幾何学基礎論/公理からの有名定理の導出1

結合公理からの定理

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1.1.1 2直線の交点

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定義

ある2つの直線または線分 l, m があり、ある点 P が l 上にも m 上にもあるとき、これを直線 l と m の交点という。(ここでは l, m どちらか片方だけが直線でも良い。)

定理

相異なる2直線または線分の交点は高々1点である。

証明

相異なる2直線 l, m が相異なる2点以上の点で交わっていたとしよう。その中の任意の2点を A, B とする。A, B は異なる点なので、公理 I2から、A, B を通る点はただひとつ存在するため、直線 l, m は同一直線となるが、これは仮定に矛盾。よって相異なる2直線の交点は高々1点であることが証明される。

線分は元は直線なのだから、どちらかが線分でも交点は高々1つである。

1.1.2 平面の決定条件

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定理

(i) 一直線とその上にない点を通るような平面がただひとつ存在する。
(ii) 交わる2つの直線の通る平面はただひとつ存在する。

証明

(i)

公理 I3 より、直線上には少なくとも2つ点がある。そこで直線 l 上の点のうち任意のものを A, B とおく。仮定より点 C は直線 AB 上にない。よって公理 I5 によって、3点 A, B, C を通る平面はただひとつ存在するのでこれを α とおく。すると、公理 I6 において直線 l 上にある2点 A, B は平面 α 上に存在するため、直線 l は平面 α 上に存在する。また点 C も無論 α 上にある。よって一直線とその直線上にない点を通るような平面は存在することが分かる。
次に、このような平面がただひとつであることを背理法で証明する。仮にそのような異なる平面が2つあったとして、それらを α, β とおく。上と同じ理由で、直線 l 上の2点を A, B とおく。すると、A, B, C は α, β 上のどちらにもあるため、公理 I5 より3点 A, B, C を通るような平面はただひとつ存在する。これは α, β が異なる平面であることに反している。よって一直線とその直線上にない点を通るような平面はただひとつ存在することが証明される。

(ii)

交わる2つの直線を l, m と置こう。l と m の交点は、定理 1.1.1 よりただひとつしかないため、交点を A と置く。公理 I3 より、直線上には少なくとも2つ点がある。交点はただひとつなので、少なくとも一方の点は交点でない。交点でない方の点を L とする。また、直線 m にも同様に、交点ではない点 M が存在する。ここで、3点 A, L, M はもちろん同一直線上にない。なぜなら、A, L は直線 l 上に存在するが、M は交点でなく、かつ交点は一つしか存在せず、交点の定義を考えれば M が直線 l 上に存在しないことは明確だからである。
よって公理 I5 より3点 A, L, M の定める平面はただひとつ存在する。それを α と置く。すると、A, L と A, M について公理 I6 から、直線 l, m どちらも平面 α 上にある。またその唯一性は前述のとおりである。

順序公理からの定理

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1.2.1 直線の稠密性

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定理

任意の線分 AB にも、AB の間にあるような点が存在する。

補題

任意の直線 AB 上にある、A とも B とも相異なる点 C があったとすると、直線 AB と直線 AC と直線 BC はそれぞれ互いに一致する。

任意の直線 AB 上にある、A とも B とも相異なる点 C があったとする。直線 AB と直線 AC とが違う直線であったとする。すると定理 1.1.1 より直線 AB と直線 AC の交点は A ただひとつである。しかし直線 AB 上に C があることから直線 AC の交点は C でもある。これは矛盾なので、直線 AB と直線 AC は同じ直線であり、一致する。

同様に AC, BC と AB, BC についても背理法で示すことができる。

証明

 

公理 I3 より、直線 AB 外に一点 C が存在する。また公理 II2 から点 D が存在して、点 D, A の間に点 C があるようにでき、また、点 E が存在し点 D, E の間に B があるようにすることができる。

