学習方法/高校理科全般
主に普通科高校生および普通科卒業生を対象に説明します。また、主に理系大学や経済学部経済学科への進路志望を前提に説明します。
高校普通科での理科のカリキュラムの傾向
編集多くの高校普通科での理科のカリキュラムの傾向は、
- 1年では「生物基礎」が必修
- 2年では「物理基礎」・「化学基礎」が必修
- 3年では進路志望に応じて選択科目で、理系なら生物または物理または化学、文系の場合で共通テストで地学受験をするなら「地学基礎」履修
というのが現状です。
- 実業高校の場合
商業高校や工業高校などの実業高校では、カリキュラムが異なります。多くの実業高校では、化学基礎、生物基礎、物理基礎の範囲までしか習いません。また、学科(商業科や機械科など)の内容と関係の薄い科目は、あまり履修出来ません。
たとえば商業高校では、おそらく「物理」科目は、物理基礎すら、全く扱わないでしょう。
また、工業高校では、普通科2年の範囲(物理基礎および化学基礎)までしか、理科を扱わないでしょう。
なぜなら実業高校では専門科目の時間のため、普通科理科の学習時間は足りないからです。
また、高専(高等工業専門学校)という5年生の学校では(大学基礎レベルまで物理を習う場合が多い)、生物基礎や地学基礎などは履修出来ないかもしれません。
とりあえず参考書(生物、化学、物理)を買って読みましょう
編集理科のどの科目でも、とりあえず大学受験対策には参考書が必要です。初めから参考書を読んでも構いません。最終的に物理・化学・生物を履修しますので、それらの科目の参考書を買っても構いません。理系志望なら、入学後に初めから高校3年の範囲の内容まで載ってる参考書を買ったほうが効率的です。
ただし、地学はカリキュラムが特殊なので、中々参考書が売っていません。とりあえず、高校3年になってから地学基礎を学ぶかどうかを考えたほうが良いでしょう。
数学との関係
編集多くの理系大学や経済学部経済学科では、入学後に数学IIIレベル(三角関数や積の微分法などの微分積分)の知識が必要になります。また、大学入試の理科でも、「物理」科目だと、数学IIIを知っていて当然というような問題も出るし、物理の参考書でも数学III知識を前提にした参考書もあります。
日本の高校理科の大学入試では、まず微分積分は出ませんが、しかし大学入学後は微分積分を知っていて当然とされます。微分積分を学びたくない人は理系や経済学部経済学科を目指さないほうが良いでしょう。
とりあえず理系大学や経済学部経済学科を目指す場合は、新課程数学III・Cを学ぶのが定石とされています。(2022年に本文を記述、改訂。)
「地学」科目は理系大学の入試で選択できない場合がある
編集まず、「地学」科目は理系大学の入試で選択できない場合があります。
高校によっては、そもそも時間割の仕組み上、「地学」が履修出来ない、もしくは履修しづらい仕組みになってる高校もあります。
なぜなら、日本では理系の多くの大学は工業大学の私立大学なので物理や化学が重視されるからです。他は農学部や医学部、薬学部などであり、生物・化学が重視されます。理学部のある大学は、意外とあまりありません。
さらに理学部の中ですら、「地学」は物理学などの一分野として含まれてしまってる場合もよくあります。多くの理学部の学科編成は、数学科・物理学科・化学科・生物学科です。
理科教育とはいえ、産業などへの実用とは無関係とは言えません。
たとえ地学を学ぶ場合でも、物理と化学の知識は、どちらにせよ必要になります。
学習タイミング
編集理科は、数学が必要なので、問題練習は高校1年の後半あたりからの開始が定石です[1]。
けっして、中学校のような感覚で、「高校3年の夏休みで総復習」とかしないでください。それだと、間に合いません。仮に間に合うとしたら、文系志望の場合の新共通テストの理科1科目(おそらく生物基礎か地学基礎)だけです。理系志望を少しでも考える場合、1年生のうちに、生物基礎をある程度は問題練習を解けるようになっておきたいものです。
普通科高校の場合、高校2年になると、物理基礎や化学基礎など新しい科目が始まったりします(1年生の理科は生物基礎の高校だと仮定します)。このため、生物基礎の問題練習をする時間が、2年生では取りづらくなります。
なので、なるべく1年生の後半のうちに、学校で履修している範囲の理科で、標準的な問題集で、平均的な難度の受験問題を解けるようになっておきましょう。
