京大対策/国語
京都大学の国語では、文系では120分、理系では90分でともに3つの大問を解答することになる。文系は150点満点(但し教育学部の文系は200点満点)、理系は100点満点である。
- 文系国語
第一問は評論、随筆、第二問は、従来は文語文が出題されていたが、近年では小説や随筆が出題される事が多い(ただし、やや文語的なものが出題される)。第三問は古典である。主に古文が出題される。各大問とも配点はそれぞれ50点である。
- 理系国語
2006年度までは文系と同問題の3題から2題を選択して解答する方式であったが、2007年度から文系と理系が別問題になり、全問必答になった。第一問は文系と共通問題であり、設問数は文系より一つ少なく、40点である。削られる設問は、比喩問題のような、所謂文系向けのやや難度が高い設問であることが多い。第二問は柔らかめの評論や随想から出題され、30点である。第三問は古文であり、配点は30点である。試験時間は文系より30分短く、各大問における小問の数は文系より少ない。しかし単位時間あたりの記述量は文系理系とも差は無く、理系の問題のほうがやや易しめではあるものの、記述の負担は同等である。なお、2009年度入試より工学部全学科においても国語が課された。
解答欄の特徴
京大国語の特徴として解答欄が非常に大きい。多くの受験生は、解答欄を埋めきるために本文の語句を拾ってとりあえず何か書いておけばよいだろうと思いがちだが、出題される文章自体が凝縮され無駄の無い簡潔なものであり、ただ本文の要素をつなぎ合わせただけでは解答の形をなさない。京大の国語は命題に対してどれだけ豊富な要素を持って答えられるかが問われており、本文の内容に準じて自らの理解を補った自分自身の言葉で解答を書かなければならず、難度は非常に高い。以前は棺桶と呼ばれる、線などがない真っ白い大きな箱が解答用紙にあるだけだったが、2003年度後期から解答欄の横幅1センチごとに線が引かれている。これにより解答字数のだいたいの目安が立てやすくなった。一行あたりの大きさはヨコ1センチ、タテ14センチである。
現代文
概説
以前は物故した学者のすでに評価の定まった文章からの出題が多かったが、最近は評論に近年の新しい学者の著書が出題されることが多い。過去の京大の現代文は古めの出典が多いので最近の学術的話題を知りたい場合は、東大の評論問題に出題されているものを参考にするとよい(東大は比較的最新の学術書から出題されているため)。ただし、設問の傾向が両大学では大幅に違うので、内容を確認するにとどめ、無理に問題を解く必要は無い。小説、随筆ではやや古めの文章が出題される。2007年度入試において国語の問題が文理別になってから、文系の問題には理系より文学的な文章が出題されている。
問題
全問とも記述・論述形式である。また、漢字書き取り・読み問題はしばらく出題されていなかったが、2007年度で復活した。漢字問題は2007年度には文理とも第二問、2008年度には文理とも第一問で出題され、2009年度も2008年度を踏襲した。第一問が文理共通の問題であることを考えると、第二問ではなく第一問に漢字問題を課すのは当然であると言える。今後も漢字は第一問で出題されると思われたが、出題頻度は近年は低くなり、2016年度を最後に出題はされていない。あくまで論述設問のみで読解力と表現力を推し量る路線が貫かれているといえよう。 文系の場合、小問は両大問とも5つであり、漢字問題が出題された大問では、4つが記述問題、漢字問題が出題されない大問では5つが記述問題である。2008年度以降の理系の場合は、第一問は小問4つ(うち漢字問題1つ)、第二問は小問3つである。記述論述形式の問題は、基本的には文章に施される傍線部に関する説明問題である。傍線部の内容説明問題、傍線部に関する理由説明問題などが主なものであり、さらに京大現代文の特徴として、比喩に関する設問が多いことが挙げられる。比喩問題では何と何が例えているのかを本文に即して自力で考えて理解しなければならない。その他の問題であっても、本文自体には直接的には述べられていない言外のニュアンスを読み取らなければならない設問が多い。また、最終設問は傍線が引かれず、本文の要旨をまとめよ、といったものであったり、傍線が引かれる場合であっても本文の要旨をまとめる問題であることが多い。
難易度
素材文自体はいたずらに難解ではなく、設問にも悪問・奇問は存在しないため受験生の国語力を見る良問と言える。ただし他大学と比べても記述量がかなり多く、本文を正確に読解して解答しなければならない。さらに、比喩問題や本文には書かれていない事柄を行間から推測して答える問題、および書かれていない筆者の言おうとするところを推測して答える問題などが含まれ、深い読解と膨大な記述にかかる時間に比して試験時間が十分とは言えない。