このとき直線 CE は三角形 ABD の一辺 AD の間の点 C を通る。また直線 CE は 点 A, B, D のどれも通らない。仮に点 D が直線 CE 上にあるとする。するともちろん DE の間の点 B も直線 CE 上にある。点D は CE 上にあり、点 A は直線 CD 上にある。補題から直線 CE と 直線 CD は一致する。そのため A も直線 CE 上に存在する。A, B, C, D, E 全て直線 CE 上に存在することになるが、これは点 C が直線 AB 外にあることに反する。よって直線 CE は点 D を通らない。また仮に点 A が直線 CE 上にあるとする。補題より直線 AC と CE は一致する。よって点 D は直線 AC 上にあるので直線 CE 上にもあることになる。また、E は BC の間にあり補題から直線 BC と CE は一致する。したがって点 B は直線 CE 上にある。よって A, B, C, D, E 全て直線 CE 上に存在することになる。これは前述の通り矛盾である。また点 B についても同様に矛盾を示すことができる。

以上より、直線 CE は 点 A, B, D のどれも通らない。よって公理 II4 によって、直線 CE は AB の間の点または線分 DB の間の点を通る。ここで線分 DB の間の点を通ると仮定すると矛盾が導ける。よって、線分 CE は線分 AB の間の点を通らなければならない。したがって、任意の点 A, B についても A, B の間にあるような点が存在する。

問1

補題の後半を補え。また上記の証明の省略された部分を補え。

定理

一直線上の任意の相異なる3点のうち、他の2点の間にあるような点が常にただひとつ存在する。(公理 II3 の拡張)

補題 (パシュの公理の特別な場合)

三角形 ABC において、公理 II2 より点 D, A の間に B があるようにし、定理 1.2.1 より線分 BC の間の一点を E としたときに、直線 DE は必ず AC の間の1点で交わる。

 

直線 DE 上に B があったと仮定しよう。仮定より 直線 AD 上に B があり、また直線 AD 上に D があることは明らか。直線 DE 上にも仮定より B があり、D がある。もちろん点 B, D は相異なる点であるから、公理 I2 より点 B, D を通る直線はただひとつ。よって直線 DE と直線 AD は一致する。よって点 E は直線 AD 上にあることになる。仮定より点 B, E は相異なる点である(公理において「間」の定義より明らか)から、再び公理 I2 より、点 B, E どちらも通る直線はただひとつである。ところで、直線 DE は 直線 AD と一致することから、これと仮定より、直線 AD 上には B, E が存在することが分かる。よって直線 BE と直線 AD は一致する。よって仮定より直線 BE 上にある C は直線 AD 上になければならないが、これは C を AB 外の1点とする仮定と反し、矛盾。
仮に直線 DE 上に A があったとしよう。ここで直線 DE と AD が異なる直線であったとする。すると直線 DE と AD は D と A で交わることになるが、定理 1.1.1 より異なる直線の交点は一つしかないのでこれは矛盾。よって直線 DE と AD は一致する。ここからは上記と全く同じ手順で矛盾を導ける。
また直線 DE 上に C がないことも背理法で確かめられる。

以上より、直線 DE 上には A, B, C のどれも存在しないことが分かった。また、直線 DE は BC 上の1点 E と交わる。公理 II4 より、直線 DE は線分 AB の間の1点と交わるか、また 線分 AC の間の1点と交わるかのどちらかである。ここで、直線 DE が AB と交わっていたとする。すると、直線 AB はすなわち直線 AD のことであるから、直線 DE と 直線 AD は線分 AB の間の1点と D で交わることになる。DE は B を通らないことが分かっており、AD は B を通るため、直線 DE と 直線 AD は異なる直線でありながら交点が2つあることになるが、これは定理 1.1.1 と矛盾する。

よって直線 DE は線分 AC の間の1点で交わらなければならない。

証明

 

公理 II3 より、他の2点の間にないものは少なくとも2つある。よって、一直線上の任意の相異なる3点を A, B, C とし、A は B, C の間になく、C は A, B の間にないものとする。このとき、AC 上にない一点を D とする。公理 II4 より D を B と G の間にすることができる。このとき直線 BD 上に G はあり、直線 BD と 直線 AC の交点は定理 1.1.1 よりただひとつでありかつそれは B である。このことから明らかに G は AC 上にない。
三角形 BCG と直線 AD に補題を適用すれば、直線 AD は線分 CG の間の1点 E で交わる。また三角形 BAG と直線 CD に補題を適用すれば、直線 AD は線分 AF の間の1点 F で交わる。
今、公理 II4 を三角形 AEG と直線 CF に適用する。すると、D は AE の間にあることが分かる。よってさらに公理 II4 を三角形 AFC と 直線 BG に適用する。すると B は AC の間にあることが分かる。

