物理 編集

概説 編集

多くの問題がかなりの長文の穴埋め形式になっている。

そのため問題文に示される条件を見逃さないように解答することが重要になる。

前の解答が正答でなければつぎの正答が出てこないことがある。

物理学の正統派を貫く素直な問題であるため、公式暗記に頼らず基本に忠実に勉強していけばよい。

2007年度の入試から、いままでにはほとんど見受けられなかった記述問題が多く出題された。

この記述問題にはグラフを書かせることも多い。

2008年度には原子物理が出題された。

しかし力学と電磁気学の知識があれば、その内容は本文から解法が求められるレベルであった。

問題 編集

電磁気学・力学から各1問、熱力学・波動・原子物理のいずれか1問の合計3題が主流である。

大問1が力学、大問2が電磁気学、大問3が熱力学、波動、又は原子物理の中から1分野出題であることが多い。

各大問に数問ずつ記述問題(証明問題やグラフも含む)が含まれる。

頻出分野 編集

力学では単振動、円運動、重心系、運動量と力積。

電磁気では電磁誘導、電気回路、サイクロトロン(電場・磁場における荷電粒子のふるまい)、ベータトロン。

熱力学は熱力学第一法則を取り扱った問題、熱サイクル、気体分子運動論。

波動は光・音のドップラー効果、回折格子。原子物理ではコンプトン効果や水素様原子の構造などである。

力学や原子物理は運動方程式や運動量保存則、エネルギー保存則、相対運動の取り扱いを問われる。

難易度 編集

物理の基本法則に関する深い理解と、長文を読みこなして条件など、重要な情報をチョイスして立式していく情報処理能力や正確な読解力、さらにはやや煩雑な数式を場合によっては近似を駆使して解きあげる高い計算処理能力が問われる。

物理やそれに付随する初等的な数学が本当に解っていないと途中で手が止まってしまう大問が多い。

公式暗記では乗り切れないことがわかるだろう。

近年の傾向 編集

2007年度は180分入試が導入されて初めての年だった。

簡単な微分方程式を取り入れた高度な考察問題など、質の高い問題が出題された。

解答時間を考慮して考えると厳しい出題であった。

2008年度は2007年同様の難易度が維持されていた。

2009年度は分量も増加し、問題の質も上がった。

2009年度には2002年度以来7年ぶりとなる波動分野が出題された。

どれだけ基礎をしっかりしてきたかがストレートに問われた。

2008年度、2015年度、2021年度に原子物理が出題された。

2012年度にて、アインシュタインの相対性理論を踏まえた出題がなされた。

2019年度、2020年度入試はかなり難化した。

2019年度入試は一方の化学は大きく易化したが、2020年度入試は化学と合わせて難化した。

このため2020年度は難問を回避する受験のセオリーが通用しない年度であった。

対策 編集

そもそもとして、椅子に座ることに抵抗意識をもたないことである。

そのうえで勉学の姿勢の基礎として、姿勢を正すことは出発点である。

文字式に酔わず、混乱せずに複数の小文字を識別していくことも求められる。

闇雲に問題パターンの暗記に走るのではなく、基礎基本に立ち返って問題を考える態度を身につけることが必要である。

例えばドップラー効果の公式ひとつ取っても、その式はどのようにでてきたのか、その式は本質的には何を表しているか、そもそもドップラー効果とはどういうものか誰にでもわかるように説明できるだろうか、といったことを常日頃から考えているかどうかがそのまま理解度の差、ひいては入試における点数差に結びついてくる。

通常の授業にあたっては、出てくる数式がどういった基本原理に基づいて出てきたのかを確認し、その数式がどのような意味を持っているのか説明できるまで参考書や、友人や教師に質問し、理解を深めることが重要である。

