社会保障

編集
日本の社会保障
  名称および仕事内容
 社 
 会 
 保 
 険 
・医療保険 
  (健康保険、国民健康保険) 
・介護保険 
・年金保険 
  (国民年金、厚生年金、共済年金) 
・雇用保険 
・労働災害保険
 公 
 的 
 扶 
 助 
 ・生活保護 
 (生活扶助、住宅扶助、 
  医療扶助、教育扶助) 
 社 
 会 
 福 
 祉 
 ・障害者福祉 
 ・老人福祉 
 ・児童福祉 
 ・母子福祉 
 公 
 衆 
 衛 
 生 
 ・感染症予防 
 ・予防接種 
 ・下水道整備 
 ・廃棄物処理 
 ・公害対策  

日本の社会保障は、社会保険公的扶助(こうてき ふじょ)・社会福祉公衆衛生の4つにもとづいている。

社会保障での「公衆衛生」とは、保健所などの、感染症の予防の活動のこと。

社会保険

編集

人々が万が一の事故や病気などにあったときのために備えて、あらかじめお金を出し合う仕組みを保険(ほけん)という。

保険には、民間による保険と、国による保険がある。この記事での保険の説明は、おもに、国による保険について説明する。


「社会保険」(しゃかい ほけん)とは、日本国による保険である。
たとえば、病気になったときに医療費が安くなるという国民健康保険(こくみん けんこうほけん)や、老齢になったときにお金を受けとる年金(ねんきん)などが社会保険である。

社会保険は保険の内容ごとに、医療保険(いりょう ほけん)や年金保険(ねんきん ほけん)、介護保険(かいご ほけん)や、労働災害保険(ろうどう さいがい ほけん)、雇用保険(こよう ほけん)などに分かれている。


  • 医療保険(いりょう ほけん)

国民健康保険などの国の医療保険に加入してないと、病気になったときに治療費を全額負担することになり、治療費が高くなる。

公的な医療保険(健康保険など)はすべての日本国民に加入の義務がある。( 国民皆保険(こくみん かいほけん) ) 健康保険に加入するのは75歳未満で、75歳以上は後期高齢者医療制度(こうき こうれいしゃ いりょうせいど)を利用する。

  • 公的年金(こうてき ねんきん)
年金の種類
  老齢年金  
  障害年金  
  遺族年金  
年金の加入先
  自営業者・無職など     国民年金  
  サラリーマンなど    厚生年金  
  公務員など    共済年金
 
年金手帳

老齢になったときにお金を受けとる 年金(ねんきん) は、社会保険の一つである。 国による公的年金(こうてき ねんきん)の年金保険には、国民年金(こくみん ねんきん)などがある。

国民年金の基本的な役割は、高齢になったときに年金を受け取れる老齢年金(ろうれいねんきん)の役割が基本だが、ほかにも、けが・病気で障害者になったときの障害年金(しょうがい ねんきん)という役割もある。

これら老齢年金、障害年金、遺族年金は、一つの年金で、まとめて払っている。個別に払うことは出来ない。

また、年金の加入先には、職業別に国民年金、厚生年金、共済年金などがあるが、一般の利用者が「どの職業が、どの年金に加入するか?」を自分で覚える必要は無く、年金事務所などに相談に行って申請書に職業など必要事項を書いて報告すれば、事務所の担当者が法律にもとづいて、適正に加入先を判断してくれる。

就職した場合は、勤務先の会社が大手の会社なら、会社が手続きを代行して厚生年金などに登録してくれる。 だが、そうでない会社もあるので、きちんと確認する必要がある。

会社を失業した場合は、けっして自動的には加入するべき年金加入先が切り替わらないので、年金事務所を訪れて、自分で国民年金に登録しなおす必要が有る。


なお、年金を納め始める20歳のときと、45年後の65歳の時代では、物価が異なる場合も考えられる。このため、国による年金の受給額には、物価の変動に応じて年金受給額を調節するという、「物価スライド」という仕組みを取り入れている。


・ 障害年金(しょうがい ねんきん)
この障害年金では、病院への初診の時点で年金に加入してないと、たとえ病気・けがで障害者になっても、障害年金を受けられない。

 
身体障害者手帳の表紙の一例。
 
身体障害者手帳の証明欄の一例

障害者手帳(しょうがいしゃ てちょう)は年金に加入しなくても障害者が市役所の福祉課などに申請すれば受け取れるが、障害年金は年金に未加入(み かにゅう)だと受け取れない。


