大学教養 理系学部の生物学

このページ「大学教養 理系学部の生物学」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。

※ まえがき: 高校で習う範囲編集

※ 2018年現在の高校生物のカリキュラムでは、(高校の化学でなく)高校の生物科目でも「ペプチド結合」とか習ってるので、もし分からなければ、まず高校生物の復習をせよ。

細胞編集

テロメア編集

染色体の末端のあたりにテロメアと言われる、DNA配列で(ヒトのテロメアでは) TTAGGG の塩基配列が繰り返している部分があるのだが、これが細胞分裂のたびに短くなる。

テロメアの長さが一定以下になると、細胞が分裂しなくなる。

このようにして、どうやらテロメアは、細胞のおおよその分裂回数を記録したりする役割をしているらしく、よく時計などにたとえられ、また、生体の寿命や老化に関係していると考えられている。

(1999年のクローン羊のドリーも、他の羊よりも早死にしたが、テロメアが普通の羊よりも短くなっていたらしい。)

※ 上記のテロメアの話題は、高校の生物IIでも発展項目などでコラム紹介している場合がある。

しかし、幹細胞では、テロメラーゼという酵素によって、テロメアの繰り返し回数が伸ばされ、テロメアの長さが保たれている。生殖細胞でもテロメラーゼが働いているだろう、と考えられている。


発展的な話題 (一部の教科書にある記述)

(試験管やペトリ皿などに)培養した体細胞では、一定回数しか分裂できないことが昔から知られている(いわゆる「ヘイフリック限界」。用語は大学教養では、ほぼ範囲外なので、暗記しなくていい)。この原因も、テロメアが関係していると見るのが、有力説である[1]

どうやらテロメアは、細胞分裂に必要となるDNAポリメラーゼがけ結合する際の足場になっているようである、と生物学では一般に考えられている[2]。 そしてテロメアが短くなる理由も、DNAポリメラーゼは足場のテロメア部分を複製できないため、細胞分裂のたびにテロメアが短くなっていくのだろう、と生物学では一般に考えられている。

がん細胞では、テロメアおよびテロメラーゼが暴走しているらしく、そのような仮説が有力である[3] [4]。ただし、あくまでも仮説である。がん細胞の研究は難しく、未解明のことも多い。

主な参考文献または脚注
  1. ^ 南江堂『Essential 細胞生物学』、原書第4版、716ページ
  2. ^ 羊土社『基礎から学ぶ生物学・細胞生物学』第3版、250ページ
  3. ^ 東京化学同人『分子細胞生物学』、第7版、1001ページ
  4. ^ 南江堂『Essential 細胞生物学』、原書第4版、716ページ

細胞周期とサイクリン編集

細胞周期のチェックポイントの制御にかかわる物質が見つかっており、それは後述するサイクリンとCDKという物質である。

細胞内で、サイクリンという物質があり、サイクリンの濃度が高まるとサイクリン依存性キナーゼ(CDK)が活性化し、CDKが標的タンパク質をリン酸化することで、細胞周期の制御が行われる。

