日本語(にほんご)大きな(おおきな)特徴(とくちょう)一つ(ひとつ)は、母音(ぼいん)が5つ、子音(しいん)が14つしかないことです。(かく)音節(おんせつ)は、母音(ぼいん)無声(むせい)()などのわずかな例外(れいがい)除い(のぞい)て、文字(もじ)体系(たいけい)対し(たいし)非常に(ひじょうに)規則的(きそくてき)です。これは、綴り(つづり)発音(はつおん)大きく(おおきく)異なる(ことなる)可能性(かのうせい)のある英語(えいご)とは全く(まったく)対照的(たいしょうてき)です(英語(えいご)では例えば(たとえば)母音(ぼいん)の "ou" は "noun" や "cough" になり、子音(しいん)の "g" は "goat" や "giraffe" になります)。

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ウィキバーシティ日本語の発音の学習教材があります。
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ウィキペディア日本語の音韻の記事があります。

子音(しいん)(あと)母音(ぼいん)続く(つづく)音節(おんせつ)になりますが、撥音(はつおん)"ん・ン"と促音(そくおん)「っ・ッ」は除き(のぞき)ます。促音(そくおん)常に(つねに)同じ(おなじ)子音(しいん)とペアになっていますが、母音(ぼいん)無声(むせい)()によって子音(しいん)同士(どうし)変わる(かわる)ことがあります。 ((れい):"suki"と"suteki)

日本語(にほんご)同音異義語(どうおん いぎご)多く(おおく)正しい(ただしい)発音(はつおん)非常(ひじょう)重要(じゅうよう)です。学習者(がくしゅうしゃ)は、長母音(ちょうぼいん)短母音(たんぼいん)などの微妙(びみょう)違い(ちがい)見分ける(みわける)のが難しい(むずかしい)かもしれませんが、ネイティブスピーカーはこれらに慣れ(なれ)ているので、間違った(まちがった)発音(はつおん)理解(りかい)できないかもしれません。

五十音図

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日本語にはア・イ・ウ・エ・オという5つの母音があります。

Vowel    
国際音声記号 a i ɯ e o

*厳密な発音はWikipediaでお確かめください。

スペイン語やイタリア語の母音とほぼ同じです。

日本語の母音は、各々が単独の音素となり二重母音にはなりません―つまり、母音が並んでも発音が変わることはありません。母音が続く場合は分けて発音します。例えば、人名の「さえ」 (sa.e)や、「あおい」 (a.o.i) が当てはまります。

残りの五十音図は上の母音と子音が組み合わさって形成されます。

清音   濁音   半濁音   拗音   拗濁音   拗半濁音
  a i u e o   a i u e o   a i u e o   ya yu yo   ya yu yo   ya yu yo
k ka ki ku ke ko g ga gi gu ge   go   ki kya kyu kyo gi gya gyu gyo  
s sa   shi su se so z za ji zu ze zo shi sha shu sho ji ja ju jo
t ta   chi   tsu te to d da ji zu de do chi cha chu cho ji ja ju jo
n na   ni nu ne no   ni nya nyu nyo  
h ha   hi   Փu he ho b ba bi bu be bo p pa pi pu pe po hi hya hyu hyo bi bya byu byo pi pya pyu pyo
m ma mi mu me mo     mi mya myu myo    
y ya yu yo
r   ra   ri   ru   re   ro ri rya ryu ryo
w wa o

y音は母音ではなく子音と考えられます。ドイツ語ではこの音は"j"で表記されます。

イ段(イ・キ・シ・チ・ニ…)はヤ行(ヤ・ユ・ヨ)と結びついて拗音となります。これらも通常の「子音+母音」の音節と同様に、一拍で発音します。

上の表から、日本語の五十音図は非常に体系的だと分かるはずです。ですが、例外がいくつかあり、表では太字になっています:
  • "si"は"shi"
  • "ti"は"chi"、"tu"は"tsu"
  • "zi"と"di"は"ji"、"du"は"zu"
  • "hu"は"fu"
  • "wo"は"o"
 
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ウィキペディアモーラの記事があります。

日本語では、音節のタイミングと強調が極めて規則的です。基本的なタイミングは拍 (mora) と呼ばれます。各拍は同じ強さで、かつ同じ時間をかけて発音します。2拍は1拍の2倍の長さです。

以下は1拍です:

一方、以下は2拍です。2拍は1拍の2倍です。

  • 長音
  • 促音
  • あおい(青い):すべて短母音なので3拍
  • みどり(緑):3拍
  • しゃしゅ(車種):2拍
  • にんじん(人参):4拍
  • いいえ:3拍
  • あっか(悪化):3拍

また、拗音が長音となることもあります。

  • ぎゅうにゅう:4拍

長音

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長音は2拍です。ローマ字では、サーカムフレックスやマクロンをつけて書きます(â、î、û、ê、ô、あるいはā、ī、ū、ē ō)

