慶應義塾大対策/法学部
一般入試組は全体の36%程度であり[1]、残りがFIT入試枠、内部進学者、帰国・留学生入試枠合格者等である。
内部進学者と一般入試組の合計人数は法学部全体の3分の2程度である。※FIT入試は、「目標と構想が明確であり、そのために慶應義塾大学法学部法律学科・政治学科で勉強を望む」優秀な成績をおさめている学生と、「この学生を教えたい」という法学部教員との良好な相性(FIT)を実現しようとするものとしてスタートした入試である。具体的には、書類選考によって志願者の志望動機や将来のビジョン、学業成績等を調べられ、論述(考察)試験やグループ討論、面接によって、志願者の思考力や表現力、人間性、コミュニケーション能力が見られる。出願条件が厳しい。
慶應法学部(一般受験組)では、外国語(200点)・地歴(150点)・小論文試験(100点)の3科目(計450点満点)が課される。外国語は英語・ドイツ語・フランス語から1言語、地歴は世界史・日本史から1科目選択である(歴史よりも学習量が少なく合格点がとりやすい政治経済の選択は認められていない)。
どの科目も難易度は非常に高い。特に、小論文試験は国語の現代文では出題されないような法学・政治学系の難しい課題文が出題されている。数学受験が出来ず英語と社会科目は全問マークであるため、国立大学の併願で受験を考えている受験生は注意が必要である。
外国語と地歴で足切りを行い、これらの合計が一定ライン以上に達しないと論述力試験の採点対象から外される。この足切りの基準が高めであるため、注意が必要である。
試験時間は80分、配点は200点、全問マーク式。発音・アクセント問題、文法・語法問題、会話文読解問題、長文読解問題が出題されており、問題難易度は全体的に非常にハイレベルである。長文読解問題では論説文だけでなく、小説が出題される年度もある。会話文読解問題では、空所補充問題が出題される。前置詞や副詞、受験生には馴染みのないような慣用句を完成させる問題が中心である。副詞や前置詞の意味を理解しないで、ただ単に熟語や慣用句を暗記している受験生は歯が立たない内容であり、ハイレベル受験生の間でも差が付きやすい。熟語や構文を暗記する際、その前置詞や副詞が「意味の形成」にどのように影響を与えているのかを日頃から意識していこう。全体的に相当な語彙力が必要であるが、それだけではなく、「英文の記述から論理的に判断できる内容は何か」という視点で作られた設問が多いため、高度な論理的思考力も求められる内容になっている。
- 発音・アクセント問題
頻出ではあるが、出題されない年度もある。出題される場合は最初に出題される。アクセントの位置の法則は押さえておくべきである。固有名詞のアクセントの位置を問うなど、英語が得意な受験生でも得点は安定しないことが往々にしてあるため、すぐに処理して、次の問題へ行こう。
- 文法・語法問題
1つの文中に4つないしは5つの下線が最初から引かれているのではなく、正誤を判定する箇所が指定されていない。そのため、1つの文の中で正誤を判定するための焦点を自分で絞り込むのが難しい。さらに、設問1つにつき1文ではなく、選択肢1つにつき1文になっているため、焦点を絞り込んで且つそこの正誤を判定する作業を4~5回行わなければならない。一般的な文法正誤に比べたら圧倒的に難易度が高く、厄介である。対策としては、まず参考書や過去問などを使用し、早稲田大学人間科学部や上智大学の文法正誤問題で8割が安定する実力をつける。(社会科学部の正誤問題は悪問が目立つため、練習には適さない。)ただ、その実力をつけても最初は慶應法の文法正誤には歯が立たないだろう。あとは慶應法の過去問の文法正誤をできるだけ多く解いて慣れることが重要である。ある程度の実力がある状態なら、問題に慣れることで得点力の上昇が見込める。
- 会話文読解問題
会話文の中にある空所に適切な副詞や前置詞を入れていく問題として出題される。熟語や構文をそのまま覚えるような暗記学習をしている受験生は歯が立たないだろう。なぜなら、前置詞や副詞の本質的なイメージやニュアンス、用法などを掴み、それを実際の文脈や文構造に当てはめる能力が必要であるからだ。また、前後の文の意味や全体の流れから、どの副詞を入れて、動詞にどのような意味を持たせるかを考えさせるため、相当な読解力も必要とされる。難易度は非常に高く、英語が得意な受験生の間でも差が生まれやすい問題である。
- 長文読解問題
例年、2題出題される。1題は下線を引かれた難単語や難熟語の定義を選択する問題。難単熟語は英検1級レベルである。文章自体難しい内容のものが多いため、相当の語彙力と推測力が求められる。ハイレベルの受験生の中には、受験範囲を逸脱した英検1級レベルの語彙を丸暗記している人もいる。ただし、これの実施に関しては個人の自由である。むしろ、よほど余裕のある受験生以外には勧めない。まずは受験範囲内の基礎~やや難レベルの内容を固めるのが先決であるからだ。 もう1題は、空所補充問題、語句整序問題、内容説明問題からなる総合読解問題。会話文読解問題同様に、相当な語彙力と読解力が求められる難易度の高い問題が多く、受験生の間で差が生まれやすい。また、設問が練られており、選択肢が非常に切りにくい。自分の手応えよりも得点が大幅に低いことはよくある。そのため、高度な国語的読解力をつけるのは当たり前として、とにかく過去問演習をできるだけ多くこなすことが重要である。英語を日本語に訳すまでは標準的な難易度であるが、訳してから内容を正確に把握して選択肢を吟味するのが難しい。どちらかというと国語に近い難しさである。
