各学校別の入試傾向や、センター試験の仕組みなどの解説については、 日本の大学受験ガイド を参照してください。

大学に進学するということ 編集

大学とは 編集

「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。」(学校教育法第八十三条)

この法律によれば、日本の現行法令に基づいて現存する大学とは、「広く知識を」身につけるとともに、「深く専門の学芸を」学ぶための場所である、ということです。ですから、これらを目的とする学生は進学することが大いに役に立ちますし、そうでない学生は行くだけ無駄、というのが日本の大学です。しかし、このような抽象的な文言ではわかりにくいですね。もう少し具体的に、大学に進学することのメリット・デメリットを見てみましょう。

大学に進学することで得られるメリット・デメリット 編集

大学に進学することで得られるメリットはいくつかありますが、ここでは次の2点について述べます。

  • 大学卒業という資格

まず、大学を卒業すれば、大学卒業という資格が得られます。昨今は多くの学生が大学に進学しますので、この資格を就職の要件とする就職先も少なくありません。つまり、少なくとも何らかの受験勉強をして大学に入り、大学で何らかの学びをした、という経験がある人が求められているということです。

  • 国家資格等の取得に関する学士号のメリット

ほか、「学士号」が大学の学部卒業により得られます。いくつかの国家資格では、その分野の学士号を要件としている場合があります。なお、短大卒では「準学士」が得られる資格となります。つまり、短大卒業をしただけでは学士号は得られません。

大学卒業という資格は、他の資格にもつながります。大学で特定の課程を修了したり、特定の学科を卒業していないと取得できない資格が数多くあります。そのような資格を取得するには、資格を取得できる大学に進学することが必須です。

ただし、よく勘違いされがちなことですが、国家資格を持っていても、簡単に就職できるとはかぎりません。大学で専門的に学ぶことが求められる公的資格の中にも、需要と供給が見合わなくなっている資格が散見されますので注意が必要です。

逆に、デメリットはあるでしょうか。あえて言うならば、時間とお金がかかることでしょう。

  • 進学にはお金がかかります。

例えば、私立大学に進学するとすると、学費が少なくとも年間100万円以上(実際にはそこまで安い私大はほとんどありませんが)なので、卒業までの4年間で、最低でも400万円以上はかかります。これとは別に、下宿をするなら家賃などの諸経費がかかります。都内のアパートの相場が月額7万円だとして、1年で約84万円の家賃がかかるとしましょう。切り良く食費や光熱費も含めて100万円の家賃だとして、4年間で400万円がかかるわけです。すると、4年間で800万円はかかります。これは留年などをせずにストレートに卒業した場合ですので、そいうったことも含めて、私立大学の卒業までに1000万円は教育費がかかると思ったほうがよいでしょう。

国公立の大学でも、学費が年間60万円程度はかかります。少なくとも卒業までの4年間で240万円はかかるわけです。諸経費を含めて、2倍程度で、卒業までに600万円程度の教育費はかかると思ったほうが良いでしょう。

家が金持ちならよいですが、そうでなければ奨学金などの借金をして進学することになります。1000万円ちかい借金というのは、結構、負担が重いです。新卒の給料が年間300万円が相場と言われますが、生活費などを差し引くわけですから、借金の返済に当てられるのは、多くても年間100万円程度まででしょうか。すると、卒業してから10年近くは生活を切り詰めなければいけません。もちろん、たとえ大学を卒業しても、かならずしも賃金の高い企業に就職できる保証はありません。

「難関」大学に進学することで得られるメリット 編集

上記の事項に加え、入学の難易度が高く、世間からの評判が高い、いわゆる「難関」大学に進学すれば、さらにメリットが得られます。

  • 高い水準の教育を受け、研究に触れることができる。

いわゆる難関大学は、授業で扱う内容の水準が高いといえます。どんなに優秀な先生でも、高校で習う内容を理解していない学生に対しては、高校で習うような内容の授業からせざるを得ません。その点、高校で習う内容は理解している生徒ばかりが集まる大学ならば、さらに程度の高い内容を授業することができます。この違いは、理系の場合は特に顕著に表れます。

このことは、いずれ4年生や大学院生となり、研究に触れる場面においても響いてきます。その時点でどの程度の研究ができるかは、その時点までにどの程度までを学ぶことができたかに左右されます。また、研究に関する評判の高い大学には国からも民間からも研究に関する経済的支援が得られやすく、他ではできないような予算のかかる大規模な研究をすることができることもあります。