問2

補題において、直線 DE 上に A, C がないことの証明を補え。また本定理の証明の最後の部分において公理 II4 が適用できる理由を示せ。つまり、CF 上に A, E, G がないこと、また BG 上に A, F, C がないことを確かめよ。おそらく難しくないはずである。
ヒント : 背理法を使う。

定理

直線 l 上の任意の相異なる四点が与えられたときに、これらの点を A, B, C, D を持って表し、常に点 B が AC の間にありかつ AD の間にあり、点 C を AD の間にあり、かつ点 C を BD の間にあるようにすることができる。

表記法を導入する。B が AC の間にあることを A-B-C と表記する。

補題 (パシュの公理の特別な場合)

三角形 ABC において、公理 II2 より点 D-B-A があるようにし、定理 1.2.1 より A-E-C としたときに、直線 DE は必ず BC の間の1点で交わる。

 

直線 DE 上には A, B, C のどれも存在しない。仮に C が DE 上にあったとすると、直線 CE は DE と一致するので CE 上にある A は DE 上に存在する。よって直線 AD は DE と一致するので AD 上にある B も CE 上にある。よって A, B, C はどれも直線 DE 上にあることになるが、これは矛盾。よって C は DE 上にはない。
また、B が DE 上にあったとする。直線 BD は DE と一致するので BD 上にある A は DE 上にある。 よって直線 AE は DE と一致するので AE 上にある C も DE 上にあることになる。よって A, B, C はどれも直線 DE 上にあることになり、矛盾する。よって B は DE 上にはない。
次に、A が DE 上にあったとする。直線 DE と 直線 DA は一致する。よって直線 DA 上にある B は DE 上にあることになるが、先ほどの議論から、B は DE 上にはないことが分かっているので、これは矛盾する。

以上より、DE 上には A, B, C のどれも存在しないと分かった。また DE は AC の間の1点 E で交わるため、公理 II4 より AB の間の1点もしくは BC の間の1点で交わる。定理 1.2.2 の補題と同様の理由で DE は AB の間の1点で交わることはない。よって、BC の間の1点で交わることが証明された。

証明

A, B, C, D を直線 l 上の4点とする。まず、次のことを証明する。直線 l 上の四点 A, B, C, D について、

(1) A-B-C かつ B-C-D ならば A-B-D かつ A-C-D である。
(2) A-B-C かつ A-C-D ならば B-C-D かつ A-B-D である。

(1) について:
 

公理 I3 と 公理 II2 にしたがい直線 l 上にない1点をE、C-E-F なる F を定める。三角形 CBF と点 A, E について補題を適用すると、AE と FB は F-G-B なる点 G で交わることが分かる。また三角形 BCF と点 D, G について補題を適用すると、C-H-F なる点 H で交わることが分かる。
次に、三角形 ACE と F, B に補題を適用すると、A-G-E が分かる。また三角形 BDG と F, C に補題を適用すると、G-H-D が分かる。よって、三角形 ADG と E, H について定理 1.2.2 の補題を適用すると、直線 EH は AD の間の1点で交わることが分かる。ところで、C-E-F かつ C-H-F であったから、定理 1.2.1 の補題より直線 EH とはすなわち直線 FC のことである。よって A-C-D である。同様にして A-B-D であることも証明できる。

(2) について:
 

