基本的な方向

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社会科はよく「暗記科目」と言われます。しかし、本当にそうでしょうか。そもそも「暗記科目」とはどういうことでしょうか。単純な暗記量ならば現在の中学で習う英単語の暗記量は1600~1800語です(文法事項まで入れるともっと多い)し、国語の漢字は1110文字です。しかし、国語や英語を暗記科目と呼ぶ人はいませんので、「暗記量が多いから暗記科目」とは言えないことは分かるでしょう。

社会科や理科でいうところの「暗記科目」というのは「暗記が他の強化よりも点数に結び付きやすい」という意味でとらえた方がよいでしょう。そのため、「暗記だけで楽勝」なものでないのが事実です。特に今は思考力を重視するという方針から、覚えたものをいかに使いこなすか・与えられた資料/史料からどう判断するかが問われます。つまり、暗記という基礎与えられた問いに正しく答えるための判断力が問われます。

そのため、社会科の受験対策としては次の方法が大きな柱でしょう。

  1. 基礎としての暗記。ただし、呪文のように用語を書いたり、読むだけではなかなか頭に入ってきません。図を作るなどの練習や工夫も必要です。
  2. 問題集での問題演習。「本当に暗記したか」は実際に問題を解いたときにわかります。
  3. 過去問演習。最終盤には他の科目同様、過去問にあたる必要があります。ただ、それなりに力がある(大体、偏差値50以上が目安)なら、模擬試験や模擬試験の過去問の復習もよいでしょう。実際の問題形式に慣れることも大切です。

用語の暗記

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地理・歴史・公民でも、まずは用語を暗記していく必要があります。

高校入試でも、暗記重視の歴史は当然として用語などの書き取り問題はあるし、地理でも公民でも用語や歴史的な事件名などの書き取り問題が出てきます。

これに関してはちゃんと用語を覚えるのが正道です。空いた時間などを利用するといいでしょう。なお、入試で書き取りをさせる場合には漢字で書かせることが多いです。高校に入れば、そうした用語を漢字で書くように指導されますので、二度手間にならない中学のうちに練習しておくといいでしょう。

地理と公民での暗記のコツはビジュアル的に覚えることです。これから述べるように、地理の多くは地図や表、データなどとセットで覚えたいところです。公民も図表にしやすいものが多いので、表に整理する作業も暗記には有効です。

そして、歴史の暗記のポイントは次の通りです。

  1. 5W1Hを意識する。つまり、「いつ・だれが・何をした」「いつ・どこで・何が起きた」をつなげて覚える。
暗記があいまいになりやすいのは、暗記そのものが不十分だからというだけでなく、知識のつながりができていないことも無視できません。
  1. 事件や出来事などの関連性を意識して覚える。
例えば「794年、桓武天皇が平安京に都をうつした」ということだけをひたすら覚えていても案外に使えません。平安京にうつる前の都はどこか、どうして都をうつしたのかなども教科書の記述を基にして理解しておきましょう。

地理

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傾向

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世界地理に関して問われやすいのは以下のことです。

  • 時差計算
  • 気候と文化
  • 各国の産業の比較

特にアジア圏やアメリカ・西ヨーロッパは狙われる傾向が多いです。なお、南米やオーストラリアは工業的な結びつき(ブラジルの鉄鉱石や石炭、チリの銅など)が問われやすいようです。

日本地理に関しては、住んでいる地方の地理が、他地域よりも細かく出るようです。たとえば東京都での公立高校受験なら、関東地方の特産品や地形などの地理が、他の地方(北海道や四国など)よりも細かく出る傾向があります。べつに他地方が出ないわけではなく、要求される知識の細かさの違いです。


地形は地図とセットで覚える。

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単に「関東平野」「奥羽山脈」などの地形の名前を覚えるだけでは頭に入ってきませんし、どこにあるのかが分からなければ無意味です。必ず地形は地図を使ってどこにあるのかとセットで覚えるようにしましょう。

歴史

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傾向

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単純な一問一答形式での用語記述、用語に関する記号選択問題、都立高校入試頻出でもある「時代の並べ替え」、資料/史料を基にした記述問題が中心です。

なお、昔は「近現代史は出ない」と言われていましたが、現在では旧石器時代から現代までまんべんなく出ます。そのため、歴史で得点する必要のある人は旧石器時代から現代までを手を抜かずに学習しましょう。

