるため、海から陸に向かって風が吹きます。
夜間は、陸地が冷えるため、海から陸に向かって風が吹かなくなり、陸から海に向かって風が吹くようになります。
このように、昼と夜で風向きが逆転することが特徴です。
海風と陸風の風向きは地表付近・海面付近での向きであり、上空では風向きが逆になることがあります。

日本近くでの天気の仕組み 編集

偏西風 編集

 
地球の大気循環と偏西風のモデル。図の上側が北半球。日本は、図のフェレル循環の位置にあり、偏西風が吹いている。

偏西風は、中緯度の地域で起こる大気循環のひとつであり、地球の自転によって発生するコリオリの力によって発生します。地球が自転することによって、地表から大気中に向かって上がる空気が東側に、下がる空気が西側に逸れることで、高気圧から低気圧へ向かう風が西から東に吹くという大気循環が生じます。この偏西風は、太平洋上を中心に周囲に向かって吹いており、日本の上空でも西から東に向かって吹いています。

偏西風は、日本に限らず、世界中の中緯度地域で吹いており、冬季には強くなります。偏西風は、大気の移動に伴って様々な天候の変化をもたらします。たとえば、日本においては、偏西風が季節風のような役割を果たし、冬季には温暖化傾向にあり、春先には乾燥した晴天が続く傾向があります。

また、偏西風は、台風が発生する熱帯地域にも影響を与えています。偏西風が強く吹くと、台風は西から東に移動しやすくなります。逆に、偏西風が弱いと、台風は日本に向かって進みやすくなります。

季節風 編集

 
東アジア地域での梅雨前線の様子。梅雨をもたらす4気団の位置及び梅雨期間中の勢力変化も示してある。このうち、日本付近では、オホーツク海気団と小笠原気団により梅雨がもたらされる。

季節風とは、季節によって一定の方向から吹いてくる風のことを指します。これは、地球の自転と太陽からの放射エネルギーの影響によるもので、主に赤道から中緯度地域にかけて発生します。

夏季には、赤道付近の海上に高気圧が発生するため、南側の海から北側の大陸に向けて風が吹きます。このため、日本でも夏季には南から風が吹いてきます。

冬季には、この状況が逆転し、北側の大陸が高気圧となり、南側の海から風が吹いてきます。このため、日本では 冬季には北から風が吹いてきます。

また、季節風はアジアを中心に世界各地に影響を与え、農業や漁業、航海などに大きな影響を与える重要な気象現象の一つです。

季節ごとの気団 編集

湿度については、海で発生する気団については湿度が高い。一方、大陸で発生する気団は乾燥しているのが普通であります。 日本付近の場合、一般に北の地域にある気団は低温であり、南の地域にある気団は高温であります。

このため、日本の周囲の地域の気団の特徴は以下のようになります。

シベリア気団
シベリア気団(しべりあきだん)とは、シベリア地域を発生源とする大陸性の気団のことを指します。この気団は、冬季には極東地域から日本海側を中心に南下し、日本列島を含む東アジア地域に強い寒気をもたらします。特にシベリア高気圧が発達し、シベリア寒気団とも呼ばれます。
シベリア気団による寒波は、日本をはじめとする東アジア地域に大きな影響を与えます。寒気が南下することで、大雪や凍結、低温障害などの問題が発生し、交通や経済活動にも悪影響を与えることがあります。また、シベリア気団による寒波は、北半球の広範囲に影響を与えるため、ロシアを含む欧亜地域全体において異常気象が発生することもあります。冬にシベリア地域で発生する気団で、低温・乾燥です。
オホーツク海気団
オホーツク海気団(おほーつくかいきだん)とは、オホーツク海周辺を発生源とする気団のことを指します。この気団は、冬季にはシベリア気団とともに、日本列島を含む東アジア地域に寒気をもたらします。
オホーツク海気団による寒波は、主に北海道地方に影響を与えます。北海道は、日本列島の中でも特に寒冷な地域であり、オホーツク海気団の影響を受けやすいとされています。この気団による寒波は、北海道全域で大雪や凍結、低温障害などの問題が発生し、交通や経済活動にも悪影響を与えることがあります。
オホーツク海気団は、シベリア気団と比較すると、規模や寒気の強さは劣るものの、北海道地方においては重要な気象現象の一つとなっています。
小笠原気団
小笠原気団(おがさわらきだん)とは、小笠原諸島周辺を発生源とする気団のことを指します。この気団は、夏季には南西諸島や本州南部に向かって、湿った空気をもたらし、梅雨の時期に大雨を引き起こすことがあります。
一方、冬季には小笠原諸島周辺で発生した寒気が南下し、やや弱めの寒波をもたらすことがあります。ただし、シベリア気団やオホーツク海気団に比べると、その影響範囲は小さく、日本列島全体に影響を及ぼすことはありません。
小笠原気団は、小笠原諸島周辺で発生するため、日本列島の気象に直接的な影響を与えることは少ないものの、夏季の豪雨災害などにつながることがあります。また、小笠原諸島は、日本国内でも比較的暖かい地域であり、海洋生物の多様性が高いことで知られています。