公理 I3 と 公理 II2 にしたがい直線 l 外の1点 G と B-G-F なる F を定める。直線 BG と 直線 FC の交点は、定理 1.1.1 と B-G-F であることから、F ただひとつであることが分かる。B-G-F であるため直線 FC は線分 GB と交わらない。
また公理 II3 より、A-B-C であるから、A-C-B とはなり得ない。定理 1.1.1 と仮定より直線 FC と 直線 AB の交点は C ただひとつであり、A-C-B とはなり得ず、仮定より C は A, B とも異なる点であるから、直線 FC は線分 AB とは交わらない。
仮に直線 FC が 線分 AG と交わっていたとしよう。直線 FC は A, B を通らず、線分 GB と交わらないため G をも通らない。これらと公理 II4 より直線 FC は線分 GB もしくは線分 AB と交わることになるが、しかるにこれは前述の結果と矛盾する。よって直線 FC は 線分 AG とは交わらない。
ここで三角形 AGD と直線 FC について、仮定より A-C-D であり、先ほどの議論により直線 FC は線分 AG とは交わらないので、直線 FC は A, G, D のどれも通らない。よって公理 II4 より直線 FC は線分 GD もしくは AG と交わらなければならない。もちろん線分 AG と交わることはないことが分かっているため直線 FC は G-H-D なる H で交わらなければならない。
三角形 BCF と G, D について補題を適用すると 直線 GD は線分 FC の間の1点で交わり、GD と FC の交点は H であることから G-H-D であることが分かる。ここで三角形 BDG と F, H について定理 1.2.2 の補題を適用すると、直線 FH は BD の間の1点にで交わらなければならない。ところで三角形 BCF と G, D について補題を適用すると F-H-C とわかるので、定理 1.2.1 の補題より直線 FH はすなわち FC であると分かる。同様に定理 1.2.1 の補題より 直線 BD とはすなわち AD のことである。FC と AD の交点は C であることから、FH と BD の交点も C であり、B-C-D であることが分かる。
以上より、A-B-C∧A-C-D ⇒ B-C-D なので A-B-C∧A-C-D ⇒ A-B-C∧B-C-D。また (1) から A-B-C∧B-C-D ⇒ A-B-D∧A-C-D。
∴三段論法で、A-B-C∧A-C-D ⇒ A-B-D∧A-C-D。よって A-B-C∧A-C-D ⇒ A-B-D。これと A-B-C∧A-C-D ⇒ B-C-D より、A-B-C∧A-C-D ⇒ A-B-D∧B-C-D。

公理 II 3 と定理 1.2.2 より、四点のうちの任意の3点で他の2点の間にある点を Q とし、他の2点を P, R とおく。つまり、P-Q-R。残りの1点を S とする。

ここで公理 II 3 と定理 1.2.2 、また公理 II1 より P-Q-R は R-Q-P と同値である。また、P-R-S, R-P-S, P-S-R のどれかひとつだけが必ず成り立ち、P-Q-S, P-S-Q, Q-P-S のどれかひとつだけが必ず成り立つ。よって以下のように場合分けできる。

(i) P-R-S
(ii) R-P-S
(iii) P-S-R かつ P-Q-S
(iv) P-S-Q
(v) Q-P-S

(i)〜(iv) について:
2の場合の仮定を満たし、定理の主張するところを満足する。

(v) について:
1の場合の仮定を満たし、定理の主張するところを満足する。

以上より証明された。

定理 (1.2.2, 1.2.3 の拡張)

直線 l 上に n 個の有限個の点が与えられたときに、これらを A0, A1, A2, ... , An-1, An で表し、全ての点 Ak について、A0, A1, A2, ... , Ak-1 と Ak+1, Ak+2, ... , An の間にあるようにすることができる。これと同じことを表すには逆の表し方、An, An-1, ... , A2, A1 があるだけである。

証明

一直線上に有限個の点、B0, B1, B2, ... , Bn-1, Bn が与えられたとする。

このとき、B0-B1-C なる C が与えられた点の中になかったとする。すなわち、B0-C-B1 または C-B0B1 である。直観的な意味を述べると、このとき B0 は「最端の」点である。逆に、B0-B1-C なる C が与えられた点の中にあったとする。そうしたとき、B1-C-D なる D が与えられた点の中になければ、この C が「最端の」点であり、与えられた点の中にあるときには、定理 1.2.3 の (1) より B0-B1-D。この D に対して、C と同様に B1-D-E なる E が与えられた点の中に存在しないとき E が「最端の」点で、存在するとき、B0-B1-E より、B1-E-F なる F を定め、などなどとしていくと、与えられた点のうち、B0-B1-Z となる Z は有限個であり、上の操作を繰り返していくと確実に一つは減るので、いつかは「最端の」点 Z、すなわち B1-Z-B なる B が与えられた点の中に全く存在しないような Z が見つかるはずである。このように「最端の」点 Z を見つけることができた。この Z を A0 おく。

