中学校社会 公民/日本の財政の問題

赤字財政

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日本は、戦後(第二次大戦後)に公共事業を多く行い、財政の支出がふくらんだ。その結果、国の借金もふくらんだ。国の借金の残高である国債残高(こくさい ざんだか)は800兆円をこえている。

政府は、支出を減らすために国の事業の縮小や撤退を行い、国が行っていた事業のいくつかを民間企業にさせたり、あるいは民間企業に事業を売り払う、民営化(みんえいか)を行っている。

  • 民営化
1985年には電電公社(でんでんこうしゃ)が民営化され、NTT になりました。
1987年には国鉄(こくてつ)が JR になりました。
2007年には郵政が民営化しました。


また、省庁(しょうちょう)の統廃合も、財政支出の削減を考えての面もある。


水道事業の民営化
※ 2021年以降、一部の検定教科書で水道民営化がコラムで紹介されている(※ 日本文教出版の教科書で紹介を確認)。

2018年、水道事業の運営を民間企業が行うことを可能にする水道法改正案が国会で可決されました。

日本にかぎらず、海外でも一部の国で、水道を民営化する政策が実行されたこともあります。ただし海外では、国によっては、水道料金の高騰などの不都合が起こり、ふたたび水道事業を公営に戻した国もあります。(民営化前の議論では、「民営化によって効率的な経営が行われることにより、水道料金が安くなるはずだ」という予想があったが、その予想に当てはまらない結果になった国もあった。)

かつて、日本の水道管理は原則、自治体が行うものでした。しかし近年の日本では、水道民営化も議論になっています。

なお、改正水道法の法案では、民営化したとしても最終的に自治体が給水の責任をもつものとされています。そのため、災害などの際は自治体が最終的な給水の責任を持つと考えられている、と言われています(※ 日本文教出版の教科書の見解)。

(※ 範囲外: )

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「市場化テスト」 、「官民共同入札制度」、「PFI法」など

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日本における水道の「民営化」については、マスコミ報道などでは「民営化」とは言うものの、しかし従来のような(JRやNTTのときのような)最終責任までを民間企業にゆだねる「民営化」とは異なる制度である。
日本では実は2006年に「官民競争入札制度」という仕組みが作られており、この官民共同入札制度では最終的には官僚機構にあるので[1]、水道の「民営化」もどちらかとそれに近いだろう(責任を負うのは官僚機構ではなく自治体という若干の違いはあるが)。
日本における「官民共同入札制度」は、イギリスにおいて過去に行われてた「市場化テスト」(market testing)の考え方にならったものである。地方自治の管轄象徴である総務省も、公開PDFなどで市場化テストについては把握している『「市場化テスト」の手引き ~ 地方公共団体における 公共サービス改革の推進 ~』、総務省
ただし、水道事業については厚生労働省も管轄しており、厚生労働省が水道の民営化の根拠法としているのは1999年からのPFI法(「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」)であり[2]、このように省庁によって若干の根拠法の差異がある。
なお、日本でも2006年ぐらいまでの段階ですでに公共職業安定所など一部の行政施設の一部で「市場化テスト」が導入されている[3]とされている。
  • 新自由主義と英国サッチャー政権

1980年代にイギリスではサッチャー政権が行政などの民営化の改革を進めており、経済的な議論のほかにもサッチャーが女性首相であったことなどワイドショー的な話題も含めて、世界的にも話題になった。ただし日本の上述の改革の手本は1990年代のものも多く、90年代にはすでにサッチャー政権は終了しているので、完全には時期は重なってはいない。ともかく、2000~2010年の日本は90年代のイギリスの民営化改革にならった行政改革をしていたと思われる。

なお高校の政治経済でサッチャー政権については習う。イギリスだけでなく、雨リカのレーガン政権の1980年代の新自由主義なども、この流れによるものである。日本も1980年代、国鉄(現在のJR)や電信電話公社(現在のNTT)などの民営化が続いたが、これも米英と歩調をあわせた日本流の新自由主義の一貫だと思われており、高校の政治経済の教科書でも、おおむね、そのような視点で解説される。)


「フランチャイズ制」

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水道事業ではあまり用いられない言い方だが、イギリスなど欧州における民営化において「フランチャイズ制」という言い方がある[4]。日本ではよくコンビニや外食産業などで「フランチャイズ」という言い方の経営手法があるが、さて公共事業の「フランチャイズ」の場合とは公的インフラを公共機関が所有したままで運営サービス提供のみ民間に経営権を与えるという仕組みのものである。イギリスでの民営化におけるフランチャイズ制度も1990年代に採用された手法である[5]。内閣府の2006年の市場化テストの資料にも「フランチャイズ」の用語はある[6]
  1. ^ 塩澤修平『経済学・入門』、有斐閣、2021年、4月30日 第3版 第5刷 発行、P142
  2. ^ 『3.官民連携の推進(第24条の4~第24条の13)』、厚生労働省
  3. ^ 柳川隆 ほか著『ミクロ経済学・入門』、有斐閣、2019年11月15日 新版 第4刷 発行、P322
  4. ^ 柳川隆 ほか著『ミクロ経済学・入門』、有斐閣、2019年11月15日 新版 第4刷 発行、P322
  5. ^ 『「日本式」がベスト?岐路に立つ英鉄道の民営化 コロナ禍で「フランチャイズ制度」見直し論』、さかい もとみ 著、2020/07/16 5:00 2022年2月20日に確認.
  6. ^ 『市場化テストに関する海外事例調査報告書』、規制改革・民間開放推進会議 市場化テスト・ワーキング・グループ 2022年2月20日に確認.