しかし、いきなり問題練習を1年生の後半に始めようとしても、難しい。あらかじめ、1年生の前半のうちに、参考書を、習った範囲の前後でいいので何周か、考えながら読んでおく必要があります。
理系志望の場合、理科(生物基礎)だけでなく数学IAも、1年生のうちに問題練習を一通り終わらす必要があるので、理系科目の合計の勉強量がとても多くなります。
数学との兼ね合いを想定すると、もし1年生の冬からの問題練習で理科をやりこむ場合は、事前に夏~秋ごろから助走的に、理科または数学の家庭での予習・復習を始めておく必要があります。理科の参考書の読書や、数学の習った範囲での参考書のやや発展的・応用的な問題練習など、授業の復習とは別の、やや高度な勉強も必要です。
上手く時間配分をしてください。英語や国語や地歴公民もあるので、難しい。
理科は、予習が難しい教科です。とはいえ、生物だけに限定すれば、割と予習がやさしい科目です。
1年生の前半のうちは、生物の参考書などを何周か通読するなどしておきましょう。
家庭学習での読書では、高校3年の専門「生物」の範囲に入っても大丈夫だと思います。
文系志望の入試では専門「生物」は問われませんが、しかし、わざわざ「生物基礎」だけの参考書を買う必要も無いでしょう。どうせ買うなら、専門生物も一緒になっている参考書を買ってしまい、1年生の中盤ごろには一通り読んでしまいましょう。
生物に関しては、昭和と2020年代とで、バイオテクノロジー等の進歩により、内容が大きく変わっています。
昭和の昔は、生物学をダシにして、物理学とか化学とかを教えていました。半透膜とか、典型です。しかし、バイオテクノロジーの進歩により、そういう教育法はあまり正確ではないと解明されました。
なので、結論から言うと、生物は、暗記科目の要素が強くなりました。理解の必要な部分もありますが、しかしそれは決して昭和のような物理学の知識ではない、という事です。
資料集について
編集教科書出版社などが出してる資料集については、無くても、入試突破は出来ます。ただし、生物や化学の資料集は、高校で買わされる場合もあります。授業用の副教材としての用途などとして、です。
資料集を熟読するよりも、参考書を熟読したり、あるいは問題集を練習したほうが良いでしょう。
参考書と問題集のほうが必要
編集資料集よりも、参考書と問題集のほうが必要です。参考書は学校では買わされないのが普通ですが、しかし参考書を買っておこう。
問題集は、学校で、定期テスト対策の問題集を買わされる場合もあるでしょう。しかし、もし理系志望なら、もうちょっと高度な、入試基礎レベルの参考書も、早いうちに買っておきましょう。
検定教科書の発展内容
編集検定教科書には発展的内容が書いてあるが、入試に出る範囲の発展内容なら、参考書と問題集でカバーできる。参考書よりも高度な発展内容も、検定教科書に書かれている場合もあるが、入試にはあまり出題されません。
なぜなら、参考書を越えたレベルの教科書・発展内容は、教科書会社ごとに発展内容が違うので、せっかく参考書に出てない発展的内容まで学んでも、市販の参考書に無い内容は入試には出題されにくいからです。
それら参考書を越えた教科書・発展内容も、資料集を見れば、だいたい書いてあります。
教科書ガイドは、まず使いません
編集理科の場合、教科書の補足的な説明や簡単な問題などがガイドに書かれています。基本的に、教科書以上の情報の学習を勉強したい場合でも、市販の参考書や問題集で間に合います。参考書にも書かれてない発展内容については、資料集で充分です。教科書ガイドは入手も大変だし(一般書店では売ってない)、特定の教科書会社の教科書にしか対応していないので、入試対応では、無理に買う必要はありません。
参考書の難易度について
編集中学生向けの参考書と、高校生の参考書では、出版社と難度の関係が、違っています。高校参考書には、数研出版、学研、文英堂など、いろいろな参考書がありますが、高校参考書では数研出版の参考書が難し目であることに注意して下さい。一方、学研の参考書は、どちらかというと、高校では入門的です。
参考書の難易度は、おおむね、
- (難しめ) 数研出版 > 文英堂、旺文社? > 学研? (やさし目)
のような難易度になっています。
旺文社(おうぶんしゃ)や学研(がっけん)は、平成の半ば頃になってから参考書に本格的に参入してきたので、評価があまり定まってません。もともと旺文社は、問題集のほうで有名な出版社でした。学研は元々昭和のころは、図鑑や小中学生向けの教材などを優先していました。