次に、与えられた点から A0 を除いた点の集合を Ω0 とおく。Ω0 の中から、適当に Bk を選ぶ。このとき、Ω0 の中に Bk-C-A0 なる C がないならば Bk を A1 とおき、逆にあるときは、C-D-A0 なる D が Ω0 の中にないとき C を A1 とし、あるときは定理 1.2.3 の (1) より Bk-D-A であり、Ω0 の中に D-E-A なる E 、E-F-A なる F ... と定めてゆくと、Ω0 は有限個の点しか持たないので、必ず、Bk-Y-A かつ Y-B-A なる B が存在しないような Y が見つかるはずである。この Z を A1 とおく。

さらにこれを繰り返し、A0, A1, A2, ... , An を定めることができる。

A1 の定め方から、A1 は A0 と A2, A3, ... , An の間にある。(1)

A2 について、定め方から、A1 と A3, A4, ... , An の間にある。(1)より A0-A1-A2. このとき、 A0-A1-A2 ∧ A1-A2-A3 から定理 1.2.3 (1) によって A0-A2-A3. また、A0-A1-A2 ∧ A1-A2-A4 より定理 1.2.3 (1) から A0-A2-A4. A0-A1-A2 ∧ A1-A2-A5 より再び A0-A2-A5. これを繰り返して、A2 は A0 と A3, A4, ... , An 間にある。よって、A2 は A0, A1 と A3, A4, ... , An の間にある。(2)

A3 について、定め方から、A2 と A4, A5, ... , An の間にある。(2)より A1-A2-A3. また、A2-A3-A4 より、定理 1.2.3 (1) から、A1-A3-A4. 次に、A1-A2-A3 ∧ A2-A3-A5 より定理 1.2.3 の (1) から A1-A3-A5. 再び A1-A2-A3 ∧ A2-A3-A6 から A1-A2-A6. これを繰り返して、A3 は A1 と A3, A4 , ... , An の間にある。A0 にもこれと同ようにすることで、A3 は A0, A1, A2 と A4, A5, ... , An の間にある。(3)

これを繰り返していくことによって、定理の主張の前半は満たされることが証明される。

次に、これの逆の表し方以外には表し方がないことを証明しよう。A1 が A0 と A2, A3, ... ,An の間にあることと、A1 が A2, A3, ... ,An と A0 の間にあることは、公理 II1 に従えば同値である。これは任意の点について言えるので、結局のところ逆の表し方というのはこれと同値なのである。

仮にこれと違う表し方があったとする。「最端の」点があるはずであり、それは今発見した二つとは異なる表記法なので、A0 とも An とも異なる。それを Ai とおく。すると、A0-An-Ai または An-A0-Ai であるが、先ほど証明したことにより、公理 II2 と矛盾してしまう。

以上から定理の主張するところはすべて証明された。

定理

任意の相異なる2点 A, B についても、A, B の間にある点は無限に存在する。

証明

仮にある相異なる2点 A, B が存在して、A, B の間にある点が有限個だったとする。それらの全ての点 C1, C2, ... , Cn-1, ... , Cn と A, B を定理 1.2.4 に基づいて、C1 が A と C2, C3, ... , Cn-1, ... , Cn, Bの間に、C1, C2 が C3, C4, ... , Cn-1, ... , Cn, Bの間に、のようにしていくことができる。

ここで定理 1.2.1 より A と C1 の間に点 D が存在する。A, D, C1, B に定理 1.2.3 内の(2)を適用させるより A-D-B である。また再びこれを繰り返すことによって、A-D-Cn, A-D-Cn-1, ... , A-D-C2、また仮定より A-D-C1、公理 II2 より D は C1, C2, ... , Cn のどれとも異なる点だと分かる。こうして AB の間に C1, C2, ... , Cn-1, ... , Cn 以外の点 D を見出すことが出来た。これは矛盾であるので、A, B の間にある点は無限個存在する。

