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熱力学の第2法則

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熱の巨視的な性質として、 "温度の低いものから温度の高いものに対して 他の物体に影響を与える事無しに熱を与えさせることはできない。" ことが知られている。 これを熱力学の第2法則という。 例えば、仮にこのことが可能だったとしたとき 冷たい水と熱い湯を混ぜたとき 冷たい水はより冷たく、湯はより熱くということが 起こり得ることが予想される。実際には 経験的にこれらのことが起こらないことが知られている。


状態量

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気体の変数の変数p,V,Tは、理想気体であれ、ファンデルワールス気体であれ、状態方程式(理想気体かファンデルワールス気体かは、ここでは問わない)があるならば、変数p,V,Tのうちの、どれか二つが決まれば、気体の状態方程式から残りの変数も決まる。こうして3変数p,V,Tが決まる。


内部エネルギーは、理想気体であれ、ファンデルワールス気体であれ、どちらにしても、変数p,V,Tのうち、どれか二つが決まれば、気体の方程式から残りの方程式も決まる。決まった3変数のp,V,Tによって、内部エネルギーも決まってしまう。このような、状態変数によってのみ決まる物理量を状態量(じょうたいりょう)という。 3変数のp,V,Tが決まれば内部エネルギーも決定されるので、内部エネルギーは状態量である。 内部エネルギーを決める3変数のうち、真に独立変数なのは、そのうちの2個のみである。変数p,V,Tのどれを2個まで独立変数に選んでもいいが、残りの1個は既に選んだ変数の従属変数になる。

どの変数を独立変数に選ぶと、知りたい答えが求めやすいかは、問題による。

(多変数の関数の微分積分については、大学理科系で教育される。多変数関数の微分を偏微分という。解説は高校レベルを超えるので省略。)

熱力学関数

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前節で言及された3つの変数(圧力p、体積V、温度T)のほか、エントロピーSや内部エネルギーUなども熱力学系の平衡状態を特徴付ける状態量である。

前節と同様、5つの状態量p,V,T,U,Sのうち任意の2つを独立変数に選ぶ場合にも、残る3つの変数はこれら2つの独立変数で表される従属変数として扱える。

この5つの変数の任意の組み合わせを独立変数にもつ状態量は、一般に熱力学関数と呼ばれる。

内部エネルギーU(S,V)のほか、後の章にて言及されるエントロピーS(U,V)、エンタルピーH(S,p)、ヘルムホルツの自由エネルギーF(V,T)、ギブスの自由エネルギーG(T,p)なども熱力学関数である。

等温変化

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(この節では、高校数学の数学III相当の微分積分を用いる。分からなければ数学IIIを参照のこと。)

圧力をpと書くとする。体積をV、モル数をn、普遍気体定数をn、温度を絶対温度でTとする。

仕事Wの、瞬間的な仕事の大きさは微分を用いてdWと表せる。体積Vの、その瞬間の体積変化は微分を用いてdVと表せる。これらを用いれば、

 

と微分方程式で表せる。(定圧変化では無いから、この式のpは変数である。)

体積をV1からV2まで変化させた時の仕事は、積分を用いて以下のように書き表せる。

 

これに、状態方程式の   を、組み合わせる。

積分変数のVに合わせて、pを書き換えよう。

 

である。これより、仕事の式は、

 

となる。(なお、logは自然対数である。) 結論をまとめると、

 

である。


内部エネルギーUは、理想気体では温度のみの関数で、等温変化では温度が変化しないから、

 

である。

したがって、等温変化では

 

である。

断熱変化

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まず、熱と内部エネルギーと仕事の関係式

 

を、次のように微分方程式に書き換える。内部エネルギーの変化を微小変化としてdUと表したとすると、熱量Qや仕事Wも微小変化になるので、以下の様な式になる。

 

QやWの微分演算記号dの上に点「 」が付いているのは、厳密に言うと、熱量Qや仕事Wは状態量で無いから、区別するために用いている。

断熱変化では

 

なので、つまり、

 

となる。

仕事に関しては

 

である。 内部エネルギーの微小変化は、定積モル比熱を用いて、

 

と書ける。

なので、これ等を式   に代入し、

 

と書ける。 両辺をpVで割ると、

 

であるが、pV=nRTを利用すると、

 

となる。

この微分方程式を解く。まず移項して、

 

となる。 積分して、

 

ここで、 は積分定数とする。(積分定数を   と書かなかったのは、比熱の記号との混同を避けるため。) 対数の性質より、係数R/Cvを対数log()の中の変数の指数に持ってこれる(数学II相当)ので、計算すると、

 

さらに移項して、変数を左辺にまとめると、

 

対数の性質より、対数同士の和は、中の変数の積に変えられるので、

 

である。 対数の定義より、自然対数の底をeとすれば

 

である。  を新しく、別の定数として、定数“constant”と置き直せば、

 

である。 これで断熱変化の温度と体積の関係式の公式が求まった。

温度と体積の関係式

仕事Wとの関係を見たいので、先ほど求めた上の公式をpとTの式に書き換える事を考える。状態方程式 を用いてTを、PとVを用いた式に書き換えると、まず代入しやすいように状態方程式を

 

と書き換えて、これを公式に代入すれば、

 
圧力と体積の関係式

 は定数なので、これを定数部にまとめてしまえば、別の定数をConst2とでも置いて、

 

と書ける。 ここで、指数部の式は、マイヤーの式 より、定圧モル比熱で書き換えが可能である。

 

である。 ここで、: 比熱比(ひねつひ)(heat capacity ratio)と言う。比熱比の記号は一般に で表す。 これを用いると、

 

である。

また、温度と体積の関係式

 

に比熱比を代入すると、

 

になる。

これらの、圧力と体積の公式、および温度と体積の公式の二式をポアソンの式という。