ただ、どうしても時間的に難しいなどの事情がある生徒もいるかもしれません。そうした生徒は鎌倉時代から明治時代までの学習にまずは取り組みましょう。

暗記の方針

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  • 流れをつかむ。
歴史で最も重要なことは歴史の流れをつかむこと、つまり、時代の順序と変化をおぼえることです。歴史が苦手という人は、まず旧石器時代から現代までの各時代をしっかりと、正しい順序で言えるかをまず確認するといいでしょう。実際、歴史が苦手という人は各時代を順序良くいえることができていない人が多いです。
  • 5W1Hを意識する。つまり、「いつ・だれが・何をした」「いつ・どこで・何が起きた」をつなげて覚える。
暗記があいまいになりやすいのは、暗記そのものが不十分だからというだけでなく、知識のつながりができていないことも無視できません。
例えば「794年」「平安京」「桓武天皇」「都をうつす」というのが全部セットになった「794年、桓武天皇が平安京に都をうつした」で意味が出てきます。ところが、暗記が苦手な人の場合はこのセットのうちどれか、とくに「誰が」「何を」「どうした」があいまいになりがちです。
そのため、まずは単に言葉だけを覚えるのではなく、「いつ」「だれが」「何を」「どうした」という表を作ってみてもいいかもしれません。
  • 事件や出来事などの関連性を意識して覚える。
中学の歴史の出来事はつながっているが多いです。いいかえると、ある事件・出来事が別の事件・出来事の原因となっていることが多い。そして、それらがつながって一つの「グループ」をなしていたりします。
例えば「日清戦争」と「日露戦争」という言葉だけを覚えていてもそのつながりが分かっていなければ、なかなか点には結び付きません。少なくとも「日清戦争→下関条約→三国干渉→日本でのロシアへの敵対心が高まる→ロシアへ対抗するため日英同盟成立→日露戦争」という出来事同士の結びつきができている必要があります。
これは都立入試ではほぼ必ず出ると言っていい、時代ごとの並べ替え問題でとくに威力を発揮します。

公民

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  • 日本国憲法、人権、日本の政治のしくみはカテゴリ的に理解する。
カテゴリとは、物事の基本的分類のことです。日本国憲法と人権の単元は色々な用語が出てくるため、中々覚えにくいところですが、カテゴリの方法を利用すると、それぞれの用語などのつながりが見えやすくなります。用語集などを利用して分類してみましょう。
  • 図を利用する。
立法・行政・司法の関係などは図にすることもあります。実際、教科書にもこれらを図で表してもいますね。これをノートに丸写ししてもかまいません。


公民の入試問題の中に、正誤問題などで、かなり細かい知識を問う問題があります。公民に限らず、正誤問題は、やたらと細かい知識を問う出題がされやすい。

ただし、公立高校入試の場合、誤答の選択肢は、大抵、文中の複数個所が間違っていたりする場合が多いので、それがヒントになります。教科書や参考書でも聞いたことのない言い回しをしている選択肢は、基本的に、公立高校入試では誤答です(ただし、難関私立高校や、大学入試ではどうかは、知りません)。

なお、問題文では「次の中から正しい選択肢をすべて選べ。(3点)」みたいに書かれていたりして、「ア、イ、ウ、エ、オ」の選択肢があったりする。

100点満点中のたった3点のためだけに、細かいひっかけ問題の傾向と対策の練習に、勉強時間を掛けるべきかは疑問です。なので、普通に勉強しておいて、それで解ければヨシとして、解けなければ、あきらめましょう。

総合的な力を養う

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※ 未記述

難問対策

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社会の問題でもっとも差がつきやすく、また多くの受験生が苦手にするのがグラフや統計、その他資料を基にした記述問題です。

グラフ・統計資料読解

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グラフや統計資料読解の基本は、変化に注目することです。つまり、「何が変わって、何が変わっていないのか」をグラフや表から読み解きます。

記述問題

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記述問題とは、たとえば「問3 なんのために伊藤博文は下線部Aのことをしたのか、答えなさい。(4点)」みたいなのです。

対策としては、普通に、ふだんの勉強で、参考書などを読んで、理解を深めるしかないでしょう。なお、この解答の際、よくある条件として、「ただし、その政策名をあげて答えなさい」とか、歴史用語などの条件をつける事がよくあります。

基本的には、参考書などで用語として挙げられている用語が、条件として加わりますので、用語を覚える&用語の書き取りの練習も、必要です。

過去問の活用

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過去問集を買う際は良質な解説のある過去問集を購入しましょう。読むのが大変だと思うかもしれませんが、しっかりと多くの言葉を使って解説している過去問は良いものだと思ってかまいません。なお、過去問題集は5年分ので販売されているものが多いようです。これより少ないと傾向を十分につかめませんし、これを超えるようなものも中学生には不要です。

さて、中学校では、受験本番ギリギリまで授業が進む[1]上、出題範囲が中学全体となっていますので、過去問のとりかかりも遅めでいいでしょう。

具体的には、五教科受験型の私立専願ならば12月ごろ、公立高校志望なら年明けごろがとりかかり時期となります。それまでは、地理・歴史および公民のすでに習った内容を復習し、自分のレベルにあった問題集に取り掛かるようにしましょう。比較的力がある(目安としては模試の平均偏差値50以上)のなら、模擬試験の再挑戦もよい復習になります。

私立高校の場合

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普通、私立高校の入試は3教科受験が多いのですが、5教科受験を課す高校もあります。

