民事訴訟法/複数請求訴訟
請求の客体的併合
編集ひとつの訴えの中で、原告は複数の請求を主張することができる。
訴えの当初から、原告が複数の請求をしている場合、これを「請求の客体的併合」といい、これが可能だという亊が定められている(136条)。 「訴えの客観的併合」とも言われるが、しかし複数の訴訟を併合しているわけではない。
さて、原告が請求の併合を求めていても、逆に裁判官によって分離がされる場合もある。たとえば手形訴訟などは、通常の訴訟とは仕組みが異なるので、これらは訴訟を分けたほうが効率的な場合もある。
手形訴訟、少額手続訴訟は、通常の訴訟とはちがった異種の手続である。なので、これらの訴訟に属する内容の請求は、場合によっては分離され、必要があれば他の裁判所などに移送される場合もある(16条1項) [1]。
同種の内容の請求同士であれば、請求を併合できる。
人事訴訟も、通常の訴訟とはちがった異種の請求ではあるが、しかし人訴法は一定の範囲で通常訴訟との併合を許している(人訴17条)。
- 単純併合
※調査中
- 予備的併合
※調査中
訴えの変更
編集たとえば請求金額を増減させたり、あるいは請求を追加したりするなどの、訴えの変更ができる場合がある
口頭弁論の終結前なら、場合によっては、請求の内容を変更できる。
その要件は下記の通り。
・請求の基礎に変更が無いこと(143条1項)。
- この意味は、変更要求前の訴訟資料がおおむねそのまま使える、という条件の意味である。
- また、この条項の趣旨は、被告の利益を守るためだと考えられている。なので、被告が請求の変更に同意した場合については、変更のための制約は緩和される[2]。また、人事訴訟法では、この要件(請求の基礎に変更が無いこと)は適用されない[3]。
・訴訟を著しく遅延させないこと(143条1項但書)。
・事実審の口頭弁論終結前であること(143条1項本文)。
- なお、控訴審でも訴えの変更が可能である(297条・143条1項本文)。
・上告審は法律審なので、上告審では原則として請求内容を変更できない(最判平成14・6・11民集56巻5号958頁参照)。
- なお、例外的な場合として、最判昭和61・4・11民集40巻3号558頁参照)
訴えの変更の申立ては、書面でしなければならず(143条2項)、かつ、その書面は被告に送達されなければならない(3項)。
反訴
編集反訴とは、訴訟の継続中に、被告が原告に対して、同じ訴訟手続のなかで訴えを提起することである。
「反訴」に対する用語として、原告が訴えている継続中の訴訟のことを「本訴」という。
反訴を請求する被告は、反訴との関係では「反訴原告」となる。反訴の請求を受けた本訴原告は、反訴との関係では、「反訴被告」となる。
反訴の要件として、
- ・本訴が事実審継続中で口頭弁論終結前であること(146条1項本文)、
- ・本訴と関連ある内容であること(146条1項本文)、
- ・反訴の請求が他の裁判所の管轄に属さないこと(同条1項1号)、
- ・著しく訴訟手続を遅滞させないこと(同条1項2号)
などがある。
手続に関しては、反訴の手続きは書面によることが規定されている(146条1項)。
控訴審での反訴については、相手方(本訴原告=反訴被告)の同意があることが要件になる(300条1項)。
重複訴訟
編集裁判所に係属する事件について、当事者は、さらに同じ訴えを提起することができないと定められており、これを重複訴訟の禁止、または二重起訴の禁止などという(142条)。
この条文の趣旨は、学説的には、同一内容の訴訟が重ねて提起されると、両訴訟で矛盾する結果が生じるおそれがあるから、などと説明されている。また、裁判所や当事者の資源が無駄遣いされ、訴訟上の不経済にもなる。
さて、問題は、すでに訴えた訴訟にある請求と共通している部分は多いが、微妙に内容の異なる請求がされた場合、どうすべきか、である。
たとえば、当事者が一部異なっていたりなどして、訴えを併合できない場合もあり、そのような別々の訴えにおいて、似たような内容の請求がそれぞれの当事者によって提起される場合もある。
このように微妙に内容が異なる場合には、もし142条にのっとって後訴を棄却してしまうと、後訴だけに参加している当事者が不利益を被るなどして不公平である等の問題点があるので、よって裁判所のとるべき対応としては142条とは別の処理が必要になる場合もありうる。
事件が似通っているが、微妙の異なる訴訟を起こす必要が生じた場合、どちらか一方の裁判所に移送して、送られた側の裁判所では訴えの追加的変更(143条)による訴えの併合をするなどして[4]、どちらかの裁判所にその内容の訴えを片寄せをする亊がある。先行する訴訟(先行訴訟)をしている裁判所に、後訴の内容を移送して、片寄せする亊が比較的に多い。