この際、サイクリンがCDKに結合していると考えられており、サイクリンとCDKが結合したもののことを「サイクリン-CDK複合体」などと呼ばれている。


Gタンパク質と受容体編集

 
GqがホスホリパーゼCとプロテインキナーゼCを活性化する様子。
 
Gsがアデニル酸シクラーゼを活性化する様子。

高校では習わないが、近年、Gタンパク質というのが分かった。

Gタンパク質は、GTP(グアノシン三リン酸)という物質をGDP(グアノシン2リン酸)に変える働きをしている。

高校ではATPをエネルギーの貯蔵庫だのエネルギーの貨幣だと習っただろうが、とりあえずGタンパク質のGTPはエネルギーとはあまり関係ない。

では、Gタンパク質でのGTPやGDPは何かというと、どうも細胞へのなんらかのシグナル到達の合図と、それによる細胞内での様々なシグナル開始の合図のようである。


細胞内では、環状AMPなどのシグナル伝達物質がある。

まず、Gタンパク質に付随する受容体に、たとえばアセチルコリンなどの物質が結合し、シグナルを受け取る。 すると、「三量体Gタンパク質」が活性化される。

Gタンパク質とは何かというと、とくに「三量体Gタンパク質」の部分が、Gタンパク質であると言われる場合が多い。

この三量体Gタンパク質は、GTPをGDPに変化させる。


その後の経路として、数通りかの経路がある。

特に重要と思われる経路のひとつとして、環状AMPの合成の経路がある。

環状AMPの経路

三量体Gタンパク質がGTPをGDPに変化させた際、三量体Gタンパク質は、環状AMP(cAMP)を合成する酵素 アデニル酸シクラーゼを刺激して環状AMPを合成させ、細胞内のシグナル伝達を開始する。


セカンドメッセンジャーとか二次メッセンジャーとかいう。


 
典型的なGタンパク質共役受容体の模式図。N末端が細胞外に、C末端が細胞内にあり、7つの膜貫通ドメインと細胞内と細胞外にそれぞれ3つずつループがある。

そして、Gタンパク質の近くに、7回膜貫通タンパク質というのがある。7回膜貫通タンパク質は「Gタンパク質共役型受容体」とも言われる。

本wikibooksでは区別をしやすくするため、「7回膜貫通タンパク質」で呼ぶことにする。名前だけでは分かりづらいかもしれないが、7回膜貫通タンパク質は受容体として働く。

受容体であるということは、それに結合する物質があるわけだ。

人体の場合、7回膜貫通タンパク質は、筋肉などに存在し、アドレナリンが7回膜貫通タンパク質に結合し、筋肉への神経からの伝達に関わっている。

神経情報伝達のほか、いくつかのホルモンにも、7回膜貫通タンパク質は関わっている。

・ すい臓に作用するセクレチン(ホルモン名)の受容体も7回膜貫通タンパク質[1]
・ 副腎皮質に作用する副腎皮質刺激ホルモン(ホルモン名)の受容体も7回膜貫通タンパク質。
・ 甲状腺刺激ホルモンの受容体も7回膜貫通タンパク質。

など、いくつかのホルモンの受容体としても、使われている。

だからといって、けっしてすべてのホルモン受容体が7回膜貫通タイプなわけではなく、たとえば、すい臓のインスリン受容体は異なるタイプ(酵素型受容体)である。

かならずしも人体のすべての受容体が7回膜貫通タンパク質ではなく、たとえばイオンチャネル型の受容体など(7回膜貫通ではない種類の受容体)も存在する。


さて、7回膜貫通タンパク質の構造などについては、7回膜貫通タンパク質は1本のポリペプチドから構成されている[2]αヘリックスの物質であり、疎水性であり、細胞膜を7回貫通している。


主な参考文献または脚注
  1. ^ 羊土社『理系総合のための生命科学』、2007年2月25日 第1版、177ページの下の表、(※ 下記の甲状腺刺激ホルモンまで、同じ参考文献)
  2. ^ 医学書院『標準生理学』第8版、33ページの右下の本文


神経系編集

神経伝達物質のひとつとしてアセチルコリンがある。

アセチルコリン受容体は、種類としては主に2種類あり、ムスカリン性受容体 と ニコチン性受容体 という2種類のアセチルコリン受容体がある。

ニコチン性受容体という名前は、タバコの主要成分でもあるニコチンが結合できるので、こういう名前がついた[1] [2]