読んでても、いまいち分からないかもしれないが、
とりあえず読者は大人になったら、年金を必ず払っておくべきである。
年金を払ってないと、もしも事故・病気などで障害者になった場合に、大変な事態にあいかねない。


世間で「年金」というと、少子化による老齢年金の財政難ばかりが話題に取り上げられやすい。だが、実用的には、障害年金について知ることも、とても重要である。

この障害年金の制度による障害者への救済があるため、たとえ国の財政・政策に不満があろうが、年金には必ず加入するべきであり、年金保険料は払うべきである。

国民年金は20歳を過ぎると、国民すべてが加入する義務がある。払わなくても罰則がないが、年金を受け取れない。


  • 遺族年金(いぞく ねんきん)

国民年金、厚生年金などの加入者が死亡したときに、残された遺族(いぞく)に対して支給される公的年金。

・ 労働災害保険(ろうどう さいがい ほけん)
仕事でケガをしたときの社会保険として、労働災害保険(ろうどう さいがい ほけん)がある。業務上の病気・けが等の災害を労働災害(ろうどう さいがい)という。通勤(つうきん)中の災害も含む。労働災害を略して労災(ろうさい)と言う。

労災保険は原則的に会社が加入義務を負い(特殊な業界を除く。)、負担料も会社が払う義務がある。

授業員がアルバイト、パートであろうが、経営者は労災保険を払う義務がある。経営者以外の授業員の数が、たとえ1人でも従業員がいれば、会社は労災保険を払う義務がある。 労災保険の加入義務が無いのは個人経営の自営業の場合など。

もし加入義務のある普通の会社なのに、労働者を雇っているのに会社が労災保険を払って無かったら、違法なので、役所に相談し違法行為を報告するべき。 アルバイトやパートを労災保険に加入させない会社があれば、会社の違法行為なので、役所に相談し違法行為を報告するべき。


世間で「社会保険」というと、少子化による老齢年金の財政難ばかりが話題に取り上げられやすいが、実用的には、障害年金や労災保険について知ることも、とても重要である。これら労災年金や障害年金などを知らないと、もしも病気や事故、労働災害などを負った時に、大変な事態に、あいかねない。


  • 介護保険(かいご ほけん)

公的介護保険(こうてき かいご ほけん)は、40歳以上に加入義務がある。 介護が必要になったときに、1割負担で介護が受けられる。

介護が必要な老人も、老人ホームなどで介護を受ける。

2000年に、公的介護保険制度が導入された。 現在の日本では、介護労働は、一般に重労働であり、なのに賃金が低いという社会問題がある。さらに介護職員の待遇が、非正規社員の場合もある。

公的扶助

編集
  • 生活保護(せいかつ ほご)

収入が少なくて最低限度の生活が出来ない人に、自立のために必要なぶんの生活費を役所が支給する制度を生活保護(せいかつ ほご)という。生活保護の財源は、税金などである。 貧しくて生活費をもらう側の人が、生活保護を受ける側の人である。

この制度は生活保護法(せいかつ ほごほう)に、もとづく。

社会保障の一覧表

編集
日本の社会保障
  名称および仕事内容 解説および対象者
 社会保険  ・医療保険 
  (健康保険、国民健康保険) 
 治療費の負担割合の減少。
・介護保険   1割負担で介護が受けられる。
・年金保険 
  (国民年金、厚生年金、共済年金) 
 老齢年金 :40年以上は年金を払い、65歳以上になると、年金が支給される。 
 障害年金 :年金加入時に事故や病気で障害者になった場合、支給される。 
 遺族年金 :加入者が死亡したときに遺族に支給される年金。
・雇用保険   失業時に保険金が支給。
・労働災害保険  業務上の事故などによる病気・けがなどに 
 保険金が支給される。
 公的扶助   ・生活保護 
 (生活扶助、住宅扶助、 
 医療扶助、教育扶助) 
 収入が少なくて最低限度の生活が出来ない人に、 
 自立のために必要なぶんの生活費を支給する。
 社会福祉   ・障害者福祉 
 ・老人福祉 
 ・児童福祉 
 ・母子福祉 
 社会的に弱い立場の人を保護する。
公衆衛生  ・感染症予防 
 ・予防接種 
 ・下水道整備 
 ・廃棄物処理 
 ・公害対策
 病気を増やさないための予防などである。

