中学校社会 公民/日本国憲法の原則

そもそも憲法とは編集

 
法の構成  憲法を頂点として、上にあるほど、強い効力をもちます。強い下位にある法が、上位にある法に反することはできません。
なお、図中の「命令」とは、内閣がさだめる政令や、省庁がさだめる省令のことです。
なお、図では省いてあるが、(都道府県議会や市議会などの)地方公共団体が制定する「条例」(じょうれい)も、法律には逆らえない。なので、もし図に「条例」を追加するなら、「条例」は「法律」よりも下のほうに書かれることになる。

憲法(けんぽう、英:constitution コンスティチューション)とは、その国の最高の法律です。憲法は 最高法規(さいこう ほうき、英:supreme law サプリーム・ロー) です。 そのため、憲法に違反している法律があれば、その違反している法律は無効とされます。(憲法98条)

また、憲法は、他の法律についての基本の方針を述べた基本法でもあります。

また、憲法では、法律をつくったり改めたりする際の決まりごとが定められています。

※ 参考: 「法」と「法律」のちがい編集

(※ いちおう、「法」と「法律」のちがいは、中学の範囲内です。いくつかの検定教科書で、欄外や巻末などで、「法」と「法律」のちがいについて、説明されています。)

世間一般では、文脈によっては「法律」(ほうりつ)と「法」(ほう)は、意味が違う場合があります。

一般に、「法律」とは、国会の制定した法のことを言います。(高校教科書の、山川出版社の政治経済の検定教科書では、こう定義している。実教出版の「経済活動と法」教科書でも、こう定義しています。) 

たとえば、県議会の制定した県条例(けんじょうれい)は、「法律」とは言わない場合もあります。

中学の社会科では、「法律」の意味は、国会で制定した法のうち、さらに憲法をのぞいた法だけを「法律」という場合もあります。

このように、「法律」と言葉に、憲法を含めるか含めないかは、場合によって、わかれます。

なので、国会で制定した法のうち、憲法を除いた法のことを、「通常の法律」などのように、言う場合もあります。(※ たとえば山川出版社の「現代社会」科目の教科書では、「通常の法律」という言い方をしている。)

※ いっぽう、「一般の法律」とは言わないほうが安全でしょう。なぜかというと、すでに「一般法」という用語が、別の意味で、法学には存在します。


そして、憲法も「法」に含まれます。省令や政令、条例なども「法」に含まれます。広い意味の「法」では、政府が制定した命令も「法」に含める場合もあります。


中学校では、「憲法」の下に「法律」があると習い、法律は憲法に逆らえない、と習いました。なお、行政府の定める規則は、法律に違反できません。


日本国憲法の大まかな内容編集

日本国憲法には条文が多くありますが、内容の原則として、つぎの3つの原則があると、有名な学説では言われています。国民主権 (英訳:the sovereignty of the people)、平和主義(英訳:Pacifism)、基本的人権の尊重(英訳: respect for fundamental human rights)の3つの原則です(※ いわゆる「憲法の三大原則」)。

国民主権編集

日本国憲法では、主権者は日本国民であると、明確に宣言されています。

日本国憲法の前文でも「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と宣言されています。

政治の決め方は、国民からの選挙で選ばれた議員を代表者として、議員を通して議会で政治が決まります。なお、このように、議会を通して政治を決める方式を議会制民主主義(ぎかいせい みんしゅしゅぎ、Representative democracy リプリゼンティティブ・デモクラシー)と言い、また、間接民主制(かんせつ みんしゅせい)とも言います。

日本国憲法の議会のあり方では、大日本帝国憲法の時代と同様に、議会制が取られています。 日本国憲法では選挙権が与えられる対象が大日本帝国憲法の時代よりも拡張され、選挙権は国民であれば男女ともに18歳以上の大人に選挙権が平等に与えられます。

選挙で選ばれた議員が政治を決めるので、選挙権(英:voting rights)が大事な権利になります。また、政策を主張するには、そのための自由や権利が無くてはなりません。そのため、言論の自由や表現の自由が、大切な権利です。