試験時間は60分、配点は100点、全問マーク式(2025年度より90分、150点、マーク式と記述式併用に変更)。合格点の目安は7割であるが、そこに到達するためには用語集の使用が必須であるくらい難しい。特に近年難化傾向にあり、語群の選択肢数が非常に多く、時間制限が厳しい中で正答を見つけなければならない。空所補充は約80択の語群から選ぶ問題であり、史料問題や正誤問題、並べ替え等は6択中2つ選んで完答のみ得点できる問題であるなど、全問マーク式といえどもまぐれでは正解できない工夫がされているため、確固たる実力が必要である。年度によって難易度が異なり、例年、大問は4題、小問数は50問で、社会史、経済史、文化史からの出題が目立ち、広範囲で広地域を扱い、かつ時代範囲が広い。近年、現代史の割合が増えてきており、一部の教科書にしか記載されてないような内容も出題されている。西アジア史や東欧史からもかなり踏み込んだ内容の出題が見られ、歴史を多角的な視点から論じた文章が提示される。一見基本レベルの問題のように錯覚させながら解答の文脈が違っているなど高度な問題が目立つ。また、近年は設問の種類が増え、空所補充だけでなく並べ替えや正誤問題、史料問題の出題が増加しており、幅広い対策が必要になっている。一問一答の丸暗記だけでは通用しない総合力が問われており、史料問題では細かい知識だけでなく推測力や応用力も必要である。
試験時間は60分、配点は100点、全問マーク式。合格点の目安は7割であるが、7割に到達するためには用語集の使用が必須であるくらい難しい。特に近年難化傾向にあり、語群の選択肢数が非常に多く、時間制限が厳しい中で正答を見つけなければならない。空所補充は約80択の語群から選ぶ問題であり、商学部より答えとなる以外のダミーの用語が多い。かつては与えられた文章の穴埋めをしていく形式がほとんどであったが、近年その傾向は姿を消しつつあり、史料問題や正誤問題、並べ替え等は6択中2つ選んで完答のみ得点できる問題であるなど、全問マーク式といえどもまぐれでは正解できない工夫がされているため、確固たる実力が必要である。また、内容面に関しては、時代もジャンルも比較的偏りが少ないため、全体的にバランスの良い学習が必要である。なお、戦後の政党史に関しては頻出であるので、重点を置いて学習すべきである。また、近年は設問の種類が増え、空所補充だけでなく並べ替えや正誤問題、史料問題の出題が増加しており、幅広い対策が必要になっている。一問一答の丸暗記だけでは通用しない総合力が問われており、史料問題では細かい知識だけでなく推測力や応用力も必要である。
商学部の問題自体は法学部より簡単なものの、本番この慶應特有の語群から探し出してマークするという解答形式は意外に時間が厳しい。特に法学部は商学部のように穴埋めだけでなく、早稲田のような史料問題、正誤問題といった形式の問題も出題されるため、難問を捨て、取れる問題を見極めて、素早く解く練習が必要である。
試験時間は90分、配点は100点。法学部独自の「資料を与えて、理解、構成、発想、表現の能力を問う」という科目である。制限字数は全体で1000字。
論説・評論を速く正確に読み解く力が必要である。問題自体は受験生の高度な読解力や思考力、表現力を問う難問(良問)ぞろいである。
最初の400字は本文の要約を記述する。ここは国語的な読解力があれば対処可能であるため、現代文学習の延長線上として、抽象的なテーマの要約や記述問題の練習をやりこんでおくことが重要である。
一般的に「小論文」と言われているのは後半の意見論述問題のことである。慶應の小論文は半分は国語(現代文)であり、現代文と小論文の融合問題のような形式である。
提示される課題文の内容はかなり専門的で、大学受験生にとっては読みづらいと思われる。求められている知識は、古代ギリシアの都市国家における政治判断を問うもの(2010年度)、政治的空間としての日本社会という切り口からセキュリティー社会をとらえる(2009年度)、現代日本における知識人像の考察(2008年度)などで、これらを論述するための能力は一朝一夕に身に付くものではない。下地作りとしては、現代社会と法との関係についてコンパクトにまとめられた参考図書として『法哲学講義』(東京大学出版会)、『法の臨界』(東京大学出版会)などをお勧めしたい。これらを読み、理解し、法学や政治学の基礎的な枠組みの把握が出来たら、当該学部の過去問研究に取り組むとよい。また、京都大学法学部後期の小論文が傾向として似ているため、こちらに取り組むこともお勧めする。例えば、09年にはハンナ・アレント(Hannah Arendt)の『公共空間論』が出題されているが、思想家の概念についての知識・理解・関心が無ければ、受験生は問題の解答を論述することが難しい。