いっぽう、ムスカリンとは、キノコのベニテングダケのコケ毒の成分である。ムスカリン受容体には、薬物(ほぼ毒物?)のムスカリンが結合するので、こういう名前がついた。


ニコチン性受容体は、イオンチャネル型の受容体である。

ムスカリン性受容体は、7回膜貫通タンパク質型の受容体であるが、最終的にKチャネル(カリウムチャネル)を開閉する 。


主な参考文献または脚注
  1. ^ 裳華房『理工系のための生物学』、改訂版、91ページ
  2. ^ 医学書院『標準生理学』、第8版、149ページ

免疫編集

免疫編集

免疫グロブリン

高校では、免疫グロブリンについて、可変領域が、抗原に結合する、と習った。

じつは可変領域の内部で、「超可変領域」といわれる、特に可変の程度の高い部分があることが分かっており、H鎖とL鎖の各鎖に3箇所ある(つまり、合計12個ある)。この超可変領域こそが多様性に富んで、抗原に特異的であることが分かっている。「超可変領域」のことを「相補性決定領域」ともいう。

(※ wikiに超可変領域の画像ファイルが無いので、市販の教科書などお読みください。)

MHC

細胞膜の表面にあるMHC(主要組織適合性複合体、Major Histocompatibility Complex)には2種類あり、MHCクラスIとMHCクラスIIという二種類がある。

(※ 高校では、MHCに2種類あることは、原則的には教えてない。また、どの細胞にMHCがあるかも、高校ではボカしている。)


MHCクラスIは、ほぼすべての有核細胞に発現している。 いっぽう、MHCクラスIIは、樹状細胞やマクロファージやB細胞にある。


キラーT細胞がMHCクラスIで病原体を提示している細胞を殺す仕事をする。

いっぽう、MHCクラスIIの役割は、ヘルパーT細胞への情報提示である。


T細胞側の、MHCと結合する相手の分子は、「T細胞受容体」(TCR)と呼ばれる。

ところで高校で、免疫グロブリンの先端に可変領域があると習い、遺伝子の再編などで多様な組み合わせを実現していると習っただろう。

じつはTCRの先端にも可変領域があり、遺伝子の再編で多様な組み合わせを実現していることが分かっている。

CD4やCD8

さて、ヘルパーT細胞にはCD4という分子がある。

いっぽう、キラーT細胞にはCD8という分子がある。

CD4やCD8は、MHCやTCRとは別物である。


エイズウイルスは、CD4と結合することが分かっている。


免疫グロブリンの5種類のクラス


モノクローナル抗体編集

モノクローナル抗体とは、細胞融合の技術を使って、健康なB細胞と、増殖力の高い腫瘍細胞とを融合させることで、B細胞のつくる抗体を大量に入手する方法のことの方法そのものは、高校でも習ったように、センダイウイルスやポリエチレングリコールなどを用いて可能である。

そもそもB細胞は抗体産生細胞である。

手順としては、

  1. まず、マウスに抗原を注射して、目的の抗体を産生できるB細胞をマウスに産生させる。
  2. このB細胞と、ガン化した骨髄細胞であるミエローマ細胞を融合させる。こうして、ガン細胞と融合してできた抗体産生細胞のことを、ハイブリドーマという。
  3. 実際の手順では、ハイブリドーマ以外の細胞が混ざったり、抗体産生能力の低い細胞も混ざっているので、まず、ハイビリドーマだけが生き残ることのできるように調整された培養液で、培養していく。こうして、ハイブリドーマ以外を殺していく。
  4. 実際に得られるハイブリドーマは均一ではなく様々な種類のハイブリドーマが混ざっている。なので、細胞を1個ずつ取り出し、容器を別々の容器に分けるなどして、いくつかのハイブリドーマを選び出し、それぞれ培養していく。(実際には、専用の容器があり、すでに数十個のクボミのある培養皿のキットがあるので、そういうのを利用することになる。)
  5. 培養していったハイブリドーマが、それぞれ、どんな抗体を産生するか調べる。必要に応じて培養し、上澄み液から抗体を入手する。

