航空作戦(こうくうさくせん)は、w:航空機からの地上偵察・物資輸送・敵部隊への攻撃などにより、味方の地上部隊を直接・間接に支援したり、また支援を行うために必要となる上空のw:航空優勢を確保することを目的とした軍事作戦。

航空作戦の中でも、敵の組織的な戦力を破壊することで敵の戦力を弱めたり、継戦能力をなくしたりすることで地上部隊や海上部隊の戦闘を支援する事を「戦術航空支援」と呼ぶ。

偵察 編集

敵地上部隊の索敵や輸送部隊の状況などを上空からw:偵察すること。地味な任務であるが、w:軍用機が誕生した最初期の頃から存在する、基本かつ重要な任務でもある。

偵察を行う地域によって、「戦略偵察」と「戦術偵察」に大別される。偵察方法は、カメラによる写真偵察(w:可視光線またはw:赤外線)が主であるが、最近はw:レーダーによる電子偵察も行われる。

偵察に使用される機体としては専用に開発されたw:偵察機か、w:戦闘機w:輸送機などから改造された物、戦闘機などに偵察ポッドをつけた物などが利用される。近年は専用に開発または改造された偵察機は減少し、戦術偵察はw:無人航空機偵察用ポッドを装着した戦闘機が、戦略偵察はw:偵察衛星がそれぞれ行なうことが多くなっている。

近接航空支援 編集

近接航空支援 (Close Air Support, CAS) は、前線の地上部隊に協力して、航空支援を提供すること。地上部隊に随伴するかw:観測機に搭乗したw:前線航空統制員 (Forward Air Controler, FAC) の指示に従い、まさに相対している敵地上部隊に対し、航空機がw:機銃掃射w:爆弾w:ロケット弾の投下を行うこと。

使用される機体は状況によって様々であるが、通常は小回りがきく小型の戦闘機やw:攻撃機であることが多い。速度は必ずしも必要とはされず、A-10Su-25のように近接航空支援を主目的とする機体では速度よりもペイロードと防御装甲が重視されている。現在では誘導兵器の発達により、B-2などの大型機で支援を行うことも可能になってきている。

航空阻止 編集

航空阻止 (Air Interdiction) とは、主にw:攻撃機によって、洋上の敵w:艦艇を攻撃して侵攻してくる敵を撃破し、また着上陸した敵に対してはw:後方連絡線、資材集積所、橋・トンネルなどの交通拠点を攻撃して、侵攻部隊のw:後方支援を破壊することにより前線の敵部隊のw:戦闘力を弱体化させる作戦をいう。「阻止攻撃」という場合もある。

対艦・対潜水艦作戦 編集

対潜哨戒/攻撃 編集

w:潜水艦の捜索と発見/攻撃をおこなうこと。通常は双発以上の専用固定翼機(w:対潜哨戒機、あるいは単に哨戒機とよぶ)か艦載w:ヘリコプターがこの任務を負うことが多い。

任務の性質上、哨戒機には長い航続時間と低空での良好な運動性が求められる。また、長時間上空にあることから乗員の居住性も考慮されることが多く、これらの事情から対潜哨戒機はw:旅客機w:爆撃機など、大型の機体をベースにしたものが多い。ヘリコプターの場合は航続時間が短いが、その分を母艦との連携でカバーしているようである。

海上交通路を確保するために重要な作戦であり、たとえばw:海上自衛隊は過去の経験からこの種の装備を非常に重要視している。

一般的な作戦内容 編集

作戦のパターンとして、以下のような形が取られる事が多いようである。

  1. w:ソナーで広域捜索を行う
  2. 潜水艦が潜む海域がある程度絞り込まれた後は赤外線探査装置やMAD(Magnetic Airborne Detector, または Magnetic Anomaly Detector) と呼ばれるw:地磁気の乱れを利用した探査装置により位置を特定する
  3. 潜水艦の位置が特定できたら、搭載している誘導w:魚雷w:爆雷などで攻撃を行う

広域捜索 編集

固定翼機の場合、ソナーによる広域探索はw:ソノブイと呼ばれる、ソナーを内蔵した浮標(ブイ)を捜索海域に複数個投下する事で行う。ソノブイから無線で送られてくる情報は哨戒機上のコンピュータで処理されて潜水艦の所在を絞り込む。ヘリコプターの場合は吊り下げ式ソナーが使われる場合が多い。