これらの気団は、日本の気象に大きな影響を与えることがあり、天気予報などでも頻繁に取り上げられます。また、気象災害などを予防する上でも、これらの気団の動向を把握することが重要です。

長江気団(揚子江気団)
長江気団(揚子江気団)は、中国の長江(揚子江)流域に位置する、高温・乾燥な気団であり、熱帯大陸性気団に属しています。揚子江気団は、春や秋に多く出現し、日本付近を西から東へ移動する移動性高気圧を構成しています。

中国の華南や華中、インドシナ半島北部は中緯度高圧帯に位置するため、周辺の地域に比べて比較的乾燥した高温の状態が続くことが多いとされています。

長江気団は、寒帯性のシベリア気団(シベリア高気圧)が温暖化したものであるため、日本に影響を与えることはほとんどないとされています。

従来の日本の天気に影響を与える気団の分類には、シベリア気団、オホーツク海気団、小笠原気団、揚子江気団の4つがありました。 しかし、揚子江気団は他の3つと比較して狭く、また他の気団から変化したものも含んでいるため、令和3年以降の教科書では揚子江気団を固有の気団として扱わなくなりました。 長江気団(揚子江気団)は現在も気象庁などで扱われることがあります。


台風 編集
 
宇宙から見た台風(平成16年,台風 第18号)
 
日本の南にある3つの台風(平成18年,台風7, 8, 9号)。2006年8月7日。
台風
台風は、熱帯低気圧が発達して強風・大雨を伴う気象現象のことを指します。台風は、暖かく湿った空気が上昇することで発生し、熱帯地方を中心に発生しやすく、一般的には年間約25から30個程度発生します。
台風の発生には、海水の温度が26℃以上、上層の気圧が低く、垂直風切りが小さいなどの条件が必要です。これらの条件が揃うと、海上で膨大な水蒸気を含んだ暖かく湿った空気が上昇し、熱帯低気圧が形成されます。
台風は、中心部の気圧が非常に低く、周囲の気圧が高いことが特徴です。このため、台風の中心部には強風が吹き荒れ、大量の雨が降り、高潮や洪水などの災害を引き起こすことがあります。また、台風は比較的ゆっくりと移動するため、長時間にわたって大雨が続くことがあります。
気象庁では、台風に対して、発生から解消までの期間を「台風生存期間」と呼んでいます。台風の強さは、中心部の最大風速で分類され、風速が 17.2m/秒以上の場合に台風とされます。
台風の目
台風の中心部には、「台風の目」と呼ばれる穏やかな気象現象があります。台風の目は、中心部の気圧が非常に低くなっているため、周囲の強風が中心部に向かって収束し、逆に中心部から外側に向かって上昇する空気が生じます。このため、中心部には風がほとんど吹かず、穏やかな天気となります。
熱帯低気圧
熱帯低気圧は、熱帯地方において発生する気象現象の一つで、低気圧帯が熱帯地域に停滞することによって形成されます。熱帯低気圧は、発生地点での海水温が高く、湿度が高い環境下で発生することが多く、中心部の気圧が低く、周囲の気圧が高いことが特徴です。
熱帯低気圧は、中心部周辺に強風や大雨をもたらし、高潮や洪水などの災害を引き起こすことがあります。また、熱帯低気圧は、発達すると台風、ハリケーン、サイクロン、タイフーンなどの強い風と共に進路を取ります。
熱帯低気圧は、熱帯地方において年間を通じて発生し、多くはインド洋や太平洋、大西洋などの海域で形成されます。気象庁では、熱帯低気圧が風速17.2m/秒以上の場合には台風として扱われます。
熱帯低気圧の回転方向
熱帯低気圧の回転方向は、発生した地域の北半球か南半球かによって異なります。
北半球では、熱帯低気圧の中心部周辺の風は反時計回りに吹き、低気圧の中心部は左側に曲がります。これは、コリオリの力によって引き起こされるもので、北半球での回転方向が逆転するためです。
一方、南半球では、熱帯低気圧の中心部周辺の風は時計回りに吹き、低気圧の中心部は右側に曲がります。これは、北半球とは逆に、コリオリの力が反対方向に働くためです。
つまり、熱帯低気圧の回転方向は、発生した地域の北半球か南半球かによって異なることになります。
コリオリの力
 
