「高等学校商業 経済活動と法/契約と意思表示」の版間の差分

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虚偽表示、善意と悪意
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== 真意でない意思表示 ==
ある物を、本音では売る気がないのに、冗談で「これを売ろう」と言った場合、その契約は有効だろうか。
:(※ 未記述)
 
「これを売ろう」を聞いた相手が冗談を信じた場合、この契約は有効になってしまう。そもそも冗談を言うほうがウソつきなわけだし、そんなウソつき人間の本音を、わざわざ国家権力が保護する必要が無い。
心裡留保(しんり りゅうほ)
 
いっぽう、もし相手が冗談だと買うさいに気づいていたら、その契約は法的には無効である。
 
これだと、相手が頭のよい人で、ウソを見抜ける人であると、冗談っぽい売主との契約に関して、保護されなくなてしまい、かえって権利が減ってしまってるが、現実的にそういう法律になってるんだから、仕方ない。
 
なお、冗談で「これを売ろう」と言うように、発言者自身がウソや冗談だと分かってて、意思表示をすることを'''心裡留保'''(しんり りゅうほ)という。「裡」の字に注意。「理」ではない。
 
 
またなお、酒に酔って「100万円あげよう」などという発言は、ふつうの相手なら明らかに冗談だと分かるので、この発言は無効である。(※ 実教出版の教科書にある事例。)
 
 
* 教訓
教訓としては、売る気のないものについては、たとい冗談のつもりだろうが、けっして「これを売ろう」などとは言わないのが最善だろう。なお、教科書では売る場合の説明のみだが、買う気がない場合でも当然、けっして冗談のつもりで「買います」などとは言わないほうが安全だろう。たとい、お世辞(おせじ) とか シャレ とかのつもりだろうが、もし冗談をついてしまうと、法的には契約の意思表示をしたと見なされ、その契約が有効になってしまう場合があるので、商談では冗談は禁物だろう。
 
要するに、お世辞やシャレのつもりだろうが、ビジネスの契約内容に冗談をもちこむ連中は、仕事の邪魔者である。テレビ番組や漫画などでは、冗談が持てはやされる事も多いかもしれないが、そんなのはフィクションの物語の世界だけである。法律は、いちいちフィクション愛好家の冗談趣味などに付き合ってるヒマが無い。
 
* 用語
:・ 内心の意思 - 先程の冗談「これを売ろう」の例では、「本音では、これを売るつもりはない」という本音のこと。「'''真意'''」(しんい)ともいう。
 
「真意でない意思表示」とは、つまり、
:内心の意思(真意)と、意思表示の内容とが、違っていること
である。
 
== 虚偽表示 ==
虚偽表示(きょぎ ひょうじ)とは、いわゆる「グル」という事例である。
:(※ 未記述)
 
相手側と相談した上で、真意とは違う意思表示をする事を。「虚偽表示」(きょぎ ひょうじ)あるいは「'''通謀虚偽表示'''」という。
 
問題点は、第三者の権利である。
 
たとえば、AとBが共謀して虚偽表示をして、AがBに売ったと見せかけた物を、第三者Cが、Bから買うと契約してしまった場合、法律では、どうなるか。
 
簡単な事例から解説するため、ひとまず第三者のことは忘れて、ウソつき人物Aとウソつき人物Bの2人しかいないとしよう。
多額の借金をかかえていたAが、債権者からの家屋の差し押さえを逃れるために、AとBが協力して、AがBに家屋を売ったとして、家屋の名義もBに書き替えた場合、どうなるか。
 
法律では、まだBが誰にも売ってなくて、Bが持っているままなら、この契約は無効である。(民94)(※ 参考文献: 有斐閣『民法入門 第7版』川合健)
 
しかし、もしBが、事情を知らないCにこの家屋を売ってしまった場合、Cは法的に保護されるので、AはCに家屋を返還請求できない。
 
* 善意と悪意
ちなみに、法律用語では、事情を知らない事を「'''善意'''」(ぜんい)という。
 
さきほどの例では、Cは「善意の第三者」である。
 
いっぽう、事情を知っている事を「悪意」(あくい)という。さきほどの例では、AとBは「悪意」の人物である。
 
日常語の「善意」「悪意」とは、法律用語の「善意」「悪意」とは、意味が異なるので、注意のこと。
 
 
== 瑕疵ある意思表示 ==