医学部の面接でよく聞かれる質問とその答え方について述べる。服装や話し方などについても述べる。

服装 編集

現役生は制服を着用する。浪人生や制服がない場合はスーツ・ワイシャツ・ネクタイを着用する。靴は特別な理由(天候不良や経済状況など)がない場合、華美でない革靴が好ましい。

話し方 編集

一般的には目を見て話せと言われるが、目をじっと見られていると面接官も落ち着かないので、実際には眉毛のあたりやネクタイの結び目あたりを見て話したほうが良い。医学部の面接に於いては精神鑑定を専門とする医師が同席する場合がある。視線をキョロキョロさせるのは鑑定上好ましい影響を与えない。

医学部を志望した理由 編集

必ずされる質問である。医師はお金が儲かるから、社会的地位が高いから、安定しているから、かっこいいから、純粋に学問的に興味があるから、などと答えるのは一般的に好ましくないとされる。親が医師だからというという答えも、それだけでは弱い。自発的な理由も述べる。自分の入院体験などを出すのは良いが、体力がないと思われないように気をつける。また、医学という学問に対する純粋な熱意や興味も十分な理由となりうる。基礎研究医を志望する学生が減少傾向にあり、医学部というこれからはいる場所で何を学んでいくのかよく理解していない受験生が増えつつある今、純粋な学問的好奇心を示すことも重要であるといえる。

(追記) 面接官(医学部教員)からよく聞くのは、「医師になってから何をしたいか」というビジョンを語ってほしいという事。また、親戚が病気になったから、自分が病気になったからと言った理由は、多くの人が語るため避けたほうがよい。毎年々々朝から夕方まで、同じような内容を延々と聴かされる面接官の気持ちを少し想像してみてほしい。 ちなみに、虫垂炎で入院した事を医師の理由にした受験生がいたが、見事に消化器外科教授の怒りを買った。誰でもかかりうるような病気を医師の志望動機にするのは、あまりにも短絡的で動機として弱すぎる。 学問的に興味があるから、は基礎研究をしたい人にとってならば良い志望動機となる。ただ、なぜその学問に興味があるのか、しっかりした具体的理由を語ることが必要である。

その大学を志望した理由 編集

必ずされる質問である。学閥が強いからなどと答えると悪い印象を与える。臨床・研究ともに水準が高く、日本の医学会をリードしてきたからなどと答える。ただ、表面的な受け答えにならいように注意すること。大学の面接なのでやはり、「どういった点が水準が高いと感じたの?」や「特にどういった分野でリードして来たと思うの?」と込み入って聞かれることも想定しておくこと。首都圏の医学部は特に競合大学が多いため、自分の将来像と大学の特色を照らし合わせて合理的に面接官に説明できるとよい。

地方大学の場合は、「センターがいまいちだった」「都会に残るには成績が足りない」と言った本音は面接官は百も承知。ただ、直接それを言うのは憚られるだろう。大切なのは、マイナス的な発言にならないことである。

大学自体について好いことを言うのが難しければ、その地域を褒める等、もっともらしい理由をつける。多少の脚色はかまわないが、突っ込まれた時に慌てないように。

自分には医師への適性があるか 編集

揺さぶりをかけるために「医師に向いていない。」と言われる可能性もある。これは、どのような態度に出るかを観られている。これは実務を行うことになれば、患者さんの中に理不尽なことをしたり言って来る人、あるいはメディアで批判をされる事態等に出くわす場面が度々あることによる。感情的にならず、理路整然として「これからどうしていきたいか」を念頭に置き、受け答えすれば問題ない。くれぐれも「適性がない」と言われたからといって、人格が否定されたわけではないので注意されたい。

自分の性格の長所 編集

自身のセールスポイントであるので、謙遜することなくどんどん述べると良い。その上で、過去にその長所が生きたエピソード、さらには未来で医師となる上でどういった場面で活かせそうか、と言うことも用意しておくこと。自身の短所よりも見つけにくいと感じるかもしれないが「有りません。」と答えるのは、自己分析をきちんとしているのか、とマイナスに解釈されてしまう可能性が高いので避ける事が好ましい。長所を知らないのは自身では謙遜しているように感じるかもしれないが、面接官(=医学部医学科教員)には好感を与えることは無いので必ず探しておくこと。

