世界史探究と歴史総合の比較

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歴史総合は近現代史を中心にする科目で、世界史探究は古代史から現代史までです。ページ数は、「歴史総合」よりも「世界史探究」のほうがページ数が多いので、近現代史の内容についても「世界史探究」のほうが詳細に解説されています。2022年度より歴史総合が必須科目となりました。そこで、当ページについては世界史探究に絞って解説します。

教科書会社は、入門的なレベルに合わせた入門バージョンの「世界史探究」を作ってくれてるので、自分の予備知識が不安なら、入門バージョン「世界史探究」を利用したほうが便利です。

つまり、「世界史探究」の教科書には、じつは難度別に、いくつかの種類があります。

たとえば山川出版の教科書だと、受験評論では難関大むけバージョンの「詳説 世界史探究」が有名ですが、じつは山川出版は他にも入門バージョンの「高校 世界史探究」という検定教科書を出しています。

入門バージョン「世界史探究」では、写真なども多く、イメージしやすいように作られています。

しかし、それでも歴史の教科書は山川出版社の「詳説世界史研究」をメインにしてほしいです。この本は非常に分かりやすく因果関係を省略していません。

高校世界史の特徴

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高校世界史は、各時代ごとに重点的に教える国や地域が片寄っている。

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高校の「世界史」は、けっして世界のすべての国の歴史の全時代を平均的に教えるわけでは、ありません。たとえば、古代文明では西アジア中心、中世ではヨーロッパ中心・・・というふうに、時代によって高校「世界史」であつかわれている国や地域が片寄っています。

この理由は、もし、すべての国のすべての時代を扱っていると、時間が足りないからでしょう。 たとえば石器時代だけでも、かりに地球上の全陸地をあつかったとすると、もはや旧石器時代の授業だけで高校3年間の授業が終わってしまいかねません。

そういう片寄った授業をするわけには行かないのです。なので、高校世界史で各時代ごとにあつかう地域や歴史は片寄ります。

いちおう、あまりにも特定の国に教育内容が片寄らないように、時代によって扱う地域が変わっていく工夫がありますし、その時代に影響力が高かった地域が選ばれる場合が多いです。たとえば古代の4大文明ではメソポタミアなどの西アジアやエジプトなどのアフリカ北西部が中心ですが、その後の時代はギリシアやローマなどヨーロッパ南部に扱う地域が変わります。

べつに、けっして、このギリシア・ローマの時代に、西アジアがとても衰退したわけでは、ありません(とはいえ、ギリシア北方のマケドニア出身のアレクサンドロスが、西アジアのオリエントを征服したりと、オリエントよりも、ややヨーロッパよりの地域が隆盛しているが)。単に、教育カリキュラムの重点内容が西アジアから南ヨーロッパへと変わっていっただけです。


じつは近世以降が大半

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歴史は古代より近代現代の方が、比重が高くなる傾向にあります。これは、より現代に近い時代のほうが歴史史料などが多いことと、現代への影響が大きいことが考えられます。

もし、検定教科書以外の教材も読んで勉強している場合、この点に気をつけてください。


一部の参考書や、地元の公立図書館などの歴史専門書では、古代史や中世史を、近世や近現代史と均等に扱っている可能性もあります。ですが、高校教科書は、そのように均等では、ないのです。

なお、高校日本史や中学歴史なども、じつは、高校世界史と同じように、やや近世および近現代よりの傾向になっております。日本の西暦2005年以降の「脱ゆとり教育」での中学高校での歴史教育は、やや近世および近現代よりの教育内容になっています。


高校「世界史」の文量は、高校「日本史」と比べて、同じぐらい

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このように高校「世界史」は、各時代ごとに、重点的に説明している国や地域を限定していますから、じつは分量は高校「日本史」と比べて、同じぐらいです。

けっして、「世界史」は「日本史」の何十倍や何百倍もの教育内容があるだなんて、勘違いしないでください。

また、各国史を専門書などで自習する必要もありません。せっかく、たとえばポーランドとかクロアチアとかの各国の歴史とかを調べても、あまり入試に出ません。

たとえばブラジルは南米の大国ですが、しかし高校「世界史」で紹介される時代は、主に大航海時代の以降に限られています。

また、アメリカ合衆国は超大国ですが、アメリカですら高校「世界史」で扱われる時代が、近代以降が中心です。

高校「世界史」では中国史のほうが、アメリカ史やロシア史の量よりも、中国史の量のほうが高校「世界史」では多いかもしれません。

その中国史ですら、専門書で中国史の内容を調べてみると、高校「世界史」では教えないない知識が、とても多く出てきます。だから、わざわざ中国史を専門書で調べる必要もありません。そこまで、高校生が中国史だけに時間を割くわけには、いかないのです。