このように、主権者が国民であるという方式や考え方などを「国民主権」(こくみんしゅけん)といいます。


また、日本では「司法・立法・行政」の三権分立(さんけん ぶんりつ)が取られていますが、司法でも、最高裁判所の長官は、国民による審査(しんさ)をうけます。


基本的人権編集

どのような人間にも、生まれながら持っている権利である 基本的人権(きほんてき じんけん、英:fundamental human rights ファンダメタル・ヒューマン・ライツ) を定め、この基本的人権を日本国憲法では保障して尊重しています。

基本的人権には、以下のような人権があります。 平等権(びょうどうけん) ・ 自由権(じゆうけん) ・ 社会権(しゃかいけん、英:Social rights ) ・ 参政権(さんせいけん、英:Suffrage サフリー) ・ 裁判を受ける権利 、 ・・・・・・・

どんなふうに法律が改正されても、この基本的人権だけは守らないといけないとされています。基本的人権を侵すような法律は憲法に違反していると考えられます。


・ 平等権(びょうどうけん)
人種、信条、性別、社会的身分などの差によって、法律では差別されないように、さだめた権利です。

法律以外での平等については、さだめていません。たとえばスーパーマーケットの化粧品売り場に行けば、売り場には女性向けの化粧品が多いかもしれませんが、べつに法律で「男性向けの化粧品を売ってはならない。」と決まってるわけではなく、べつにスーパーマーケットは男性の平等権を侵害したことにはなりません。そのような商業の女性向け製品・男性向け製品などについては、法律の定めの外であり、平等権の違反にはなりません。

公共の福祉編集

  • 公共の福祉(こうきょうのふくし)

憲法で定められた権利は、どうあつかっても良いのではなく、社会全体の利益をそこなわない範囲や、または他人の権利をそこなわない範囲(はんい)で、憲法の権利の活用がみとめられています。

このように、社会全体の利益や権利のことを、公共の福祉(こうきょうのふくし)と言います。

たとえば授業中に大声でさわいだりして他の生徒の勉強をじゃますることは、他の生徒の「教育を受ける権利」を侵害しているので、公共の福祉の考えによって、授業中に大声でさわぐ生徒を先生が叱っても(しかっても)、人権侵害にはなりません。

しかし、「公共の福祉」を理由にして、人権を侵害することは、ゆるされていません。

憲法の平和主義と自衛隊編集

日本国憲法では、戦争をおこさずに平和主義をまもろうとしています。憲法では、日本は戦力(せんりょく)や武力(ぶりょく)を持たないとしており、軍隊を持たないとしていますが、実際には日本国は自衛隊(じえいたい)が戦車などの兵器をもっています。

自衛隊が存在していたり、自衛隊が兵器をもっていることは、憲法に矛盾しているような状態なので、批判的な意見や議論もあります。ですが、日本の第二次大戦後の政治では、今までのところ、国会議員の選挙で選ばれた政権が、自衛隊の保有を認める時代が、ずっと、つづいています。

参考: 憲法の命令先の対象者編集

  • 憲法の命令の対象は国および政府、役所

憲法は、こまかいことを言うと、国や政府や役所に対する命令であり、日本国民には直接は命令をしていません。 そもそも、もし憲法で、国民に「憲法にしたがえ。」という命令をすると、憲法の改正の議論が出来なくなってしまいます。 ただし、実質的には、憲法にもとづいた法律をとおして、国民にさまざまなことが強制されるので、まるで憲法が国民への命令のような役割を持っています。


国民の義務編集

憲法には権利(けんり、英:right)だけでなく、国民の義務(ぎむ、英:obligation オブリゲイション)についても書かれています。

義務は、納税(のうぜい)の義務(第30条) 、 子供に教育を受けさせる義務(第26条) 、 勤労の義務(第27条) の3つの義務があります。

基本的人権編集

平等権(びょうどうけん) ・ 自由権(じゆうけん) ・ 社会権(しゃかいけん、英:Social rights ) ・ 参政権(さんせいけん、英:Suffrage サフリー) ・ 裁判を受ける権利 、

