中学校社会 公民/大日本帝国憲法

発布:1889年(明治22年)2月11日
施行:1890年11月29日

第1章 天皇編集

第1条 大日本帝国ハ万世一系(ばんせいいっけい)ノ天皇之(これ)ヲ統治ス

第2条 皇位(こうい)ハ皇室典範(こうしつてんぱん)ノ定ムル(さだむる)所ニ(ところに)依リ(より)皇男子孫(こうだんしそん)之(これ)ヲ継承(けいしょう)ス

第3条 天皇ハ神聖(しんせい)ニシテ侵ス(おかす)ヘカラス(べからず)

第4条 天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬(そうらん)シ此(こ)ノ憲法ノ条規(じょうき)ニ依リ(より)之(これ)ヲ行フ(おこなう)

第5条 天皇ハ帝国議会ノ協賛(きょうさん)ヲ以テ(もって)立法権ヲ行フ

第6条 天皇ハ法律ヲ裁可(さいか)シ其ノ(その)公布(こうふ)及(および)執行(しっこう)ヲ命ス

第7条 天皇ハ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会停会及(および)衆議院ノ解散ヲ命ス

第8条 

(1) 天皇ハ公共(こうきょう)ノ安全ヲ保持シ又(また)ハ其ノ災厄(さいやく)ヲ避クル(さくる)為(ため)緊急ノ必要ニ由リ(より)帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律ニ代ル(かわる)ヘキ勅令(ちょくれい)ヲ発ス
(2) 此ノ(この)勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ若(もし)議会ニ於テ(おいて)承諾セサルトキハ政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ

第9条 天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ公共ノ安寧秩序(あんねいちつじょ)ヲ保持シ及(および)臣民(しんみん)ノ幸福ヲ増進スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ(ただし)命令ヲ以テ(もって)法律ヲ変更スルコトヲ得ス

第10条 天皇ハ行政(ぎょうせい)各部ノ官制及(および)文武官(ぶんぶかん、もんぶかん)ノ俸給(ほうきゅう)ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々(おのおの)其ノ条項ニ依ル

第11条 天皇ハ陸海軍ヲ統帥(とうすい)ス

第12条 天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額(へいがく)ヲ定ム

第13条 天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及(および)諸般(しょはん)ノ条約ヲ締結(ていけつ)ス

第14条

天皇ハ戒厳(かいげん)ヲ宣告(せんこく)ス
戒厳ノ要件及(および)効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第15条 天皇ハ爵位勳章(しゃくい くんしょう)及其ノ他ノ栄典(えいてん)ヲ授与ス

第16条 天皇ハ大赦(たいしゃ)特赦(とくしゃ)減刑(げんけい)及復権(ふっけん)ヲ命ス

第17条

摂政(せっしょう)ヲ置クハ皇室典範(こうしつてんぱん)ノ定ムル所ニ依ル
摂政ハ天皇ノ名ニ於テ大権ヲ行フ

現代語訳
第1条 大日本帝国は、万世一系の天皇が、これを統治する。

第2条 皇位は、皇室典範の定めるところにより、皇男子孫が、これを継承する。

第3条 天皇は、神聖であって、侵してはならない。

第4条 天皇は、国の元首であって、統治権を総攬し、この憲法の条規により、これを行う。

第5条 天皇は、帝国議会の協賛をもって、立法権を行使する。

第6条 天皇は、法律を裁可し、その公布及び執行を命じる。

第7条 天皇は、帝国議会を召集し、その開会、閉会、停会及び衆議院の解散を命じる。

第8条 

(1) 天皇は、公共の安全を保持し、又はその災厄を避けるため、緊急の必要により、帝国議会閉会の場合において、法律に代わる勅令を発する。
(2) この勅令は、次の会期において、帝国議会に提出しなければならない。もし、議会において承諾しないときは、政府は、将来に向かってその効力を失うことを公布しなければならない。

第9条 天皇は、法律を執行するために、又は公共の安寧秩序を保持し、及び臣民の幸福を増進するために必要な命令を発し、又は発させる。ただし、命令をもって法律を変更することはできない。

第10条 天皇は、行政各部の官制及び文武官の俸給を定め、並びに文武官を任免する。ただし、この憲法又は他の法律に特例を掲げるものは、各々その条項による。

第11条 天皇は、陸海軍を統帥する。

第12条 天皇は、陸海軍の編制および常備兵額を定める。

第13条 天皇は、宣戦し、講和し、及び諸般の条約を締結する。

第14条

天皇は、戒厳を宣告する。
戒厳の要件及び効力は、法律をもってこれを定める。

第15条 天皇は、爵位、勲章及びその他の栄典を授与する。

第16条 天皇は、大赦、特赦、減刑及び復権を命ずる。

第17条

摂政を置くときは、皇室典範の定めるところによる。
摂政は、天皇の名において大権を行う。

第2章 臣民(しんみん)権利義務編集

第18条 日本臣民(しんみん)タルノ要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル(よる)

第19条 日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ応シ均ク文武官(ぶんぶかん)ニ任セラレ及(および)其ノ他(そのた)ノ公務ニ就クコトヲ得

第20条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ(したがい)兵役(へいえき)ノ義務ヲ有ス

第21条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ納税(のうぜい)ノ義務ヲ有ス

第22条 日本臣民ハ法律ノ範囲(はんい)内ニ於テ居住及(および)移転ノ自由ヲ有ス(ゆうす)

