五線と音部記号
これはなんだと思いますか? 「ソ」の音? 「G」音?
違います。これだけでは、音の高さはわかりません。
のように、左側にト音記号が付いて、初めて、「ソ」の音、「G」音、と言えるのです。
五線
編集このことからもわかるように、五線は、音の相対的な高低の関係を表すものです。五線の上の方に書かれた音は、下の方に書かれた音より高くなります。また、五線には、線上と2本の線の間の両方に音符を書くことができますが、線上に書かれた音符と、そのすぐ上の線間に書かれた音符は「隣同士」の音であり、線上に書かれた音符と、そのすぐ下の線間に書かれた音符も「隣同士」の音です。このようにして、五線には、線上に5つ、線間に4つ、最上線の上と最下線の下にひとつずつ、合計11の音を書くことができます。また、それからはみ出した場合には、臨時に上または下に線を付け足すことができ、加線と呼びます。
それぞれの線、間、加線には、名前が付いています。五線は下から第1線,第2線…といい、加線は五線に近い順から上(下)1線、上2線…といいます。また、第1線と第2線の間を第1間、第2線と第3線の間を第2間…といい、加線での間も線と同様、上(下)第1間, 上第2間…と呼びます。
上第4間(うえだい4かん) ──上第3線── (うえだい3せん) 上第3間 ──上第2線── 上第2間 ──上第1線── 上第1間 ──────────第5線───────── 第4間 ──────────第4線───────── 第3間 ──────────第3線───────── 第2間 ──────────第2線───────── 第1間 ──────────第1線───────── 下第1間(しただい1かん) ──下第1線── 下第2間 ──下第2線── 下第3間 ──下第3線── 下第4間
音部記号
編集五線の中のどこかに、決まった高さを与えると、それからの相対関係によって、五線上に書かれた音符が決まった高さを示すことができるようになります。そのためには、音部記号を用います。
音部記号は、その表す音の高さにより、高音部記号(ト音記号)、中音部記号(ハ音記号)、低音部記号(ヘ音記号)の3つが使われます。
高音部記号(ト音記号) | 中音部記号(ハ音記号) | 低音部記号(ヘ音記号) |
中音部記号(ハ音記号)は、そのくびれた部分が中央ハの音を表します。高音部記号(ト音記号)は、渦巻きの中央が中央ハの5度上のト (G) の音を表します。低音部記号(ヘ音記号)は、2つの点の中間が中央ハの5度下のヘ (F) の音を表します。それぞれ、高音部記号は中音部記号より高い音を、低音部記号は中音部記号より低い音を表すのでその名があります。また、ト音記号、ハ音記号、ヘ音記号はその記号が表す音の名前から付けられた名前です。
ところで、高音部記号(ト音記号)は普通 のように第2線に書かれ、低音部記号(ヘ音記号)は のように第4線に書かれますが、そのように決まっているわけではありません。実は、次のようにいろいろなところに書くことができ、書く位置によって、それぞれ名前が付けられています。
上の表で、ト音記号の緑の音符と、ハ音記号の黒の音符、ヘ音記号の赤の音符は、それぞれの記号が示す音です。それぞれの黒の音符は、中央ハの音です。アルト記号では中央ハの音は第3線になります。なお、上の図ではアルト記号の黒い音符が第2間に表示されているように見える場合もありますが、もし第2間にあるならば中央ハより短2度下のロの音です。第5線上のハ音記号と第3線上のヘ音記号は、結果として同じことを示すため、両方ともバリトン記号と言います。(理屈の上では同じ結果になる組み合わせは他にもあるはずですが、実際に使われてきたのはこれだけです。)
上の表には、あまり見たことのないものも多いと思います。実際、ヴァイオリン記号とバス記号は非常によく使われますが、小ヴァイオリン記号や低バス記号は滅多に使われません。メゾソプラノ記号やバリトン記号も、歴史的な楽譜には現れますが、現在の楽譜には皆無と言っていいでしょう。ソプラノ記号は、理論や作曲法の学習の中で、混声合唱の楽譜を書くのに現在でも使われますが、他にはほとんど使われません。アルト記号は現代ではもっぱらヴィオラの楽譜に使われます。ヴィオラはアルト記号で書くのが基本です。近代ではロシアの楽譜でトロンボーンのパートを書くのに使われました。テノール記号は、チェロやファゴット、また時にコントラバスの高音部の楽譜を書くのに使われます。また、オーケストラではテノールトロンボーンの楽譜はテノール記号で書くのを基本にしています。