「高等学校商業 経済活動と法/債務不履行」の版間の差分

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不完全履行
強制執行、直接強制、間接強制
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また、あらためて完全に履行しても意味のない債務の場合、または、あらためて履行するのが不可能な債務の場合なら、損害賠償を請求する事ができる。(民415)
 
買った本に落丁や乱丁があった場合のように、形式的には債務の行動が行われているが、債務者の責めに帰すべき理由によって、その債務が完全には履行されていない場合のことが不完全履行である。
 
「自動車を買ったが、新車なのに故障しててヘッドライトが付かない」(東京法令出版の検定教科書にある例)のような場合も、不完全履行である。
 
※ 法学書の有斐閣『民法入門』(著:川井健)にある例では、買ったばかりのテレビが壊れてた場合も、不完全履行である。
 
※(個人的見解:) 要するに、買ったものが明らかに故障だったりする場合、売り主の債務の不完全履行だと判断してもいいだろう。
 
債権者は、不完全履行をした債務者に対し、新品に交換してもらうなどのように、完全な履行を請求する事。この場合、履行遅滞と同じように扱われる。
 
また、あらためて完全に履行しても意味のない債務の場合、または、あらためて履行するのが不可能な債務の場合なら、損害賠償を請求する事ができる。(民415)
 
== 強制執行 ==
債務の履行期が来ても債務者が履行しない場合、履行を強制するためには、債権者は裁判所に訴え出て、そして履行を命じる判決をもらう必要がある。判決が出たにもかかわらず、債務者が債務を履行しなければ、国家権力によって、強制的に履行させる事になるが、これを「強制執行」(きょうせい しっこう)という。(民事執行法22)
 
強制執行には、次のように直接強制、代替執行、間接強制などの種類がある。
 
=== 直接強制 ===
たとえば、売買の契約で代金を払ったにもかかわらず、売り主が買い主に品物を渡さないという裁判での強制執行の場合なら、国家権力が、売り主から、その品物を取り上げて、その品物を買い主に引き渡すのが、合理的である。このように、債務者から物を取り上げて、それを債権者に引き渡すことが'''直接強制'''である。
 
また、金銭支払いの債務を強制する場合は、債務者の財産を差し押さえて、これを競売(けいばい)にかけて金銭に変えて、そして金銭を債権者に引き渡す。(民事執行法172)
 
なお「競売」とは、いわゆる「オークション」「せり」のようなものであり、つまり「競売」とは、まず公開して多数の買取り希望者を集めて、どの金額で買うかをそれぞれの買取り希望者から聞いて、最高値で買うと約束した人に買ってもらうという方法。
 
=== 代替執行 ===
(※ 未記述)
 
=== 間接強制 ===
たとえば、債務を負っている人とその債務の内容が、著名なピアニストが債務者であり、ある仕事でピアノを引くことが債務であったり、または、著名な画家が債務者であり、ある仕事で絵を描くことが債務である場合などは、第三者に債務をしてもらっても無意味だし、かといって本人が債務を履行しようとしないので債権者は困ってるわけだから、なんらかの方法で、債務者に心理的に強制させる必要がある。
 
そこで、裁判所が「債務を履行しない場合には、債権者に対して、1日あたり金銭 ◯◯円を債務者は履行までのあいだ支払いつづけろ」という判決をして、それを強制するのが、'''間接強制'''である。
 
 
なお、夫婦間の同居義務(民752)については、判例により強制執行できない。(大判昭和5年9月30日民集9巻926頁) 夫婦間の同居義務は直接強制では強制できないし、間接強制もできない。(※ 検定教科書の範囲。)(※ 参考文献: 有斐閣『民事法入門』、野村豊弘、第6版、)
同居義務が強制執行できない理由は、自由意志を尊重するという名目である。