  • 周囲の学生から刺激を得ることができる。

いわゆる難関大学は、周囲の学生の程度が高いことが多く、それまで得られなかったような知的な刺激を得られることがあります。普段接する学生の質が高いということは、それだけで大きなメリットなのです。これは、大学生の間の学びが充実するということはもちろんのこと、将来の人脈作りといった面でもメリットがあります。

  • 就職の役に立つ

いわゆる難関大学は、大企業や官庁への就職実績が高い傾向にあります。これは、それら大学に属する学生の質が高いということも当然ですが、それだけでなく、採用の際に大学の名前を見る就職先が少なくないということにもよります。

なぜ企業は大学の名前を見るのでしょうか。それは、なるべく優れた人材を取りたいという要求を満たすために、コストパフォーマンスが高い方法だから、だと思われます。いわゆる難関大学を卒業した人は、その大学の入試を突破するだけの学力や、その学力を身につける受験勉強の経験をしています。大学入学後は、上に述べたような経験をしています。それゆえ、就職してからも役に立つ能力を持っている可能性が高いといえます。むろんこれは確率の問題で、実際にその人の能力が高いかどうかはわかりません。大学受験は失敗したけれど能力は高いという人もたくさんいます。しかし、限られたコストで最大の利益を求める企業にとっては、そのような人を発掘するのは手間がかかりすぎます。そこで、手っ取り早い方法として、大学の名前を見ることになるのです。

また、特に理系の技術職の場合、企業と大学の研究室の間で、共同研究などによって関係がある場合があります。このような場合、その研究室の大学院生(学部生では話になりません)を採用すれば、ある程度の知的水準や実験スキルを持っている可能性が高いと判断できますので、そのような採用がかなり多いです。もちろんこれもスキルを持っている可能性が高いというだけですが、コストとの兼ね合いを考えると企業にとってはちょうどいい選択なのだと思われます。

このような構造が良いか悪いかという議論はさておき、現実に企業がそのようなことをしている以上、学生の側もそれに対応するのが現実的な選択と言えるのではないかと思います。

浪人について 編集

希望の大学に合格しなかった場合、浪人は一つの選択肢です。しかし、無益な浪人をしてしまえば、貴重な時間とお金を浪費するのみです。浪人をする際には、1年後の結末として次のいずれもがありうるということを念頭に置いて検討しましょう。

  • 現役のときよりも明らかに良い大学に合格する
  • 現役のときより少しは良い大学だが、1年をかけるほどではない大学に合格する
  • 結局現役のときと同じ大学に進学することになる、あるいは、それすらかなわない

状況次第では3番目の結果も十分にありうることですから、むやみやたらに浪人することが良いとは言えません。また、2番目の結果になったときにそれは「成功」と言えるかどうかは疑問符です。浪人すれば、その後の人生のあらゆる場面が1年遅れるわけですから、それに見合うだけのジャンプアップでないと無意味です。

もちろん、1番目の結果になることを目指して浪人するのは意味があることです。しかし、であるからにはきちんと戦略を立て、実現させなければならないということです。

なお、一般に二浪以上は浪人によるデメリットの方が上回ることが多いです。2年無駄にしてまで行く価値のある大学はほんのわずかです。そんな時間があったらそこそこの大学に入学して、受験勉強のようなままごとではない本物の学問に早く触れた方がベターです。

大学進学を意識した学習 編集

大学受験においては、いわゆる5教科の学習をすることになります。国公立大学ではセンター試験で5教科すべてを受験する必要があることが大多数ですので、文系だろうと理系だろうとまんべんなく学習する必要があります。私立大学の場合は科目を絞って受験することも可能ですが、多くの大学で科目を絞らない方が有利です。詳細は各大学の対策記事に譲りますが、一般論として言えば、所詮は競争なのだから、自分と同世代の他の多くの人たちが選びたがりそうな楽に見える道には同じことを考える輩がたくさんいて大変、その道を避けて一見辛そうな道を進む方が競争相手が少なくて楽、ということです。

志望先に関する専門知識めいたものは不要です。高校生にとっては新書や啓蒙書に乗っている程度の内容が専門知識に見えるかもしれませんが、学問全体を学ぶことから比べればたいしたことのない内容です。たいしたことないことを、素人が浅く学んだところで役に立ちません。そもそも、専門知識を学ぶために進学するのですから、進学しなくても学べるのであれば進学する意味がありません。