ひらがなで書くときは、母音に応じて「あ・い・う・え・お」を後ろにつけます。カタカナで書くときは長音符"ー"をつけます。

表記の例 音声
おおさか 大阪   Ja-Osaka.ogg
とうきょう 東京   Ja-Tokyo.ogg
データ データ   Ja-deeta-data.ogg
ぎゅうにゅう 牛乳   Ja-gyuunyuu-milk.ogg
ほお   Ja-hoo-cheek.ogg

無声化

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標準的な日本語では、無声子音 (k, s, sh, t, ch, h, f, b, p) に挟まれたときにiやuが発音されません。この現象は、関東方言の下降ピッチアクセントを容易にするために発達したと思われます。口は母音の形をして、1拍の長さとなりますが、発音されません。文末のデスやマスのスは、母音のuが完全に消えて歯茎音のsのみとなります。無声化は、それ以外の語尾のiやuでは起こらないのが一般的です。連続無声化は滅多に起こりませんが、「二日」(hutuka)などいくつか存在します。また、文脈によって起こらないこともあります。「鈴木」ではおこりませんが、「鈴木さん」ではSuzuki-sanと無声化します。関西方言など、無声化が起こらない方言もあります。

例:

ローマ字 発音 表記例
kushi k-shi
ta-be-ma-shi-ta tabemash-ta 食べました

子音

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※ローマ字表記の日本語と英語の比較のため、正確性に疑問があります。音声ファイルができしだい、この節は修正されなければなりません。

英語と発音の異なる子音がいくつかあります:

子音 類似発音 備考
g give or sing これらの発音の中間であり、話者の年代や、場合によっては方言によって"ng"にほぼ近い音になります。今日では、英語の喉音のgに近づき始めていますが、年配の方は現在でも"ng"のように発音します。日本語学校でも"ng"と教わります。
sh, ch, j   英語の場合より舌が後ろになります。
ts bats "fatso"から"fa"を除いてみしょう。
(イギリスの)who 唇と歯ではなく、唇の間に息を通します。hとfを組み合わせたような音です。
r   巻き舌のrに似ていますが、1回だけ震わせます。慣れていないとdに聞き違えるかもしれません。rとlの中間音とよく言われます。

二重子音(促音)と撥音を除いて、子音単独では音節になりません。必ず音節の初めに位置します。

撥音

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一般的に日本語の子音の直後には母音がありますが、その例外の1つに撥音(ん)があります(もう1つは促音です)。語尾や複合語の真ん中などに見られます。

撥音 (n) とナ行 (na, ni, nu, ne, no) との違いは、学習者には聞き分けるのが難しいですが、母語話者が間違った発音を理解するのは難しいかもしれません。

  • 禁煙(きんえん、kin-en)と記念(きねん、ki-nen)
  • 本屋(ほんや、hon-ya)※ho-nyaではない

撥音の発音は直後の発音によって異なります。これは不規則性というより、むしろ直後の発音に移りやすいようにショートカットしているといえます。両唇破裂音のバ行やパ行が続くときはンはm音になります。

  • 新聞(しんぶん、shimbun)

  実例 (OggVorbis, 151 KB)

  1. 語尾:
    • 段(だん)
    • 金(きん)
    • 糞(ふん)
    • 善(ぜん)
    • 本(ほん)
  2. 子音の直前:
    • 万歳(ばんざい)
    • 金魚(きんぎょ)※ngのように発音する
    • 訓令(くんれい)
    • 全治(ぜんち)※nのように発音する
    • 本店(ほんてん)※nのように発音する
  3. マ行・バ行・パ行の前
    • 玄米(げんまい)
    • 本部(ほんぶ)
    • 天ぷら(てんぷら)
  4. ア行やヤ行の前
    • 善悪(ぜんあく)
    • 権威(けんい)
    • 反映(はんえい)
    • 専用(せんよう)
  5. ローマ字表記の場合、ア行やヤ行の前のnはアポストロフィーをつけてn'と書くことが多いです。これはナ行の子音nと区別するために行います。「撥音+ア行/ヤ行」とナ行とは発音も意味も異なるのでご注意ください。
    • kani(蟹)とkan'i(簡易)
    • kinyuu(記入)とkin'yuu(金融)
    • konyakku(コニャック (cognac))とkon'yaku(婚約)

促音(重子音・二重子音)

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促音は、/p/、/t/、/k/、/s/の4種です。促音(言語学ではQと書きます)は1拍の音で、一般的に短母音と同じ長さの小休止 (pause)が入ります。促音は、t、ch、tsの前では/t/、s、shの前では/s/となります。

表記例 音声
たっきゅう 卓球   Ja-takkyuu-table_tennis.ogg
っかいどう 北海道   Ja-hokkaido.ogg
っか 真っ赤   Ja-makka-bright_red.ogg
がっこう 学校
っち   Ja-docchi-which.ogg
っつ くっ付く   Ja-kuttsuku-to stick.ogg }
せってい 設定   Ja-settei-setting.ogg
ちょっと 一寸
っさてん 喫茶店
っそ   Ja-hissori-quiet(ly).ogg
じゅっぷ 十分
っぽ 札幌   Ja-Sapporo.ogg

