中学校社会 公民/大日本帝国憲法

発布:1889年(明治22年)2月11日
施行:1890年11月29日

第1章 天皇編集

第1条 大日本帝国ハ万世一系(ばんせいいっけい)ノ天皇之(これ)ヲ統治(とうち)ス

第2条 皇位(こうい)ハ皇室典範(こうしつてんぱん)ノ定ムル(さだむる)所ニ(ところに)依リ(より)皇男子孫(こうだんしそん)之ヲ継承(けいしょう)ス

第3条 天皇ハ神聖(しんせい)ニシテ侵ス(おかす)ヘカラス(べからず)

第4条 天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬(そうらん)シ此(こ)ノ憲法ノ条規(じょうき)ニ依リ之ヲ行フ(おこなう)

第5条 天皇ハ帝国議会ノ協賛(きょうさん)ヲ以テ(もって)立法権ヲ行フ

第6条 天皇ハ法律ヲ裁可(さいか)シ其ノ(その)公布(こうふ)及(および)執行(しっこう)ヲ命ス

第7条 天皇ハ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会停会及衆議院ノ解散ヲ命ス

第8条

1 天皇ハ公共(こうきょう)ノ安全ヲ保持シ又(また)ハ其ノ災厄(さいやく)ヲ避クル(さくる)為(ため)緊急ノ必要ニ由リ(より)帝国議会閉会ノ場合ニ於テ(おいて)法律ニ代ル(かわる)ヘキ勅令(ちょくれい)ヲ発ス
2 此ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ(すべし)若(もし)議会ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ

第9条 天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ公共ノ安寧秩序(あんねいちつじょ)ヲ保持シ及臣民(しんみん)ノ幸福ヲ増進スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ(ただし)命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得ス

第10条 天皇ハ行政(ぎょうせい)各部ノ官制及文武官(ぶんぶかん、もんぶかん)ノ俸給(ほうきゅう)ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々(おのおの)其ノ条項ニ依ル

第11条 天皇ハ陸海軍ヲ統帥(とうすい)ス

第12条 天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額(へいがく)ヲ定ム

第13条 天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般(しょはん)ノ条約ヲ締結(ていけつ)ス

第14条

1 天皇ハ戒厳(かいげん)ヲ宣告(せんこく)ス
2 戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第15条 天皇ハ爵位(しゃくい)勲章(くんしょう)及其ノ他ノ栄典(えいてん)ヲ授与ス

第16条 天皇ハ大赦(たいしゃ)特赦(とくしゃ)減刑(げんけい)及復権(ふっけん)ヲ命ス

第17条

1 摂政(せっしょう)ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル
2 摂政ハ天皇ノ名ニ於テ大権ヲ行フ

現代語訳

第1条 大日本帝国は、万世一系の天皇が統治する。

第2条 皇位は、皇室典範の定めるところにより、皇男子孫が継承する。

第3条 天皇は、神聖であって、侵してはならない。

第4条 天皇は、国の元首であって、統治権を総攬し、この憲法の条規により、これを行使する。

第5条 天皇は、帝国議会の協賛をもって、立法権を行使する。

第6条 天皇は、法律を裁可し、その公布及び執行を命ずる。

第7条 天皇は、帝国議会を召集し、その開会、閉会、停会及び衆議院の解散を命ずる。

第8条

1 天皇は、公共の安全を保持し、又はその災厄を避けるため緊急の必要により、帝国議会閉会の場合において、法律に代わる勅令を発する。
2 この勅令は、次の会期に帝国議会に提出しなければならない。もし、議会が承諾しないときは、政府は、将来に向かってその効力を失うことを公布しなければならない。

第9条 天皇は、法律を執行するために、又は公共の安寧秩序を保持し、臣民の幸福を増進するために必要な命令を発し、又は発させる。ただし、命令で法律を変更することはできない。

第10条 天皇は、行政各部の官制及び文武官の俸給を定め、文武官を任免する。ただし、この憲法又は他の法律に特例を掲げたものは、各々その条項による。

第11条 天皇は、陸海軍を統帥する。

第12条 天皇は、陸海軍の編制及び常備兵額を定める。

第13条 天皇は、宣戦し、講和し、諸般の条約を締結する。

第14条

1 天皇は、戒厳を宣告する。
2 戒厳の要件及び効力は、法律で定める。

第15条 天皇は、爵位、勲章及びその他の栄典を授与する。

第16条 天皇は、大赦、特赦、減刑及び復権を命ずる。

第17条

1 摂政を置くときは、皇室典範の定めるところによる。
2 摂政は、天皇の名において、大権を行使する。

第2章 臣民権利義務編集

第18条 日本臣民タルノ要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル

第19条 日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ応シ均ク(ひとしく)文武官ニ任セ(にんぜ)ラレ及其ノ他ノ公務ニ就ク(つく)コトヲ得(う)