近年の傾向
- 文系
2007年度に文理で問題が分かれて以降、文系の問題は第二問の難度が上がっている。特に2008年度の第二問は、例年以上に比喩問題が多く、その難度も高めのものが多かった。また、本文中にはっきりとした根拠が無く、本文の記述から類推して自分で答案をまとめねばならない設問も含まれ、過去の京大現代文の中でもかなり難度が高かった問題であったと言える。第一問も論述字数が多く、難度も高めであった。2008年度の現代文は総合的に難しかったと言える。 2009年度は、第一問は論旨が明白な読みやすい随想からの出題であった。記述量が減少し、各設問も解答要素がほぼ本文中にある点で易しめであり、比喩問題も標準的といったことから2008年度よりも易化し、京大現代文としては標準からやや易しめとなった。第二問は随想から出題され、本文の難度はやや下がり、答えやすい設問もいくらか含まれていたが、心情の読み取りなどやや難度の高い設問も見受けられ、やはり文系の問題として難しめに作られている印象がある。過去の京大の現代文の中ではやや難しいほうに入ると思われるが、今後、文系の第二問の難度はこの程度が標準になると思ったほうが良いかもしれない。2009年度の文系現代文は2008年度より易化したが京大としては標準的であったと言える。
- 理系
2007年度に文理で問題が分かれたが理系は文系に比べるとやや易しいと言える。2008年度は文理共通の第一問は難化し、第二問も記述量が増加し、本文中のこなれた表現を適当な言葉でまとめ直したり、解答要素は発見しやすいもののどのようにまとめればよいかに悩んだりする設問が見受けられ、やや難化した。 2009年度は、文理共通の第一問は文章、設問とも易化した。本文を丁寧に読み取れば解答要素が自ずと見えてくる問題であったと言える。第二問は昨年と同じく随想から出題された。四字熟語の意味を知らないと解答が困難な設問があったものの、意味さえ知っていればそれほど難しい問題ではないと言える。その設問も含めて、解答要素を本文中から見つけて説明するのではなく自分の言葉で的確に表現する設問が見受けられたが、ごく標準的な難度の問題であると言える。本文が易しく、解答行数も減ったのでやや易化した。2009年度の理系現代文は全体的にやや易化したと言える。理系入試が導入されてまだ三年目であり、今後どの程度の難度に落ち着くのかに注意したい。
対策
難易度の項でも触れたように京大現代文では本文の正確な読解に基づいて解かなければならないため、受験テクニックといった類のものはまず本学には通用しない。このような問題に対処するには日々の学習の積み重ねで磐石な基礎力を確立し、論理的思考力と記述力、豊富な語彙力を培うしかない。
評論文対策については、まずは日々の授業や参考書で現代文に良く出てくる語句の意味や頻出漢字を押さえ、いわゆる「受験テクニック」に頼らずに、論理的に文章を読むことを習得し、主題把握や基本的な記述演習をこなすことから始めるべきである。評論読解で求められるのは主観を廃し、あくまで本文のみに従って論理的に理解することであると肝に銘じなければならない。本文読解においては各段落の要旨をまとめたり本文の要約をするなどして筆者の主張を的確につかめるようになりたい。本文を一読して筆者の『最も言いたい事』を掴むことができるようになれば主題把握力は十分ついており、京大に出題される文章のうち、易から標準レベルの文章には対応できると言えよう。だが、京大現代文において、文章内容の理解から設問攻略という次のステップに進むには、読解力だけでなく、高度な記述力と表現力が必要なので、記述式の参考書や問題集で記述力を養っておきたい。小説は評論以上に論理的思考力が求められる。普段読書するときのような自由な感覚で読むのではなく、あくまで本文の心理描写に則って主観を排して読解すること。
古文
概説
近世擬古文、説話、擬古物語などが頻出である。近世擬古文は江戸時代に執筆された中古を回顧する文章や歌論書、説話は主に仏教説話、擬古物語は源氏物語などの中古の作品を真似た作品が多い。ちなみに、擬古物語とは平安文学の物語を手本にして書かれたものであるため、文章自体の読みにくさは擬古文や説話を数段上回る。
問題
現代語訳問題、および説明問題が出題される。文法や語句の意味や文化史を直接聞いてくる問題は無く、全問記述式である。文系では、小問5~6題前後で構成されることが多く、3~4題が現代語訳問題、2~3題が説明問題であることが多い。理系の場合は現在のところ小問は3つである。現代語訳問題は、単に訳す問題と自分で言葉を補ってわかりやすく訳す問題の二通りがある。いずれの場合かは設問で指示されるのでそれに従えばよい。説明問題は、登場人物の心情説明問題や、それに関わる理由説明問題、歌論や説話の場合は筆者の主張や各部の意味の内容説明問題が多い。また、京大古文の特徴として和歌に関する問題が多いことが挙げられる。和歌の現代語訳問題・解釈問題(現代語訳問題と同じであると考えてよい)・解説問題がある。和歌は特段難解でないときもあるが、掛詞などの修辞技法が含まれている難度が高めのものが出題されることが多い。