こうして、目的の抗体を大量に入手できる。

生理と物質編集

ステロイド編集

高校でも「ステロイド」はステロイドホルモンなどとして名前だけ習ったと思う。

 
ステロイドの基本骨格
図では全体構造を見やすくするため、炭素Cや水素Hを省略している。

ひとくちに「ステロイド」といわれても色々な構造があるが、おおむね構造は、図のようにステロイドの基本骨格を含む構造である


なお、大学の化学構造式の書き方は高校と変わり、図のように、炭素Cや、炭素に隣接した水素Hを省略する場合も多い。こう描く理由はおそらく、有機化合物の高分子では、炭素と水素を省略しないと、構造が見づらくなるからであろう。


副腎皮質ホルモンや性ホルモンもステロイドである。

ひとくちに性ホルモンといっても、女性ホルモンに限定しても何種類もあるので、大学ではたとえば具体的に「エストラジオール」(女性ホルモンの一種,エストロゲンの別名)など物質名で呼ぶ。

 
エストラジオール(エストロゲン、女性ホルモン)
 
テストステロン(男性ホルモン)

このように、構造式で見ると、男性ホルモンや女性ホルモンがステロイドであることが一目瞭然である。

 
コレステロール

「ステロイド」と聞くと、なんとなく薬物的なイメージがあるかもしれないが、しかし真核細胞の細胞膜の成分にもステロイドが含まれている。また、ホルモンなどにもステロイドは多い。


プロスタグランジン編集

 
プロスタグランジンE1 (PGE1) の構造式
 
アラキドン酸

精液の中にプロスタグランジンという、子宮筋や平滑筋を収縮させる作用をもつ物質が含まれている。この物質は発見時、前立腺(プロステート・グランド)で生成されると考えられていたので、プロスタグランジンという名前がついている。

しかし、のちにプロスタグランジンには数種類あることが分かった。プロスタグランジンF2αとかプロスタグランジンE2など、何種類かある。

また、存在場所も精液だけでなく、ほぼ全身で、この物質が必要に応じて分泌されることが分かった。


またプロスタグランジンの作用は解明されていき、平滑筋の収縮のほかにも、血管の拡張などの作用があることが分かった。

風邪などのさいの炎症や発熱の調整にも、プロスタグランジンが関わっている。

なお、プロスタグランジンの合成経路については、脂肪酸の一種のアラキドン酸を原料にしてプロスタグランジンは合成される。合成経路について、細胞膜を構成するリン脂質が酵素によって分解されてプロスタグランジンが合成される、と考えられている。


分類について

分類について、プロスタグランジンをホルモンの一種として分類する場合もあれば、ホルモンとは別の「生理活性物質」や「エイコサノイド」(イコサノイドともいう)としてプロスタグランジンを分類する場合もある。

なお、エイコサとはラテン語の数字20のことであり、エイコサノイドとはアラキドン酸の炭素数が20個であることから、そういってるだけである。

なので学生は、プロスタグランジンがホルモンであるかどうかは、あまり気にしなくていい。


脳内麻薬との関係 (※ 発展的な話題)
 
アナンダミド

脳内で分泌される快楽物質のひとつとしてアナンダミドというのがあるが、構造がプロスタグランジンに近い。(※ 参考文献: 『グラフィックライフサイエンス』)

軟骨編集

軟骨の主な成分は、プロテオグリカンという糖タンパク質である。

ちなみに硬骨の主成分はリン酸カルシウムである。

なお、混同しやすい物質として、名前の似ている「ペプチドグリカン」という物質も自然界にあるが、ペプチドグリカンは細菌の細胞壁の成分である。混同しないように。

※ 軟骨の成分名よりも重要なこととして、軟骨は、化石には残りづらいことが考古学的に重要である。そのため、軟骨魚類であるサメの化石は、例外的にサメの硬骨の部分である歯の化石しか見つからない。