第20条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ(したがい)兵役(へいえき)ノ義務ヲ有ス(ゆうす)

第21条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ納税(のうぜい)ノ義務ヲ有ス

第22条 日本臣民ハ法律ノ範囲(はんい)内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス

第23条 日本臣民ハ法律ニ依ルニ非ス(あらず)シテ逮捕(たいほ)監禁(かんきん)審問(しんもん)処罰(しょばつ)ヲ受クルコトナシ

第24条 日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハ(うばわ)ルルコトナシ

第25条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外(ほか)其ノ許諾(きょだく)ナクシテ住所ニ侵入セラレ及捜索(そうさく)セラルルコトナシ

第26条 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルルコトナシ

第27条

1 日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルルコトナシ
2 公益(こうえき)ノ為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル

第28条 日本臣民ハ安寧秩序(あんねいちつじょ)ヲ妨ケス(さまたげず)及臣民タルノ義務ニ背カサル(そむかざる)限(かぎり)ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス

第29条 日本臣民ハ法律ノ範囲(はんい)内ニ於テ言論(げんろん)著作(ちょさく)印行(いんこう)集会及結社(けっしゃ)ノ自由ヲ有ス

第30条 日本臣民ハ相当ノ敬礼(けいれい)ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ請願(せいがん)ヲ為ス(なす)コトヲ得

第31条 本章ニ掲ケタル条規ハ戦時又ハ国家事変ノ場合ニ於テ天皇大権(たいけん)ノ施行(しこう)ヲ妨クルコトナシ

第32条 本章ニ掲ケ(かかげ)タル条規ハ陸海軍ノ法令又ハ紀律ニ牴触(ていしょく)セサルモノニ限リ軍人ニ準行(じゅんこう)ス

第18条 日本臣民の要件は、法律の定めるところによる。

第19条 日本臣民は、法律及び命令の定める資格に応じ、ひとしく文武官に任ぜられ、及びその他の公務に就くことができる。

第20条 日本臣民は、法律の定めるところに従い、兵役の義務を有する。

第21条 日本臣民は、法律の定めるところに従い、納税の義務を有する。

第22条 日本臣民は、法律の範囲内において、居住及び移転の自由を有する。

第23条 日本臣民は、法律によらずに、逮捕、監禁、審問、処罰を受けない。

第24条 日本臣民は、法律に定める裁判官の裁判を受ける権利を奪われない。

第25条 日本臣民は、法律に定める場合を除き、その許諾なく住居に侵入され、捜索されない。

第26条 日本臣民は、法律に定める場合を除き、信書の秘密を侵されない。

第27条

1 日本臣民は、その所有権を侵されない。
2 公益のため必要な処分は、法律の定めるところによる。

第28条 日本臣民は、安寧秩序を妨げず、臣民の義務に背かない限り、信教の自由を有する。

第29条 日本臣民は、法律の範囲内において、言論、著作、印行、集会及び結社の自由を有する。

第30条 日本臣民は、相当の敬意と礼節を守り、別に定める規程に従い、請願することができる。

第31条 本章に掲げた条規は、戦時又は国家事変の場合において、天皇大権の施行を妨げない。

第32条 本章に掲げた条規は、陸海軍の法令又は紀律に抵触しないものに限り、軍人に準用する。

第3章 帝国議会編集

第33条 帝国議会ハ貴族院(きぞくいん)衆議院ノ両院ヲ以テ成立ス

第34条 貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族華族(かぞく)及勅任(ちょくにん)セラレタル議員ヲ以テ組織ス

第35条 衆議院ハ選挙法ノ定ムル所ニ依リ公選(こうせん)セラレタル議員ヲ以テ組織ス

第36条 何人(なんぴと)モ同時ニ両議院ノ議員タルコトヲ得ス

第37条 凡テ(すべて)法律ハ帝国議会ノ協賛ヲ経(ふ)ルヲ要ス

第38条 両議院ハ政府ノ提出スル法律案ヲ議決シ及各々法律案ヲ提出スルコトヲ得

第39条 両議院ノ一(いつ)ニ於テ否決シタル法律案ハ同会期中ニ於テ再ヒ提出スルコトヲ得ス

第40条 両議院ハ法律又ハ其ノ他ノ事件ニ付キ各々其ノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ得但シ其ノ採納(さいのう)ヲ得サルモノハ同会期中ニ於テ再ヒ建議スルコトヲ得ス