難易度
京大の古文は平易で、全体の概要を掴む事は比較的容易であり、基本的な語彙と古文常識、文法知識があれば現代文に比して点数が取り易いといえる。ただし京大レベルの受験生にとって、この程度のレベルの本文が読めることは大前提であり、概要を掴むことはできても細部の理解が困難なことも多く、如何に完成度の高い解答が書けるかがポイントになるため、わずかなミスも見逃せない。現代文同様、記述量はかなり多く、書くべきポイントを意識せずに漫然と解くだけでは得点には結びつかない。「読める」ことと「解ける」ことが別物だとはっきり感じさせられる問題である。また、和歌に関する問題は京大古文の定番とも言える頻出問題であり、和歌の解釈や、時には和歌の技法や解説といった高度な問題も含まれ、記述量の多さから考えても難易度はかなり高いと言える。
近年の傾向
2008年度入試に関しては、文系は擬古物語から出題された。文章自体は2007年度よりやや難化したが全体の内容理解はさほど難しくないと言える。現代語訳や説明問題も京大古文におけるやや易か標準レベルと言え、実力のある者の中にはほぼ満点をとれる者もいたのではないかと思われる(ただし現代語訳で主語の判定が難しい問題が出題され、各予備校の解答速報や赤本、青本などでそれぞれ答えが一致していない。結局のところ出題者である京大にしかいずれが正答かはわからない)。和歌に関する問題も出題されず、和歌が含まれ難度の高かった2007年度に比べると易化したと言える。総合的には京大古文の中では標準かやや易しい部類に入ると思われる。理系は和歌を含む説話が出題された。全て現代語訳問題であり和歌もそれほど難しくはないが理系にとっては厳しかったかもしれない。2007年度と難易度は同程度であり、ともに京大古文の中ではかなり易しい部類に入る。ただしそれはこれまで京大古文が文理共通であったためであり、理系にとっては標準かやや易しい程度と言える。 2010年代に入ってから、文理共に和歌に関する出題が多く見られるようになった。本文に和歌が登場する物語はもちろん、注釈に和歌が登場したり、あるいは歌論が本文になったりと、その出題は多岐にわたる。2012年度文系、2014年度理系においては、百人一首に収録されている和歌が題材となった本文が出題されており、その和歌を知っていたかどうかで差がついたと思われる。2016年度文系では『伊勢物語』が出題された。本文中に登場する5首の和歌を、注釈や設問を頼りに読み解くという問題構成であり、難易度は高いと言えよう。2018年度、2019年度と、文系では2年連続で歌論が出題された。特に2019年度は京大古文にしては珍しく、本文が1000字を超えており、例年に比べて難しかったと言える。2020年度は、文系は『和泉式部日記』、理系は『北辺随筆』が出題された。やはりどちらの本文にも和歌が含まれている。今後とも和歌は出題される可能性が高いと言えるだろう。
その他留意点
以前は京大国語と言えば近代文語文が定番であったが2002年度の出題を最後に現在まで出題されていない。しばらくは近代文語文からの出題は無いのではないかと考えられるが、1989年度を最後に出題されていなかった小説が2002年度に復活した例もあるので、心配な人はいくらか対策を練っておけばよい。近代文語文対策の参考書としては『近代文語文問題演習』(駿台文庫)がある。福沢諭吉、森鴎外、夏目漱石などの文語文を読んでみて近代文語文に慣れるのも対策の一つである。近代文語文は漢文の素養と知識、および現代文の要旨把握力があれば十分対応できる。逆に言えば、現代文と漢文の学習が確立してから取り掛かることが望ましい。
2006年度の京大発表の出題範囲からは「漢文除外」の項目が削除され漢文の出題があるのではないかと予想されていた。同年度の小説において一部に漢文が含まれた文章が出題され(設問には直接は影響しない)、また2008年度では漢文の句法を含む文章が出題され、設問になった。2008年度の問題は、傍線部の比喩説明問題であり、漢文の知識が無ければ解答は難しいと思われる(もっとも、ごく基本レベルの句法であり、現代語として用いられることもあるものであったので、間違える人間はそういなかったと思われる)。2016年、2017年度以降も漢文に関する問題が出題される可能性はあるのでセンター試験レベルの漢文が楽に読める程度の対策はしておくのが望ましい。