ノーマライゼーションとバリアフリー

編集
※ 下記の「バリアフリー」は制度名ではないですが、説明の流れの都合上、このページでバリアフリーなども説明します。

まず、身体障碍や知的障害など、障害のある人のことを「障がい者」と言います。

※ 漢字では「障害者」、「障碍者」などと書きます。
(※ 範囲外)障害に関する、あれこれ
「ハンディキャップ」は米英では使わなくなった

英語のほうで、障害者を意味する ハンディキャップド handicapped が文字中の cap (帽子)のつづりから、物乞い(ものごい)・コジキを連想させるので尊厳上よろしくない、と苦情が高まって、言い回しが person with disabilities (直訳すると「できないことのある人」的な意味)になっており、日本の公文書などでは「障害のある人」のように訳されます。

「特別支援学級」、「特殊学級」など

小中学校にある「特殊学級」とか「特殊支援学級」というのは、知的障碍児童や肢体不自由児童や極度の弱視者や難聴者や身体虚弱者などのための教室のことです。教科書では習いませんが、おそらく中学校あたりで教師からの口頭などで習うと思います。昭和後半~平成初期の時代は「特殊教育」と言ってましたが、2007年から「特別支援教育」へと言い方が変わりました[1]。地域によっては「養護学級」などという場合もあります[2]


※ 下記から中学の範囲に戻る

 
バスに装備された車椅子スロープの例
(神奈川)

高齢者や障害者を施設などに隔離(かくり)せず、たとえ障害者や高齢者でも、なるべく自宅で普通に生活できるようにすることこそが社会福祉の目指すべき方向性である、という考え方のことをノーマライゼーション(normalization[3])という。

また、ノーマライゼーションのための手段として、歩道などを車いすの身体障害者でも移動しやすいように整備をしたりする必要がある。

たとえば、道に大きな段差があると、その場所は車いすの人が通行できない。同様に公共機関の入り口に大きな段差があると、その施設には車いすの人が入れなくなる。


一般に建物の床は、平地よりも、やや高い場所にあるのが普通なので、スロープ(なだらかな斜面)などが無いと、車いすの人は、その建物の入り口には入れなくなる。なので、公共施設などの入り口には、スロープなどがあるのが一般である。

このように、公道や公共施設などの整備をして、障害者が使えない施設をなくすことをバリア フリー(barrier free[4])という。

言葉の「バリア」の意味は、物をさえぎるバリアーのことで、入り口の段差が車いすの障害者にとっては、障害者を遠ざけるバリアーになっている、という意味である。

説明のために車いすの利用者に例えたが、べつに車いす利用者だけに限らず、ノーマライゼーションやバリアフリーは取り組まれている。

ほか、公共施設や店舗などは、盲導犬の使用を拒否できません(※ 東京書籍の見解[5])。

  • ユニバーサル デザイン
 
お酒の缶に記された点字。点字で「おさけ」と書いてある。

製品を設計する際に、利用者に障害者なども含み、身体に不自由のある人でも使えるように設計することをユニバーサルデザイン(英: universal design[6])という。べつに、利用対象を障害者に限定していない。

  • 法律など

障害者基本法という法律があり、障害のある人の自立と社会参加を目的としています。

ぽか、2013年には障害者差別禁止法が制定されました。障害者差別禁止法は文字通り、障害のある人への差別を禁止する理念の法律です。


※ 米英で「ハンディキャップ」という表現が「帽子(キャップ)を使ったコジキを連想させるからよくない」とか言われて「障害のある人々」person with disabilities と言い方が変わろうが、そんな英語の事情は日本には関係ないので、日本では引き続き「障害者差別禁止法」という略称のように「障害者」という言い方は残っています。
※ 世間では、英語の事情がよく分かってないダメ大人がときどき、「障害者という言い方は差別だ。障害のある人々と言え!」などと苦情を言ってきたりしたのです。しかし、上記のように単に英語のハンディキャップという単語の事情に過ぎません。
  • その他

最近は「インクルージョン」という用語も提唱されてきている。(※ 東京書籍が公民教科書で紹介ずみ(2024年に検定教科書の実物で確認)。)

「ノーマライゼーション」や「バリアフリー」など既存の用語だと意味を限定しすぎてしまうので(「バリアフリー」や「ユニバーサルデザイン」だと設計手法の用語)、もっと大まかに「障碍者でも、なるべく不自由がなく暮らせるようにしよう」という程度の漠然とした福祉思想のことを「インクルージョン」と言っている。

「インクルージョン」は比較的に新しい用語なので、本wiki当ページでは、これ以上の説明を省略する。「バリアフリー」や「ユニバーサルデザイン」などは1990年代頃から古く提唱されてきているが用語だが、インクルージョンはそうではない。

