定理 4.4
において, が虚軸上を下から上まで動くとき,
の軌跡が 平面の原点を通らずに,原点を 回まわれば,
の根はすべて 平面の左半平面に存在する.逆も成立する.
証明
左半平面を囲む半径 の半円を考え,これを とする.
内に 個の根が存在することをいえばよい.
いまこの半円 を虚軸上の部分 と円弧部分 に分け,
とする.このとき,
である.
仮定は である.
さて, のとき,
と表すと,半径 (十分大)であるから である.この偏角は,
となるが, が を動くとき, の変化量は である.
は 平面上の原点を正の方向に半周するから, の変化量は である.
よって,
それゆえ,
[5]
を得る.このことは の根がすべて 平面の左半平面に位置していることを示す.逆は明らかであろう.
例101
の場合を考えてみよう. とおき実部と虚部とに分けると,
(4.14)
となる. なら, 平面の虚軸の像 は 軸に平行な直線であるから,
となって[6]
不安定である.そこで とする.
式 (4.14) から を消去すると,
ここに,
となる. であるから,
となる.
いずれの場合も が から へ動くとき
式 (4.14)
から分かるように, は から へ動く.つまり 上を上から下へ動く.
したがって, なら がどんな値をとっても, は にならない[7].
のとき,原点を囲むような形となるときだけ,
が成立する.このとき,
である.すなわち,
のとき安定となる.これは
Hurwitz の方法で求めたものと一致する.
この技法は Hurwitz の方法に比べて,極めて迂遠のようであるが,自動制御理論では,フィードバック系の安定判別に用いられ,極めて有用である.
例102
の場合の安定判別を,上例にならって行い,Hurwitz の方法による結果と比較せよ.
解答例
を実部 と虚部 とにわける.
は定数だから軌跡 は に平行.
ならば, は時計回りに回転し,その値は で不安定.
ならば, は反時計回りに回転し,その値は で より安定.
これは Hurwitz の定理による結果に符合する.
例103
の場合の安定判別を,上例にならって行い,Hurwitz の方法による結果と比較せよ.
解答例
を実部 と虚部 とにわける.
- …①
①から を消去すると,…②
②のグラフの形は を 90°反時計回りに回転させたもので、頂点の座標は .
②が原点 を「取り込む」必要があるから,
①の軌跡が の から まで動けば,原点の周りを反時計回りに 1 回転して より安定,すなわち
条件 は Hurwitz の定理とも一致する.
- ^
自分自身と交わらない閉曲線のことである.
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の原点 周りの回転数である.
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を複素数とするとき,
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の両辺を とすると,
すなわち
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仮定より .
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にて なら回転数は , なら ,いずれにしても であるのだから原点の周りの回転数は にならなければ安定でないが,そうではない.
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原点を時計回りに周る軌跡であるため, は負の値となる.