第二次大戦後しばらくまでは、潜水艦は浮上したりw:シュノーケルを海上に出したりすることで充電や艦内の酸素補給を行う必要があったため、レーダーも重要な広域捜索の手段であったが、w:原子力潜水艦の登場により海上で酸素を補給しなくても海中を行動できるようになったため、現在では以前ほどには重要視されていない。

対艦攻撃 編集

敵国のw:軍艦w:商船を攻撃して、これを撃沈または破壊する事。

w:第二次世界大戦の頃は爆弾とw:魚雷が主な攻撃兵器であったが、近年はw:空対艦ミサイルの使用が主流になってきている。

航空輸送 編集

航空輸送とは、航空機を使用して兵員や物資を輸送すること。航空機による輸送は、船舶による輸送と比べて費用効率の面で劣るものの、速度が圧倒的に早いことと、飛行場と燃料さえ確保できれば場所を選ばず輸送が可能であることから、重要な輸送手段の一つである。空中給油を航空輸送の一部に含めることも可能だが、ここでは分けて記述している。

航空輸送を担う軍用機をw:輸送機と呼ぶ。

戦略輸送と戦術輸送 編集

航空輸送に限定される用語ではないが、輸送任務を大別すると、「戦略輸送」と「戦術輸送」に分けることが出来る。 戦略輸送と戦術輸送の間に明確な境界線は存在しないが、本国ないしそれに準ずる地域から基幹となる拠点までの輸送を戦略輸送、基幹拠点から前線またはそれに準じる地域への輸送を戦術輸送とよぶ。輸送機も、これに対応して戦略輸送機と戦術輸送機に大別される。

戦略輸送機は概して大型であり、大量の兵員/貨物を運搬することが可能である。一例として、米軍のC-5輸送機は最大約120t、C-17でも約70tのペイロードを持つ。

戦術輸送機は中~小型のものが多く、w:ターボプロップ機も多い。前線の未整備な滑走路でも運用できるように、STOL性能や不整地からの離発着能力を備えているものが多い。

落下傘降下/投下 編集

航空機は地形上の障害を飛び越えて目的地に移動できることから、前線を超えて兵員や物資を輸送することが可能である。ただし、この様なケースでは着陸できる飛行場を確保することが困難なことが多い。このような場合、兵員や物資を落下傘付きで降下/投下する場合がある。

歩兵を中心とした戦闘部隊を一定規模で空輸し、落下傘降下させることを目的とした作戦を特にw:空挺作戦と呼ぶ。

補給物資を落下傘で投下した作戦として有名な例では、w:インパール作戦における英軍や、w:ベルリン封鎖における西側諸国のベルリン空輸作戦があげられる。

また、w:回転翼航空機で兵員等を輸送する作戦をw:ヘリボーンといい、空挺作戦とヘリボーンとを併せてw:空中機動作戦という。

民間機の使用 編集

戦略レベルの輸送の場合、軍用機ではなく民間のw:旅客機w:貨物機をチャーターして兵員や物資を輸送する場合がある。民間機は軍用機と異なり、w:チャフフレアなどの自衛装備を基本的に持たないため(一部、治安状況の悪い地域を飛行する民間機にはフレア投射機などが装備されていることがある)、輸送経路の安全性が確保されていることが大前提ではあるが、軍用の輸送機のみを利用するよりも遙かに大量の兵員や物資を輸送することが可能になる。

航空優勢の確保 編集

航空優勢とは、従来はw:制空権とも呼ばれていた概念で、ある範囲の空域において敵航空戦力に有効な航空作戦を実施させない状態を指す。

逆に言えば、航空作戦を有効に実施するためには航空優勢の確保は必須の要素である。

航空基地攻撃/航空基地防衛 編集

航空優勢確保のための一手段として、敵航空基地を(しばしばw:奇襲的手段も用いて)攻撃し、敵航空戦力の覆滅または無力化を図るものである。当然、これらから味方の航空基地を防御する作戦も航空作戦に分類される他、さらに広義には基地の能力を保全する為に、基地施設に偽装や補強を加えたり(基地防護)、戦闘により損傷した施設の修復(被害復旧)も、基地防衛作戦に含まれる。

他の航空作戦と決定的に異なるのは、攻撃、防衛共にその主体が基地という地上の施設そのものにあるため、BLU-107 デュランダルのような基地攻撃専用の兵器や、w:VADSのように基地防御に特化した兵器の他、通常の陸戦兵器が用いられるところにある。ただし、基地攻撃の手段として空爆が行われたり、その爆撃を阻止するため敵軍と自軍の戦闘機の間に空中戦が起こるなど、どこまでを基地攻撃・基地防衛作戦に含めるかの明確な基準は無い。