自由権には、大まかには身体の自由・精神の自由・経済の自由に、分かれます。以下のような権利があります。

身体の自由編集

犯罪をして逮捕されるときなどをのぞけば、体を不当に拘束されない、という権利です。 法律によらなければ、逮捕はされません。

また、奴隷的な拘束を禁じた義務でも、あります。


精神の自由編集

どのような考えを持っていても、少なくとも法律では、その考えを持つだけでは罰しない、ということに、憲法では、なっています。

精神の自由には、思想・良心の自由、表現の自由、信教の自由や、学問の自由 などがあります。

経済活動の自由編集

職業選択の自由(しょくぎょうせんたく の じゆう)などがあります。近代よりも昔は、人々は身分のしばりがあって、自由に職業を選ぶことが出来ませんでした。職業選択の自由では、そのような職業をえらぶ際のしばりをなくしています。


ただし、どんな仕事も、お金を払う客がいないと成り立たないので、かならずしも、ある職業を目指したからと、その職業になれるとはかぎりません。

たとえばプロのスポーツ選手を目指しても、その職業につける人は少ないでしょう。

職業選択の自由は、その職業になれることまでは、保証しません。職業選択の自由が保証するのは、ある職業を目指しても、法律では、その目標が禁止されることはない、ということです。

天皇について編集

 
アメリカ大使館でのマッカーサー(左側の人物)と昭和天皇(右側)(1945年9月27日フェレイス撮影3枚中の1枚)

日本国憲法では、明確に国民主権が明記され、天皇の主権が否定されました。大日本帝国憲法では主権者であった天皇は、日本国憲法では天皇は日本国のまとまりの象徴(しょうちょう)になりました。(もっとも、実際には大日本帝国憲法の時代でも、形式的には政治の主権は天皇にあったものの、実際の政治は議会の意向を優先で決めていた。)日本国憲法では、天皇は日本国の「象徴」(しょうちょう)と憲法第1条で規定されています(つまり日本は、いわゆる象徴天皇制(しょうちょう てんのうせい))。

なお、外国からは、天皇が日本の元首(げんしゅ、英:Head of State)と見なされることもあります。元首とは、国家の長(ちょう)のことです。

政治に関しては、天皇は、実際の政策の決定は行わず、また政策の決定をする権限も天皇は持っていません。天皇は、儀式(ぎしき)的な国の仕事である国事行為(こくじこうい)を行うとされています。また、その国事行為は、内閣(ないかく)の助言と証人にもとづくとされています。


天皇の国事行為には、次の行為があります。

・ まず、国会を招集したり、衆議院を解散する行為があります。ただし、国会で政策を天皇が決定することは出来ません。このように、天皇は政治の儀式的な仕事のみを行なっています。
・ 国会で決まった法律や政令や、内閣の決めた条約を公布することも、天皇の仕事です。天皇は法律そのものを決定する権限は行えません。立法の権限を持っているのは国会議員のみであり、天皇に立法の権限は、ありません。
・ 勲章(くんしょう)などの栄典(えいてん)を授与するのも、天皇の仕事です。
・ 外国の大使(たいし)や公使(こうし)を接待(せったい)するのも、天皇の仕事です。
・ 国会がえらんだ内閣総理大臣を、天皇は任命します。内閣がえらんだ最高裁判所の長官を、天皇は任命します。