ペプチドグリカン編集

※ 高校生物でもチャート式で、ペプチドグリカンと抗生物質ペニシリンとの関係が書いてある。
※ 大学教養ではあまり習わないが、高校参考書でも習うので、ついでに紹介。
※ 高校の化学の教科書では、ペニシリンについて習う。高校の「生物」科目では、免疫の単元で、ペニシリンのアナフィラキシーについて習うようだ。
 
ペプチドグリカンの構造

ペプチドグリカンは、細菌(原核細菌)の細胞壁として、よく存在する成分であり、比較的に硬い成分である。ブドウ球菌や大腸菌なども、細胞壁の主成分がペプチドグリカンである[1]

※ 真核微生物(「真菌」という)には、後述のペニシリンが効かない。キノコやカビなどが、真菌である。真菌の細胞壁の主成分は、菌の種類にもよるが、キチン(物質名)などのペプチドグリカン以外の物質が主成分であり[2]、細胞壁にペプチドグリカンが無いからである。そもそもペニシリン自体、アオカビから発見された物質である。そもそもペニシリンの名前の由来が、アオカビの学名「ペニシリウム」(Penicillium)が由来である。
※ 高校生物の教科書では、「真菌」と言う用語を習わない。代わりに「菌類」と言う用語で教えている。


ペプチドグリカンの構造は、網目構造になっており、主に糖からなる炭水化物(より正確には、糖とグリシン[3])を、ペプチド(アミノ酸のつながったもの)で架橋している構造になっている。

抗生物質のペニシリンは、このペプチドグリカンのペプチド結合を阻害するため、よってペニシリンはペプチドグリカンの形成を阻害できるので、結果として細胞壁に穴が開き、細菌を殺せるので、ペニシリンは抗生物質として機能している。つまり、ペニシリンは、分子生物学的かつ薬理学的に言えば、細胞壁合成の阻害剤である。

なお、これらペプチドグリカンのある細菌の多くは、細胞内の内圧が高く、それを硬い細胞壁で守っているので、ペプチドグリカンの合成が阻害されると、細菌の細胞が破裂する(溶菌)。

また、ヒトの涙や胃腸液に含まれる成分であるリゾチームも、ペプチドグリカンを加水分解して破壊する[4]


参考文献
  1. ^ 医学書院『標準微生物学』、第12版、306ページ
  2. ^ チャート式の生物、平成26年版
  3. ^ 東京化学同人『ストライヤー生化学』、第7版、222ページ
  4. ^ 東京化学同人『分子細胞生物学』、第7版、35ページ

ビタミン編集

ビタミンCは、アスコルビン酸という物質である。

ビタミンには水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンとがある。ビタミンCは水溶性である。つまり、アスコルビン酸は水溶性である。(関連付けて覚えよう。)


編集

 
ブローカ野とウェルニッケ野

脳は、部位ごとに、その部位がつかさどる機能が違っている。

たとえば、1861年の外科医ブローカーは、ある失語症の患者を調べて、その患者は言葉を理解するが自分からは「タン、タン」としか話せないと報告した。死後、患者が解剖され、脳の左半球の前頭葉の一部に損傷を発見した。現在では、左半球の前頭葉のこの部位の機能として、顔の筋肉などの運動機能をつかさどることが分かり、現在、この部位は「ブローカ野」または「運動性言語中枢」呼ばれている。


また、ウェルニッケは1874年、別の患者で、言葉を話せるが理解していない患者を報告した。死後の解剖で、ウェルニッケの報告した患者の脳の側頭葉に損傷のあることが発見された。現在、この部位は「ウェルニッケ野」または「感覚性言語中枢」と呼ばれている。


その後、事故などで脳に損傷を負った患者が発生するの症例が調べられたり(※ 参考文献『グラフィック ライフ サイエンス』)、他には実験的に脳のさまざまな部位に電気刺激を加えるなどの人体実験や動物実験などにより、脳のどの部位がどの機能をつかさどっているかが、調べられた。(※ 参考文献: 羊土社『理系総合のための生命科学』) 現代では、わざわざ電気刺激を加えなくても、MRI(核磁気共鳴診断法)やPET診断などで、脳の働きを外部から観察できる。