1.2.6 (半平面の理論付け)

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定義

任意の平面 α において、ある直線 a と a 外の1点 A とが与えられたとき、α 上の A と異なる点 B について 線分 AB が a と交わらないならばこれを B は A と(a に対して)同じ側にあるという。逆に、線分 AB が a と交わるならばこれを B は A と(a に対して)異なる側(反対側)にある という。

定理

任意の平面 α とその平面上にある a は平面を次の2つの領域に分ける。同じ領域の2点のなす線分は a とは交わらず、異なる領域の2点のなす線分は a と交わる。

証明

平面 α とその上にある直線 a 、α 上にあって a 上にない1点 A が与えられたとする。このとき、A と A と同じ側にある点全体を α、A と異なる側にある点の全体を α とおく。もちろん、α の任意の点は α に属し、α も同様である。また、定義より明らかに、α 上の任意の点は a 上にあるか α 上にあるか α 上にあるかのどれかひとつだけが必ず成り立つ。

a 上の任意の1点を A' とすると、線分 AA' の間の点は A と同じ側にあることから、定理 1.2.5 より α には無限に点が存在することが分かる。次に公理 II2 に基づいて A-A'-B となる点 B を見出す。すると線分 BA' の間の点は A と同じ側になく、α に属すので α にも無限に点が存在する。

さて、ここで定めた αα こそが定理の主張を満たす領域になっているのである。

まず、α の2点は定義より定理の主張を満たす。また、α の1点と、α の1点も定理の主張を満たす。次に α の2点であるが、

α 上の1点 B と B と同じ側にある点全体を β とおく。β には 無限に点が存在するので β 上の B と異なる1点 B' を定める。A, B', B が同一直線上にない場合、AB と a が交わっているので公理 II4 より AB' または BB' と交わる。仮定より BB' は a と交わらない。よって AB' が a と交わる。つまり A と B' は反対側にあるのである。同一直線上にある特殊な場合はより簡単に A と B' は反対側にあることが証明できる。すなわち、β は α と同じく、α 上の α になく a 上にもない点の全体である。以上より α は β と一致する。したがって、α の2点も定理の主張を満たす。

A, B', B が同一直線上にある場合を証明せよ。

定義

上の記号を使うと、α を A (と同じ)側の半平面、α を A のない(と異なる、と反対)側の半平面、などという。

1.2.7 (角の内部・外部について)

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定理

ある平面上に任意の角が与えられたとき、角はその角の平面を2つの領域に分ける。適当に名前を内部・外部と定めておけば、内部の1点と外部の1点は角と共有点を持ち、内部の2点は角と共有点を持たず、内部のみを通る直線は存在しない。外部のみを通る直線は存在する。2つの半直線の相異なる2点を結んだ線分は完全に角の内部にある。Oから出る半直線は完全に内部にあるか外部にあるかのどちらかである。

証明

まずは「半直線と同じ側」ということを定義する。そのために、直線 h と h 上の1点 O から出る h と異なる半直線 k が与えられたとき、k 上にある O 以外の任意の点 K をとっても h に対して K 側の定める半平面はただひとつであるということを証明する。

k の O と異なる任意の異なる2点を K, K' とおく。仮定より直線 k は h と O で交わるので、定理 1.1.1 より K, K' は h 上にない。K と同じ側にある任意の点を A とおく。A が k 上にない場合、h は OA と交わらず KK' とも交わらないので、OK' と交わっているとすると公理 II4 と矛盾。以上より半直線 k 上のどの点を定めても、その点と同じ側にある半平面は常に同じである。

今、平面 ω 上に∠(h, k) が与えられたとしよう。このとき、h について k 側の半平面を κ, k について h 側の半平面を η とおく。このとき、κ にも η にも含まれる点全体を α、ω 上にあって α にも 半直線 h, k にもない点の全体を β とおく。

実は、この α と β こそが定理の主張するところの領域である。α が内部で、β が外部である。h と k の交点を O とする。h 上の O と異なる点を H, k 上の O と異なる点を K とおく。このとき、線分 HK の間にある点 L は、α に属す。HK の間にない点 L' は β に属す。(※1)