その上で、定義をきちっと暗記し、公式などは自分の手で導けるようにしておかなければならない。

このようにして基礎を固めた後に受験用問題集に取り組めばよい。

その上で京大の過去問に取り組めば良い。

時間の割に解答量が豊富である。

限られた時間内で正確な計算を遂行する力を養成する機会ととらえるべきである。

演習を行うときにはただ問題量をこなすのではなく、問題の別解を考えるのも大いに役立つ。

2008年・2009年度では2年ぶりに図示問題が出題された。

来年以降も出題される可能性があるので、演習の際には図示問題も飛ばさずに解いておきたい。

本学はかなり煩雑な近似計算を受験生に要求することがある。

過去問などで数式の近似操作に慣れ親しんでおくとよい。

化学 編集

概説 編集

受験生の思考力や計算力を測る上で非常に良く出来た問題である。

十分に基礎固めと問題演習をしておけば合格点を確保できる。

語句や計算結果のみを解答用紙に書くことになる場合は計算ミスは命取りである。

物理同様、前の設問の答えを使って次の設問に答えるという問題も当然ある。

その場合には最初の答えを間違えるとなだれ失点に陥りることになりかねないので要注意である。

問題 編集

近年は第1問は無機理論の複合問題、第2問は理論分野である。

第3問は有機化合物の構造決定がメイン、第4問は天然高分子または合成高分子から出題というスタイルが定着している。

大問の中でさらに2つに分かれているものもある。

頻出分野 編集

理論分野では結晶格子、化学平衡が京大化学の名物であり、特に平衡は必ず出題される。

難易度 編集

年度によって少なくない変動がある。

2019年度、2007年度は大幅に易化した。

2020年度、2017年度、2010年度は大幅に難化した。

高度な計算力、基礎事項を踏まえた思考力、問題文の正確な読解力、化学に関する一般的な教養を問う良問ぞろいである。

制限時間内に全ての問題に解答することは困難である。

近年の傾向 編集

2007年度は180分入試が導入された最初の年だった。

2007年度と2019年度は問題が大きく易化したため、合格者の中には満点が続出した。

この年の化学の合格目標ラインは8割程度であった。

2010年度、2017年度では難化したため、合格レベルであっても5~6割程度を確保するので精一杯であった。

2020年度は大きく難化したため、医学科以外は5割に届けば合格レベルである。

対策 編集

物質量の扱いがすべての土台である。

molという表記に抵抗意識をもってはならない。

つねに単位を意識することを習慣とする必要がある。

原子量、式量、分子量などの混同やあやふやな理解はご法度である。

高校生は科学的な単語によく動揺する。

単語には必ず意味付けがされている。

落ち着いて、学習を進めていくべきである。

まずは教科書や資料集を中心に、一般的な傍用問題集を併用して基礎を固めると良い。

知識それ自体は教科書と資料集程度で十分である。

ひたすら問題数をこなすだけでなく、「酸化数」「電気陰性度」等といった語句の内容・定義を深く追求するといった姿勢が必要である。

基礎事項の「深い理解」が京大化学の攻略の近道である。

高校で配布されている教科書だけではよくわからないと思ったら、思い切って大学初年級レベルの教科書・演習書を副読本にしてみるのもよい。

高校の教科書は指導要領の制限上、「なぜこうなるか」をやや省いて記述しがちである。

よほど自分で意識しないかぎり「その場限りの暗記」になりがちである。

赤本や青本等で京大の過去問を解いて、時間配分の練習をすれば良い。

しかしやはり全問を解こうとすると時間が足りないので、出来ない問題を瞬時に見極めて飛ばすことも必要である。

その能力を養うという点でも過去問演習は大変有意義である。

もちろん、解けなかった問題は復習を念入りにすべきなのは言うまでもない。

その際、計算問題などは自分の手でもう一度最後まで計算することも大切である。

生物 編集

概説 編集

生物分野に対する幅広い理解と深い考察力を受験生に要求する良問ぞろいである。

充分な基礎固めと問題演習をしておくのはもちろんのこと、常日頃から生物分野に関心を持っておくこと。

問題 編集

生物の問題は全部で4つの大問から構成される。

さらに大問は2つか3つの中問に分割され、テーマは多岐にわたる。

頻出分野 編集

生殖と発生、遺伝情報とタンパク質の合成、遺伝・遺伝子、生物の群集と生態系、刺激の受容・反応である。

京大生物は分野ごとの偏りが小さく、様々な分野から満遍なく出題される傾向にある。

どの分野も等しく勉強しておくのが望ましい。

難易度 編集

京都大学の生物は、日本の大学受験の問題の中で最も難しいと言われている。

これは京大の生物を解く上で必要な知識は教科書または資料集の内容で事足りるものの、基礎知識を活用して深く考察し、その内容をポイントを絞って分かり易く簡潔に表現する力やどの分野も満遍なく穴をつくらず対処できる学力を養成するのは、短期間の学習で養える能力ではないというところから来ている。