なお、英語でインクルージョン inclusion とは、「含む」(ふくむ)とかの意味の名詞。動詞インクルード include の名詞形。「障碍者でも、健常者でも、わけへだてなく」的な意味だと思われる。

なお、別に「バリアフリー」がインクルージョンに変わるわけではない。たとえば、中学教科書の東京書籍の教科書でも、インクルージョンの理想を実現するための手段としてバリアフリー的な建築を行うべきといった主張などをしている[7]

※ 検定教科書ではありませんが、福祉系の話題を扱った学術書を見ても「ノーマライゼーション」という単語も引き続き使われており、インクルージョンを実現するための手段としてノーマライゼーションをすべきだと主張している学術書もあります[8]

※ 教育の20世紀から21世紀の変化を扱ったニュースなどでは、あたかも「バリアフリーと言う考えが古くてダメだから、インクルージョンという表現に変わった」みたいに紹介される場合もありますが、しかし東京書籍の教科書でバリアフリーをインクルージョンの手段として紹介しているように、そのニュースは間違っています。ニュースだけではなく教科書で正確な知識を確認しましょう。


ダイバーシティ

編集

障害者に限らず、高齢者や在日外国人など、そういった、弱者とされる人々のことも、もちろん健康な人のことも考えて、尊重しようという「多様性」(ダイバーシティ)という概念も提唱されています。

女性の人権問題なども、ダイバーシティの問題として扱うこともできます[9]


しかし、現実には、在日外国人の権利については国家主権などの理由で、国政選挙権などが制限されているのも事実です。

実現している外国人むけ政策としては、日本に住む外国人のための日本語学級などが、東京書籍の教科書で紹介されています。


障害者を雇う企業もあります(※ 東京書籍の教科書でも紹介されている)。

しかし、障害によっては、どうしてもつけない仕事もあります。たとえば、目の見えない障害の人は、どうやっても、物を見る仕事にはつけません。目の見えない人が仕事をしたい場合、物を見る以外の、他の仕事につく必要があります。


なお、東京書籍の教科書パンフレットに、「ダイバーシティを尊重するインクルージョン」という文章があります[10]。なんだか似た理念の語句です。

社会保障の財政

編集

日本では高齢化にともなって年金などの国の支出が増えることが予想されており、また少子化にともなって労働力人口が減り、年金の納入者が減るので、福祉のための税負担が高まることが予想されている。日本の高齢者の割合は、約23%である。(2010年)

日本国の一般歳出の30%以上を、社会保障費が占めている。


  • 高福祉高負担(こうふくし こうふたん)

スウェーデンは社会保障が充実しているが、税金も高い。スウェーデンの社会保障財政は、高福祉高負担(こうふくし こうふたん)と言われる。スウェーデンの消費税率は25%もある。(スウェーデンは、社会保障では、いわゆる「大きな政府」の方針を取っている。)

いっぽうアメリカ合衆国は、低福祉低負担である。(アメリカ合衆国は、社会保障では、いわゆる「小さな政府」の方針を取っている。)


日本の年金制度

編集
  • 日本の年金は賦課(ふか)方式

年金は、老齢の世代である定年退職した世代の受け取る年金を、若い労働力人口の世代が払っている、という制度に、なっている。 このような、年上の世代に年金を支給するために若い世代が年金を払う方式を 賦課方式(ふか ほうしき) という。日本の年金制度は、賦課方式である。


いっぽうで、貯金のように、若い世代が払った保険料を、その若い世代自身が老齢になったときに支給するという方式を積立方式(つみたて ほうしき)という。日本の年金制度は、積立方式では無い。


年金は若い世代に負担させる賦課方式の制度であるので、もし若い世代が減る時代になると、年金の財政が悪化することになる。

現在は、少子高齢化のため、年金財政が不安視されている。

いっぽうで、過去の若い世代が多い時代には、賦課方式は、財政にとって都合の良い制度であった。


財政の制度においては、短所の無い制度なんて、無いのである。長所は、短所の裏返しなのである。 たとえば年金の世代間の賦課方式の場合は、人口構成が若い時代には、財源確保をしやすい。だが、少子の時代には財源確保をしづらくなる。

積立方式も同様に、長所の裏返しとして、短所がある。 たとえば、もし、ある世代が、大恐慌や大災害や戦争などの被害により、その世代に失業者や低所得者が多くなり、特性世代に貧しい世代が出来ると、積立方式では、その貧しい世代の老後の年金収入を、そのままでは確保できなくなる。