よってどちらにも無限に点が存在する。

次に同じ領域の2点は角と共有点を持たず、異なる領域の2点は角と共有点を持つことを証明しよう。α の異なる2点 A, A' が与えられたとき、A, A' はどちらも κ, η 両方に属す。よって、どちらも k, h とは交わらない。

β は 平面 ω から α と h, k を除いたものだから、β は 平面 ω 上の h について k の反対側の半平面 κ と k について h の反対側の半平面 η を合わせたものといえる。よって、β の1点 B は κ, η のどちらかに属し、どちらの場合も α の 1点 A と∠(h, k) は交点を持つ。

最後に、内部のみを通る直線は存在しないことを示す。それには、次の定理が必要である。

同一平面上において、a // c∧b // c ⇒ a // b.

この定理を援用すれば、定理の主張を導くことができる。仮にある直線 a が存在して、完全に∠(h, k) の内部にあったとする。すなわち、a は h, k と交わらない。
また h の逆側の半直線も k の逆側の半直線も角の外部にある。(※2)
よって h // a∧k // a。すると、先ほど掲げた定理より h // k だが、これは角の定義に矛盾。よって完全に内部を通る直線は存在しない。

h, k と逆側の半直線の任意の2点を結ぶ直線は完全に外部にある。(※3)

次に、仮に O から出る半直線で外部の点も内部の点も通るものがあったとする。これは、先ほど証明したことから、h, k のどちらかと O 以外の点で交わる。よってその半直線は h, k のどちらかと O 以外の店で交わる。これは公理 I2 に反する。よってその半直線は存在しない。

以上より定理の主張は全て証明された。

注釈

途中に掲げた定理は、公理 IV と同値である。これは後ほど証明する。

(※1)と(※2)、(※3)を証明せよ。

1.2.8 (多角形の内部・外部)

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定義

有限個の線分 A0A1, A1A2, ... , An-1An折れ線という。これらの線分の間にある点と端点をあわせて折れ線の点という。各折れ線の端点を折れ線の頂点という。

折れ線の各線分の端点が全て同一平面上にあり、最初の点が最後の点に一致するとき、これを多角形という。これらの折れ線の線分の数に対応して、三角形四角形, ... , n角形 という。

特に、多角形の各頂点が他の折れ線になく、かつ多角形のいかなる二辺も共通点がなく、かつどの隣り合う折れ線の3つの頂点も同一直線上にないとき、これを単一多角形という。

定理

任意の平面 α 上の単一多角形についても、この多角形は平面 α を内部と外部に分かつ。内部と外部の2点を連結する折れ線は必ず多角形と交わり、同一領域内の異なる2点を連結する折れ線が存在する。外部だけを走る直線は存在するが、内部では存在しない。

証明

直線は有限個の線分で覆われることはない。(※1)
よって、平面 α 上にあって、多角形に属さない1点 A が存在する。

A と A から多角形に交わらないような折れ線で連結できるような点全体を α, A から多角形に交わらないような折れ線で連結できない点全体を α とおく。

また、α の任意の1点 B と、B から多角形に交わらないように連結できるような点の全体を β とおく。

定め方により、α の任意の点は、多角形上にあるか、α に属するか、α に属するか、のどれかひとつだけが必ず成り立つ。

β の任意の1点 B' から α の任意の1点 A' に多角形と交わらないような折れ線で連結することは不可能である。なぜなら、多角形に交わらないように A から A' を連結する折れ線と B から B' を連結する折れ線が存在し、A' から B' へと連結する折れ線が存在したとき、折れ線に折れ線を連結したらそれはまた折れ線になるため、 A から B へと連結する折れ線が存在することになってしまい矛盾を引き起こすためである。

ところで、これは α と同じことを言い表している。よって、β と α は同じ集合である。

仮に完全に α 内にある直線 a が存在せず、かつ完全に β にある直線 b が存在しないとする。 ここで、ある直線が多角形と交点を持たないと仮定すると、 α, β を連結するどの折れ線も必ず多角形と交わるのだが、この直線は α の1点と β の1点を連結する。よって直線は多角形と必ず交わる。