経度(けいど、英:longitude ロンジチュード)と緯度(いど、英:latitude ラティチュード)は、地球上での位置を特定するための座標系の一つである。 この二つの座標を使うことによって、地球上のあらゆる位置を正確に表すことができる。

メルカトル図法(メルカトルずほう)という方法で描かれた世界地図。横の線が緯線(いせん)。縦の線が経線(けいせん)。
地球儀での経度(λ)および緯度(φ)。

世界地図や日本地図などを見ると、縦横に線が引かれているのが分かる。これらの線は、同じ経度どうしを結んだ線や、同じ緯度どうしを結んだ線であり、それぞれ経線(けいせん)および緯線(いせん)と呼ばれる。

以下、この2つの座標について詳しく見ていく。

経度

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経度とは、北極点と南極点を結ぶ、縦の座標である。イギリスのロンドン郊外にある旧グリニッジ天文台(Greenwich Observatory グリニッジ・オブザーバトリー)を通る本初子午線(ほんしょしごせん、Prime meridian プライム・メリディアン)を0度として、東西に180度ずつ定められている。本初子午線より東側を東経(とうけい、east longitude)、西側を西経(せいけい、west longitude)という。

経度180度の線に沿って日付変更線(ひづけへんこうせん、国際日付変更線、International Date Line インターナショナル・デイト・ライン、略:IDL)が設定されている。ただし、日付変更線は陸地等を避けるために完全な直線ではない。これは、同じ陸地内で2つの日付が存在することによる混乱を防ぐためである。

日本の経度は、おおよそ東経123度から東経154度の間に位置する。 東京の経度は、約東経139.7度である。

WGS84と経緯度システム
現代の地図や GPS システムで広く使用されている経緯度システムは、実際には旧グリニッジ天文台を基準としていません。代わりに、WGS84(World Geodetic System 1984)と呼ばれる全地球的な座標系が使用されています。

WGS84の特徴:

  • 1984年に確立され、その後も更新されている
  • 地球全体を精密に表現する楕円体モデルを使用
  • GPS衛星システムの基準座標系として採用
  • 本初子午線は、国際地球回転観測事業(IERS)が定義する子午線を使用

WGS84と旧グリニッジ子午線の違い:

  • WGS84の本初子午線は、旧グリニッジ天文台を通る子午線から約100メートル東に位置する
  • この差は、より正確な測定技術と全地球的な整合性を確保するために生じた

実用上の影響:

  • 一般的な地図利用では、この差はほとんど影響しない
  • 高精度な測量や科学的観測では、WGS84を基準とすることが重要
WGS84は、全地球的な位置特定と航法に不可欠な、統一された正確な座標系を提供しています。

緯度

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地球の赤道

地球の回転軸に垂直な面のうち最大の円周を持つ面と地表との交線を赤道(せきどう、英: Equator イクエーター)といい、赤道の緯度は0°である。

緯度は、赤道に平行に引いた横の座標である。赤道より北側を北緯(ほくい、north latitude ノース・ラティチュード)、南側を南緯(なんい、south latitude サウス・ラティチュード)と呼ぶ。

緯度は赤道を0度として、南極点を南緯90度、北極点を北緯90度として定められている。

日本の緯度は、おおよそ北緯20度から北緯46度の間に位置する。 東京の緯度は、約北緯35.7度である。

したがって、東京の位置を緯度・経度で表すと、北緯35.7度、東経139.7度となる。

経度と時差
経度は時差と密接な関係があります。地球は24時間で1回転(360度)するので、1時間で15度回転することになります。
  • 経度15度の差 = 1時間の時差
  • 経度1度の差 = 4分の時差

例えば:

  • 日本(東京:東経139.7度)とイギリス(ロンドン:経度0度)の時差
    約9時間(139.7 ÷ 15 ≈ 9.3)
  • アメリカ(ニューヨーク:西経74度)と日本(東京)の時差
    約14時間((139.7 + 74) ÷ 15 ≈ 14.2)

ただし、実際の時差は国や地域の事情により、必ずしもこの計算通りにはなりません。多くの国では、利便性のために時差を1時間単位で調整しています。

また、一部の国では夏時間を採用しており、季節によって時差が変わることがあります。

緯度と温度や季節との関係

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地球は太陽の周りを公転(こうてん)している。
 
緯度による日射の違い。
 
ノルウェーでの白夜

赤道からの距離と気温

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一般的に、赤道に近いほど暑く、北極・南極に近いほど寒くなる。これは主に以下の理由による:

  1. 太陽光線の入射角:赤道付近では太陽光線がほぼ垂直に地表に当たるが、高緯度地域では斜めに入射する。斜めに入射する光は、同じ量の光エネルギーがより広い面積に分散するため、単位面積あたりの熱量が少なくなる。
  2. 大気層の厚さ:高緯度地域では、太陽光線が通過する大気の層が厚くなり、より多くの光エネルギーが吸収または散乱される。

南北半球の季節の違い

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北半球(Northern Hemisphere ノーザン・ヘミスフィア)と南半球(Southern Hemisphere サザン・ヘミスフィア)では、季節が逆になる。例えば:

  • 12月〜2月:北半球は冬、南半球は夏
  • 6月〜8月:北半球は夏、南半球は冬

地軸の傾きと季節変化

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地球の自転軸(地軸、英:axis アクシス、the earth's axis)は、公転面(こうてんめん)に対して約23.4度傾いている。この傾きが季節の変化を引き起こす主な要因である。

地軸の傾きによる影響:

  1. 白夜と極夜:北極圏(北緯66.33度以北)と南極圏(南緯66.33度以南)では、夏に太陽が沈まない日(白夜、びゃくや、Midnight sun ミッドナイト・サン)や、冬に太陽が昇らない日(極夜、きょくや、polar night ポーラー・ナイト)が発生する。
  2. 昼の長さの変化:季節によって昼の長さが変化するのも、地軸の傾きによるものである。
  3. 太陽高度の変化:地軸の傾きにより、太陽の南中高度(太陽が最も高く昇る角度)が季節によって変化する。これが気温の季節変化の主な要因となる。
緯度と気候帯
緯度は地球上の気候帯とも密接に関連しています。一般的に、以下のような気候帯の分布が見られます:
  • 熱帯気候:赤道付近(およそ南緯23.5度〜北緯23.5度)
    年間を通じて気温が高く、雨季と乾季がある地域が多い
  • 温帯気候:中緯度地域(およそ南緯23.5度〜66.5度、北緯23.5度〜66.5度)
    四季の変化がはっきりしている
    地中海性気候、温暖湿潤気候、大陸性気候などが含まれる
  • 寒帯気候:高緯度地域(およそ南緯66.5度以南、北緯66.5度以北)
    冬が長く厳しく、夏が短い
    ツンドラ気候や氷雪気候が含まれる
  • 乾燥気候:特定の緯度帯に限定されない
    大陸内部や山岳の風下側などに分布
    ステップ気候や砂漠気候が含まれる
ただし、実際の気候は海流、標高、地形などの要因によっても大きく影響を受けるため、必ずしも緯度のみで決定されるわけではありません。