第41条 帝国議会ハ毎年之ヲ召集ス

第42条 帝国議会ハ三箇月(かげつ)ヲ以テ会期トス必要アル場合ニ於テハ勅命(ちょくめい)ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ

第43条

1 臨時緊急ノ必要アル場合ニ於テ常会ノ外臨時会ヲ召集スヘシ
2 臨時会ノ会期ヲ定ムルハ勅命ニ依ル

第44条 

1 帝国議会ノ開会閉会会期ノ延長及停会ハ両院同時ニ之ヲ行フヘシ
2 衆議院解散ヲ命セ(めいぜ)ラレタルトキハ貴族院ハ同時ニ停会セラルヘシ

第45条 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅令ヲ以テ新(あらた)ニ議員ヲ選挙セシメ解散ノ日ヨリ五箇月以内ニ之ヲ召集スヘシ

第46条 両議院ハ各々其ノ総議員三分ノ一以上出席スルニ非サレハ(あらざれば)議事ヲ開キ議決ヲ為ス事ヲ得ス

第47条 両議院ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否(かひ)同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル

第48条 両議院ノ会議ハ公開ス但シ政府ノ要求又ハ其ノ院ノ決議ニ依リ秘密会ト為スコトヲ得

第49条 両議院ハ各々天皇ニ上奏(じょうそう)スルコトヲ得

第50条 両議院ハ臣民ヨリ呈出(ていしゅつ)スル請願書ヲ受クルコトヲ得

第51条 両議院ハ此ノ憲法及議院法ニ掲クルモノノ外内部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得

第52条 両議院ノ議員ハ議院ニ於テ発言シタル意見及表決ニ付院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ但シ議員自ラ其ノ言論ヲ演説刊行筆記又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ公布シタルトキハ一般ノ法律ニ依リ処分セラルヘシ

第53条 両議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ内乱(ないらん)外患(がいかん)ニ関ル(かかわる)罪ヲ除ク外会期中其ノ院ノ許諾ナクシテ逮捕セラルルコトナシ

第54条 国務大臣及政府委員ハ何時(なんどき)タリトモ各議院ニ出席シ及発言スルコトヲ得

第33条 帝国議会は、貴族院及び衆議院の両院で成立する。

第34条 貴族院は、貴族院令の定めるところにより、皇族、華族及び勅任された議員で組織する。

第35条 衆議院は、選挙法の定めるところにより、公選された議員で組織する。

第36条 何人も、同時に両議院の議員となることはできない。

第37条 すべて法律は、帝国議会の協賛を経ることを必要とする。

第38条 両議院は、政府の提出する法律案を議決し、及び各々法律案を提出することができる。

第39条 両議院の一方で否決した法律案は、同会期中に再び提出することができない。

第40条 両議院は、法律又はその他の事件につき、各々その意見を政府に建議することができる。ただし、採用されなかったものは、同会期中に再び建議することができない。

第41条 帝国議会は、毎年、召集する。

第42条 帝国議会は、3か月をもって会期とする。必要がある場合は、勅命で延長することができる。

第43条

1 臨時、緊急の必要がある場合は、常会のほか、臨時会を召集しなければならない。
2 臨時会の会期を定めることは、勅命による。

第44条

1 帝国議会の開会、閉会、会期の延長及び停会は、両院同時に行わなければならない。
2 衆議院解散を命ぜられたときは、貴族院は、同時に停会されなければならない。

第45条 衆議院解散を命ぜられたときは、勅令で、新たに議員を選挙させ、解散の日から5か月以内にこれを召集しなければならない。

第46条 両議院は、各々その総議員の3分の1以上が出席しなければ、議事を開き議決することができない。

第47条 両議院の議事は、過半数で決する。可否同数のときは、議長の決するところによる。

第48条 両議院の会議は、公開する。ただし、政府の要求又はその院の決議により、秘密会とすることができる。

第49条 両議院は、各々天皇に上奏することができる。

第50条 両議院は、臣民から提出される請願書を受けることができる。

第51条 両議院は、この憲法及び議院法に掲げるもののほか、内部の整理に必要な諸規則を定めることができる。

第52条 両議院の議員は、議院で発言した意見及び表決につき、院外で責任を問われない。ただし、議員自らその言論を演説、刊行、筆記又はその他の方法で公布したときは、一般の法律により処分されなければならない。