  • w:巡航ミサイル・精密誘導弾道弾などで敵航空基地の管制塔・w:レーダーサイトw:滑走路などを破壊し、一時的に離陸不可能な状態に追い込む
  • 敵航空基地を守る防空施設を破壊または無力化する
  • 離陸できない敵航空戦力を地上破壊して大打撃を与え、絶対的航空優勢を確保する(w:第三次中東戦争など、開戦時の航空奇襲により、敵航空戦力を地上破壊して一気に航空優勢を確立した事例もある)

敵防空網制圧 編集

敵防空網制圧 (Suppression of Enemy Air Defence, SEAD) は、特定地域の敵防空システムを物理的、電子的な手段によって無力化、撃破する活動である。敵のw:地対空ミサイルや対空火器 (AAA) 射撃統制システムのような地上w:電磁波放射装置を探知し、w:HARMのようなw:対レーダーミサイル、または精密w:誘導爆弾などによって攻撃を加える。

SEADを実行する機体は、他の種類の攻撃機のように多数で行動するのではなく、1機でも様々な能力を有することが要求される。トーネード ECRを開発したパナヴィアは、最も近代的なSEAD能力を有する戦術航空機に必要な要素を次のようにまとめている。

  • 電磁波放出位置評定システム (ELS: Emitter Location System)
    • 敵のw:レーダー波放射源をピンポイントで把握し、それを表示する。
  • 画像w:赤外線システム (IIR: Imaging Infra-Red System)
    • 全天候、昼夜間の偵察活動能力を有する。
  • 運用データインターフェイスによるデジタルデータリンク
    • 後続の他の攻撃機や地上のセンターにほぼリアルタイムで偵察情報を送る。
  • 前方赤外線 (w:FLIR: Forward Looking Infra-Red)
    • 悪天候時や夜間でも低空飛行を可能にする。
  • 先進的な表示装置と強力なコンピュータ
    • 乗員に対してより戦術的な意思決定の機会を増やす。
  • w:対レーダーミサイル
    • 最も脅威となる敵レーダー波放出源を攻撃する。
  • 先進のインターフェイス概念の導入
    • 将来のスマート兵器や妨害装置の使用も可能にしておく。
  • 先進の電子機器技術
    • 将来の脅威にも対処できる潜在性を有する。

戦闘空中哨戒 編集

戦闘空中哨戒 (CAP ; Combat Air Patrol) とは戦闘機によるw:防空の任務で、陸上の建物や海上の艦船、空中給油機のような支援機など、指定された地域や対象を守るためにw:直掩機を空中待機させ、そこに近づく敵航空機を迎撃する戦術。

通常、哨戒中の戦闘機は防御対象の周囲を何種類かのパターンで周回しながら脅威となる敵航空機の索敵を行う。効果的な周回パターンは、戦闘機を高高度空域と低高度空域の双方に位置するようにして、脅威に対して即応できるようにする。

CAPはw:航空母艦に搭載される航空部隊の典型的な運用形態である。空母戦闘群を脅威から防御するためにCAPを展開するのである。そのほか、BARCAPやTARCAPと呼ばれる任務もある。

BARCAP (BARrier Combat Air Patrol)
防御対象から、脅威の襲来が予測される方角に向かって展開すること。
TARCAP (TARget Combat Air Patrol)
味方の攻撃機を敵戦闘機から防衛するために、攻撃地点またはその近くの上空に展開すること。
HAVCAP (High Asset Value Combat Air Patrol)
空中給油機やAWACS機のような、重要な味方機を特定の任務の間防衛するために展開すること。

空中護衛 編集

空中護衛(くうちゅうごえい、Escort)とは輸送機や早期警戒機など、敵戦闘機に対して脆弱な味方の航空機を護衛する事。また厳密な意味で軍事上の航空作戦ではないが、航空用語で単にエスコートという場合は、w:ハイジャックされたり機体にトラブルが発生したw:旅客機や、w:領空を侵犯してきた航空機に対して戦闘機が確認・護衛・誘導のために随伴する行動も指す。

