「初等整数論/多項式」の版間の差分

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任意の多項式 <math>A, B \ (B(x) \not\equiv 0)</math> について、
 
<math>A = BQ + R</math> で、<math>R</math> の次数が <math>B</math> よりも小さいような組 <math>(Q, R)</math> がただ一つ存在する。また、 <math>A, B</math> の係数が有理数であれば <math>Q, R</math> の係数も有理数であり、<math>A, B</math> の係数が整数で <math>B</math> の最高次の係数が1ならば <math>Q, R</math> の係数も整数である。
 
また、このとき <math>x=\alpha</math> を <math>B(x)=0</math> の解とすると <math>A(\alpha)=R(\alpha).</math>
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したがって、<math>k+1</math> のときも定理の主張を満たす。
 
(i) (ii) より数学的帰納法から証明される。またその構成から、係数に関する主張も従う
 
 
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以上より数学的帰納法によって証明される。
 
== 微分 ==
 
<math>P(x)</math> を多項式とし、<math>\alpha</math> を方程式 <math>P(x)=0</math> の解とする。因数定理より、これは <math>P(x)</math> が <math>x-\alpha</math> を因数に持つことと同値である。<math>\alpha</math> が重解あるいは重根であるとは、<math>P(x)</math> が <math>(x-\alpha)^2</math> を因数に持つことである。同様に<math>\alpha</math> が <math>n</math> 重解あるいは <math>n</math> 重根であるとは、<math>P(x)</math> が <math>(x-\alpha)^n</math> を因数に持つことである。
 
さて、多項式 <math>P(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_0</math> に対し、微分 <math>\frac{d}{dx}P(x)</math> あるいは <math>P'(x)</math> を
:<math>(a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_0)'=\frac{d}{dx}(a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_0)=na_nx^{n-1}+(n-1)a_{n-1}x^{n-2}+\cdots +a_1</math>
により定める(これは微分積分学における[[解析学基礎/微分1#多項式の微分|多項式関数の微分]]と同様である。ただしここでは、関数ではなく多項式そのものに対する演算として微分を定める。ここでの議論には極限に関する議論を要しない点に注意)。
 
すると、明らかに次の2つの公式が成り立つ。また逆に次の2つの公式が成り立つように <math>\frac{d}{dx}P(x)</math> を定めれば、一般の多項式について上記の公式が成り立つ。
* <math>\frac{d}{dx}(1)=0, \frac{d}{dx}x=1, \frac{d}{dx}x^2=2x, \ldots, \frac{d}{dx}x^n=nx^{n-1},</math>
* <math>\frac{d}{dx}(aP(x)+bQ(x))=a\frac{d}{dx}P(x)+b\frac{d}{dx}Q(x).</math>
 
さらに、
* <math>\frac{d}{dx}(P(x)Q(x))=P'(x)Q(x)+P(x) Q'(x)</math>
が成り立つ。
実際、<math>P(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_0, Q(x)=x^m</math> のとき
:<math>\begin{align}
\frac{d}{dx}(P(x)Q(x))& = (a_nx^{m+n}+a_{n-1}x^{m+n-1}+\cdots +a_0x^m)' \\
& =(m+n)a_nx^{m+n-1}+(m+n-1)a_{n-1}x^{m+n-2}+\cdots +ma_0x^{m-1} \\
& =(na_nx^{m+n-1}+(n-1)a_{n-1}x^{m+n-2}+\cdots +a_1x^m)+m(a_nx^{m+n-1}+a_{n-1}x^{m+n-2}+\cdots +a_0x^{m-1}) \\
& =x^m(na_nx^{n-1}+(n-1)a_{n-1}x^{n-2}+\cdots +a_1)+mx^{m-1}(a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots +a_0) \\
& =x^mP'(x)+mx^{m-1}P(x)
\end{align}</math>
であるから、一般の <math>Q(x)=b_mx^m+b_{m-1}x^{m-1}+\cdots +b_0</math> についても
:<math>\begin{align}
\frac{d}{dx}(P(x)Q(x))& =(b_mP(x)x^m+b_{m-1}P(x)x^{m-1}+\cdots +b_0P(x))' \\
& =b_m(P(x)x^m)'+b_{m-1}(P(x)x^{m-1})'+\cdots +b_0P'(x) \\
& =b_m(x^mP'(x)+mx^{m-1}P(x))+b_{m-1}(x^{m-1}P'(x)+(m-1)x^{m-2}P(x))+\cdots + b_0P'(x) \\
& =P'(x)(b_mx^m+b_{m-1}x^{m-1}+\cdots +b_0)+P(x)(mb_m x^{m-1}+(m-1)b_{m-1}x^{m-2}+\cdots +b_1) \\
& =P'(x)Q(x)+P(x) Q'(x)
\end{align}</math>
が成り立つ。
 
<math>P(x)</math> が <math>x=\alpha</math> を解に持つとし <math>P(x)=(x-\alpha) Q(x)</math> とおくと
:<math>P'(x)=(x-\alpha) Q'(x)+Q(x)</math>
より <math>P'(\alpha)=Q(\alpha)</math> となる。ここで<math>P(x)</math> が <math>x=\alpha</math> を重解に持つとは、<math>Q(\alpha)=0</math> と同義であるから次のことがわかる。
 
====== 定理 A ======
<math>P(x)</math> が <math>x=\alpha</math> を重解に持つための必要十分条件は <math>P(\alpha)=P'(\alpha)=0</math> が成り立つことであるとわかる。
 
== 公約多項式・公倍多項式 ==
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さて、多項式 <math>A, B</math> の最大公約多項式が <math>1</math> であるとき、この2つの多項式は「'''互いに素'''」である、という。
 
整数の場合と同様に、多項式 <math>A, B</math> の最大公約多項式を <math>\gcd (A, B)</math>, 最小公倍多項式を <math>\textrm{LCM} (A, B)</math> とかく。
たとえば、方程式 <math>P(x)=0</math> が重解 <math>x=\alpha</math> を持つならば、 <math>x-\alpha</math> は <math>P, P'</math> の公約多項式だから <math>\gcd(P, P')>1</math> でなければならない(複素数上ならば代数学の基本定理より逆が成り立つが、他の体で考えているときは逆は成り立つとは限らない。公約多項式が解を持つとは限らないからである)。
 
ここでも整数の時と同じように理論を組み立てられる。
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よって定理 iii より <math>A \, | \, C.</math>
 
 
これにより、多項式においても、整除性に関して、整数の場合と同様の基本的事実が成り立つことがわかった。これを用いて、多項式上で、因数分解の一意性が成り立つことを次に見る。
 
なお、定理 4 の帰結として次の定理が成り立つ。
 
====== 定理 B ======
方程式 <math>P(x)=0</math> が重解 <math>x=\alpha</math> を持つならば、 <math>x-\alpha</math> は <math>\gcd(P, P')</math> の因数である。
 
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