ほとんどの学部学科において、その分野に対する興味関心はなくても進学できますが、さすがにまったく興味関心がない分野に進学すると入学後に辛いのでやめましょう。例外は医療系の学部学科で、小論文や面接を科す場合が多いですので、医療に対する興味関心がまったくない人は不合格になります。


学部・学科の名称 編集

まぎらわしい学部 編集

大学には色々な学部があります。 名前が似た学部もあります。

混同してはならない事として、

「経(けいえい)学部」と「経(けいざい)学部」は違います。

経営学部は、商学部とほぼ同じなのが普通です。経営学部や商学部は、簿記を基本として、そのほかビジネスマンに必要な英語などを学んだりして、ビジネスマンになるところです。そのほか、マイケル・ポーターなどの経営学者の理論を学ぶこともあります。

いっぽう、経済学部は、『ミクロ経済学』や『マクロ経済学』などの経済理論を基礎に、さらに発展した理論を学ぶところです。


「教育(きょういく)学部」と「教養(きょうよう)学部」も、違います。特にこの2つの学部は、まったく授業の内容が違うので、絶対に混同しないでください。

教育学部では小学校などの教員免許が取れます。

教養学部は、教育内容をあまり細かく限定しない学部であり、小学校の教員免許は取れないのが基本です。大学ごとに「教養学部」は教育内容が大きく異なっているので、詳しくは各大学のホームページなどを参照してください。国語・数学・理科・社会をまんべんなく学ぶことを特色としている「教養学部」もあれば、それとは別に、語学人材や国際人材を育てることを特色としている「教養学部」もあり(「国際教養学部」または「グローバル教養学部」と言う場合が多くあります)、はたまた介護福祉や観光などの講座を分野を限定せずに学べることを特色とした「教養学部」もあり、大学ごとに「教養」の意味が千差万別です。このため、大学卒業時に取得可能な国家資格についても千差万別ですので、それらの学部の進学を考える人は、入学前の志望校決めのさいに調べておくのが良いでしょう。

大学によっては、教養学部の呼び名ではなく、「リベラルアーツ学部」のように名乗っている場合もあります。


ほかの「文学部」とか「理工学部」とかについては、字面を見れば意味が分かるので、いちいち説明しません。


工学部や理工学部の、電工学科と電工学科は、内容が違います。

電気工学は、発電所や送電設備、またはモーターなどの技術者の学科です。


電子工学は、半導体などの学科です。

私大の総合型選抜とオープンキャンパス 編集

私大の総合型選抜では、いくつかある入試方式の要件として、オープンキャンパスの参加を要件としている場合があります。オープンキャンパスに参加していない場合、その方式には出願できませんので、別の方式があればそちらで出願することになります。

偏差値ランキングが発表組織によって大きく違う 編集

大学の偏差値などの受験難易度のランキングについて、発表する予備校・企業ごとに、順位が大きく違っています。

たとえば、私大文系の学部に限定ですが、受験産業のベネッセのランキング ベネッセ『2024年度入試対応 私立大学・学部の偏差値一覧』 と、予備校の河合塾の作成のランキング 『2024年度入試難易予想ランキング表(私立大)』 とが、まったく一致していません。

具体的にどの大学がどう不一致かまでは中立性・公平性の観点から言及できないですが、ともかく信頼できるランキングを見ましょう。

少なくとも、河合塾とベネッセのどちらか片方の標本が、片寄っている可能性があります。このように、標本(受験生のうちの、どういう層を中心にアンケートしたのか)によって、ランキング類の結果は大きく変わります。

その他大学受験に関する事項 編集

受験生を食い物にする輩 編集

大学受験では、試験会場へ行く道などに、合否や成績開示を送る云々という宅配業者を装った詐欺師が出没することがあります。その詐欺師が大学の職員などの名前を騙る場合もあります。あるいは詐欺師が、路上で「受験生は、この名簿に、名前を書いてください。大学からの緊急の指示です。」などと主張する場合もあります。多くは受験生たちの個人情報を入手しようしているようです。

そもそも成績の開示は願書において希望するしないを記入するのが一般的でしょう。それ以外の場面で大学が個人情報を入手しようとすることはありえません。詐欺師に騙されないように、受験生は注意してください。合格発表日にも詐欺師が出没する場合がありますので注意しましょう。

参考文献 編集