前文編集

日本国憲法の条文は長いので、この節では、すべては紹介できません。この節では、日本国憲法の冒頭に書かれている前文(ぜんぶん)を紹介します。
  • 前文

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、

われらとわれらの子孫のために、

諸国民(しょこくみん)との協和(きょうわ)による成果と、わが国(くに)全土(ぜんど)にわたって自由のもたらす恵沢(けいたく)を確保し、

政府の行為によって再び戦争の惨禍(さんか)が起る(おこる)ことのないようにすることを決意し、

ここに主権が国民に存(ぞん)することを宣言(せんげん)し、

この憲法を確定する。

そもそも国政は、国民の厳粛(げんしゅく)な信託によるものであって、 その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使(こうし)し、その福利(ふくり)は国民がこれを享受(きょうじゅ)する。 これは人類普遍(じんるいふへん)の原理であり、この憲法は、かかる原理に基づく(もとづく)ものである。 われらは、これに反する一切の憲法、法令(ほうれい)及び(および)詔勅(しょうちょく)を排除する。

日本国民は、恒久(こうきゅう)の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高(すうこう)な理想を深く自覚するのであって、 平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。

われらは、平和を維持し、専制と隷従(れいじゅう)、圧迫(あっぱく)と偏狭(へんきょう)を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたい(しめたい)と思う。 われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏(けつぼう)から免れ(まぬかれ)、平和のうちに生存する権利を有する(ゆうする)ことを確認する。

われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的(ふへんてき)なものであり、この法則に従う(したがう)ことは、自国の主権を維持(いじ)し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務(せきむ)であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉(めいよ)にかけ、全力をあげて この崇高(すうこう)な理想と目的を達成することを誓う(ちかう)。

(以上、前文)

憲法改正の手続き編集


憲法の改正は、通常の法律とは違う改正の手続きがありますが、改正そのものは日本国憲法でも可能です。 日本国憲法の条文にも改正の手続きが書いてあります。

憲法を安定させるため、改正の条件は、通常の法律よりも、きびしい条件になっています。 通常の法律の改正よりも、より多くの議員の賛成や国民の賛成が、憲法の改正では必要なようになっています。

憲法は最高法規なので、他の法律よりも安定させる必要があり、そのため日本では、きびしい改正の条件になっています。

まず、衆議院と参議院それぞれ両方の総議員の3分の2以上の国会での賛成によって、発議(はつぎ、意味:国会での提案のこと)されます。 この憲法改正の発議では、衆議院と参議院は対等です。

国会での発議ののち、国民投票にかけ、過半数の賛成があれば、憲法は改正されます。

これらの条件の一つでも満たさなければ、その発議での憲法改正は廃案になります。たとえば衆議院の3分の2以上の賛成が合っても参議院の3分の2が満たさなければ廃案です。衆参の3分の2以上を満たしても、国民投票の過半数の賛成に届かなければ廃案です。

以上の条件を満たし、もしも憲法改正が決まったら、天皇が国民の名で憲法改正を公布することになります。憲法改正の公布も、天皇の国事行為の一つです。


さて、西暦2014年7月の時点では、まだ日本国憲法は一度も改正されていません。

  • 国民投票法(こくみん とうひょうほう)

2007年に、憲法改正のための国民投票の手続きを定めた法律の国民投票法(こくみん とうひょうほう)が制定され2010年に施行されました。 なお、国民投票法の正式名称は「日本国憲法の改正手続に関する法律」です。

なお、憲法改正には改正発議のあとの国民投票による「その過半数」(憲法 第96条)の賛成が必要ですが、しかし「その過半数」とは何の過半数なのかは憲法そのものには書かれていません。国民投票法では、有効投票の過半数によって憲法改正をできると制定しています。(※ 検定教科書では、帝国書院や教育出版の教科書で、本文では説明は無いがい、図表で「投票」の過半数だと説明されている。)

有権者の過半数ではなく、有効投票の過半数です。


憲法改正の論点編集

憲法の改正で、よく提案される改正案を上げます。

・自衛隊を確実に合憲にするため、憲法第9条を改正するかどうか?
・新しい人権として、知る権利 や プライバシー権 や 環境権 などを、憲法に追加するかどうか?
・国の歴史や伝統にふれた文を前文に書くか?(現在の日本国憲法では、あまり、ふれてない。)

ほかにも、いろいろと改正案はあります。