一学年の定員は850名程度であり、そのうち一般受験組が7割程度、残りが附属高校推薦入学者、自主公募推薦合格者、帰国生・留学生入試枠合格者である。指定校推薦入試とAO入試は導入していない。1年生の間は一般教養科目を中心に、第2学年以降は三田キャンパスで17の専攻から1つを選び、学んでいく体制をとっている。人気の専攻は相対競争が激しい分、高水準の成績が要求されるため、大学に入学してからも学び続ける姿勢が必要である。

 慶應文学部では、外国語(150点)・地歴(100点)・小論文(100点)の3科目(計350点満点)が課される。外国語は、英語・ドイツ語・フランス語・中国語の中から1つ選択する。小論文はもちろんのこと、外国語・地歴もほとんどが国公立ニ次型の記述式である。科目別では、特に英語と小論文の難易度が非常に高い。その割には合格最低点は65%程度でありあまり低くないため、激しい競争を強いられることになる。

 試験時間は120分、配点は150点。合格点の目安は7割である。慶應文学部の英語では、辞書の使用を許可されている(ただし電子辞書は一切不可)。大学入試で辞書を許可することは非常に珍しく、言い換えれば、構文解釈能力や国語的読解力、日本語能力が問われる超長文が出題されるということである。勿論難易度は非常に高い。

 英語は抽象度の高い1,000words前後の総合問題2題、もしくは2,000words前後の総合問題1題が出題される。(1977年~2005年、2007年~2010年。2006,2011年度入試では出題形式に変化あり。)

 和訳や説明、英訳など殆どの設問が記述式なので、過去問・予想問を中心に、最難関国立大学二次試験型の問題に対応できる実力を養成する必要がある。

  文学部はそもそも長文出題が特徴だと言われてきたが、出題テクストの長さや総語数などさしたる意味を持たなく、そもそも文学部は総語数は少ない部類である。なぜなら文学部の英語入試こそはとりわけ「観念の把握」を重視した出題であるからである。文学部だけあり、出題文の抽象度の高さは群を抜いている。どれだけ入試対策で英単語を理解していようが、辞書を何冊持ち込もうが、背景知識がなく理解出来ない観念はいつまで経っても理解しようがないわけで、テクスト分析に対する素養そのものを求める出題姿勢が伺える。 具体的には、「存在とは」「意識とは」「宇宙とは」「歴史とは」「美とは」「感情とは」―――――などなど、常日頃の読書における質と量に裏打ちされた哲学的考察と素養を要求される。 なぜ試験時間が2時間もあるのか、受験生は過去問を吟味しながらよく考えてみるべきだろう。受験生一人ひとりがどれだけテクストを読みこなせるか、どこまで的確に概念を把握できるか、そして咀嚼した文意から考察し、どれだけ論理的整合性のある解答を導き出せるかが勝負のカギである。

 また、2012年度から超長文に加えて和文英訳の問題が出題されている。

試験時間は60分、配点は100点。大問が4題出題される。ほぼすべての問題が記述式で、出題時代・地域も多岐に渡る(例えば2013年度の場合、中国史、ウィーン史、アメリカ合衆国史、北アフリカ・インド・イランのイスラーム史がそれぞれ大問で1つずつ出題され、時代も古代~現代史まで出題されている)。しかし、標準的な語句からの出題であっても、一般的な問い方とは違う形で問われることが多く、解答に辿り着くことが困難な問題も多い。市販の問題集等でパターンにはめ込むような学習ばかりしていると、慶應文学部特有の捻って盲点を突く問題に対応しにくいため、様々な年度の過去問を演習すべきである。近年は中国に関連する東洋史からの出題が目立ち、文化史の比重が高い。史料文(漢詩)が提示されることもあり、年代そのものを書かせるものも出題された。更に慶應大ではギリシア神話の知識など、常日頃の読書量を試すような出題もなされるため、注意が必要である。また、日本史より平均点が高いため、得点調整で減点されやすいことに注意しよう。合格点の目安は素点8割である。