その他 編集

上記に分類できない航空作戦として、各種の支援任務がある。

早期警戒と空中管制 編集

早期警戒(Airborne Early Warning, AEW, 空中早期警戒)とは、強力なw:レーダーを搭載したw:早期警戒機を飛行させ、「空中レーダーサイト」とすることで遠距離から脅威を探知する事を目的とする。使用される機体はその任務の特性上、長時間の滞空能力と強力なレーダー、およびレーダーが探知した情報処理するだけの装置を搭載するための容積を求められることから、旅客機や輸送機をベースに開発された専用機であることが多い。レーダーは、E-2 ホークアイなど、背面に円盤形のw:レドームを持った機体が多いが、w:サーブ 2000 ERIEYEのように矩形のレドームを備えたり、ニムロッドの様にレーダーを機体内部に搭載するケースもある。

探知した脅威は早急に味方に連絡し、対応する必要がある。通常は戦闘機が脅威に対応するが、早期警戒機の中にはこれらの戦闘機を管制する機能を限定的ながらも持つ物が多い。このため、管制機能も含めて、AEW&Cと呼ぶ事がある。また、この空中管制機能を強化した機種を特にw:早期警戒管制機 (Airborne Warning and Control System, AWACS)と呼ぶ場合もある。ただし、AEW, AEW&C, AWACSに厳密な定義は存在しないため、その境界線は非常に曖昧である。

空中給油 編集

w:空中給油とは、飛行中の航空機から別の航空機に燃料を供給すること。

地上の車両や海上/海中の艦船と航空機の大きな違いの一つとして、航空機はw:エンジンを停止してその場に待機する事によって活動時間を延長する事ができない、という点が挙げられる。また、燃料切れはただちに不時着ないし墜落に繋がり、そのリスクは地上車両や艦船の比ではない。

しかしながら、現実には哨戒任務(対潜哨戒やCAPなど)や長距離飛行を余儀なくされる任務など、途中で給油が必要になるケースは多い。このような場合に使用されるのが空中給油で、給油母機としては専用または輸送機を改造したw:空中給油機の他、戦闘機やw:攻撃機に小改造を加えて空中給油セットを装備させた物も使われる。

空中給油を作戦計画に組み込む場合、給油対象機が燃料を1/3以上消費しないうちに給油が行われるように計画を組むのが普通である[1]。これは、給油予定地点で給油機との合流に失敗した場合に備えて次の給油地点まで移動できるだけの予備燃料を確保するためである。

空中給油が実施される状況(目的)としては、以下のようなケースが挙げられる。

航続距離の延伸
長距離侵攻任務や機体の空輸(フェリー)時など、通常の航続距離を超える距離を飛行する場合に使用する。この場合、空中給油機は給油対象機に同行するかまたは先行して給油予定地点に向かう必要がある。
滞空時間の延長
戦闘空中哨戒(CAP)や早期警戒機・対潜哨戒機などの哨戒飛行など、一定空域を長時間飛行する必要がある任務において、滞空時間を延長するために使用する。大型の哨戒機などでは交代要員を載せて飛行する事も可能であるため、空中給油によって基地までの往復が不要になる事の効率の向上は大きい。また、戦時においては燃料タンクに被弾した機体の飛行時間を延ばすために空中給油が行われる事もある。
武器や貨物の搭載量(ペイロード)の拡大
航空機が離陸する際に搭載できる武器や貨物の量(ペイロード)は離陸時に搭載する燃料の重量との合計で定まるため、燃料を大量に搭載しているとその分ペイロードは減少する。しかしながら、離陸時の速度における最大許容重量と通常の飛行状態に達した状態における最大許容重量とでは後者の方が余裕があるため、搭載する燃料を減らした状態で離陸し、上空に達してから空中給油で燃料を補給する事により、ペイロードを増大する事ができる。

戦闘捜索救難 編集

戦闘捜索救難(CSAR, Combat search and rescue)作戦は、自軍や同盟軍の将兵が、搭乗していた航空機が撃墜されるなどの理由で敵性地帯に取り残され、これを救出する場合に行なわれる作戦である。

例えば米空軍や米海軍、米海兵隊ではMH-53ペーブ・ロウHH-60Gペーブ・ホークのような大型ヘリや、HC-130P/Nコンバット・シャドウのような比較的低速の固定翼機が使用される[2]

参考文献 編集

  1. ^ 江畑健介『兵器の常識・非常識(下)』並木書房、P.441
  2. ^ 軍事情報研究会著 「大型化する次期CSAR(戦闘捜索救難)-Xヘリ」 軍事研究2008年2月号 p140-p141