年金の足りない財源を、税金などで補充する方法も考えられており、では、その分の税金をどこから取るのかが問題になる。

バブル崩壊後の不況や、国際競争の激化による、会社の倒産や事業撤退、または労働者の失業などがバブル崩壊後から長く続いたので、多くの労働者も企業も、そんなに収入や貯金に余裕は無い。


  • 年金制度の一元化について
 
日本の年金の仕組み

年金は職業によって加入する年金が違っている。たとえば自営業者や無職は国民年金だけに加入することになっており、一般の会社員は厚生年金(こうせいねんきん)に加入する。 (くわしく言うと、20歳以上60歳未満のすべての国民が、まず、国民年金に加入する(大学生で就職してなくも、20歳以上60歳未満なら、国民年金に加入しなければならない)。その上で、会社員は厚生年金に加入する。※ 左の図表を参考に。)

年金の種類によって支払う負担額や、老齢になったときに受けとる受給(じゅきゅう)額が違う。 会社員の加入する厚生年金は、給料の金額が大きいほど、保険料の金額も大きくなり、老齢になったときに受け取る年金額も大きくなります。

もし、自営業者と無職が、たとえ「厚生年金に入ろう」と思っても、加入できない。自営業者と無職は、国民年金にしか入れない。自営業者や無職が、どんなに収入や貯金に余裕があっても、厚生年金には加入できない。

このように、年金の種類によって支払う負担額や、老齢になったときに受けとる受給額が違うので、年金の制度に不公平や格差があり、問題にも、なっている。

このような加入する年金間の不公平の問題を解決するため、「年金の一元化」(ねんきん の いちげんか)という政策が主張されており、厚生年金と共済年金(きょうさいねんきん)の統合が進んでいる。

だが、自営業などの多い国民年金と、会社員の多い厚生年金との間の統合は、あまり、統合が進んでいない。


なお、厚生年金や共済年金の加入者が払う保険料の一部は国民年金に払われているので、厚生年金や共済年金の加入者も国民年金に払っていることになる。

  • 老齢年金の、25年以上の加入

老齢年金は、原則として25年以上の加入をしていないと、給付は1円も受け取れない。

  • 国民年金基金について

国民年金と名前の似ている「国民年金基金」(こくみん ねんきん ききん)という公的年金があるが、国民年金基金の運営者は国では無く、特殊法人である。

国民年金基金を運営しているのは、「国民年金基金連合会」(こくみん ねんきん ききん れんごうかい)という厚生省の管理する特殊法人であり、運営者は厚生労働省そのものではない。

国民年金基金の制度は、厚生年金と国民年金との格差を少なくするために、1991年(平成3年)にできた制度である。

国民年金に任意(にんい)で負担額を上乗せして、かわりに老後に多くの年金を受け取るというのが、国民年金基金の制度である。

また、国民年金や厚生年金は、インフレの場合には受給額の増額をする「物価スライド」(ぶっかスライド)という保護制度があるが、国民年金基金には物価スライドなどの保護が無い。

年金の財源についての問題

編集

会社員が加入する厚生年金は、不況による企業の倒産などで、財政が悪化している。

また、自営業者や無職などが対象の国民年金は、年金制度への不信などから、未加入者が増えており、悪化している。

参考文献・脚注など

編集
  1. ^ 麻生武・浜田寿美男 編『よくわかる臨床発達心理学』、ミネルヴァ書房、2012年6月1日 第4版 第1刷 発行、P188
  2. ^ 麻生武・浜田寿美男 編『よくわかる臨床発達心理学』、ミネルヴァ書房、2012年6月1日 第4版 第1刷 発行、P190
  3. ^ 『ビジネス基礎』、実教出版、令和2年12月25日検定、令和4年1月25日発行、P33
  4. ^ 『ビジネス基礎』、TAC、令和2年12月25日検定済、令和4年2月10日発行、P31
  5. ^ 東京書籍 " shakai_jizokukanou.pdf "
  6. ^ 『ビジネス基礎』、実教出版、令和2年12月25日検定、令和4年1月25日発行、P33
  7. ^ 東京書籍 " shakai_jizokukanou.pdf "
  8. ^ 麻生武・浜田寿美男 編『よくわかる臨床発達心理学』、ミネルヴァ書房、2012年6月1日 第4版 第1刷 発行、P195
  9. ^ 東京書籍 " shakai_jizokukanou.pdf "
  10. ^ 東京書籍 " shakai_jizokukanou.pdf "