民法第997条
条文
編集- 第997条
- 相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が前条ただし書の規定により有効であるときは、遺贈義務者は、その権利を取得して受遺者に移転する義務を負う。
- 前項の場合において、同項に規定する権利を取得ことができないとき、又はこれを取得するについて過分の費用を要するときは、遺贈義務者は、その価額を弁償しなければならない。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
解説
編集- 前条において、遺贈の対象は遺言者の死亡時に遺贈者の財産に属する権利を原則とするが「権利が相続財産に属するかどうかにかかわらず」なされた場合は、一種の包括遺贈となるため有効な遺言となり、相続人等遺贈義務者は相続財産を引き当てに受遺者にその権利を取得して移転する義務を負う旨を定める。趣旨について明治民法第1099条を継承する。
- 例えば、遺言書中に「甲に、絵画Aを贈与する」とのみあって、遺言者死亡時に絵画Aを所有していなければ、この文言は無効になるが、「甲に、絵画Aを『取得して』贈与する」とあれば、絵画Aの代金を相続財産で支払い買い取って、甲に贈与することとなる。
- 権利を取得できない場合又は取得するのに遺贈の限度額(相続財産から法定相続人の遺留分等を除いた額)を超える額を要する場合、遺贈義務者は、それに替えて相当額を弁償しなければならない。上記の例では、絵画Aに相当する価額又は遺贈の限度額を甲に支払わなければならない。取り扱いにつき遺言に別段の指示があるときはそれに従う。
参照条文
編集- 相続財産ニ属セサル権利ヲ目的トスル遺贈カ前条但書ノ規定ニ依リテ有効ナルトキハ遺贈義務者ハ其権利ヲ取得シテ之ヲ受遺者ニ移転スル義務ヲ負フ若シ之ヲ取得スルコト能ハサルカ又ハ之ヲ取得スルニ付キ過分ノ費用ヲ要スルトキハ其価額ヲ弁償スルコトヲ要ス但遺言者カ其遺言ニ別段ノ意思ヲ表示シタルトキハ其意思ニ従フ
参考
編集明治民法において、本条には以下の規定があった。趣旨は、第891条に継承。
- 左ニ掲ケタル者ハ遺産相続人タルコトヲ得ス
- 故意ニ被相続人又ハ遺産相続ニ付キ先順位若クハ同順位ニ在ル者ヲ死ニ致シ又ハ死ニ致サントシタル為メ刑ニ処セラレタル者
- 第九百六十九条第二号乃至第五号ニ掲ケタル者
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