第23条 日本臣民ハ法律ニ依ルニ非ス(あらず)シテ逮捕(たいほ)監禁(かんきん)審問(しんもん)処罰(しょばつ)ヲ受クルコトナシ

第24条 日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハ(うばわ)ルルコトナシ

第25条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外(ほか)其ノ(その)許諾(きょだく)ナクシテ住所ニ侵入セラレ及捜索(そうさく)セラルルコトナシ

第26条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルルコトナシ

第27条 

日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルル(おかさるる)コトナシ
公益(こうえき)ノ為(ため)必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル(よる)

第28条 日本臣民ハ安寧秩序(あんねいちつじょ)ヲ妨ケス(さまたげず)及(および)臣民タルノ義務ニ背カサル(そむかざる)限ニ(かぎりに)於テ(おいて)信教ノ自由ヲ有ス(ゆうす)

第29条 日本臣民ハ法律ノ範囲(はんい)内ニ於テ言論著作(げんろんちょさく)印行集会及(および)結社(けっしゃ)ノ自由ヲ有ス(ゆうす)

第30条 日本臣民ハ相当ノ敬礼(けいれい)ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ請願(せいがん)ヲ為スコトヲ得

第31条 本章ニ掲ケタル条規ハ戦時又(また)ハ国家事変ノ場合ニ於テ天皇大権(てんのうたいけん)ノ施行(しこう)ヲ妨クルコトナシ

第32条 本章ニ掲ケ(かかげ)タル条規ハ陸海軍ノ法令又ハ紀律ニ牴触(ていしょく)セサルモノニ限リ軍人ニ準行(じゅんこう)ス

現代語訳
第18条 日本臣民であるための要件は、法律の定めるところによる。

第19条 日本臣民は、法律及び命令の定めるところの資格に応じ、均しく文武官に任じられ、及びその他の公務に就くことができる。

第20条 日本臣民は、法律の定めるところに従い、兵役の義務を有する。

第21条 日本臣民は、法律の定めるところに従い、納税の義務を有する。

第22条 日本臣民は、法律の範囲内において、居住及び移転の自由を有する。

第23条 日本臣民は、法律によるのでなければ、逮捕、監禁、審問、処罰を受けることはない。

第24条 日本臣民は、法律に定めた裁判官の裁判を受ける権利を奪われることはない。

第25条 日本臣民は、法律に定めた場合を除くほか、その承諾なくして住居に侵入され、及び捜索されることはない。

第26条 日本臣民は、法律に定める場合を除くほか、信書の秘密を侵されることはない。

第27条 

日本臣民は、その所有権を侵されることはない。
公益のために必要な処分は、法律の定めるところによる。

第28条 日本臣民は、安寧秩序を妨げず、かつ、臣民としての義務に背かない限りにおいて、信教の自由を有する。

第29条 日本臣民は、法律の範囲内において、言論、著作、印行、集会及び結社の自由を有する。

第30条 日本臣民は、相当の敬意と礼節を守り、別に定めるところの規定に従い、請願を行うことができる。

第31条 本章に掲げた条規は、戦時又は国家事変の場合において、天皇大権の施行を妨げるものではない。

第32条 本章に掲げる規定は、陸海軍の法令又は紀律に抵触しないものに限り、軍人に準用する。

第3章 帝国議会(ていこく ぎかい)編集

第33条 帝国議会ハ貴族院(きぞくいん)衆議院ノ両院ヲ以テ(もって)成立ス

第34条 貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族華族(かぞく)及(および)勅任(ちょくにん)セラレタル議員ヲ以テ組織ス

第35条 衆議院ハ選挙法ノ定ムル所ニ依リ公選(こうせん)セラレタル議員ヲ以テ組織ス

第37条 凡テ(すべて)法律ハ帝国議会ノ協賛(きょうさん)ヲ経(ふ)ルヲ要ス

第33条 帝国議会は、貴族院と衆議院の両院をもって成立する。

第34条 貴族院は、貴族院令の定める所により、皇族、華族及び勅任された議員をもって組織する。

第35条 衆議院は、選挙法の定めるところにより、公選された議員をもって、これを組織する。

第37条 全ての法律は、帝国議会の協賛を経ることを要する。

第4章 国務大臣及枢密顧問(すうみつ こもん)編集

第55条 国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼(ほひつ)シ其ノ責ニ任ス

第55条 国務各大臣は、天皇を輔弼し、その責任を負う。

第5章 司法編集

第57条 司法権ハ天皇ノ名ニ於テ(おいて)法律ニ依リ(より)裁判所之(これ)ヲ行フ

第57条 司法権は、天皇の名において、法律の定めるところにより、裁判所がこれを行う。

第6章 会計編集

第64条 

国家ノ歳出歳入ハ毎年予算ヲ以テ(もって)帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ
予算ノ款項ニ超過シ又ハ予算ノ外ニ生シタル支出アルトキハ後日帝国議会ノ承認ヲ求ムルヲ要ス

第64条 

国家の歳出歳入は、毎年、予算をもって、帝国議会の協賛を経なければならない。
予算の項目を超過し、又は予算の他に生じた支出があるときは、後日帝国議会の承認を求めることを要する。

第7章 補足編集