MRIの種類にもよるが、水素原子核のある部分を映し出す性質をもつ観察手法なので、造影剤をつかわなくても観察できる利点がある。


  • 海馬
 
青く示している部分が海馬

脳で「海馬」(英: hippocampus)と呼ばれる部分が、主に記憶をつかさどっている。

※ 「海馬」は世間では比較的に有名だが、なんと高校の検定教科書では紹介していない。

なお、日本語の「海馬」とはタツノオトシゴのこと。英語の hippocampus とは、ギリシア神話に出てくる半馬半魚の怪獣。

 
脳の海馬(左)とタツノオトシゴ(右)。


  • その他
ブロードマンの脳地図
 
ブロードマンの脳地図
ブロードマンの脳地図では、図の色の異なる部分が、それぞれ異なる領域として分類されている。

脳の機能はともかく、とにくかく解剖学的にいくつかの領域に分けて脳を図示したものとして、ブロードマンの脳地図が、古くから提案されている。


ペンフィールドのホムンクルス
 
ペンフィールドのホムンクルス

脳のなかで、どの部位が、身体のどの部位をつかさどってるかを図示したものとして、「ペンフィールソのホムンクルス」とか「脳のホムンクルス」とか「脳の小人」などと呼ばれる図が、古くから提案されている。なお、「ホムンクルス」とは人造人間という意味の語である。

図で描かれた手や顔など身体各部位の大きさは、神経の多さに比例していると考えられて、このホムンクルスの絵が描かれている。



受精波編集

精子が卵に到達して受精の瞬間になるとき、精子が卵に接触した点を中心にCaの増減が波として卵全体に伝わっている。(※ ← 大学教養の教科書で、よくある内容。)

これはどうやって確認されたかというと、一例として、イクオリンというカルシウムに反応する物質を、あらかじめウニの卵に注射して混ぜたあとに受精させることで確認された。(※ 参考文献: 羊土社『基礎から学ぶ生物学・細胞生物学』、第3版、243ページのコラム)

オワンクラゲは、緑色発光タンパク質GFPをもつ。世間ではノーベル賞受賞にもなったGFPが有名であるが、じつはオワンクラゲはGFPのほかにもイクオリンという青色発光タンパク質をもち、イクオリンがカルシウムと反応すると青色の光を発生する。


なお、(受精波の観測の件は別にして、)単に受精膜の形成の際にカルシウムが必要かどうかを確かめるだけの実験なら、上記とは異なる実験例として、カルシウムの効果を打ち消す薬品を未受精卵に注入して、精子と反応させても受精膜が形成されないことを見るなどの実験例もある(※ 2013年センター試験の生物I本試験で紹介された実験例)。ほか、何らかの方法で未受精卵の内部のカルシウム濃度を減らし、受精膜が形成されないことを見る実験もある(同センター試験の出題例)。