第53条 両議院の議員は、現行犯又は内乱、外患に関わる罪を除き、会期中、その院の許諾なく逮捕されない。

第54条 国務大臣及び政府委員は、いつでも各議院に出席し、発言することができる。

第4章 国務大臣及枢密顧問(すうみつ こもん)編集

第55条

1 国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼(ほひつ)シ其ノ責ニ任ス
2 凡テ法律勅令其ノ他国務ニ関ル詔勅(しょうちょく)ハ国務大臣ノ副署ヲ要ス

第56条 枢密顧問ハ枢密院官制ノ定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢(しじゅん)ニ応ヘ(こたえ)重要ノ国務ヲ審議ス

第55条

1 国務各大臣は、天皇を輔弼し、その責任を負う。
2 すべて法律、勅令その他国務に関わる詔勅は、国務大臣の副署を必要とする。

第56条 枢密顧問は、枢密院官制の定めるところにより、天皇の諮詢に応え、重要な国務を審議する。

第5章 司法編集

第57条

1 司法権ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依リ裁判所之ヲ行フ
2 裁判所ノ構成ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第58条

1 裁判官ハ法律ニ定メタル資格ヲ具フル者ヲ以テ之ニ任ス
2 裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ処分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルルコトナシ
3 懲戒ノ条規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第59条 裁判ノ対審判決ハ之ヲ公開ス但シ安寧秩序又ハ風俗ヲ害スルノ虞(おそれ)アルトキハ法律ニ依リ又ハ裁判所ノ決議ヲ以テ対審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得

第60条 特別裁判所ノ管轄(かんかつ)ニ属スヘキモノハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第61条 行政官庁ノ違法処分ニ由リ権利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟ニシテ別ニ法律ヲ以テ定メタル行政裁判所ノ裁判ニ属スヘキモノハ司法裁判所ニ於テ受理スルノ限ニ在ラス

第57条

1 司法権は、天皇の名において、法律により、裁判所が行使する。
2 裁判所の構成は、法律で定める。

第58条

1 裁判官には、法律に定める資格を持つ者を任ずる。
2 裁判官は、刑法の宣告又は懲戒の処分によらずに免職されない。
3 懲戒の条規は、法律で定める。

第59条 裁判の対審及び判決は、公開する。ただし、安寧秩序又は風俗を害するおそれがあるときは、法律により、又は裁判所の決議をもって、対審の公開を停めることができる。

第60条 特別裁判所の管轄に属するものは、別に法律で定める。

第61条 行政官庁の違法処分により権利を侵害されたとする訴訟で、別に法律で定める行政裁判所の裁判に属するものは、司法裁判所で受理する限りでない。

第6章 会計編集

第62条

1 新ニ租税(そぜい)ヲ課シ及税率ヲ変更スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
2 但シ報償ニ属スル行政上ノ手数料及其ノ他ノ収納金ハ前項ノ限ニ在ラス
3 国債ヲ起シ及予算ニ定メタルモノヲ除ク外国庫ノ負担トナルヘキ契約ヲ為スハ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ

第63条 現行ノ租税ハ更(さら)ニ法律ヲ以テ之ヲ改メサル限ハ旧ニ依リ之ヲ徴収ス

第64条

1 国家ノ歳出歳入ハ毎年予算ヲ以テ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ
2 予算ノ款項ニ超過シ又ハ予算ノ外ニ生シタル支出アルトキハ後日帝国議会ノ承認ヲ求ムルヲ要ス

第65条 予算ハ前(さき)ニ衆議院ニ提出スヘシ

第66条 皇室経費ハ現在ノ定額ニ依リ毎年国庫ヨリ之ヲ支出シ将来増額ヲ要スル場合ヲ除ク外帝国議会ノ協賛ヲ要セス

第67条 憲法上ノ大権ニ基ツケル既定ノ歳出及法律ノ結果ニ由リ又ハ法律上政府ノ義務ニ属スル歳出ハ政府ノ同意ナクシテ帝国議会之ヲ廃除シ又ハ削減スルコトヲ得ス

第68条 特別ノ須要(しゅよう、すよう)ニ因リ(より)政府ハ予メ(あらかじめ)年限ヲ定メ継続費トシテ帝国議会ノ協賛ヲ求ムルコトヲ得

第69条 避クヘカラサル予算ノ不足ヲ補フ為ニ又ハ予算ノ外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツル(あつる)為ニ予備費ヲ設ク(もうく)ヘシ