外来語では、ガ行、ザ行、ダ行、およびバ行でも促音がつくことがあります。

原語表記
ッバ goodbye
ッド good
ッグ dog
ッズ kids

練習

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単純な語

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番号 仮名 備考
1 あか
2 いろ
3 えがく 描く
4 うつ 打つ
5 おさめる 治める
6 おや
7 わび 侘び
8 パリ Paris
9 ともだち 友達
10 はな
11 しじ 指示
12 ひざ
13 つもり 書くつもり

長音、二重母音

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  発音練習2 (OggVorbis, 125 KB) ※「出入り」と「子牛」は、「で+いり」「こ+うし」という複合語なので、長母音ではありません。

番号 仮名 備考
1 さあ 感動詞
2 あい
3 あう 会う
4 はえ
5 あおい
6 いい 良い
7 いう 言う
8 いえ いえ
9 しお
10 しゅるい 種類
11 ぬう 縫う
12 うえ
13 うお
14 れい
15 スペイン Spain
16 うれい 憂い
17 でいり 出入り
18 データ data
19 おい
20 そう 指示詞
21 おもう 思う
22 こうし 子牛
23 もえる 燃える
24 ほお

子音の組み合わせ(促音・拗音)

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  • 音声ファイルは現在ありません。
番号 仮名 備考
1 とうきょう 東京
2 ギョーザ 餃子
3 ぎゅうにゅう 牛乳
4 ひょう
5 びょういん 病院
6 でんぴょう 伝票
7 みょう
8 むりょう 無料
9 りゅう
10 たっきゅう 卓球
11 はっぴょう 発表

撥音

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番号 仮名 備考
1 てんき 天気
2 れんしゅう 練習
3 ざんぎょう 残業
4 あんしん 安心
5 すんなり 副詞
6 でんぱ 伝播
7 せんべい せんべい
8 げんまい 玄米
9 せん 1000
10 ほん
11 せんよう 専用
12 ほんや 本屋
13 さんえん 3円
14 たんい 単位

類字音の比較

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番号 仮名1 備考1 仮名2 備考2
1 ゆき ゆうき 勇気
2 そと そうと 僧徒
3 そと そとう 粗糖
4 そと そうとう 相当
5 そと そっと 副詞
6 そっと 副詞 そっとう 卒倒
7 まき まっき 末期
8 はこ はっこう 発行
9 いっせい 一斉 いせい 異性
10 たに たんい 単位
11 さんえん (san'en) 3円 さんねん (sannen) 3年
12 きにゅう (kinyû) 記入 きんゆう (kin'yû) 金融
13 きねん (kinen) 記念 きんえん (kin'en) 禁煙

朗読

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以下の朗読は、夏目漱石の古典的小説『坊ちゃん』の冒頭部です。ナチュラルペースでの朗読なので、慣れていないとついていくのは難しいかもしれません。なお、読みやすくするために、分かち書きするなど表記を一部あらためました。

 親譲(おやゆず)りの 無鉄砲(むてっぽう)で 小供(こども)のときから (そん)ばかりしている。 小学校(しょうがっこう)に いる時分(じぶん) 学校(がっこう)の 二階(にかい)から ()()りて 一週間(いっしゅうかん)ほど (こし)を ()かしたことがある。 「なぜ そんな 無闇(むやみ)をした」と ()(ひと)が あるかもしれぬ。 別段(べつだん) (ふかい)理由(りゆう)でもない。 新築(しんちく)の 二階(にかい)から (くび)を ()していたら、 同級生(どうきゅうせい)の 一人(ひとり)が 冗談(じょうだん)に、 「いくら 威張(いば)っても、 そこから ()()りることは 出来(でき)まい。 弱虫(よわむし)やーい。」と (はや)したからである。 小使(こづかい)に ()ぶさって (かえ)ってきたとき、 おやじが (おお)きな ()をして 「二階(にかい)ぐらいから ()()りて (こし)を ()かす(やつ)があるか」と いったから、 「この (つぎ)は ()かさずに ()んで()せます」と (こた)えた。
 親類(しんるい)(もの)から 西洋製(せいようせい)の ナイフを もらって きれいな ()を ()に (かざ)して、 友達(ともだち)に ()せていたら、 一人(ひとり)が「(ひか)ることは (ひか)るが ()れそうもない」と いった。 「()れぬことがあるか、 (なん)でも ()ってみせる」と ()()った。 「そんなら (きみ)の (ゆび)を ()ってみろ」と 注文(ちゅうもん)したから、 「なんだ (ゆび)ぐらい この(とお)りだ」と (みぎ)の ()の 親指(おやゆび)の (こう)を はすに ()()んだ。 (さいわい) ナイフが (ちい)さいのと、 親指(おやゆび)の (ほね)が (かた)かったので、 いまだに 親指(おやゆび)は ()に ()いている。 しかし 創痕(きずあと)は ()ぬまで ()えぬ。