関連項目 編集

航空作戦(こうくうさくせん)は、w:航空機からの地上偵察・物資輸送・敵部隊への攻撃などにより、味方の地上部隊を直接・間接に支援したり、また支援を行うために必要となる上空のw:航空優勢を確保することを目的とした軍事作戦。

航空作戦の中でも、敵の組織的な戦力を破壊することで敵の戦力を弱めたり、継戦能力をなくしたりすることで地上部隊や海上部隊の戦闘を支援する事を「戦術航空支援」と呼ぶ。

偵察 編集

敵地上部隊の索敵や輸送部隊の状況などを上空からw:偵察すること。地味な任務であるが、w:軍用機が誕生した最初期の頃から存在する、基本かつ重要な任務でもある。

偵察を行う地域によって、「戦略偵察」と「戦術偵察」に大別される。偵察方法は、カメラによる写真偵察(w:可視光線またはw:赤外線)が主であるが、最近はw:レーダーによる電子偵察も行われる。

偵察に使用される機体としては専用に開発されたw:偵察機か、w:戦闘機w:輸送機などから改造された物、戦闘機などに偵察ポッドをつけた物などが利用される。近年は専用に開発または改造された偵察機は減少し、戦術偵察はw:無人航空機偵察用ポッドを装着した戦闘機が、戦略偵察はw:偵察衛星がそれぞれ行なうことが多くなっている。

近接航空支援 編集

近接航空支援 (Close Air Support, CAS) は、前線の地上部隊に協力して、航空支援を提供すること。地上部隊に随伴するかw:観測機に搭乗したw:前線航空統制員 (Forward Air Controler, FAC) の指示に従い、まさに相対している敵地上部隊に対し、航空機がw:機銃掃射w:爆弾w:ロケット弾の投下を行うこと。

使用される機体は状況によって様々であるが、通常は小回りがきく小型の戦闘機やw:攻撃機であることが多い。速度は必ずしも必要とはされず、A-10Su-25のように近接航空支援を主目的とする機体では速度よりもペイロードと防御装甲が重視されている。現在では誘導兵器の発達により、B-2などの大型機で支援を行うことも可能になってきている。

航空阻止 編集

航空阻止 (Air Interdiction) とは、主にw:攻撃機によって、洋上の敵w:艦艇を攻撃して侵攻してくる敵を撃破し、また着上陸した敵に対してはw:後方連絡線、資材集積所、橋・トンネルなどの交通拠点を攻撃して、侵攻部隊のw:後方支援を破壊することにより前線の敵部隊のw:戦闘力を弱体化させる作戦をいう。「阻止攻撃」という場合もある。

対艦・対潜水艦作戦 編集

対潜哨戒/攻撃 編集

w:潜水艦の捜索と発見/攻撃をおこなうこと。通常は双発以上の専用固定翼機(w:対潜哨戒機、あるいは単に哨戒機とよぶ)か艦載w:ヘリコプターがこの任務を負うことが多い。

任務の性質上、哨戒機には長い航続時間と低空での良好な運動性が求められる。また、長時間上空にあることから乗員の居住性も考慮されることが多く、これらの事情から対潜哨戒機はw:旅客機w:爆撃機など、大型の機体をベースにしたものが多い。ヘリコプターの場合は航続時間が短いが、その分を母艦との連携でカバーしているようである。

海上交通路を確保するために重要な作戦であり、たとえばw:海上自衛隊は過去の経験からこの種の装備を非常に重要視している。

一般的な作戦内容 編集

作戦のパターンとして、以下のような形が取られる事が多いようである。

  1. w:ソナーで広域捜索を行う
  2. 潜水艦が潜む海域がある程度絞り込まれた後は赤外線探査装置やMAD(Magnetic Airborne Detector, または Magnetic Anomaly Detector) と呼ばれるw:地磁気の乱れを利用した探査装置により位置を特定する
  3. 潜水艦の位置が特定できたら、搭載している誘導w:魚雷w:爆雷などで攻撃を行う

広域捜索 編集

固定翼機の場合、ソナーによる広域探索はw:ソノブイと呼ばれる、ソナーを内蔵した浮標(ブイ)を捜索海域に複数個投下する事で行う。ソノブイから無線で送られてくる情報は哨戒機上のコンピュータで処理されて潜水艦の所在を絞り込む。ヘリコプターの場合は吊り下げ式ソナーが使われる場合が多い。

