解説 編集

 これまで、独占企業は一つの市場で同じ価格で商品を販売すると考えられていました。しかし、同じ財やサービスでも異なる価格を設定する場合もあります。例えば、電話料金の昼間と夜間は、航空券の大人料金と子供料金、映画館の入場料などとは異なります。このような価格設定を、差別価格といいます。

 一般に、差別価格が存在するためには、以下の4つの条件が必要です。

①  企業が価格優位性を持っているのか?

②  購入者の価格弾力性は様々か?

③  購入者の転売が難しいかどうか?

④  企業が購入者を特定出来るのか?

 以上の条件が揃えば、最も利益を得たい企業は、同じ財を異なる顧客に異なる価格で販売出来ます。なお、価格支配力があれば、非独占市場でも差別的な価格が観察されます。では、なぜ企業によって同じ財に対して異なる価格をつけて販売するのでしょうか。

 この理由は、価格が異なれば企業の利益が増えるからです。需要の価格弾力性が1より小さい場合、つまり需要が価格に対してあまり反応しない場合、消費者は価格が上がるとより多く消費します。需要の価格弾力性が1より大きい場合、つまり需要が価格に対してよく反応する場合、消費者は価格が下がるとより多く消費します。消費者が使う金額が企業の収入=売上額になります。その結果、最も儲けたい企業は、価格弾力性の小さい消費者には高い価格を、大きい消費者には低い価格を設定し、少しでも売上を伸ばそうとします。

 また、需要の価格弾力性は、必需品である財やサービスほど小さくなる傾向があります。なぜなら、ある財やサービスが必需品なら、価格が上がっても人々はそれを買わなければならず、それを欲しいと思う人の数はあまり変わりません。一方、高価な財やサービスほど、その需要の価格弾力性が高く、価格が少しでも下がれば、より多くの人が買ってくれる可能性が高まります。つまり、企業は全ての顧客に同じ価格をつけるのではなく、弾力性の低い必需品である財やサービスには高い値段をつけ、弾力性の高い贅沢品である財やサービスには低い値段を設定すれば、より儲かります。

 


 次に、差別的価格水準がどのように設定されるかについて説明します。上のグラフは、市場iの需要曲線と限界収入曲線、市場eの需要曲線と限界収入曲線、2つの市場の需要曲線と限界収入曲線の和と限界費用曲線が描かれています。市場iの需要曲線は急傾斜、市場eの需要曲線は緩やかな傾斜なので、需要の価格弾力性εはといえます。

 この独占企業の総生産量は、市場全体で利潤最大化条件を実現するに決定されます。企業はこの市場全体での生産量を需要の価格弾力性の異なる2つの市場に分けて販売します。利潤最大化するための配分の条件は2つの市場の限界収入が限界費用と等しくなるので、となります。そこで市場iでは、販売量をとなる決定し、市場eではとなるに決定します。


と書き直せます。ここから、

① 。

② 。

がいえ、需要の価格弾力性εがより小さい市場では、より高い価格がつけられます。

(数式を執筆中です)

出典 編集

東京アカデミー 公務員試験準拠テキスト 専門科目⑩ ミクロ経済学