その中国史の内容も、検定教科書での古代史の文学史・哲学史などを見ると、国語の漢文の内容と重なっています。

高校「世界史」の扱う時代の流れ

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旧石器時代の高校「世界史」で教えない内容について具体的に言うと、その時代のアフリカや南米での人類については、あまり扱われません。

その後の古代文明とかでも、4大文明および周辺地域が中心です。

東洋史の古代や中世とかだと、中国やインドが中心です。ベトナムの歴史とかインドネシアの歴史とかマレーシアの歴史とかは、古代史や中世史では、あまり扱われません。

そして、さらに教える時代が進むと、だんだん北ヨーロッパのほうへと重点内容が移っていきます。

ヨーロッパで中世を過ぎて、大航海時代に突入してコロンブスがアメリカ大陸を発見したころの時期からの、アメリカ大陸などの歴史も扱い始めます。べつに、この大航海時代にアメリカ大陸の歴史が始まったわけではありません。それ以前からも、アメリカ大陸には人が住んでいます。かといって、それらコロンブス以前の歴史を詳しく教える授業時間が無いのです。

また、ヨーロッパ人がアメリカ大陸を発見する前の時代については、アメリカ大陸を扱った当時の歴史書などが少ない(ほぼ無い)ため、研究手法が考古学的・自然科学的な場合も多いです。高校生に、いきなり考古学的な内容ばかりを教えることは、「世界史」を習いはじめた高校生には、適切な題材ではありません。


よって教育内容が片寄ってしまうのは、仕方が無いのです。

何度も何度も言うように、かりに地球上の全陸地の全歴史をあつかったとすると、もはや旧石器時代の授業だけで高校3年間の授業が終わってしまいかねません。


中学校との違い

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中学歴史には、あまり戻らない

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これから中学歴史と高校世界史のちがいを述べるが、結論としての勉強法としては、なにも特に身構える必要はなく、とりあえずアナタが高校1年〜2年生なら、その間は普通に高校世界史の検定教科書や入門的な参考書を読み始めるなどして勉強し始めればよい。

ただし、高校3年生になったら、進路に応じて、勉強法を変える必要がある。 (のちの節で説明する。)


さて、中学2年生(または中1〜中2)での世界史教育は、どうやら、中3の公民科目のための基礎的な話題のみに限られているようだ。たとえば、ナポレオン出現前後のフランスやイギリスの民主革命などによる近代化はあつかっても、周辺の強国のドイツですら、どうやって民主化したのか、中学の教科書ではほとんど扱われなかっただろう。または中学歴史でイギリスの産業革命をあつかっても、いっぽうドイツやロシアの産業がどうやって近代化したのかも、おそらく中学歴史ではロクに触れられていなかっただろう。

一例として中3公民と民主主義の観点で関係が深そうなフランスやイギリスの革命を例にあげたが、このような中学高校の世界教育の特徴の違いは、けっしてフランスやイギリスの革命の前後だけでない。古代から近代までの、西洋やら東洋まで、ほぼすべての分野で、中学で省略されてしまった話題を、高校の世界史では扱う。

このため、中学校の歴史科目は、まちがってこそいないものの、かなり話題が省略され単純化されている。なので、高校での学習では、中学教育での簡略化された歴史理解を、より史実(しじつ)的な理解へと置き換えていく必要がある。

かといって、なにも別に身構える必要はなく、普通に高校世界史の検定教科書や入門的な参考書を読んでいけば、中学歴史で省略された話題も、高校世界史ではきちんと説明してある。

逆にいうと、たとえ中学歴史の参考書をいくら読み込んでも(どんなに高偏差値の中学生のための参考書でも)、高校世界史の内容には、まったく太刀打ち(たちうち)できない。

なので、高校生が高校世界史を勉強する際には、けっして中学歴史の参考書ではなく、かならず高校用の教科書や参考書を中心的な教材にして勉強する必要がある。

現代の参考書業界では、高校世界史の入門レベルの参考書も売ってる(たとえば、旺文社から『教科書よりやさしい世界史』というのが出てる)。なので、もし、参考書として一般的なレベルである大学受験の対応レベルの世界史参考書が難しすぎると感じても、けっして中学歴史の参考書に戻るのではなく、なるべく高校生用の入門レベルの世界史の参考書を買うほうがいいだろう。