第二次大戦後しばらくまでは、潜水艦は浮上したりw:シュノーケルを海上に出したりすることで充電や艦内の酸素補給を行う必要があったため、レーダーも重要な広域捜索の手段であったが、w:原子力潜水艦の登場により海上で酸素を補給しなくても海中を行動できるようになったため、現在では以前ほどには重要視されていない。

対艦攻撃 編集

敵国のw:軍艦w:商船を攻撃して、これを撃沈または破壊する事。

w:第二次世界大戦の頃は爆弾とw:魚雷が主な攻撃兵器であったが、近年はw:空対艦ミサイルの使用が主流になってきている。

航空輸送 編集

航空輸送とは、航空機を使用して兵員や物資を輸送すること。航空機による輸送は、船舶による輸送と比べて費用効率の面で劣るものの、速度が圧倒的に早いことと、飛行場と燃料さえ確保できれば場所を選ばず輸送が可能であることから、重要な輸送手段の一つである。空中給油を航空輸送の一部に含めることも可能だが、ここでは分けて記述している。

航空輸送を担う軍用機をw:輸送機と呼ぶ。

戦略輸送と戦術輸送 編集

航空輸送に限定される用語ではないが、輸送任務を大別すると、「戦略輸送」と「戦術輸送」に分けることが出来る。 戦略輸送と戦術輸送の間に明確な境界線は存在しないが、本国ないしそれに準ずる地域から基幹となる拠点までの輸送を戦略輸送、基幹拠点から前線またはそれに準じる地域への輸送を戦術輸送とよぶ。輸送機も、これに対応して戦略輸送機と戦術輸送機に大別される。

戦略輸送機は概して大型であり、大量の兵員/貨物を運搬することが可能である。一例として、米軍のC-5輸送機は最大約120t、C-17でも約70tのペイロードを持つ。

戦術輸送機は中~小型のものが多く、w:ターボプロップ機も多い。前線の未整備な滑走路でも運用できるように、STOL性能や不整地からの離発着能力を備えているものが多い。

落下傘降下/投下 編集

航空機は地形上の障害を飛び越えて目的地に移動できることから、前線を超えて兵員や物資を輸送することが可能である。ただし、この様なケースでは着陸できる飛行場を確保することが困難なことが多い。このような場合、兵員や物資を落下傘付きで降下/投下する場合がある。

歩兵を中心とした戦闘部隊を一定規模で空輸し、落下傘降下させることを目的とした作戦を特にw:空挺作戦と呼ぶ。

補給物資を落下傘で投下した作戦として有名な例では、w:インパール作戦における英軍や、w:ベルリン封鎖における西側諸国のベルリン空輸作戦があげられる。

また、w:回転翼航空機で兵員等を輸送する作戦をw:ヘリボーンといい、空挺作戦とヘリボーンとを併せてw:空中機動作戦という。

民間機の使用 編集

戦略レベルの輸送の場合、軍用機ではなく民間のw:旅客機w:貨物機をチャーターして兵員や物資を輸送する場合がある。民間機は軍用機と異なり、w:チャフフレアなどの自衛装備を基本的に持たないため(一部、治安状況の悪い地域を飛行する民間機にはフレア投射機などが装備されていることがある)、輸送経路の安全性が確保されていることが大前提ではあるが、軍用の輸送機のみを利用するよりも遙かに大量の兵員や物資を輸送することが可能になる。

航空優勢の確保 編集

航空優勢とは、従来はw:制空権とも呼ばれていた概念で、ある範囲の空域において敵航空戦力に有効な航空作戦を実施させない状態を指す。

逆に言えば、航空作戦を有効に実施するためには航空優勢の確保は必須の要素である。

航空基地攻撃/航空基地防衛 編集

航空優勢確保のための一手段として、敵航空基地を(しばしばw:奇襲的手段も用いて)攻撃し、敵航空戦力の覆滅または無力化を図るものである。当然、これらから味方の航空基地を防御する作戦も航空作戦に分類される他、さらに広義には基地の能力を保全する為に、基地施設に偽装や補強を加えたり(基地防護)、戦闘により損傷した施設の修復(被害復旧)も、基地防衛作戦に含まれる。

他の航空作戦と決定的に異なるのは、攻撃、防衛共にその主体が基地という地上の施設そのものにあるため、BLU-107 デュランダルのような基地攻撃専用の兵器や、w:VADSのように基地防御に特化した兵器の他、通常の陸戦兵器が用いられるところにある。ただし、基地攻撃の手段として空爆が行われたり、その爆撃を阻止するため敵軍と自軍の戦闘機の間に空中戦が起こるなど、どこまでを基地攻撃・基地防衛作戦に含めるかの明確な基準は無い。