自分の性格の短所 編集

明らかな短所を述べるのはまずい(喧嘩っ早い、体力が無い等)。短所だが長所ともとれる性格を述べる。加えて、その短所を改善するためにどのように努力しているかまでを答えられるようになれれば、尚更可である。

尊敬する人物 編集

医学とそれ以外の分野の人をそれぞれ考えておく。具体的な人物名を考えておく。どういう点が尊敬できるのかも述べる。

ガンの告知について 編集

患者の権利についての意識が高まってきているので、告知を一切行わないという答えは好ましくない。患者ひとりひとりのバックグラウンド(進行度・家族構成・本人の思想・経済状況・精神状態)をよく理解した上で、EBM(Evidence Based Medicine)だけではなくNBM(Narrative Based Medicine)を進めていくのが好ましい。

脳死と臓器移植 編集

脳死と遷延性意識障害(植物状態)の違いと、関連法案を押さえる。臓器移植に賛成か反対かを答える。個人の価値観に依存するのでどちらでも良いが(正解はない)、ある種の「逃げ」としては一般論で賛成、反対を言うのではなく、個別具体的事案によって柔軟に考えたいと答えるのも手である。

医療ミスを防ぐにはどうすれば良いか 編集

医師個人の能力や人格のみを批判するのはまずい。労働時間が長すぎることなどについても述べ、激変する医療現場の労働環境問題に関心を持っていることを示すのも良い。2018年末頃から関連法案が次々に成立・討議されているためよく情報収集しておくこと。

医師不足問題 編集

日本全体で見れば医師数はあと数十年で飽和すると言われている一方、内陸部などの過疎地域での医療過疎が深刻な問題となっている。医師の絶対数を増やすことに日本医師会が根強く反対しているため医学部定員を増やすのは難しい。しかし、医学教育の中で地元の医療へ貢献する意志をもたせたり、国・地方自治体の積極的な介入により医師の偏在を緩和したりすることは可能である。

ホスピス 編集

医学と生物学の違い 編集

生物学は生物に関すること全般を扱う学問である。基礎医学は人体の構造や機能を研究する学問である。臨床医学は人間の治療を目的とする学問である。

将来進みたい医学の分野 編集

基礎医学系に進みたい場合は、間接的だが多く人の役に立つというように答える。精神科に進みたい場合は、DSMなどについて理解しておく。

大学の所在する都道府県に残るか 編集

特に地方大学を受験する場合、この質問の対策は必須となる。大都市圏の極端な一極集中が進んだ今、地方大学は慢性的かつ致命的な人手不足に直面している。診療科によっては、旧六医科大学どころか地方旧帝大さえ存続の危機にある。そのような土地の医療を支えている医局員が、卒後も残ると考える受験生を優先したいと考えるのは当然である。縁も所縁もない土地に出願するのは医学部受験生にとっては珍しくないが、そのような受験生は上記の質問に対して入念に準備しておく必要がある。反対に、その地方で生まれ育った場合などはこの問いの対策はほぼ不要である。むしろ「なぜ大都市圏の大学を受験しないのか」という質問を受けるかもしれない。

出身高校 編集

出身高校をけなすと良く思われない。 校風や特色など聞かれる場合も多いので簡単に答えられるようにしておくこと。

高校での部活動 編集

医師は体力が重要なので、運動系の部活動の方が面接官には好ましく思われる。文化系の部活動の場合は学校外で体を動かしていたというように答えれば良い。帰宅部はあまり良く思われない。

