公認会計士試験/平成30年第I回短答式/管理会計論/問題4
問題
編集当工場では実際個別原価計算を実施しており,我が国の「原価計算基準」に基づき原価差異の処理を行っている。次の〔資料〕に基づき,(ア)原価差異の処理を原則に従って処理する場合,(イ)原価差異の処理を比較的多額に発生したものとみなして処理する場合,における当期の売上原価の差額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。なお,計算過程で端数が生じる場合,計算途中では四捨五入せず,最終数値の円未満を四捨五入すること。(8点)
〔資料〕
1.原価データ
(1) 指図書別データ
#001 | #002 | #003 | |
期首仕掛品原価 | 2,500千円 | ― | ― |
実際材料消費数量 | 900kg | 1,400kg | 600kg |
実際直接作業時間 | 7,000時間 | 9,000時間 | 5,000時間 |
備考 | 完成納入済 | 完成未納入 | 仕掛中 |
(2) 直接材料費の計算には予定消費価格を用いる。
予定消費価格 5,000円/kg
(3) 直接労務費の計算には予定賃率を用いる。
予定賃率 1,000円/時間
(4) 製造間接費は直接労務費を基準として予定配賦する。配賦率は,150%である。
(5) 当月の実際原価データ
直接材料費 | 15,950千円 |
直接労務費 | 25,200千円 |
製造間接費 | 30,450千円 |
2.計算条件
原価差異を比較的多額に発生したものとみなして処理を行う場合は,直接材料費に関する原価差異は指図書別材料消費数量を基準に配賦し,それ以外の原価差異は合計し,指図書別加工費を基準に配賦する。
- 1.2,450千円
- 2.3,100千円
- 3.3,550千円
- 4.4,600千円
- 5.5,200千円
正解
編集2
解説
編集※原価差異加減算前の売上原価はいずれの方法でも同額であるため、差額の計算には必要ない。
原価差異の算定
編集- 予定価格による直接材料費
- @5千円×(900㎏+1,400㎏+600㎏)=14,500千円
- 材料消費価格差異
- 14,500千円-15,950千円=△1,450千円
- 予定賃率による直接労務費
- @1千円×(7,000時間+9,000時間+5,000時間)=21,000千円
- 賃率差異
- 21,000千円-25,200千円=△4,200千円
- 製造間接費予定配賦額
- @1千円×150%×(7,000時間+9,000時間+5,000時間)=31,500千円
- 製造間接費配賦差異
- 31,500千円-30,450千円=1,050千円
(ア)の場合の売上原価に賦課する原価差異
編集すべて当期の売上原価に賦課する。
- △1,450千円+△4,200千円+1,050千円=△4,600千円
(イ)の場合の売上原価に賦課する原価差異
編集当期の売上原価と期末におけるたな卸資産に配賦する。
- 下図より、△450千円+△1,050千円=△1,500千円
△1,450千円
計2,900kg |
#001 900kg △450千円 |
#002 1,400kg | |
#003 600kg |
1,450千円× 900kg/2,900kg =450千円
△3,150千円
(=△4,200千円+1,050千円) 計21,000時間 |
#001 7,000時間 △1,050千円 |
#002 9,000時間 | |
#003 5,000時間 |
3,150千円× 7,000時間/21,000時間 =1,050千円
※製造間接費は直接労務費を基準として予定配賦しているため、実際直接作業時間を基準として配賦しても同様の結果となる。
参考基準
編集原価計算基準四七 原価差異の会計処理(一)1.3.