他言語と同様に、日本語にも指示詞(話題の対象を指し示す語)があります。日本語の指示詞は非常に規則的で、4つの接頭辞がいずれかつきます:
- こ~
- 話し手の近くにあるもの
- そ~
- 聞き手の近くにあるもの
- あ~
- 両方から離れているもの
- ど~
- 疑問形
- 話し手と聞き手が同じところにいるとき
- 「こ」は近くのもの、「あ」は遠くのもの、「そ」はその中間にあるもの
- 例
-
- どれがあなたのものですか?
- これです。
- それです。
- あれです。
「こそあど」の後ろには、下の表のような接尾辞がつきます。
また日本語では、(代)名詞と連体詞という区別があります。連体詞とは、後続の名詞を修飾する語です。例えば、「猫」につける指示詞は、「これ」(名詞)ではなく、接尾辞が「の」の「この」です(この猫)。「その」、「あの」、「どの」も同様です。
- 例
- あの猫はわかいです。
こ~ | そ~ | あ~ | ど~ | 接尾辞 | 用法 |
---|---|---|---|---|---|
これ | それ | あれ | どれ | [~れ] | モノ(名詞);モノの代わりに使う代名詞です。例えば、聞き手の手にあるモノや、聞き手の近くにある家に対して、「それ」を使います。 |
この | その | あの | どの | [~の] | 連体詞;どこかにある対象に使います。必ず後ろに名詞がつきます。例えば、「"あの"人」は、話し手・聞き手から離れている「ある特定の人物」(知っている人)という意味になります。接尾辞の「の」は「こそあど」につくだけではなく、名詞について所有格を表すこともあります。 |
ここ | そこ | あそこ | どこ | [~こ] | 場所。ある地点を指す。「あ」は例外で、「あこ」ではなく「あそこ」です。 |
こちら | そちら | あちら | どちら | [~ちら] | 方向 方向や起点。くだけた言い方では「~っち」といいます(こっち、そっち、…)。標準形と同じくらい丁寧さがあるのでかなり広く使われまが、公的な場では避けるべきです。「~う」と似ているように思われるかもしれませんが、実際は違います。「~ちら」は、方向や、行き先、場合によっては場所を表しますが、「~う」は何かをする方法を表します。「~ちら」は、「~こ」の丁寧な言い方でもあります。 |
こんな | そんな | あんな | どんな | [~んな] | 種類。物事の分類を示します。例えば、「どんな色」のようにします。「~ういう」が「~んな」の代わりに使われる場合もあります。ただし、「あ」のときは「ああいう」となります。 |
こう | そう | ああ | どう | [~う] | 方法。何かをする方法を表します。ただし、「あ」のときは「あう」ではなく「ああ」になります。 |
こいつ | そいつ | あいつ | どいつ | [~いつ] | ヒト 人を指す語ですが、今日ではかなり失礼な言い方です。例えば、尊敬していない人や社会的地位の低い人で、近くにいない場合は、「あいつ」を使います。これはインフォーマルな場でのみ使われます。一般的には「あの人」のように「~の+人」を使います。 |
こなた | そなた | あなた | どなた | [~なた] | ヒト。失礼な「~いつ」よりも、扱いにくい語です。もともと、「あなた」はかなり敬意のある表現でしたが、今では、知らない人に言うときにはニュートラルにフォーマル(ほとんど日本語学校で教わる「あなた」の使い方です)ですが、それ以外では親しい間柄(例:妻が夫に使うとき)に限られます。他の代名詞と同様、できるだけ「あなた」を避けるべきです。より一般的な方法は、名前に適切な敬称(~さん、~くん、~ちゃん)をつけることであり、この種の代名詞は使わないことです。「こなた」や「そなた」は今日ではまれですが、歴史的な文学作品や映画などで見かけるかもしれません。「どなた」は丁寧な語です。 |
「~ちら」は「~こ」の代わりに使われることがあり、またより公的な表現では「の」を後ろにつけて「~の」の代わりに使います(この→"こちら"の)。
ど
編集対象やその数に応じて、「ど」の使い方が変わります。
厳密な規則はありませんが、「どちら」は特に対象が2つのときに使われ、「どれ」は主に対象が3つ以上あるときに使われます。特定の品目に対しては「どの~」や「どちらの」(数は問いません)を使います。
- どちら の
道 を行 きます か 。 鉛 と金 と で は 、 どちら が重 い か 。- どっち が
勝 って も嬉 しい 。 - どの
電車 に乗 る の です か 。 - どの
犬 が あなた の もの です か 。 - どの
靴 を はく つもり です か 。 - どの チーム が
勝 つ だろ う か 。 大中小 あります が どれ に します か 。
さらに…
編集- どのくらい
- どれぐらい
- どれほど
- どれだけ
無・全・一部
編集- どれも、
- どれか
「どれか」は、いくつもあるうちの中から、一つのものを選ぶ場合などに使います。
- どれでも
「どれでも」は、対象になる全てのものが、当てはまる場合に使います。
漢字表記
編集接頭辞を漢字で書くと以下のようになりますが(一部例外あり)、現代日本語では平仮名で書きます。
- こ~
- 此
- そ~
- 其
- あ~
- 彼
- ど~
- 何
接尾辞にも漢字表記があります。
- ~こ
- 処
- ~ちら
- 方
- ~いつ
- 奴