「初等整数論/多項式」の版間の差分

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====== 定理 5 ======
零点を持たない多項式 <math>A, B</math> について <math>gcm(A, B) = G, \, lcm(A, B) = L</math> とすれば <math>AB =\sim cGLGL.</math> (ただし <math>c</math> は適当な定数)
 
'''証明'''<br />
仮定より <math>L = A'B = AB'</math> とける。<math>AB</math> は公倍多項式なので、定理 3 より <math>AB = DL \cdots (1)</math> とおける。
 
<math>A, B</math> は零点を持たないので、先ほどの式を代入して <math>AB = DA'B = DAB' \Rightarrow A = DA', \, B = DB'.</math> よって、<math>D</math> は <math>A, B</math> の公約多項式。定理 4 より <math>G = DE \cdots (2)</math> とおく。このときもちろん <math>E(x) \neq 0.</math>
 
<math>G \, | \, A, B \iff DE \, | \, DA', DB'</math> となる。ここで、(1) より <math>A, B</math> どちらにも零点がないので、<math>D</math> は零点を持たない。したがって、<math>E \, | \, A', B'</math> より <math>A' = EA'', \ B' = EB''</math> とおき最初の式に代入すると
<math>G \, | \, A, B \iff DE \, | \, A</math>
 
<math>L = EA''B = EB''A</math> を得る。ここで <math>|E| > 0</math> とすれば、<math>A''B = B''A</math> が公倍多項式となり、<math>L</math> の最小性に反する。従って <math>E</math> は定数項となり、<math>E = e</math> とおけば (2) より <math>G = eD.</math> (1) より
 
<math>AB = \frac{1}{e}DL \Rightarrow AB \sim DL.</math>
 
====== 定理 6 ======
<math>A, B</math> が互いに素で、零点を持たないとするとき、<math>A \, | \, BC \Rightarrow A \, | \, C</math>
 
'''証明'''<br />
2つの多項式は零点を持たなず、<math>gcm(A, B) = 1</math> なので定理 5 より <math>lcm(A, B) = AB.</math>
 
仮定より <math>BC</math> は <math>A, B</math> の公倍多項式。定理 3 より <math>lcm(A, B) \, | \, BC \iff AB \, | \, BC.</math>
 
<math>B</math> は零点を持たないので <math>A \, | \, C.</math>
 
 
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さて、以上で整数の場合と同じような議論を進めることが出来たが、そこでは'''多項式が零点を持たないこと'''が重要な条件になっている。零点を持たない場合にも通用する方法を探ろうとすると解析的な手法を用いなければならず、初等整数論の域を超えてしまうのでここではそういった話をしない。
 
代数学の基本定理を前提とすれば簡単であるが、循環論法を極力避けるためにここではそれを仮定しなかった。
 
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