「新しい権利」とは、日本国憲法では、まだ規定されていないが、時代の変化に合わせて、新たに、保障する対象に追加するべきと考えられている権利のことである。

「知る権利」や「プライバシーの権利」などが、新しい権利である。

知る権利 編集

 
国立公文書館

国民が政治について判断を下すためには、国民に国や地方公共団体の活動についての正しい情報が与えられなければならない。

そのため、国や地方公共団体は、自分たちの活動を、なるべく公開するべきである、という考えがあり、この考えにもとづき活動内容についての情報公開が多くの役所で行われ、情報公開制度が作られている。

このような権利を「知る権利」(しる けんり)という。

1999年には 情報公開法(じょうほう こうかいほう) が制定された。


また、「知る権利」を保障するためには、新聞やテレビなどのマスメディアによる報道の自由も、重要である。

プライバシーの権利 編集

私生活での秘密であるプライバシー(英: Privacy)を、他人に勝手に公開されるべきではないと言う考えに基づき、私生活の秘密を守るべきという「プライバシーの権利」が主張されている。

このような考えにもとづき 個人情報保護法(こじんじょうほう ほごほう)が2003年に制定され2005年に施行された。

なお、行政の情報公開でもプライバシーに配慮する必要があり、たとえば地方公共団体での情報公開では住民個人の情報などは公開してはならない。

テレビや新聞などのマスメディアも、情報公開の対象者のプライバシーには配慮しなければならない。 その一方で、マスメディアやメディアを見る大衆には、知る権利もあるので、「知る権利」と「プライバシーの権利」とのバランスが重要である。


中学生どうしや友達どうしでも、相手にプライバシーがあるので、勝手に無断で相手に私生活の情報を公開してはいけない。

また、他人の電話番号や他人の住所などもプライバシーに近い扱いを受けるので、他人のこれらの情報は、公開しないほうが良い。

肖像権(しょうぞうけん) 編集

撮影された写真などを、みだりに公開されると、プライバシーが侵害されたり、つけまわされたりして危ない目にあいかねないので、無断の写真撮影を禁止するべきという考えにもとづき、他人から無断で写真を撮影されない権利や、写された相手に無許可で写真を利用しないように主張できる権利が考えられている。

このような、自分の写った写真を無許可で公開されない権利のことを肖像権(しょうぞうけん)という。

なお、日本の法律では、肖像権という権利を規定した文章は無い。

一般人を無断で撮影した写真を無許可で利用したら肖像権の侵害になるという考えが一般である。

では、テレビのニュース報道などの場合の相手の肖像権をどうするかが、よく議論になる。 たとえば政治家などの写真撮影やビデオ撮影などを無原則に禁止してしまうと、テレビや新聞などで報道ができなくなる。 このため、国会議員、地方議員、公務員などの公人(こうじん)といわれる人たちの公務中の活動ではプライバシー権などが部分的に制限されていて、報道などの正当な理由にもとづけば、公開できるという考えが一般である。

ただし、相手が公務員など公人であっても、公務いがいの私生活などでは、プライバシー権などがあるので肖像権もあり、私生活は、むやみに写真公開されてはいけない。

また、政治家の家族や友人など、公人の本人いがいのは、公人では無く私人(しじん)だと見なされるので、本人いがいは原則的にプライバシーの保護や肖像権の保護の対象になる。


また、スポーツの競技大会での選手など、注目されることが対象者の目的の場合は、スポーツ大会中の選手のようすなら一般に撮影が許されたりと、肖像権が制限されると考えるのが普通である。

また、テレビや新聞で報道された写真などの対象者が、特に有名でない一般人でも、個人を特定できない場合などは、肖像権の侵害には当たらないと判断される場合もある。 このように一般人相手でも特定できないなら写真公開できるように、しておかないと、たとえばニュースなどで報道に値する出来事があった場合でも、その出来事が起きた場所に、一般人がいると、出来事の写真を公開できなくなってしまうので、このような解釈がされている。

  • 中学生によるインターネットやSNSでの写真や動画公開について

肖像権にはこのように例外的に制限される場合もあるとはいえ、中学生にはこのような判断が難しい。 取り敢えず、友達同士の写真や動画はインターネットやSNSでは公開しない方が良いだろう。

友達同士の場合は政治家や公務員などとは違い、相手が公人であることはまず無いと言っていいだろう。


友達以外でも、あまり他人が写った写真やビデオ動画などを自分が中学生もしくは高校生のうちは、インターネットなどで不特定多数などには公開しないほうが良いだろう。

どうしてもインターネットで写真を公開したい場合は、相手の人に確認を取って許可がもらえた場合にのみ公開するのが良い。しかし、中学生にはここまでのステップを踏めるだけの時間が足りない筈だから、中学生のうちはインターネットでの他人が写った写真の公開はしないほうがトラブルに巻き込まれにくくなるので良いだろう。

※ 他教科関連
中学校技術/情報通信ネットワークと情報モラル

環境権 編集

日本では、高度経済成長期ごろの公害問題や自然破壊などをきっかけに、環境を守る権利が主張されはじめました。

環境アセスメント 編集

自然は一度、壊されると、回復するのが長い時間がかかったり、森林地帯などが工業化されてしまうと回復が困難になる。なので、大規模な工事や開発がされる前には、事前に工事などが自然環境にどういった影響を与えるかを工事事業者などが調査して、周辺住民に説明をする責任が工事事業者などにある。

このような、開発の環境への影響の評価を環境アセスメント(英:Environmental Impact Assessment、略:EIA)と言う。1997年には環境アセスメント法が制定された。


日照権(にっしょうけん) 編集

 
日照権に配慮したマンション

また、この高度成長のころ、ビルやマンションなどが増えたので、高い建物の周辺には日当たりの悪い住宅が出てきた。この問題を受けて、高い建物は日当たりを妨げてはいけないという制限が法律で作られ、周辺住民の日照権(にっしょうけん、英:Right to light)という権利が、それは日当たりを妨げるビルなどを制限する権利が主張され始めた。

日照権の観点から、建築基準法(けんちく きじゅんほう)では、建物の高さや形などが制限されている。 たとえばマンションの北側の部分が斜めになっていることが多いのは、周囲の建物の日照権を守るためである。(太陽は昼間には南に登るので、反対方向の北に影が出来る。)

その他の権利 編集

  • 自己決定権(じこけっていけん)
 
ドナーカード(臓器提供意思表示カード)

個人が,個人的な事柄について,さまざまな人や物事から干渉されずに自由に決定する権利。医療現場での患者が十分な説明を受けたうえで同意するインフォームド・コンセントや自らの臓器の提供について意思を表明するドナーカードもこの権利に基づいている。

  • 嫌煙権(けんえんけん)
 
日本の喫煙所

たばこの煙を吸いたくない人が、吸わないように出来る権利の嫌煙権も、環境権の一部と考えられている。嫌煙権の観点から、公共機関などでは、分煙(ぶんえん)や禁煙(きんえん)が進んでいる。

  • 忘れられる権利
(※ 教育出版が紹介。高校の「公共」科目でも清水書院が紹介)

インターネットの発達した現代、個人の情報がインターネットに残りつづけることが、プライバシーの観点などからも問題視されるようになりました。

そこで、インターネット上の個人情報を削除させる権利をつくろうという議論が起こり、この権利のことを「忘れられる権利」と言います。

ヨーロッパでは、すでにEUにおいて2018年以降、「忘れられる権利」がEUの「一般データ保護規則」(GDPR)において制定されています。

※ 略称「GDPR」は高校「公共」で清水書院が紹介。高校「政治経済」で東京書籍が紹介しているのも確認。