「高等学校政治経済/経済/物価の動き」の版間の差分

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インフレ・ターゲット
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: 需要 > 供給
である。
 
* インフレの、原因による分類
需要の増加によって、需要が供給より大きくなって発生するインフレーションを'''ディマンド・プル・インフレ'''(demandーpull inflation)という。
 
いっぽう、供給側の生産コストの上昇によって起きるインフレーションを'''コストプッシュ・インフレ'''(costーpush inflation)という。
 
* インフレと通貨価値
インフレになると、インフレの原因がなんであれ、通貨の価値が下がったことになる。ひとつの物を買うのに、より多くの額面の金銭が必要んなるので、たとえば日本のインフレだとしたら、つまり貨幣1円あたりの価値が下がったことになる。
 
インフレ現象を、物を基準に見ると、通貨の価値が下がったことになる、
一方、通貨を基準にインフレをみると、インフレによって、物の金銭価値が上がることになる。
 
* インフレと貯金・借金
インフレによって、貯金の価値は下がる。
 
また、借金の負担も、インフレによって、下がる。たとえば10万円の借金をしていても、インフレによって物価が10倍になれば、昔は1万円だった物をインフレ後に1つ売れば、それで借金が返せることになる。10倍インフレ前なら、1万円のものを10個売らなければならなかったわけだから。(じっさいのインフレでは、国の深刻な財政破綻などでないかぎり、このような急激なインフレは起きないのが普通。あくまで、わかりやすくする目的のため、急激なインフレで説明している。)
 
このように、インフレは、借金の借り手にとっては有利である。
裏をかえすと、借金の貸し手のとってはインフレは不利である。
 
なお、インフレによって、これから、名目上の利子率、利息率が上がる。
 
すると、これから借りる借金の利子も上がるので、これから借りる人にとっては、不利になる。しかし、すでに借りている人にとっては、その借金の契約条件での利子率が(例外として物価連動などの条件を利子率につけてないかぎり、)昔の利子率のままなので、これから借りる人よりも、昔に借りた人は利子率が低いことになる。
 
 
=== デフレの場合 ===
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しかし例外もあるだろう。たとえば、インフレの原因が、たとえば国家財政における財政不安・財政危機などによって通貨の信用が暴落した場合や、あるいは戦争・大災害などにより工業地帯などが破壊されて商品不足などが起きた場合などには、消費者は将来不安のために生活必需品以外の消費を控える可能性もあるので、かならずしもインフレだからといって好景気になるとは限らない。
 
なお、不況とインフレ(物価高)が同時に進行する現象を'''スタグフレーション'''(stagflation)という。
 
1973年の石油危機は、「'''狂乱物価'''」(きょうらん ぶっか)と呼ばれる物価上昇(インフレ)をもたらし、スタグフレーションをもたらした。
(※ 第一学習社の検定教科書『高等学校 政治・経済』が、石油危機をスタグフレーションと認定している。)
 
なお、この1973年の石油危機のとき、トイレットペーパーが品薄になるというウワサが流れ、スーパーなどの日用品売場にトイレットペーパーを買い求める消費者が殺到した。
 
さて、インフレになると、場合によっては、金銭をもっていても価値が下がっていくので、貯金をするよりも、物を買って、物資として資産をたくわえようという意識が働く結果、消費が活発になり景気が良くなる場合もある。
 
 
=== デフレと景気との関係 ===
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ある会社がつぶれても、その会社の競争相手の別会社にとっては好都合かもしれない。あるいは技術改善によって価格の減少が起きる場合もある。
 
さて、インフレと不況が同時進行することを「スタグフレーション」と呼ぶのであった。
 
一方、不況とデフレが同時の場合を考えよう。
 
まず、なんらかの不況または景気不安によって、生産者・販売者らが生き残りのためのコスト・ダウンをして、デフレになったとしよう。
 
すると、そのコスト・ダウンによって、競合他社も値下げさぜるを得ず、さらに価格競争が起きる。すると、さらに、最初に値下げした業者も、競合他社に対抗するため、またまた値下げする。すると、どんどん販売価格が下がる。
 
そして、販売価格が少ないので、せっかく商品を売っても、利潤が少ない。この結果、デフレによって所得が、名目だけでなく実質的にも低下したことになる。
 
 
そして、労働者の所得が低下すれば、当然、消費に使える金銭が減るので、消費が不活発になり、さらに不況になう。
 
このように、なんらかの原因で、不況とデフレが同時進行することを'''デフレ・スパイラル'''という。(「スパイラル」とは、「循環」という意味。「スパイラル」という単語自体には、その循環が、良い循環か、わるい循環かの、決まりはない。つまり、「デフレ・スパイラル」とは、けっして文字通りの単なる「デフレの循環」意味ではなく、「デフレが不況を深刻化させる」という価値判断を「デフレ・スパイラル」という単語は含んでいる。)
 
このデフレ・スパイラルが悪循環となって、景気を低迷させ続けかねない、というのが、近年の定説である。(検定教科書でも、そういう立場である。)
 
=== デフレと貯金 ===
さて、デフレになると、商品が安く買えるので、貯金のある人にとっては有利である。(なお、インフレは、貯金の価値を減らすのであった。このように、インフレとデフレは、貯金の価値に対して、逆に作用する。)
 
さて、貯金のない人にとっては、これからオカネを稼がないといけないが、デフレになると、せっかくオカネを稼ぐために働いても、すでに貯金のある人と同じ金額を貯めるまでに、より長い期間が必要である。
 
たとえば、かりに、日本のサラリーマン平均年収1000万円のインフレ時代があったとして、その後、デフレによって、平均年収100万円になったとしよう。(じっさいには、このような急激なデフレは起きないのが普通。あくまで、わかりやすくする目的のため、急激な例で説明している。)
 
この条件の場合、むかしは、1000万円を1年で稼げたことになる。しかし、デフレ後だと10年間、働き続けないといけない。
 
デフレが起きても、けっして、それまでの貯金が消失するわけではない。なので、年収1000万円時代の人の貯金が消えるわけではない。
 
このように、貯金の無い人にとって、デフレは不利である。(なお、インフレなら、貯金のない人には有利なのである。)
 
=== 日本の近年の景気 ===
1973年の第一次石油危機にインフレになり、また1979年の第二次石油危機のときもインフレになり、1980年代後半から80年代末ごろまでインフレになっただ。しかし、1990年頃のバブル崩壊後からは、ずっとデフレ傾向が続いている。
 
2016年の現在、日本では、デフレが不況を深刻化・長期化させる原因だろうと考えられており、そのため政府は、財政政策などによって、物価上昇率2%ていどの、ゆるやかな物価上昇率のインフレを目指してると思われている。(※ 清水書院の検定教科書『高等学校 新政治・経済』など、いくつかの教科書出版社の検定教科書に、そういう見解がある。)
 
このように、政策によって、望ましいインフレ率を実現しようということを'''インフレ・ターゲット'''という。
 
日本では、デフレからの脱却という意味でインフレ・ターゲットという意味が使われるが、一方、発展途上国では、急激なインフレによる経済不安のため、インフレ率を抑えようという意味でも、「インフレ・ターゲット」という単語が用いられる。
 
== ハイパー・インフレとクリーピング・インフレ ==
第二次大戦前のドイツで起きたような急激なインフレのように、短期間で物価が大幅に上昇する急激なインフレを'''ハイパー・インフレ'''(hyper inflation)という。
 
いっぽう、年率数パーセントていどの持続的なインフレを'''クリーピング・インフレ'''(creeping inflation)という。クリーピングとは、「しのびよる」という意味。