  • w:巡航ミサイル・精密誘導弾道弾などで敵航空基地の管制塔・w:レーダーサイトw:滑走路などを破壊し、一時的に離陸不可能な状態に追い込む
  • 敵航空基地を守る防空施設を破壊または無力化する
  • 離陸できない敵航空戦力を地上破壊して大打撃を与え、絶対的航空優勢を確保する(w:第三次中東戦争など、開戦時の航空奇襲により、敵航空戦力を地上破壊して一気に航空優勢を確立した事例もある)

敵防空網制圧 編集

敵防空網制圧 (Suppression of Enemy Air Defence, SEAD) は、特定地域の敵防空システムを物理的、電子的な手段によって無力化、撃破する活動である。敵のw:地対空ミサイルや対空火器 (AAA) 射撃統制システムのような地上w:電磁波放射装置を探知し、w:HARMのようなw:対レーダーミサイル、または精密w:誘導爆弾などによって攻撃を加える。

SEADを実行する機体は、他の種類の攻撃機のように多数で行動するのではなく、1機でも様々な能力を有することが要求される。トーネード ECRを開発したパナヴィアは、最も近代的なSEAD能力を有する戦術航空機に必要な要素を次のようにまとめている。

  • 電磁波放出位置評定システム (ELS: Emitter Location System)
    • 敵のw:レーダー波放射源をピンポイントで把握し、それを表示する。
  • 画像w:赤外線システム (IIR: Imaging Infra-Red System)
    • 全天候、昼夜間の偵察活動能力を有する。
  • 運用データインターフェイスによるデジタルデータリンク
    • 後続の他の攻撃機や地上のセンターにほぼリアルタイムで偵察情報を送る。
  • 前方赤外線 (w:FLIR: Forward Looking Infra-Red)
    • 悪天候時や夜間でも低空飛行を可能にする。
  • 先進的な表示装置と強力なコンピュータ
    • 乗員に対してより戦術的な意思決定の機会を増やす。
  • w:対レーダーミサイル
    • 最も脅威となる敵レーダー波放出源を攻撃する。
  • 先進のインターフェイス概念の導入
    • 将来のスマート兵器や妨害装置の使用も可能にしておく。
  • 先進の電子機器技術
    • 将来の脅威にも対処できる潜在性を有する。

戦闘空中哨戒 編集

戦闘空中哨戒 (CAP ; Combat Air Patrol) とは戦闘機によるw:防空の任務で、陸上の建物や海上の艦船、空中給油機のような支援機など、指定された地域や対象を守るためにw:直掩機を空中待機させ、そこに近づく敵航空機を迎撃する戦術。

通常、哨戒中の戦闘機は防御対象の周囲を何種類かのパターンで周回しながら脅威となる敵航空機の索敵を行う。効果的な周回パターンは、戦闘機を高高度空域と低高度空域の双方に位置するようにして、脅威に対して即応できるようにする。

CAPはw:航空母艦に搭載される航空部隊の典型的な運用形態である。空母戦闘群を脅威から防御するためにCAPを展開するのである。そのほか、BARCAPやTARCAPと呼ばれる任務もある。

BARCAP (BARrier Combat Air Patrol)
防御対象から、脅威の襲来が予測される方角に向かって展開すること。
TARCAP (TARget Combat Air Patrol)
味方の攻撃機を敵戦闘機から防衛するために、攻撃地点またはその近くの上空に展開すること。
HAVCAP (High Asset Value Combat Air Patrol)
空中給油機やAWACS機のような、重要な味方機を特定の任務の間防衛するために展開すること。

空中護衛 編集

空中護衛(くうちゅうごえい、Escort)とは輸送機や早期警戒機など、敵戦闘機に対して脆弱な味方の航空機を護衛する事。また厳密な意味で軍事上の航空作戦ではないが、航空用語で単にエスコートという場合は、w:ハイジャックされたり機体にトラブルが発生したw:旅客機や、w:領空を侵犯してきた航空機に対して戦闘機が確認・護衛・誘導のために随伴する行動も指す。

