東日本大震災発生年の公的地価
本項目では、東日本大震災(以下「震災」)の発生した2011年の日本の公的地価における、震災に関連した扱いの概要について解説する。
ここでいう「公的地価」は、国土交通省が「主な公的土地評価」[1]としているものを対象とする。
なお、公的地価のうち固定資産税評価額については、震災発生後最初の評価替えは、2012年(平成24年)であった。
公示地価
編集震災発生直後に発表が行われた公的地価に当たる(3月18日発表)。ただし、価格時点は1月1日のため、2011年は震災前の時点の評価である。
国土交通省の発表では、「震災により標準地の利用の現況、標準地の周辺の土地の利用の現況等が変わっているものもあります。したがって、地価公示の価格等を利用する際には、当該震災の前後で価格等が変化している標準地があることに留意して下さい。」という注意喚起がなされている。
出所
編集- 平成23年地価公示について 国土交通省、2011年
- 平成23年地価公示 国土交通省、2011年
相続税評価額
編集これも、震災発生後に発表が行われているが、やはり価格時点は1月1日である。
相続前路線価等は、指定された地域内の土地等で3月11日以後に申告期限が到来するものについては、震災による地価下落を反映させるために、指定地域内の一定の地域ごとに定めた調整率を、平成23年分の路線価及び評価倍率に乗じて計算することができるものとされた。
この対象は、「青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県の全域、並びに、埼玉県加須市(旧北川辺町及び旧大利根町の区域)、埼玉県久喜市、新潟県十日町市、新潟県中魚沼郡津南町及び長野県下水内郡栄村」(2011年11月1日現在)とされており、これについては震災直後に長野県北部地震等別の大地震があった。
「調整率」=(1-直接的要因の減価率)×(1-社会インフラ要因の減価率)×(1-経済的要因の減価率)×(1-その他の要因の減価率)
- 直接的要因 建物倒壊等の程度による減価。
- 社会インフラ要因(宅地のみ) ライフライン等、社会インフラの被害に応じた減価。
- 経済的要因 経済活動が縮小することによる減価。
- その他の要因 上記1~3以外の要因(液状化に伴うブランドイメージの減価)。
「調整率」は、「震災の発生直後の価額」を算定するためのもので、震災後の復旧の状況等は加味されていない。
この調整率において、福島第一原子力発電所事故警戒区域、計画的避難区域及び緊急時避難準備区域に指定された区域内にある土地等については、0と評価できるものとされた。
なお、相続税評価額の基準時点は、毎年1月1日である。
出所
編集- 震災特例法(相続税・贈与税関係)における土地等の評価の特例等‐「調整率」等について‐国税庁、2011年11月
基準地価格(都道府県地価調査)
編集震災発生後の状況で評価された最初の公的地価に当たる。
震災により甚大な被害を受けた岩手県、宮城県、福島県及び千葉県においては、93地点(全国の調査地点数の0.4%)で調査を休止とされた[chikachosa 1]。
国交省は、津波被災地等において被災前の取引事例を使用する場合の震災減価率の考え方について、次のとおり示している[chikachosa 2]。
- 震災がなければ発揮していた効用(①+②+③+④+⑤)から、2つの大きな要因(新たに不動産取引を行おうとする需要の減退、「ここに新たに住みたい・住みたくない」といった選好性の変化(①)と、 震災により発揮できなくなった効用(②))の合計を差し引くことにより、震災後の不動産価格を求める。
震災減価率 = (①+②)/(①+②+③+④+⑤)
- ① 需要減退等による減価
- ② 復旧までの効用価値の減少による減価
- ③ 復旧期間中の効用価値
- ④ 復旧時以降5年間の効用価値
- ⑤ 復旧時から5年経過後の効用価値
*①+②+③+④+⑤ = 震災前の不動産価格
出所
編集- ^ 平成23年都道府県地価調査 国土交通省、2011年
- ^ 東日本大震災の被災地の動向 国土交通省、2011年