性別の生物学編集

性決定編集

※ 文科系の生物学の教科書にも、よくある話題であるが、理科系の生物学の教科書(たとえば羊土社『理系総合のための生命科学』など)でも紹介されることがある。

ヒトなど哺乳類の性別は、性染色体で決まる場合が普通である。

しかし、動物や植物のなかには、性別の決まり方がヒトなどとは違うものもある。

鳥類では、メスは性染色体にヘテロに性染色体のZとWをもっており(メスはZW)おり、いっぽう、オスはホモに性染色体をもっている(オスはZZである)。

また、キイロショウジョウバエでは、性染色体と常染色体との比率で性別が決まる。


また、遺伝的要因ではなく環境要因で性別の決まる生物もいる。

たとえば爬虫類(カメなど)では、卵の孵化時の環境の温度で、性別が決まる場合が多い。

ある種類のカメは、孵化時に低温でオス、高温でメスになる。

逆に、ある種類のワニ(ミシシッピワニなど)では、孵化時に低温でメス、高温でオスになる。

性染色体の異常のばあいの性別編集

※ あまり2010年代の現代の理系の教養課程では習わないが、過去に教養生物で教えてたり、文系の生物学で教えてたり、YY染色体が生きられないことと関係して教えてたり、・・・するので、一応、紹介。
※ 高校生物の教科書には下記のクラインフェルター症候群など書かれてないし、同様に高校生用の資料集にも参考書にも書かれておらず、ほぼ完全に高校の範囲外。(もしかしたら教師用指導書(高等学校用)などに紹介されている可能性もあるが、一般人が検証できないので、高校の範囲外とみなそう。)


ヒトの場合、通常の性染色体は女のXXおよび男のXYだが、受精後の発生のときなどによる染色体の分離時の異常などにより、その他の組み合わせの性染色体をもつ人間が生まれる場合がある。 人間だけに限らず、ほかの生物でも染色体異常(chromosomal abnomality)は起こりうるが、まずは簡単な例として人間の場合で説明する。また、性染色体に限らず常染色体でも異常は起こりうる。

ヒトの場合、場合によっては染色体異常により、性染色体にXXYやXXXやXXXXやXXYYなどの染色体を持つ人間が生まれる場合もある。これらの染色体上の人間は、一般的に、先天的な障害(身体障害・知能障害)など身体の異常や知能の異常を持つ傾向がある。 これら性染色体異常の場合の、男女の性決定は、つぎの通り。

XXXは女性であるが、知能障害などを持つ場合が多い。YYの人間は生きられず死んでしまう。
XXY、XXYYは男であるが、精巣の機能不全や乳房肥大などの傾向を持ち、クラインフェルター症候群(Klinefelter syndrome)という。
XYYは身長が高い男となる。
Xのみの場合(これを「XO」(エックスオー)と書く)は、女性であり、低身長など発育の不全を持つ。このXOの場合をターナー症候群(Turner syndrome)という。

一般的にヒトの場合、どの性染色体異常でもX染色体の数が多ければ、そのぶん女性的な特徴をもつ。同様に、Yが多ければ、そのぶん男性的な特徴を持つ。ヒトの場合、Y染色体を一つでも性染色体に持つと、男になり、男性器および精巣をもつのが一般的である。

これらはヒトの場合であり、ほかの動物の場合は、かならずしも、同じような結果になるとは限らない。


なお、染色体の価数(かすう)(XXやXYは2価。XXYやXYYなどは3価。)が3価や1価などの異常が起きりうる染色体は、けっして性染色体だけに限ったことではないので、勘違いしないように。

未解明の分野編集

RNA干渉というのがあって、よく高校や大学の生物教科書のコラムなどで紹介されてるが、まだ未解明のことが多いので、暗記しなくていい。

※ RNA干渉についてはwikibooks高校生物でも解説しておいた。

がん編集

※ 高校生物に がん の単元は無い。
※ チャート式の参考書は、コラムとして、がん遺伝子などを解説している。

そもそも「がん」とは編集

がん(cancer)という症状は、一般に、細胞の過剰な異常増殖である。正常な細胞は、もとの位置にとどまっている。しかしがん細胞は、周囲に浸潤(しんじゅん)したり、遠くの器官に転移したりする。やや専門的な言い方をすれば、(増殖に歯止めを掛けるための抑制の機構をその細胞が失うなどして)自律的に増殖する細胞が、がん細胞である。