Wikipedia
ウィキペディアコリオリの力の記事があります。
コリオリの力とは、回転する物体や地球の自転によって生じる力のことを指します。地球上で移動する大気や水の流れに影響を与え、天気や海洋流などの気象・海洋現象に大きな影響を与えます。
地球が自転することで、地表面上で物体が動くと、物体に対して見かけ上右側から風が吹いているように感じられます。これは、物体が地球とともに回転しているため、見かけ上物体が左に逸れるためです。この見かけ上の力がコリオリの力です。
コリオリの力は、北半球では右向き、南半球では左向きに働きます。具体的には、北半球で風が東から西に吹くときには、風が見かけ上北側に逸れ、右向きの力が働きます。また、南半球で風が東から西に吹くときには、風が見かけ上南側に逸れ、左向きの力が働きます。
地球規模の大気循環
地球規模の大気循環は、地球上の大気が上下左右に移動する現象で、大気の熱・水・エネルギーの循環を担っています。地球上の温度差、地球自転、太陽からの放射エネルギーの影響などが大きな要因となって、地球規模の大気循環が形成されます。

大気の循環には、熱帯から極域へ向けての熱エネルギーの輸送が重要な役割を果たします。熱帯地方では、太陽からの強い日射によって地表面が暖められ、熱帯低気圧が発生し、上空の対流圏まで熱気が上昇します。この熱気は、熱帯高気圧帯から極域に向けて移動し、寒冷な高緯度地域では下降気流となって地表に近い大気を加熱します。このように、熱帯から極域への熱エネルギー輸送が大気循環を担い、気候を形成しています。

また、地球自転によって、地表面は東向きに移動し、大気も地表面とともに東向きに移動します。このため、赤道周辺の大気は東西方向に速く移動する一方で、高緯度地域の大気は東西方向に遅く移動します。この大気の移動速度の違いが、大気の渦巻きを生み出し、渦が発生することで高気圧と低気圧が形成されます。

以上のように、地球規模の大気循環は、熱・水・エネルギーの循環を担っており、気候や天気に大きな影響を与えています。


日本の各季節での天気の特徴 編集

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春には、日本付近を高気圧と低気圧が交互に西から東へ通過し、天気が数日周期で変化します。 気温の変化も大きく、低気圧の東側では南からの暖かい空気が流れ込むため、気温は上昇しますが、低気圧の西側では北からの冷たい空気が流れ込むため、気温は下降します。 春の後半は高気圧が多く覆い、日照時間が徐々に増えますが、沖縄・奄美では5月に梅雨の季節が始まります。

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夏の前半は、梅雨前線の影響により北海道以外全国的に降水量が多くなります。 夏の後半には、太平洋高気圧が全国的に晴天と高温をもたらします。 多くの日で全国的に30℃以上の気温となり、北海道と沖縄の気温差は約5℃程度と小さくなります。 一方、オホーツク高気圧が現れると、北日本の太平洋側には冷たく湿った東風(やませ)が吹き、曇りがちな日が多く、気温も下がります。 沖縄・奄美では、台風の接近が8月に増えます。

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9月には、秋雨前線や台風の影響で降水量が増加しますが、特に西日本では残暑が続く年もあります。 10月には、移動性高気圧による晴天の日が多くなります。 11月には、低気圧が通過した後に冬型の気圧配置が一時的に現れ、日本海側を中心に雨の日が多くなり、北日本では雪が降り始めます。11月には、低気圧が通過した後に冬型の気圧配置が一時的に現れます。

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冬になると、シベリア高気圧とアリューシャン低気圧が共に強まります。

日本周辺は等圧線に垂直なストライプ状の冬型気圧配置になり、北西の季節風が吹き込んでシベリアからの冷たい空気がもたらされます。この冷たい季節風は山脈にぶつかって上昇気流や雲を発生させ、日本海側では多くの雪の日があり、特に山岳地帯では3メートルを超える積雪が見られます。

一方、太平洋側では山から乾燥した風が吹き下ろされ、晴天の日が多くなります。

北海道では気温が氷点下に継続している一方、沖縄と奄美では気温が15°C以上になることがよくあります。北海道と沖縄の間には20°C以上の気温差があります。

三寒四温
三寒四温とは、北中国や朝鮮半島などの地域で最も顕著な現象の1つで、寒い日が3日続いた後に、4日間暖かい日が続くというものです。つまり、7日間で寒い日と暖かい日が交互に現れるという周期的な気象現象です。