上辺だけの知識・学力では制限時間内に合格点まで点数を積み上げるのは非常に難しい。

近年の傾向 編集

2007年度は解答時間に変更があった年であったが、難易度自体に変化はなかった。

2008年度は問題量が増加し、全体としてやや難化した。

2012年と2013年にリード文の分量と論述量が大幅に増加し難化水準になった。

対策 編集

教科書と資料集を熟読し、一般的な傍用問題集を併用して基礎固めと問題演習をすることを勧める。

地学 編集

概説 編集

京都大学の地学の問題は、受験生の地学だけに止まらず物理・化学の総合的な力量を見る上で非常に良くできた問題であり、教科書と資料集を中心に着実に勉強を進めれば充分合格点は確保できる。

問題形式に関しては大きな特徴として、物理や化学に比して穴埋めが少なく、論述・記述問題が大きなウエイトを占めることが挙げられる。

計算問題は計算過程も解答欄に記述するよう指示されるので、論述・記述対策は地学受験者にとって必須である。

問題 編集

地学の問題は全部で4つの大問から構成される。

1題目は例年論述力と高度な計算力を要求する天体の問題が出題される。

2題目と3題目は固体地球や海洋、気象分野の問題が出題される。(年によっては2題目も天体分野になることがあったり、3題目も地質分野になったりすることがある。)

4題目は地質・岩石分野から主に出題される。

頻出分野 編集

天体分野ではケプラーの法則(惑星の運動)や銀河の成り立ち、星の明度、太陽の活動とエネルギー、恒星の物理的性質。地質分野からは断層、地層、地震、火成岩、示相・示準化石。固体地球、海洋分野からはプレートテクトニクス、地衡風、太陽高度と日射量、大気圏の気温分布、地球内部の構造、ジオイド関連の事項などがよく取り上げられる。

難易度 編集

京大の地学は、要求される知識自体は教科書や資料集程度で充分ではあるものの、受験生の地球科学だけに止まらず理系分野全般に対する幅広い教養と、与えられた資料に対する考察力、さらに数学力が存分に試される良問ぞろいであることには違いなく、付け焼刃の知識では合格点を確保するのは難しいと考えられる。

近年の傾向 編集

2007年度では理科の試験形式が変更された年であったが、難易度や傾向に大きな変更は見られなかった。

2008年度には問題量が増加したため、やや難化した。

また、今年の問題で天文分野の素材として「ニュートリノ」が取り上げられたことも記憶に新しい。

対策 編集

先ほども述べたとおり、京大地学の問題は概して難易度が高い。また、物理学や化学に対する深い理解も必要である。このような京大の問題に対抗するには、物理(特に力学)や化学(特に無機化学)、地学の教科書の内容を理解するのは当然として、地学分野に関する読み物やテレビ番組等を積極的に活用して、地学分野に慣れ親しんでおくことも大切である。上に述べたことは一見受験にはあまり関係のないように見えるが、そこで養われた雑学的な知識は地学の勉強を進める上でも大きな底力になるはずである。というのも受験地学はあくまでも大きな学問体系としての「地球科学」の表面をさらったものにすぎないからである。受験生は「受験地学」というカテゴリーにとらわれることなく、「地学」という分野そのものを「楽しむ」くらいの気持ちで勉強に取り組むのが丁度いいと思われる。受験期に際しては、問題集を一通り終わらせた後に赤本や青本等を使って過去問を出来る限り解いておきたい。他の理科分野と異なり地学はその性質上、奇抜で凝った問題を作りにくいため、過去の類題を利用することがよくあるからである。余力があれば他大学の地学の問題も予備校のホームページ等から入手してやってみるとよい。演習量自体はそれで充分に補える。