高校用の世界史の入門レベルの参考書ですら難しすぎるとかの場合でないかぎり、あまり中学歴史に戻らないほうが良いだろう。


なお、どうしても中学参考書を使い場合は、ば中学の受験研究社の参考書に、ピューリタン革命とかボストン茶会事件とか、すこし書いてあります。なお、旺文社の中学参考書では、そこまで高校範囲の事が書いてありません。

他の入門レベルの勉強法として、学研などの学習マンガで、小中学生向けだが世界史の教材があるので(書店では児童書コーナーなどに置いてあるだろう)、その世界史の学習マンガを何冊か買って(中学歴史では手薄(てうす)になりがちな、古代や中世をメインに世界史の学習マンガを買うと効率的かもしれない)、その時代のイメージをつかむのも、良いかもしれない。

ただし、学習マンガのあたえる情報の量は、だいぶ高校教科書や参考書に劣る(なにせ小学生向けであるので)。なので、あくまでも時代のイメージを把握するための手段のひとつとして、学習マンガはあくまで補助手段までとしておこう。

なお、世界史の学習マンガを独学に使う場合の注意として、世界史の学習マンガでは、作中に、史実(しじつ)には登場しない謎の少年少女が登場することも多い。どういう事かというと、読者の小学生に理解しやすいようにするための工夫として、読者の年齢層にちかい架空の人物を登場させて、作中では歴史上の偉人とともに行動させているわけである。万が一、読者の小学生が勘違いして、架空の少年少女を史実にもとづく人物だと思ったとしても、小学校社会科の歴史分野では世界史を習わないので、あまり問題は発生しない・・・というワケである。

しかし、高校生が偉人伝の補助教材として学習マンガを使う場合、架空の少年少女の登場人物を、信じてはならない。


過去の時代を現代のイメージと混同しないように

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またなお注意すべき事として、現代の民主主義のイメージや国際情勢などのイメージで歴史を読んでしまうと、過去の歴史のイメージを誤解してしまう。

たとえば古代ギリシア・ローマなどの民主主義は、奴隷制を経済基盤とした、貴族や軍人などにとっての民主主義だ。現代の民主主義とはだいぶ違う。

いわゆる中東、オリエント地方の歴史のイメージについても、現代では、いくつかの反アメリカ的な国が、アメリカなど欧米諸国の経済活動を敵視してるので、てっきり「中東は商業とは縁遠い」というイメージを抱きがち(いだきがち)かもしれないが、古代や中世〜近世では、中東の周辺地域は地中海貿易などの貿易の要衝として栄えたらしい。数字の「1」「2」などのアラビア数字も(じつはアラブ諸国ではなくインドで発明された数字らしいが)、インド地方やオリエント地方などでは、おカネの計算などでも重宝されたようだ。

そもそも中東の宗教も、けっして古代からイスラム教だけが信仰されたわけではなく、古代バビロニアの神話の神々や、ゾロアスター教などのように、他の宗教が信仰されていた時代も地域もある。

近現代についても、第二次世界大戦(WW2)のイメージで、第一次世界大戦(WW1)の前後の国際情勢をイメージしてしまったり、あるいはWW2のままのイメージで第二次大戦後の国際情勢をイメージしてしまうと、だいぶ間違ってしまう。

たとえばドイツと日本は、第二次大戦中でこそ同盟国であるものの、第一次大戦ではドイツは日本の敵国である。第一次大戦時、日本は過去の日英同盟の結果により、ドイツと対立するイギリスの友好国だったのだし。

このような高校世界史の学習での注意点があるものの、高校生は別に身構える必要はない。ふつうに高校世界史の検定教科書や、入門的な参考書を読み始めればよい。

あるいは、前の節で紹介したような入門的な参考書や、子供向けの学習マンガなどを活用するのも良いだろう。

他科目の初歩用語は共通テストに出づらい

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検定教科書や参考書を見ると、政治経済や倫理や地理などの用語でも、紹介している場合がある。

たとえば現代史の単元では、「ASEAN」だの「BRICS」だの「PKO」だの「京都議定書」だの「中距離核戦力全廃条約」だの・・・。このように、高校「政治経済」「地理」や中学「公民」などの科目で出題されそうな用語も、いちおう世界史の範囲である。

しかし、実際に共通テストの過去問を読んでみると、あまり、それらの知識は問われない。