大抵、私立の方が入試が早いので、対策も早めにしておかねばなりません。また、社会科を入試科目とする高校は概して難関校(または難関コース)と呼ばれるところのためか、社会科も決して侮れない内容が出されます。

とはいえ、中学受験や難関私立大学入試のように中学の内容を大きく超えた、ひねくれた問題が出ることもまずありません。徹底的な基礎固めをしたうえで、思考力を問う問題がほとんどです。

出づらい分野

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基本的に、時事問題は公立高校の入試に出ません。中学入試経験のある方は気を付けましょう。

一見すると時事問題に見えない時事問題

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ほか、一見すると時事問題と見えない問題でも、民法などの法律は、実際には時事的に細部が法改正されるので、入試に出づらい。「民法」という用語を問う問題はギリギリ出せて、各条文の内容を問うのは高校入試では無理です(大学入試でも難しい)。

このような、「一見すると時事問題に見えない時事問題」(法律。議員定数などの細かな定数)にも、時間をかけすぎないように注意する必要があります。

検定教科書は4年ごとに改訂するのが一般的なので、教科書には4年前の新しめの出来事も掲載されたりしますが、しかしそれは高校入試では出題されづらい。(大学入試は別です。とりあえず、今は高校入試の話。)

そもそも地理の場合、統計はすでに与えられている場合があり、その内容を読み取れるかを問う出題が多い。

そういう出題状況も、「新しい学力観」みたいな理念だけが事情ではなく、単に、時事的に細かい統計の最新情報を追うのが予算的にも難しい、・・・という大人の事情もからんでいたり。

ただし、大学入試では、経済統計が出ます。なので、原理的には統計問題も可能なのですが、しかし公立高校の入試に関するかぎり、あまり細かい統計は出ないのが傾向。


代わりに、地理・公民で圧倒的に出題されやすいのは、用語の書き取りと、法律については憲法です。

憲法解釈については変更の可能性があるので、それらは細かい問題は出題されづらい。

代わりに、憲法の条文そのままの内容が出てきますし、基本的には、国会・議会についての条文が出てきます。市町村の議会の制度とかは、地域によって有利不利の差が出かねないのでしょうか、市町村議会は出ないのが普通。


入試の国会の問題では、ある事がらの権限をもっているのが、国会なのか内閣なのか、よく正誤問題などで出ます。

司法についても、「上告」と「控訴」の違いとか、出てきます。

刑法や民法などの各条文の内容は、変更の可能性があるので、出ません。過去問を見ても、そうなっています。

代わりに、「上告」「控訴」などの裁判制度などの用語が、入試では出やすい。

国会議員の定数など、細かな数値は、出題されづらい。これは、法改正によって変更の可能性があるからだろう。

出ない歴史の用語

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歴史の入試の書き取り問題では、基本的には人名や条約名や現象の名前が出てきやすい。

たとえば、清国の崩壊のとき、清の実力者だった袁世凱(えん せいがい)が首都を南京から北京に移しました。

もし入試に出るなら、「袁世凱」を漢字で書かせる問題です。

「北京」を書かせる問題は、基本、出づらい。もしくは他に出るとしたら、袁世凱の死後に軍閥が割拠したので、「軍閥」を書かせる問題が出るか。

その時代の特有の人物や、時代の特有の用語などが、入試には出やすいのです。時代を反映した用語が出やすい。

「北京」は、他の時代にもあるので、歴史の問題としては出づらい。

基本的に、歴史教育では、時代を反映しやすい、人や条約・法律や国名などに注目をします。

ワークブックと過去問の違い

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社会科の場合、市販のワークブックの中3の内容と、高校入試の傾向とが違います。

ワークブックは、あくまで定期テストに合わせて作られており、そのため、一問一答の形式の問題も多いです。ですが、そのような一問一答の形式の問題は、公立入試では少ない。

ワークブックの中には厚めだったりして充実している書籍もあって、なんとなく入試に強そうに誤解しがちかもしれませんが、しかしワークブックはあくまで定期テスト対策の用途ですので、目的が違います。

内申点を高めるためにワークブックなどによる練習も大切ですが、しかし、決して入試対策とは混同しないようにしましょう。

そもそも、中3で習わない(中1の)地理からも公立入試は出てきますし。ただし、あまり公立高校の入試の地理は、難しくありません。

タテマエ上は、地理・歴史・公民の3分野が均等なのでしょうが、しかし実際には、歴史と公民で、高校入試の社会科では、やや難しめの問題が出てきます。(おそらく、中3の公民の授業の邪魔にならないようにとの、配慮だろうと思います。)1990年代も2020年代も。

よほど地理が苦手でない限りは、中3で今習っている公民と、前学年にならった歴史とを中心に復習するほうが効率的です。

地理は、用語の書き取り練習をして、あとは入試用の教材を通読するくらいで、大体は基礎固めは終わり、あとは過去問による微調整で、公立入試には対応できるでしょう。

脚注

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  1. ^ 早い県では一月中~下旬から私立高校入試が始まるので、それに合わせて授業が進む。