数研出版は、平成の半ば頃から、中学の参考書に参入しました。
このように、平成の半ば頃に参考書事業を拡大してきて、中学参考書の出版社が高校に参入したり、逆に高校参考書の出版社が中学参考書に参入したりしたので、
中学参考書と高校参考書の難易度の序列が違っていますので、気をつけてください。
なお、中学受験参考書などで有名な受験研究社は、今のところ、高校参考書は出してません。
公式の導出が必要
編集物理や化学などで、公式があれば、かならず、一度は導出しましょう。
たとえ入試では公式を覚えて使わないと時間内に解けないとしても、一度でも自分の手で計算を追いかけてキチンと導出した経験があるのと、そうでないのは雲泥(うんでい)の差です。
また、意外とそういう、導出できるかどうかを確かめるような問題が、新共通テストや大学入試で問われる事も時々あります。
当ページでは、別のセクションで、「問題集を何百ページも読みまくれ」という「読む」勉強法を進めていますが、前提として、公式は自分で一度は導出する必要があります。
問題集を800ページ以上は「読む」
編集解く練習だけでなく、参考書や問題集を「読む」のも大切です。
加えて、参考書とは別に、問題集も、「読み」ましょう。
「解きましょう」ではなく「読みましょう」です。
学校などで配布される問題集だと、解説が書いてない事も多いので、自分で別の問題集を追加で買って、解説ごと読みまくりましょう。
たしかに最終的には、原理などをもとに「解く」努力も入試などにも必要なのですが、しかし、まずは、典型例の問題の解説を読んで、典型問題の解法を大まかでも良いので知らないと、試験時間内には解けません。
正直、物理を除く、生物と化学と地学の3科目では、知識問題・暗記問題のいくらかは、参考書と問題集を何冊か読んでいるだけで、そこそこ解けるようになってしまいます。
あとは、計算問題などの、読むだけでは対応できない問題だけ、仕方なく、計算練習をすればよいのです。こうしないと、3年間の時間内に処理できない。
理系科目の受験勉強は、問題集のページ数で考えましょう。物量がモノを言う世界です。
学校で配布される問題集は、問題ばかりで200ページくらいの程度だと思います。
しかし家庭の勉強では、問題集の解説などで、最低でも、合計800ページくらいは解説を読む必要があります(ただし、科目によって100ページくらいの前後アリ)。前提として、参考書はすでに読んだ前提とします。参考書は、数研出版と、あと念のためお好きな他社の1冊を読んでおけば、特には問題ありません。 ただし、物理はやや例外(なぜなら物理は、数学力でカバーできるので)。
800ページ前後は、あくまで理系志望の場合です。理系でなく文系志望で、新共通テストで理科を使うだけなら、もっとページ数が少なくても平気です。
文系なら、半分の400ページくらいも読めば十分でしょうか。もちろん、教科書と参考書の、該当の単元を読んだ上です。
800ページの問題集の「読み」は多そうに聞こえるかもしれませんが、しかし解説アリの普通の問題集は、うすくても1冊あたり300ページくらいありますし、厚ければ400ページや500ページくらいあります。
問題集をたった3冊くらい読めば、800ページは軽く越えます。
理科が苦手な人は、そもそも問題集を読んだ物量が、みなさん、足りないのです。
「問題集の解説を読んだページ数で、典型問題は、ねじ伏せる」という発想が、そもそも無いのです。
問題集を何冊か読んで、問題の解説ごと覚えた後に、お好きな1冊で「答えを見ないで解けるか」を確かめれば、おおよそ十分です。
もちろん、問題集以前に、まず教科書と参考書を「読む」のが当然です。
その上、さらに問題集を入試までに最低でも2冊ほど「読み」ましょう。読めるように、解説が多めの問題集を買うのがコツです。
「そんなんで思考力がつくのか? もっと頭をつかって考えるべきでは?」と疑問や不安に感じるかもしれませんが、まあ基礎問題集や中堅レベルの問題集の1冊か2冊くらいなら、問題集を読んでしまっても、問題ありません。
最低限の、基本的な計算問題だけ、計算練習をして、あとは、その組合せをすれば良いのです。
そもそも科学の論文とは、読み物です。読んで分かって、自分のしごとに取り入れられる能力があればいいのです。
暗記科目ではないので、読む場合、1冊を何度も繰り返し読むのではなく、2冊を交互に何周も読むほうが効果的。
- 考えながら読む。
- 自分の理解が合っているかを確かめるために、「答えを見ないで解く」という問題練習をする。