ボランティア 編集

経験がなければないで良い。医学部に入学したらやってみるとでも答えれば良い。

趣味 編集

マンガ・アニメ・ゲームなどの趣味はあまり良く思われない。読書と答えると愛読書について聞かれる。音楽鑑賞と答えるとどういうジャンルの音楽を聞くか尋ねられる。

愛読書 編集

趣味で読書と答えても、この質問がされる。医師が書いた本に限る必要はない。 地方国立大学で当該県出身の有名作家の作品を聞かれたケースもある。

気になった時事問題 編集

医学系と政治経済系の両方の話題を考えておく。政治経済系は当否に関して対立の激しい(政治的に微妙な問題を含む)マターは避けたほうが良い。

医学に関する専門知識 編集

まず必要ない。無論、面接官は医学のプロであり、専門用語を並べても「釈迦に説法」である。仮に誤った知識を述べた場合はかなりの悪印象を与える。知っていれば答えても良いが、知らなければ「存じませんでした。入学後にしっかり勉強します」と回答するのが無難かつ賢明である。判らないのに知ったかぶりをしないこと。聞かれてもいない専門知識をひけらかさないこと。筆記試験を突破することが受験生として何より肝要である。大きな話題となった医学知識を補充しておくことは、医学に興味があるとして好印象を与える場合がある(ノーベル医学生理学賞の受賞者の研究など)。言うまでもなく、筆記試験に余裕がある場合に限り、面接試験の直前に補充すればよい。

印象に残った体験 編集

友人関係 編集

どのような友人がいるか。親友はいるか。友人たちの中で自分はどのような役割かを答える。 そのほか、友人関係についての質問として「本当の友人とはどういうものか?」や「トラブルをどのように乗り越えるか」など。

試験の出来 編集

単なる試験の出来不出来を答えるだけでなく、各科目のある程度具体的な出来を答えた方がよい。また基本的には、目上の人に向けての会話であることを自覚して話すこと。「死にました」や「ヤバかった」等の同級生の間で使うような言葉は絶対に避けることである。

好きな言葉 編集

受験者個々の人生観を聞く質問である。気に入った言葉であれば何でもよい。加えて好きになったエピソード(自分にとって好ましい結果を生んだ体験、自分が良くなるきっかけとなった体験等で可)を用意しておくことが好ましい。受験者個々の人物を問う試験なので、くれぐれも有名台詞(例:一期一会)の受け売り、と思われないことが大切である。

影響を受けた医師 編集

入院経験があれば、そのときの医師について述べる。いなければいないで良い。

大学に入ってやりたいこと 編集

興味がある医学の分野について述べる。入りたい部活動が決まっていればそれを答える。決まっていなければ、部活動はいくつか回ってみてから決めると答えても良い。医学部は医学部生だけで構成される部活動が多い。

親の職業(私立大学) 編集

私立大学の医学部は親が医師の場合が比較的多いものの、近年は会社経営・会社員や教員・公務員である場合も多い。親が医師でないという理由だけで落とされることはない。正直に答える。

第二志望・第三志望の医学部(私立大学) 編集

無論、面接試験を受けている大学を第一志望と述べるのが賢明。併願している大学名も、偏差値や医学会の影響力などを考慮して伏せるのが良い。例えば、日本医科大学の面接で、第一志望を順天堂大学と述べるのは印象が悪くなるだろう。反対に、順天堂大学の面接で、日本医科大学を併願しているが第一志望は貴大学であると述べれば印象は良くなるかもしれない(保証はしない)。

結婚・出産と仕事の両立(女子受験生) 編集

ほとんどの大学ではあからさまな女子差別は行われないが、結局は差別されると考えた上で受験しなければならない。「頑張ってどうにかする」と表面的に言うだけではほとんどが同じ答えになってしまう。可能ならば、どのように両立させるのか具体的な回答を用意しておくことが好ましい。結婚や出産を犠牲にして医療に身を捧げるつもりである、という回答も好印象を与えるかもしれない。結局のところ、女医は結婚や出産などライフワークバランスを優先する場合が多い。そのような女医に対して悪印象を抱く医師は男性だけでなく、第一線にいる女性医師にも少なからず存在する。そして大学受験の面接官は、前述のような最前線の医師が行う場合が多い。

進路変更をして医学部を目指す理由(再受験生・仮面浪人生) 編集

なぜ、進路を変更してまで医学部なのか理由をしっかり答える。

前の大学での専攻を医学にどう役立てたいか(再受験生) 編集

理系学部出身ならば、基礎医学の理解や研究に役立つ。文系であったとしても卒後の臨床分野においてマネジメント面で役に立つことがある。専攻が役に立たなければ、一からやり直すという決意を述べる。

前の大学には通っていたか(再受験生・仮面浪人生) 編集

関連項目 編集