第70条

1 公共ノ安全ヲ保持スル為緊急ノ需用(じゅよう)アル場合ニ於テ内外ノ情形(じょうけい)ニ因リ政府ハ帝国議会ヲ召集スルコト能ハサル(あたわざる)トキハ勅令ニ依リ財政上必要ノ処分ヲ為スコトヲ得
2 前項ノ場合ニ於テハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス

第71条 帝国議会ニ於テ予算ヲ議定セス又ハ予算成立ニ至ラサル(いたらざる)トキハ政府ハ前年度ノ予算ヲ施行スヘシ

第72条

1 国家ノ歳出歳入ノ決算ハ会計検査院之ヲ検査確定シ政府ハ其ノ検査報告ト倶(とも)ニ之ヲ帝国議会ニ提出スヘシ
2 会計検査院ノ組織及職権ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第62条

1 新たに租税を課し、及び税率を変更することは、法律で定めなければならない。
2 ただし、報償に属する行政上の手数料及びその他の収納金は、前項の限りでない。
3 国債を起こし、予算に定めるものを除き、国庫の負担となる契約をする場合は、帝国議会の協賛を経なければならない。

第63条 現行の租税は、更に法律で改めない限りは、旧来どおりに徴収する。

第64条

1 国家の歳出及び歳入は、毎年、予算をもって帝国議会の協賛を経なければならない。
2 予算の項目を超過し、又は予算外に生じた支出があるときは、後日、帝国議会の承認を求めることを要する。

第65条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。

第66条 皇室の経費は、現在の定額により、毎年、国庫から支出し、将来、増額を必要とする場合を除き、帝国議会の協賛を必要としない。

第67条 憲法上の大権に基づく既定の歳出及び法律の結果により、又は法律上、政府の義務に属する歳出は、政府の同意なく帝国議会が廃除し、又は削減することができない。

第68条 特別の必要により、政府は、あらかじめ年限を定め、継続費として帝国議会の協賛を求めることができる。

第69条 避けられない予算の不足を補うために、又は予算のほかに生じる必要な費用に充てるために、予備費を設けなければならない。

第70条

1 公共の安全を保持するため緊急の必要がある場合において、内外の状況により政府が帝国議会を召集することができないときは、勅令により、財政上必要な処分をすることができる。
2 前項の場合においては、次の会期に帝国議会に提出し、その承諾を求めることを必要とする。

第71条 帝国議会で予算を議定せず、又は予算成立に至らないときは、政府は、前年度の予算を施行しなければならない。

第72条

1 国家の歳出及び歳入の決算は、会計検査院が検査、確定し、政府は、その検査報告と共にこれを帝国議会に提出しなければならない。
2 会計検査院の組織及び職権は、法律で定める。

第7章 補則編集

第73条

1 将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付ス(ふす)ヘシ
2 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス

第74条

1 皇室典範ノ改正ハ帝国議会ノ議ヲ経ルヲ要セス
2 皇室典範ヲ以テ此ノ憲法ノ条規ヲ変更スルコトヲ得ス

第75条 憲法及皇室典範ハ摂政ヲ置クノ間之ヲ変更スルコトヲ得ス

第76条

1 法律規則命令又ハ何等(なんら)ノ名称ヲ用ヰタル(もちいたる)ニ拘ラス(かかわらず)此ノ憲法ニ矛盾(むじゅん)セサル現行ノ法令ハ総テ(すべて)遵由(じゅんゆう)ノ効力ヲ有ス
2 歳出上政府ノ義務ニ係ル(かかる)現在ノ契約又ハ命令ハ総テ第六十七条ノ例ニ依ル

第73条

1 将来、この憲法の条項を改正する必要があるときは、勅命で、議案を帝国議会の議に付さなければならない。
2 この場合において両議院は、各々その総員の3分の2以上が出席しなければ議事を開くことができず、出席議員の3分の2以上の多数を得なければ改正の議決をすることができない。

第74条

1 皇室典範の改正は、帝国議会の議を経ることを必要としない。
2 皇室典範で、この憲法の条規を変更することはできない。

第75条 憲法及び皇室典範は、摂政を置く間、変更することができない。

第76条

1 法律、規則、命令又は何の名称を用いているかにかかわらず、この憲法に矛盾しない現行の法令は、すべて従うべき効力を有する。
2 歳出上、政府の義務に係る現在の契約又は命令は、すべて第67条の例による。