なお、腫瘍(しゅよう、tumor)とは一般に、過剰増殖するようになった体細胞の集団である。また、「悪性新生物」とは一般に、悪性の腫瘍のことである。

白血病も、がん の一種に含めるのが慣習である。


下記の節で後述するように、がん の原因のいくつかは遺伝子にあると考えられている。

がんと遺伝子編集

※ 高校の理科の『科学と人間生活』(実教出版)で、「原がん遺伝子」や「がん抑制遺伝子」を習う。

がん という病気の生物学的な原因としては、がん は遺伝子の病気であると考えられている。

もとは正常だった遺伝子が、なんらかの原因により、病的な遺伝子となって、がんが起きていると考えられている。

(体細胞を念頭に)正常な細胞は、培養器で培養すると、培養器の底に広がった後、しばらくすると、分裂をしなくなる。

しかし、がん細胞は、栄養があるかぎり無尽蔵に分裂を続ける。


正常な細胞には、むやみに分裂しないような機構があり、細胞周期チェックポイントのG0期で留まることができる。しかし、どうやら がん細胞は、どうやらブレーキが壊れた状態のようなもので、細胞周期のチェックポイントで留まることができないようである。


さて、先ほど述べたように、がん は遺伝子の病気であると考えられている。がん細胞から取り出した、がんを起こしている責任のある細胞を「がん遺伝子」(oncogene)という。

また、「がん遺伝子」になる前の状態の遺伝子(正常な遺伝子でもいい)のことを「がん原遺伝子」(proto-oncogene)という。

具体例として、Gタンパク質の一種でRasタンパク質というのがある。Rasタンパク質自体は、正常なタンパク質である。Rasタンパク質が、(なんらかの原因により、)がん化した際のがん遺伝子をras遺伝子という。(紛らわしいが、大文字Rasと小文字rasで意味が違う。)

これ以外にも、多くの がん遺伝子が生物学で見つかっている。

いっぽう、がん などの異常増殖を抑制する遺伝子の存在も知られており、「がん抑制遺伝子」(tumor suppressor gene)といい、ヒトの場合はp53遺伝子が「がん抑制遺伝子」である。なお、ヒトの17番染色体上腕にp53遺伝子が存在する。(余談だが、p53の名前の由来は、分子量53000(つまり53k)のタンパク質(protein)という意味である。)

がん抑制遺伝子の機能が失われた場合にも、がんの発生の可能性が高まる。

じっさい、マウスを使った動物実験で、遺伝子組み換え実験でマウスのp53遺伝子をノックアウトしたマウスを作成すると、全身が がん化 するマウスが誕生するので、早死にする。(※ 参考文献: チャート式生物)


さて、2012年のノーベル賞でiPS細胞が受賞したが、しかし、導入によってiPS細胞を作れるとする4つの遺伝子のうちに、がん遺伝子 c-myc が含まれている。


  • がん遺伝子の研究の初期

歴史的には1911年に、アメリカの病理学者ラウスが、ニワトリの肉腫の別のニワトリへの移植や、その ろ液 の注射などの実験を通じて、病原体(今で言う「ウイルス」)によるがん発生を発見した。(今で言う「ラウス肉腫ウイルス」)

のち、ニワトリに肉腫を起こすウイルスは、レトロウイルスであることが分かり、今で言うラウス肉腫ウイルスであることが分かった。

このラウス肉腫ウイルスに含まれる遺伝子が v-src が、当初は がん の原因だと有力視されていたが、しかし正常なニワトリにも相同な遺伝子が存在することが分かり、わずかに一部の配列が正常な遺伝子と違うことで、がんを引き起こしていることが分かった。

がんの原因になりうる物質など編集

タールに含まれる物質でもあるベンゾピレンなどの化学物質などにより、がんが起きやすくなることが知られている。

化学物質以外にも、ある種のウイルスの感染によって がん になりやすくなることも知られている。パピローマウイルスの感染が 子宮頸がん を引き起こす。B型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスは、肝臓がん を引き起こす。

ウイルスだけでなく細菌もがんの原因になる。ピロリ菌は 胃がん を引き起こす。

なお、アスベストの吸引による悪性中皮腫も がん として分類されるので、アスベストも 発がん物質 に分類される。