その他 編集

上記に分類できない航空作戦として、各種の支援任務がある。

早期警戒と空中管制 編集

早期警戒(Airborne Early Warning, AEW, 空中早期警戒)とは、強力なw:レーダーを搭載したw:早期警戒機を飛行させ、「空中レーダーサイト」とすることで遠距離から脅威を探知する事を目的とする。使用される機体はその任務の特性上、長時間の滞空能力と強力なレーダー、およびレーダーが探知した情報処理するだけの装置を搭載するための容積を求められることから、旅客機や輸送機をベースに開発された専用機であることが多い。レーダーは、E-2 ホークアイなど、背面に円盤形のw:レドームを持った機体が多いが、w:サーブ 2000 ERIEYEのように矩形のレドームを備えたり、ニムロッドの様にレーダーを機体内部に搭載するケースもある。

探知した脅威は早急に味方に連絡し、対応する必要がある。通常は戦闘機が脅威に対応するが、早期警戒機の中にはこれらの戦闘機を管制する機能を限定的ながらも持つ物が多い。このため、管制機能も含めて、AEW&Cと呼ぶ事がある。また、この空中管制機能を強化した機種を特にw:早期警戒管制機 (Airborne Warning and Control System, AWACS)と呼ぶ場合もある。ただし、AEW, AEW&C, AWACSに厳密な定義は存在しないため、その境界線は非常に曖昧である。

空中給油 編集

w:空中給油とは、飛行中の航空機から別の航空機に燃料を供給すること。

地上の車両や海上/海中の艦船と航空機の大きな違いの一つとして、航空機はw:エンジンを停止してその場に待機する事によって活動時間を延長する事ができない、という点が挙げられる。また、燃料切れはただちに不時着ないし墜落に繋がり、そのリスクは地上車両や艦船の比ではない。

しかしながら、現実には哨戒任務(対潜哨戒やCAPなど)や長距離飛行を余儀なくされる任務など、途中で給油が必要になるケースは多い。このような場合に使用されるのが空中給油で、給油母機としては専用または輸送機を改造したw:空中給油機の他、戦闘機やw:攻撃機に小改造を加えて空中給油セットを装備させた物も使われる。

空中給油を作戦計画に組み込む場合、給油対象機が燃料を1/3以上消費しないうちに給油が行われるように計画を組むのが普通である[1]。これは、給油予定地点で給油機との合流に失敗した場合に備えて次の給油地点まで移動できるだけの予備燃料を確保するためである。

空中給油が実施される状況(目的)としては、以下のようなケースが挙げられる。

航続距離の延伸
長距離侵攻任務や機体の空輸(フェリー)時など、通常の航続距離を超える距離を飛行する場合に使用する。この場合、空中給油機は給油対象機に同行するかまたは先行して給油予定地点に向かう必要がある。
滞空時間の延長
戦闘空中哨戒(CAP)や早期警戒機・対潜哨戒機などの哨戒飛行など、一定空域を長時間飛行する必要がある任務において、滞空時間を延長するために使用する。大型の哨戒機などでは交代要員を載せて飛行する事も可能であるため、空中給油によって基地までの往復が不要になる事の効率の向上は大きい。また、戦時においては燃料タンクに被弾した機体の飛行時間を延ばすために空中給油が行われる事もある。
武器や貨物の搭載量(ペイロード)の拡大
航空機が離陸する際に搭載できる武器や貨物の量(ペイロード)は離陸時に搭載する燃料の重量との合計で定まるため、燃料を大量に搭載しているとその分ペイロードは減少する。しかしながら、離陸時の速度における最大許容重量と通常の飛行状態に達した状態における最大許容重量とでは後者の方が余裕があるため、搭載する燃料を減らした状態で離陸し、上空に達してから空中給油で燃料を補給する事により、ペイロードを増大する事ができる。

戦闘捜索救難 編集

戦闘捜索救難(CSAR, Combat search and rescue)作戦は、自軍や同盟軍の将兵が、搭乗していた航空機が撃墜されるなどの理由で敵性地帯に取り残され、これを救出する場合に行なわれる作戦である。

例えば米空軍や米海軍、米海兵隊ではMH-53ペーブ・ロウHH-60Gペーブ・ホークのような大型ヘリや、HC-130P/Nコンバット・シャドウのような比較的低速の固定翼機が使用される[2]

参考文献 編集

  1. ^ 江畑健介『兵器の常識・非常識(下)』並木書房、P.441
  2. ^ 軍事情報研究会著 「大型化する次期CSAR(戦闘捜索救難)-Xヘリ」 軍事研究2008年2月号 p140-p141

関連項目 編集