初等幾何学/定理と証明/ユークリッドの「原論」
「原論」の意義
編集古代において数学は、農業が始まった頃から、道具として使われてきた。当時の人々は経験的にいくつかの定理を発見していたが、論理的な説明はされておらず、反例が挙がらないことで正しいとしていた。その後、論理的な「証明」が始まり、紀元前3世紀頃の古代ギリシャでは、既に多数の定理が証明されていたと考えられる。その中で、数学者のユークリッドはそれらを「原論」にまとめて、一貫した論理を組み立てた。この姿勢は現代における数学の精神に通じており、ここに「原論」の価値があると言えよう。
公理とは
編集法則の正しさを示すのに数学では証明という手段を用いる。証明とは、既に正しいとされている事柄を並べ、決められた関係で結びつけることで、命題が真であることを示すことであるから、正しい命題の証明には、少なくとも1つ以上の根拠が必要となる。その根拠も、その証明には他の根拠が必要なので、あらかじめ1つ以上の命題を「正しい」と決めつけておかないと、法則の正しさを示せない。
だから、数学では、いくつかの命題を「正しい」と決めている。これらの命題を公理といい、公理の集合を公理系という。
公理は、論理を組み立てるのにどうしても必要だから用意したのであって、闇雲に増やしてしまうと、論理性に欠けてしまう。したがって、公理はできるだけ少ない方がよい。例えば、「異なる2点を通る直線がただ1本存在する」、「平行でない2直線はただ1点で交わる」という2つの性質は、一方が正しければもう一方も正しいと導けるので、両方を公理とはせず、少なくともどちらか一方は定理とすべきである。
公理系の決め方は一つではない。上の例でいえば、前者を公理としてもいいし、後者を公理としてもいい。両方を導けるような法則を公理としてもいい。しかし、皆が納得できるような論理を組み立てるために、公理は誰もが「正しい」と認めるものであるべきである。かくして、公理は「当たり前」なものがほとんどである。