 試験時間は60分、配点は100点。原始時代が2006年度以後隔年に出題されている他、史料問題が毎年出題される(未見史料が頻出である)ため、史料を読む読解力やそこから様々な推測を立てる思考力を鍛える練習をしておきたい。そのため、一問一答やレジュメの丸暗記だけで済ませている受験生を排除するような出題をしていると言える。勿論難易度は高い。

 ジャンルは政治、法律、経済、産業、外交、文化と広範囲にわたり、短答記述式の問題が4割程度、選択式の問題が4割程度、論述問題が2割である。そのため、教科書・用語集で知識を固めた上で論述対策をし、過去問研究をする必要がある。どの範囲が出るかは年によって異なり、かつて戦後の文化史の問題も出題されたことがあるため満遍なくどの単元も対策する必要がある。

大問1と2がマーク式、大問3が用語記述、大問4と5が史料とそれに関する設問及び論述問題で構成されている。

大問1と2では例年、語群から単語を探し与えられた短文の穴埋めをしていく形式であるが、語群の中に適当な語句がない場合は0を回答欄に記入しなさいという文学部特有の形式が存在する。0を選べるかで差がつくので用語暗記だけで止まらず、一歩踏み込んだ学習をしたい。大問3では1と2の穴埋めが記述になったものが出題される。日頃から歴史用語を正しい漢字で書けるよう練習をしておく必要がある。大問1〜3は基本平易な問題が多いため高得点を狙いたい。

 史料を出題してくる大問4と5は、史料の読解を誤ると芋づる式に(連鎖的に)複数の設問が不正解になりやすくなるため、焦らずに精緻に読解すべきである。この2つの大問は最も差が付きやすい重要なポジションである。

 論述問題は予備校の問題分析で難問に分類されることが多いくらいに難易度はかなり高いので、しっかりやらないと過去問研究がスムーズにいかなくなってしまうだろう。慶應文学部は全体的に記述論述問題が多いため最難関国公立志望者の併願も多い。そのため、論述の対策を怠っていると差をつけられてしまう。論述問題を解くときの注意点としては、要素(ポイント)を欠かさないことと、設問の要求と関係無いことを記述しないということである。字数が余るようなら、何かしらの要素が欠けていると思ってほしい。また、関係の無い余計な情報を入れると、採点者側は「この受験生は思考や理解をせずに、適当に沢山書いておいて当たるのを待っている」と判断するため、減点されるリスクが高い。何でもかんでも書くというのは、設問の指示や歴史事実を正しく理解せず、思考さえも放棄していると解釈されるため、採点者の印象がかなり悪いのである。このミスをしがちな受験生はそれなりにいるため、是非とも注意しておきたい。

 ここ最近、出来事の年度を選択式ではなく記述式で書かせる問題が出題されているので、細かな出来事でも年度までしっかり覚えこまないといけない。合格点の目安は素点7割(論述問題以外の短答式の問題は8割)である。

試験時間は90分、配点は100点。抽象的で長い文章になることが多いため、難易度の高い小論文や現代文を読み慣れておく必要がある。また、抽象的な本文を要約するためには高度な読解力が必要である。慶應の小論文は半分は国語(記述式現代文)であり、一般的に小論文と言われる意見論述問題は2問目である。現代文と小論文の融合問題のようなイメージである。

 時間と余裕があれば新書や学術文庫などで深めていくと良い。与えられた資料を読み解き、考察とともに要約し、更に自分の意見を述べるという、小論文試験としては基本的な能力を試す良問であるが故に、かえって難問となっている。言い換えれば、癖があまり無いため、逆に傾向に合わせた対策というのが難しく、実力が如実に出やすいということである。

 社会学系の文章から、卑近な時事問題まで、出題分野は毎年多岐に渡るので、油断禁物である。